BBS2 2009/10 過去ログ


2009/10



もうひとつの人生 10
kyo 10/31(土) 23:45:13 No.20091031234513 削除
「ああ言っていたけれど、あの絵のモデルはやっぱりめぐみはんやないと思うな」

 天野はジョッキに残った生ビールをぐいと飲み干すと、そう言って一人で頷く。

 画廊を出た隆則と天野は、天野の行きつけの居酒屋で飲んでいる。

「そろそろ日本酒にしよか。マスター、飛露喜をちょうだい」
「へい」

 目の細い居酒屋の主人が返事をする。フィリピン人らしい女の子が日本酒の一升瓶を冷蔵庫から取り出し、升の中のグラスに慣れた手つきで注いでいく。天野はあふれんばかりに注がれた日本酒にうまそうに口をつける。

「天野はモデルが誰だか知っているのか?」
「いや、知らん」

 隆則の問いに天野は首を振る。

「それでもめぐみはんやないのは確かや。これでも俺は風俗雑誌にエロ漫画を描いている男や。女の身体にはちょっとうるさいで」

 天野はそう言うとニヤリと笑い、冷酒を口に含むと「うん、絶対にめぐみはんやない」と再び首を振る。

「どうしてそう思うんだ」
「それは簡単や。あのモデルの身体つきは経産婦や」
「経産婦?」
「子供を生んだことがあるってことや。椿先生とめぐみはんと間には子供はいない」
「そうなのか?」
「ああ」

 あの絵のモデルが妻の仁美ではないのかという疑念に取り憑かれている隆則は、実はめぐみがモデルだったという結論になる方が有り難い。しかし、天野によってそれがあっさりと否定され、隆則は胸の中に錐りを沈められたような気分になる。

「めぐみさんを見ながら、この身体で子供を生んだらどうなるかって想像しながら描いたってことはないか?」
「ないない」

 天野は笑って否定する。

「絵描きってのは目の前の対象に集中すると、そんな余計なことを考えている余裕はないで。モデルの外面から内面に至るまで、そのすべてを自分の絵の中に写し取ろうと格闘するもんや」

 天野はそこまで言うと急に声を潜める。

「あのモデルの女、相当の淫乱やで」
「何だって?」

 隆則は驚いて聞き返す。

「どこにそんな根拠がある。ヌードモデルをしているから淫乱というのは偏見だろう。それとも、あれだけの絵で天野はそこまでモデルの内面がわかるって言うのか」
「おいおい、どうしたんや、山城。そんなにむきになって。ひょっとしてあの絵の女に惚れたか?」

 隆則の勢いに天野は苦笑する。天野は仁美には会ったことはないため、絵のモデルである赤毛の女が隆則の妻に似ているということは知る由もない。

「理由は簡単や。あの女の絵はあそこに飾られているだけやない。画廊には1年で2枚、合計20枚飾られていたが、実はその5倍の100枚はあるんや」
「100枚だって?」

 隆則は驚きに目を見開く。

「どうしてそんなに……いや、それだけ描いているのならどうしてもっとたくさん展示しないんだ。画廊の壁面はまだスペースがあったぞ」
「簡単や、とてもやないが大っぴらに飾れるような絵やないからや」
「どういう意味だ」
「浮世絵で春画ってのがあるやろう。残りの80舞の絵はまさにそれや。あの赤毛の女が色々な男とセックスしている――時には同時に何人も受け入れたり、時には同性も相手にしている様子を描いたもんや」

 隆則は天野の言葉に衝撃を受ける。

(仁美はヌードモデルをしていただけでなく、俺の知らない相手に抱かれ、それを絵に描かせていたというのか)

「中にはいわゆる責め絵もあるで。色々な方法で縛られて、ロウソクや張り型の責めを受けている様子がなかなかの迫力や」
「天野はその絵を見たことがあるのか?」
「ああ、見たことがあるからこんな風に説明出来るんやが」

 勢い込んで尋ねる隆則に、天野はきょとんとした表情で答える。

「どうやったら見れるんだ」
「そんなきわどい絵やからな。おおっぴらに展示されることはない。俺は椿先生に直接見せてもろたんやが」

(駄目か……)

 今日見た絵だけではモデルが仁美であるとは隆則には確信出来ない。まして天野の言う通り、赤毛の女がもっときわどい姿を描かせていたということならそれはやはり仁美ではないのではないかという気持ちの方が大きくなって来る。

 あの清楚な妻がヌードモデルになるくらいならともかく、複数の男や女を相手にセックスし、SMめいた行為も行うなど考えられない。おそらく水商売や、風俗の女が金のためにモデルになったのではないか。

 画廊に展示されていたやや取り繕った表情の絵では分からないが、そんなきわどい絵ならこの目で見れば、モデルが仁美でないことが確かめられる。俺しか知らないはずのあの時の妻の表情――それがキャンバスの上に記録されていないのなら、それは仁美ではない。

(だからと言って、その椿という画家に直接あたる訳には行かない)

 もし妻が椿のモデルの赤毛の女なら、自分の素性に椿が気づく恐れがある。仁美の不貞の相手かもしれない男に手の内を見せる訳には行かない。

 隆則が悩んでいると天野が「残りの絵を見る方法はあるで」と言う。

「えっ?」

鎖縛 10
BJ 10/31(土) 02:29:11 No.20091031022911 削除

 「豪勢な食事をするぞ」と妻に宣言した手前、和洋は是が非でも璃子を一流のフランス料理店にでも連れて行こうとしたのだが、こと食べ物に関しては父に似てとことん庶民派の娘は、「近くのファミレスでいーよ」と言って譲らなかった。
 仕方なく、和洋は璃子と一緒に、歩いて10分の距離にあるファミリー・レストランへ行った。和洋はヒレカツ定食、璃子は特製ハンバーガーセットを頼む。フランス料理どころではない。

 受験勉強に疲れている娘を気遣って、和洋はしいてその話題を避け、璃子の友達や好きな音楽などについて、あれこれ質問した。璃子はたいして面白くもなさそうな顔で、しかし律儀にその問い掛けに答えては、小さな口でハンバーガーをぱくついた。
 途中、和洋の胸ポケットで携帯が鳴った。
「失礼」
 娘相手なのにいつもの癖でそう断ってから、和洋はかかってきた電話の相手が瑛子であることに気づいた。


「――どうした?」
『あなた…。いま、どこ? 何してるの?』
「璃子と一緒に飯を食ってるよ。聞いて驚け、銀座のマキシムだぞ」

 嘘ばっかり、と正面で聞いている璃子がそっぽを向いた。

『そう…よかったわ。璃子は喜んでる?』
「ああ、餓えた猛獣のようにがつがつ食ってるよ」

 そう言った途端、和洋は机の下で、璃子に脚を蹴っ飛ばされた。

「君は何をしてるんだね」
『わたし…? わたしもお友達の方とお食事して…終わったところ』
「ふうん。料理は何だった?」
『え…ああ、うん…日本料理かな』

 自分で電話をかけてきたくせに、瑛子はどこか気もそぞろという感じだった。

「体調でも悪いんじゃないの? まだ寒いんだから、風邪を引かないように気を付けろ。万一、璃子に伝染したらコトだよ」
『…そう、そうね、あなた。気を付けます』
「璃子に代わろうか?」
『え…ううん、今日はいい。いつも話してるんだし』
「そっか」
『うん…。じゃあね、あなた』
「ああ」


 璃子は指先でフォークを弄びながら、「お母さん、何の電話だったの?」と訊いてきた。
「うーん、とくに内容はなかったけど、まあ、僕たちのことが気になったんだろう」
「そう」相変わらず璃子は元気がない。
「璃子」
「なあに」
「お前もいろいろと大変だろうけど、無理はするなよ」
 その言葉に、璃子はうんともすんとも言わなかった。しばし黙って考え込むような表情をした後で、「お父さん」と真面目な声を出した。
「なんだい、娘よ」
「…まともに聞かないなら話さない」
「聞く聞く、ごめん、ちゃんと聞いてるから」

 ふくれ面をする娘に、和洋はあわてて襟を正した。
 璃子が口にしたのは、意外な言葉だった。

「お父さんさあ…、お母さんのこと今でも好き?」

「それは――どういう意味なんだ」
「どういうもこういうもないよ、そのまんまだよ。お母さんのこと好きかって訊いてるだけ」

 何を怒っているのか、璃子はやけに早口に言う。

「そりゃあ…好きだよ。お前がどんな答えを望んでるか知らないし、さすがに若い子の恋愛感情みたいなものとは遠いだろうけど、好きなことは変わらない。じゃなきゃ、こんなに長年、一緒に暮らせないよ」
「最近はずっと、一緒に暮らしてないじゃない」
「それは…仕事だから仕方ない。でも、気持ちは前と変わらないさ。というかもう、好きとかは通り越して、存在が当たり前になってるんだよ。そんなこと言ったら、お母さんは『わたしは空気じゃないわよ』って怒るかもしれないけどね」
「……………」

 璃子は顔をうつむけて、つけあわせのパセリだけが残った皿を見つめている。
 
「いったいどうしたんだね、急に。お母さんと喧嘩でもしたのかい?」
「そんなもの、してないよ」
「じゃあ逆に訊くけれど、璃子はどうなんだい? お母さんのこと嫌いなのか」
「そんなこと、ない」璃子は絞り出すようにつぶやいた。「お父さんと同じだよ。でも…、最近のお母さんは……ちょっと変」
「変って何が? そりゃあ以前とちがって、ピアノ教室だ、水泳だ、友達との旅行だって家を空けることは多くなったかもしれないけど…。でも、いいじゃないか。お母さんがひとりぼっちで家に閉じこもってるよりは、活発に動き回って人生を楽しんでいるほうがよっぽどいい」

 それは本当に和洋の本心なのか、正直言って自分ではよく分からない。意識してはいなかったが、まったく立場を逆にして、前に璃子とした会話をなぞっていた。
 またしばらくの間、璃子は黙っていた。それから、ぽつりと言った。

「お父さん、はやく家に戻ってきてよ。やっぱりお父さんがいなきゃダメだよ」
「あと一か月もしないうちに帰るよ」

 その時はもう、お前は大学でひとり暮らしをするようになっているかもしれないけど――と、和洋は思ったが口には出さなかった。
 向かいのテーブルでは、茶色い髪の若者たちがそれぞれに煙草の煙を吐いては、他愛もない話に花を咲かせている。

「お父さんがいないと、寂しいか?」

 こういうことを言うと、いつもの璃子なら軽蔑するような目をして、「ばっかじゃないの」とでも悪態をつくところだ。しかし、その時の娘はやけに素直に「寂しいよ」と言葉を漏らした。

「そうだね…きっと寂しいんだ。だからお父さん、早く帰ってきて」
「…分かった、そうするよ」

 この時――和洋は娘の心をほとんど理解していなかった。うまくいかない受験のために神経が過敏になっているのだろうと、それくらいに考えていた。娘がまだ幼かったあの日、迷子になって途方に暮れた時にこんな表情をしていたな――と、そんな思い出ばかりが脳裏をかすめて、胸の内側で静かな感傷に浸っていた。

鎖縛 9
BJ 10/27(火) 23:44:15 No.20091027234415 削除
『「A」は4×歳の専業主婦です。子持ちで、高校生の娘がいます。
 一見おとなしく楚々とした顔だちをしており、近所では真面目な奥さんと評判のようです。家庭においても、「A」はよき妻、よき母として長年月を暮らしてきました。
 しかし、それは偽りの姿にすぎません。
 いくら拭いさっても、とろとろと淫猥な愛液をあふれさせ、乾くことのない性器。
 変態的な調教でみじめな痛苦や羞恥を味わうごとに、いっそう性の悦びにあえぎ、はしたなく絶頂を乞い願うマゾヒスト。
 それが「A」の本性なのです。』


 そんな文句の下に、また写真が貼ってある。
 ごくっと――和洋の喉が鳴った。
 その写真が同じ日、同じ場所で撮影されたことは間違いない。背景が一緒だからだ。
 違っているのは――女性の姿である。


 女は帽子だけを残し、あとは完全な下着姿になっていた。

 
 下着――と言ったが、それは黒いボディストッキングで、しかも乳房と股間の部分は丸くくり抜かれた煽情的なものだった。ほぼ全裸と変わらない――というより、いっそう淫らな雰囲気を醸し出している。


 そんな格好で女は腰かけたベンチの上に手をつき、カメラに向かいM字形に足を開いて、自らを晒していた。


 華奢でありながら見事なくびれを持った肢体。ストッキングの合い間から飛び出した両の乳房は釣り鐘型で、女の細身に比して豊かな量感があった。股間を覆う淡い陰毛の中心に、モザイク越しに薄らと赤い裂け目が見える。染みのない色白の肌が、ストッキングの黒でより際立っていた。


 白昼の下――女の姿は妖しく浮き上がって見えた。それは、強烈な違和感とともに。


『私は「A」と古くからの付き合いで、この牝が結婚する前から知っています。しかし「A」との出会いや私との関係などは、このブログのなかでおいおい触れていくことにしましょう。
 今はただ、ここを訪れた貴方に「A」の淫乱ぶりを覗き見ていただき、そして虚飾をはぎとられた牝犬が変態的な快楽に溺れていく姿を楽しんでいただければ幸いです。(砂漠の住人)』


 その下には、さらにもう一枚の画像がある。
 またも同日、同景の写真。
 ちがっているのは女性がボディストッキングまで脱ぎすて、一糸まとわぬ姿になっていることだった。
 いや――そうではない。
 女の頸には赤黒い革の首輪が巻きつけられていた。


 裸で首輪をつけた女は、ベンチの上でつま先立ちになり、カメラに見せつけるように股を大きく広げていた。そんな不安定な姿勢で、女は軽くまげた両の手を、ちょうど胸の横の辺りに持ち上げて見せている。


 先ほどのM字開脚よりもさらに屈辱的な格好――それはちょうど、飼い犬がチンチンの芸をする時のポーズだった。
 陽光がすべすべとした肌をかがやかし、全裸に首輪ひとつの姿を風にさらしながらみじめなポーズを披露している女に、あたかもスポットライトを当てているかのようだった。


 眩々と――眩暈がした。


 和洋はいたってノーマルな性的思考の持ち主である。これまで人並みにセックスを愉しめど、その愉悦はSだのMだのとはまるきり無縁であった。当然、このような変態的で異常な行為を女性に――まして妻に強要したことはない。
 もちろん、その手の写真を見たことはあるけれど、興奮よりも後ろめたさをともなった嫌悪感が先にくるのが常だった。そんな和洋が写真の女性を見てこれほど動揺したのは、恥知らずな行為に耽っている眼前の女が40代の人妻であること、高校生の娘がいること、そして細身の体型や一枚目の写真に見られた清楚な雰囲気がよく似ていることが原因だったのかもしれない。


 似ている――誰に?


 女の顔はモザイクで隠されている。
 和洋はその表情を知りたいと思う。
 羞恥にこわばっているのか。
 背徳的な行為におびえているのか。
 アブノーマルな性の快楽に陶然としているのか。
 それとも――
 まるで、飼い主の命令を上手にこなしては、尾を振り鼻を鳴らして誉めてもらいたがる犬のように、カメラの主に向かって従順そのもののまなざしを送っているのか――。


 牝犬になりきった女は、口に何かの紙を咥えていた。
 そこにはこんな文字が書かれている。


「わたしはあなたのペットです」



 写真の下には、『ENTER』 の文字が光っていた。


 ――――――――――――――――――――■――――――――――――――――――――


「…………………さん!」
「―――」
「お父さんってば!」

 はっと目が醒めたように、和洋は顔を上げた。目の前に璃子のふくれっ面があった。

「何なのよ、もー。ぼうっとしちゃって、さっきからわたしが呼んでるのに返事もしないでさ」
「わるいわるい。ちょっと疲れてるみたいだ」
「あんまり働きすぎなんじゃないの。もうオジサンなんだからね。ちゃんと自分の齢を考えてよね」

 娘の口は悪いが、和洋のことを心配している気持ちは伝わる。逆にいえば心配している気持ちは分かるが、どうも口の悪い娘だ。

「オジサンというなら10年も前からオジサンだったさ」

 苦笑しつつ和洋は、「オジイチャン」と言われるよりもマシか、などと考えた。
 時計を見ると、いつの間に昼の2時を過ぎている。

「ごめんな。腹ぺこだろう? お母さんがお昼ご飯を用意してくれてるらしいから、一緒に食べよう」
「…お父さん」
「ん、何」

 不意に沈んだ声音になった娘を、和洋は怪訝な面持ちで見上げた。
 璃子は大きな二重の目に、何か訴えるような色を浮かべていた。どうしたんだろうと困惑する一方で、和洋は自分のいない間に娘が若いころの妻に驚くほど似てきたことを知った。

「ううん、やっぱりいいや」
「何だ、それ……」
「お昼ご飯食べよ。もうお腹へって死んじゃいそう」

もうひとつの人生 9
kyo 10/27(火) 22:23:00 No.20091027222300 削除
(仁美……)

 この絵のモデルは仁美だ。隆則はいきなりそう確信する。

 表情だけではない。そのやや退廃的とも言える官能味を帯びた身体つき――普段の清楚な姿からは想像出来ない仁美のそれは、夫である隆則しか知らないはずのものだった。

(しかし、どうして仁美が――それになぜ赤毛なんだ?)

「お気に召しました?」

 絵の前で呆然と立ち竦んでいる隆則の後ろでいきなり声がした。受付に座っていためぐみという女である。大きな瞳でまじまじと隆則を見つめるめぐみに、隆則は引き込まれるように尋ねる。

「この絵のモデルは……」
「私です」

 即答するめぐみに隆則は思わず「えっ」と聞き返す。

「でも……」
「私は赤毛じゃないとおっしゃるんでしょう。これはウィッグを付けたものです」

 めぐみは相変わらず隆則の目をじっと見つめながら答える。

「赤毛が多分ウィッグだってことは僕にも分かりました」

 隆則はどぎまぎしながら答える。

「こんな燃えるような赤毛の女が滅多にいるはずがない。それより――めぐみさんとおっしゃいましたか、この絵の女性はあなたとは顔が似ていないように思えるのですが」
「そや、めぐみはんの顔とは違うで」

 隆則とめぐみのやり取りを聞いていた天野も口を挟む。

「僕は椿先生からは、この絵のモデルは奥さんやなくて、恋人やと聞いているけどな」
「それはお酒の席の冗談です。あの人はそんなにもてませんわ」

 めぐみはおかしそうに笑う。

「この絵なんか、女がいかにもセックスのすぐ後といった顔をしているでしょう? 画家がモデルと実際に寝ていないとこんな絵は描けませんわ」

 めぐみはそう言って婉然と笑う。

「こんな大胆な絵のモデルになっていることを知られたくなかったから、顔はわざと変えてもらったんです」
「もう知られてもええんですか?」
「ええ」

 天野の問いにめぐみは頷く。

「10年も裸を描かれているといつの間にか羞恥心はなくなりましたわ。それにいつまでも恥ずかしがってばかりいる年齢でもないですし」
「ふうん……」

 天野はまじまじとめぐみの身体を見つめる。

「どうしたんですか、天野さん」
「いや、あの色っぽい裸がめぐみはんのものやと分かったら、なんや、急に生々しい気分になってきましてな」
「もう、嫌ですわ」

 めぐみは天野を軽くぶつ真似をする。そんなめぐみの姿を、隆則は釈然としない気持ちのまま眺めているのだった。

鎖縛 8
BJ 10/27(火) 01:08:12 No.20091027010812 削除
 年始以来約2か月ぶりに、和洋は東京の自宅へ戻った。

「あなた、お帰りなさい」

 そう言って笑顔で出迎える瑛子を見るのも、同じく2か月ぶりだ。彼女の後ろから、璃子もひょいっと顔を出す。

「あ、お父さん」

 …もはや、何も言うまい。


 居間に戻ると、台所で瑛子がコーヒーを淹れていた。

「あなた、ごめんなさい。こんな時に急に旅行に行くなんて、わがまま言って」

 コーヒーの入ったカップを和洋の前に音もなく置いて、妻ははすまなさそうな顔をした。

「もともと行くつもりじゃなかったんだけど…。連絡のいきちがいがあって、気がついたら参加することになってたの。ほんとうにごめんね」
「いや、いいよ。せっかく仲の良い皆さんと行くんだ。気兼ねしないで楽しんでおいで」

 コーヒーを啜りながら、和彦はウインクして見せた。「なあにそれ」と妻はくすくすわらって、それから「ありがとう」と言った。

「何時に出るんだい?」
「もうあと30分もしたら出るわ。お昼ご飯は作ってあるけど」
「そうか。夕食は璃子とどこかに出掛けるから心配いらないよ』
「ざんねんだわ。せっかく、あなたに奢ってもらえるチャンスだったのに」
「後悔するぜ。今夜は目の玉が飛び出るような金額の店に行くからな」
「あとで璃子から聞いて、悔しがることにするわ」

 和洋よりもずっと若々しい妻だが、そう言って悪戯な表情をした彼女の目尻には、ちいさな皺が浮いていた。しかし、それが妙にセクシーに見えるのが不思議だった。
 きっちり30分後、瑛子は家を出て行った。和洋は玄関まで彼女を見送った。煉瓦色のセーターに水色のスラックス、上から羽織ったベージュのコートがよく似合っていた。「行ってくるわね」
「うん、気をつけて」


 残された和洋は居間に戻り、ソファの上でぐうっと両手両足を伸ばした。
 カップに口をつけると、すでにコーヒーは冷えていた。璃子は最初に顔を見せたきりで、いまは2階の自室で勉強をしているのだろう、物音ひとつしない。
 あの勉強嫌いの子がねえ――と感心しながら、和洋はテレビをつけた。璃子の邪魔にならないよう、音量を下げる。
 うららかな休日。ひさびさの自宅でくつろぎながら、しかし和洋の心はいつの間にかあの日の夜に引き戻されていく。
 あの夜、和洋は「黒い砂漠」を訪れた。


 ――――――――――――――――――――■――――――――――――――――――――


 そのサイトに移動して、まずパソコンの画面上に広がったのは、ただ黒一色の暗景であった。
 その墨のような暗黒の中に、やがて紅い文字が浮かび上がる。


『<黒い砂漠> 〜はじめに〜』

『ここは私こと「砂漠の住人」が飼っている人妻ペット「A」の生態を記録していくブログです。』


 その文字の下には、1枚の写真が貼り付けられていた。

 場所は――どこか小高い場所にある公園だろうか。

 つばの広い薄青の帽子をかぶった細身の女性だ。彼女は薪で作られたベンチに腰掛けていて、その背後遠くには、どこかの街並みが小さく見下ろせる。
 女性は黒のサマーセーターの上から白いカーディガンを羽織り、渋い色合いの臙脂のロングスカートを履いていた。顔全体にモザイクがかかっているので、年齢や顔立ちは分からない。ただ、落ち着いた雰囲気の服装や肩までの長さで綺麗にカットされた髪、スカートの上で上品に組んだ両手の感じが、清潔な容姿の女性を想像させた。

 それはどこからどう見ても、さわやかなスナップ写真にしか見えなかった。



鎖縛 7(修正Ver)
BJ 10/27(火) 00:58:03 No.20091027005803 削除
 串揚げ屋を出ると、酒気で火照った頬に冬の夜風がさっと吹きつけたので、和洋は思わずコートの襟を高くした。

「じゃあ、わたしはここで」

 そう言って駅とは反対側の繁華街に向かおうとする堺を、和洋は呆れた顔で眺めた。

「まだ呑むのかい」
「いや、こっちさ」堺は小指を立てて見せる。「こんなに寒い夜は寂しくってね、どこかの女の肌に温めてもらうよ。あんたはどうだい?」
「……いや、今夜はよしとくよ」
「そうだな、あんたは真面目だし、愛しい奥さんがいるものな。――いや、これは皮肉じゃないんだ」
「分かってるよ」

 和洋が笑顔を見せると、堺もわらって軽く手を振り、そのままどぎつい明かりの方に歩み去っていった。


 地下鉄の窓に映る自分の顔を見つめながら、ふと、「この前、妻とセックスをしたのはいつのことだろう」と和洋は考えた。
 年末年始に少しだけ東京へ帰った時には、璃子の受験のこともあり、それどころではなかった。それ以前――となると、もう半年も前になる。
 苦笑して、和洋は境の「あんたには愛しい奥さんがいる」という言葉を思い出した。その言葉に間違いはない。だが――少なくとも今は似たようなものだぜ。和洋はそう独りごちた。


 天王寺のマンションに帰ると、今日は持っていくのを忘れた私用携帯に、昼ごろ、東京の自宅から着信が入っていた。
 時計を見ると、0時まであと少し。まだ起きているかな、と思いつつ、電話をすると、「もしもし」と愛想のない声で出たのは璃子だった。

「元気かい」
「あ、お父さん」
「お前はいつも『あ、お父さん』だね。お母さんはまだ起きてる?」
「ううん、もう寝ちゃった。今日、お友達の家族が亡くなったんだって。それでお母さん、お通夜に行ってたんだけど、1時間くらい前にすごく疲れた顔して帰ってきたの。すぐにシャワー浴びて寝ちゃったよ」
「ふうん」

 1時間前というと11時ごろか。ずいぶん遅くまでいたのだな、と和洋は思う。よほど仲の良い友達の家族か、それとも場所が遠かったのか。

「今日の昼間、そっちから僕の携帯に連絡があったんだが、お母さんから何か聞いてる?」
「あ、たぶん旅行の話じゃないかな」
「旅行?」
「うん、ピアノ教室の人たちに誘われたんだって。1泊2日の鎌倉旅行。今度の週末に」
「娘が受験だというのに、ずいぶん呑気なんだな。それもこんな急に」和洋は呆れ声を出した。
「まあ、いいんじゃない? お母さんが試験を受けるわけじゃないし、それにずっと家にいて気を遣われるのもなんだしさぁ」

 そう言いながらも、璃子の声はどこか元気がなかった。やはり、受験のストレスがたまっているのだろう。

「――今週末は、お父さん、身体が空きそうなんだ。お母さんはいなくても、東京に帰るよ。一緒に飯でも食いに行こう。それくらいの時間はあるんだろう?」
「無理しなくてもいいよ。お母さんいなくちゃ、お父さんも退屈でしょ。わたしはずっと勉強してるんだし」
「無理してないよ。退屈なのは大阪にいたっておんなじさ」
「わかった。じゃあ、待ってるね」

 娘の声に少し明るさが戻ったことに安心して、和洋は電話を切った。


 一人暮らしの男というものは、概してシャワーだけで済ませる者が多いと思う。しかし風呂好きの和洋は、1日1回は浴槽に浸らないと落ち着かない。
 湯気のたつ浴槽に足を踏み入れる。狭いので四肢を伸ばせないが、それでも身体の芯がじわっと温まっていく感じがたまらない。
 何となく、ビートルズの「When I’m 64」を口ずさんだ。

 ――僕が64歳になった時、
 ――君はまだ僕を愛してくれるのかな?

 あらためて考えてみると、なかなか辛辣な歌詞である。ポール・マッカートニーが10代で作った曲らしい。一度聴けば耳から離れないメロディーはいかにもポールだ。
 今度は瑛子のことを考えた。今日の通夜はまあ仕方ないとして、週末の旅行はどうも妻らしくない。普段の彼女はいつだって家族のことが最優先で、たとえ誘われたからといって、娘が大変な時に旅行など、考えられもしないはずだった。
 浴槽から出て身体を洗う。今夜はずいぶんと冷え込んでいる。和洋はくしゃみをひとつした。

 風呂上りの髪を乾かす合間に、和洋は机のパソコンを起動した。最新ニュースをチェックした後、漫然とネットサーフィンをしているうち、知らず知らずいかがわしいページに飛んでいた。和洋はこんな時、どこか後ろめたい気持ちになって、机の上に置かれている写真を後ろ向きにする。それは3年前の夏、自宅の庭先で妻と娘を写した写真だ。ひまわりの前に立った瑛子が文字通り花のような笑顔を向けている傍らで、璃子が怒ったような照れているような仏頂面をしているのが妙におかしい。

 ふと――
 見ていたアダルトサイトのリンク先に、目が止まった。「素人女の痴態」や「感じすぎた人妻たち」といった猥雑な名前が羅列されている中に、「黒い砂漠」という異質なタイトルが紛れていた。詩的なのか抽象的なのか、ともかくもこの名だけでは中身が判然としない。

 逆に興味を惹かれて、和洋はそのアドレスをクリックした。

もうひとつの人生 8
kyo 10/25(日) 23:54:27 No.20091025235427 削除
(似ている……)

 やや上目遣いの悪戯っぽい目が妻の仁美のものに良く似ているのだ。もちろん仁美は赤毛ではないし、関西に住む画家のヌードモデルなどやるはずもない。他人の空似に決まっているのだが。

 隆則は改めて絵の全体像を見る。やや前かがみになったその女は重たげに垂れる乳房や、房々とした陰毛を隠しもせず、白い裸身を余すところなくさらけ出している。女の頬に羞恥を示す微かな赤みが差していることが、その絵から少女のような清楚さと同時に強いエロチシズムを強く感じさせる。

 モデルの身体は仁美よりは若々しく、おそらく20代後半か、いって30ギリギリかと思われる。

 次の絵に移る。それは同じモデルを使った全身の正面像である。これもヌードだが、こちらは両手で陰部を隠している。女はまっすぐ前を向いてやはり恥ずかしげに微笑んでいる。

(これは……)

 隆則は少し下がって部屋全体を見回す。そこで全部で20枚ほど展示されている絵がすべて同じ赤毛の女をモデルにしたものであることに気づく。

「こういうのは興味がないのかと思ったけど、そうでもないようやな」

 仁美に似た女の絵に目を奪われている隆則に天野が声をかける。

「なかなかの迫力やと思わんか? 俺も絵のことはようわからんが、椿はんの描いたヌードを見ていると、写真では表現できん迫真性のようなものがあるのは感じるで」
「そうだな……」

 隆則は赤毛の女の大胆な裸像に視線を注いだまま上の空で答える。

「ちなみにこれは一人の女の十年間の変化を描いたもんや。一年で2枚、10年で20枚。今回の個展はこの赤毛の女をモデルにした連作が今年10周年を迎えたのを記念したもんや」
「10年だって?」
「古いものから新しいものに、展示順に並べられている。最初の作品がちょうど10年前のものや」

 隆則は改めてそれぞれの絵の下に付けられているプレートを見る。最初のトルソの下のプレートには確かに天野の言うとおり「赤毛の女 1999年夏」という文字が記されている。

 次の全身像の下には「赤毛の女 1999年冬」というプレートが付けられている。絵のタイトルはすべてそんな風に、絵が描かれた時期を示しているのだ。

「最初の絵では女は25、6といったところかな。まだ若くて、男の経験もそれほどないのが絵を見ても感じられる。それが月日を経るにしたがってどんどん変化していくのがわかるのが面白い」

 天野の言うとおり、絵の中の女の身体は確かに少しずつ変化している。最初の頃はどちらかというと堅い身体つきをしているのだが、徐々に全体の線が柔らかくなり、それはまるで青い果実が熟していく過程を見るようであった。

 それにつれて女がとるポーズも大胆さを増し、最初は恥ずかしげに陰部を隠したものもあったのが、中頃からのもの以降は女の象徴であるその部分を誇らしげに突き出しているものさえあった。その頃になると羞恥の箇所を覆う繊毛もすっかり剃り取られ、女の縦割れをくっきりと晒しながら妖艶な笑みを口元に湛えているのであった。

「一番新しいのがこの『赤毛の女 2009年夏』というやつや。10年経ったわけやから女は35、6といったところかな。最初の頃と比べると随分そそられる身体つきになったもんや」

 天野が笑いながら一番端の絵を指差す。その絵を目にした隆則は衝撃を受ける。

 ベッドの上で横たわっている裸の女──情事の後を思わせるその気だるそうな面立ちは、あの二人芝居の夜に妻の仁美が隆則とのセックスの後に見せた表情そのものだった。

鎖縛 6
BJ 10/25(日) 05:00:31 No.20091025050031 削除
 ――第2幕――


 熱々の串揚げを頬張った口内に、きんと冷えたビールが心地よかった。

「どうだこの店、なかなかうまいだろう」

 わがことのように自慢するのは、会社の同僚の堺だ。つるりとした禿頭に愛嬌のある大きな目、そして太鼓腹と、ちょっと見は狸に似ている。今の和洋にとっては、身近にいる数少ない友人であった。

「しかしあんたが大阪にいるのも、あとひと月か――」

 和洋が大阪に単身赴任してから、もうすぐ3年が経過しようとしている。

 その間、不況はなかなか回復の兆しを見せず、家電業界も冷え込む一途で、N電気の大坂支社は依然厳しい状況下に置かれていた。業績改善を期待されて本社から来た人間としては辛い歳月だったが、和洋は精いっぱい声を上げて社内の士気を鼓舞しつつ、現場の声を拾い集めてよりシステマチックな営業形態を構築することに心を砕いた。その甲斐があったかどうかはまだ分からない。種を植えても芽が出るのには時間がかかる。しかし悔いはなかった。それだけ「全力を出しきった」と言えるのも、ここにいる堺の助けがあったからで、だから和洋は目の前の男に心から感謝していた。

「あんたがいなくなると、寂しがる人間がたくさんいるよ」
「そんなことはないさ。うるさいのがいなくなって、ほっとするだろう」

 和洋はにやりと笑って、空になった堺のジョッキにビールを注いだ。

「ちがうんだよなあ」

 ジョッキを乾した堺は、はや目もとが赤くなっていた。この男は呑むペースが尋常でなく早いのだが、酔うペースもまた早い。

「ちがうって、何が」
「あんた、普段おおきな声を出すことないだろう? わたしみたいな生まれつき胴間声の人間がガミガミ言うのと、あんたみたいなもの静かなタイプが大声出すのとでは、響き方が全然違うんだよ。まあ、人徳というものなのかな。それにあんたは根っ子が営業じゃないからか、視野が広い。物事を客観的に見られる。若い者の言うことにもきちんと耳を貸す――」
「今日はいつにもまして酔い方が早いようだね」
「茶化すない。要するに言いたいことはだ、あんたが大阪に来てくれてよかったということだよ。わたしだけの意見じゃない。大勢がそう思っている」

 酔って饒舌になっていることはたしかだったが、それでも真情のこもった堺の言葉に、和洋は気持ちを慰められた。「ありがとう」と心から礼を言った。

「でも、なんだか別れの夜みたいだな」
「はは、たしかに」堺は豪快にわらって、右の掌で汗をかいた額をぴしゃりと打った。それから、妙にしんみりした顔になる。「しかし、あんたにとっては長い3年間だったろう。かわいい奥さんとお嬢さんを残してきているんだものな」

 和洋はわずかに笑みを見せたが、何も言わなかった。というのも、そんなことを言う堺自身は5年前に離婚しており、元妻についていったひとり息子とも、ずいぶん会っていないと話に聞いていたからだ。

「娘さん、大学受験はもう終わったのかい」
「うん、つい先日ね。国公立を受ける学力はまったくないから、関東近辺の私大に絞って受験しているよ。下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる考えでね」

 憎まれ口をたたくものの、和洋の胸には後悔があった。大学受験という節目のイベントを迎えた娘のそばに、ついていてやれなかったことだ。もとから勉強の好きな子ではなかったから無理もないが、今のところ受けた大学はすべて滑り、瑛子の話によれば、かなりナイーブになっているらしい。

 そう、堺が言ったように、3年は長かった――。この間、和洋は休む暇なく働いて、週末になっても東京の自宅に戻れる日は少なかったし、瑛子は瑛子で、和洋が自宅を出てから、ずっとやめていたピアノの教室にまた通い始めたり、スイミングを始めたりと、人が変わったように趣味に打ち込み始めた。『璃子も部活やら友達づきあいやらで家にいないことが多いし、あなたも毎週帰ってこられるわけじゃないから、ね。それにあなたと結婚してからわたし、専業主婦の立場に甘えて、何かにあたらしくチャレンジすることをやめてしまっていたと、最近考えるようになったの。それってやっぱり寂しい人生かなって』とは、当時の瑛子の弁である。
 それはそうかもしれない、と自身、趣味らしい趣味を持たない和洋は思った。だが、彼は自分が働いて、家に帰れば妻と娘が待っているという生活に100パーセント満足していたから、妻の『淋しい人生』という言葉に少々動揺もした。
 とはいえ、瑛子も家にいてばかりでは退屈だろうから和洋も賛成したが、その結果、先々であらたな友人ができ、付き合いも増えたらしく、次第に彼女が大阪を訪れる機会はずいぶんと減ってしまった。

 娘が浪人することなく大学に進めば、この3月に和洋が東京に戻っても、家族全員でそろって生活することはない。わずかな休みに娘が帰省する時を除けば、この先ずっとないのかもしれない。それはもちろん切ないけれど――それでももうすぐにまた、妻とともに暮らす生活を始められることが、今の和洋の支えになっていた。

もうひとつの人生 7
kyo 10/24(土) 08:20:58 No.20091024082058 削除
「ここや」

 天野に連れられて来た画廊は表通りから二筋入った工場や物流業者の倉庫などが立ち並ぶ道路の、古びたビルの二階にあった。

 隆則はビルの外階段を天野に続いて上る。「画廊グリーン」というプラスチック製の表示板の下に「椿圭吾個展」という文字だけのポスターが貼られている。それが天野の知り合いの画家の名前のようだ。

(えらくうらぶれたところだな)

 こんな場所に画廊を開いても、いったい客は来るのか。隆則がそんなことを考えていると天野が振り返る。

「入るで」

 天野はそう言うと扉を開ける。画廊に入った隆則はそこが思ったよりも広く、明るい照明に照らされた内装もまだ新しいことに意外な印象を受ける。

 受付で文庫本に目を落としていた女が顔を上げ、天野を認めると静かにほほ笑む。

「あら、天野さん」
「椿先生は?」
「今日はまだよ」

 女は仁美よりも少し下の年齢は30代半ばといったところだろうか。もっとも先月40歳になった仁美は実際の年齢よりも5歳は若く見えるため、この女も実際の年齢はどうなのかは分からない。

「せっかくお客さんを連れて来たのにな」
「あと二時間ほどで来ると思うけど」
「そんなに待ってられんな」

 天野はそう言うと隆則の方を向く。

「めぐみはん、こちら、昔からの友人の山城はん」

 女は隆則を見つめるとほほ笑み、立ち上がると「はじめまして、椿めぐみです」と言って会釈をする。

「山城です」

 隆則も軽く頭を下げる。めぐみと名乗った女はじっと隆則の顔を見つめている。

「どうかしましたか?」
「いえ……」

 めぐみは軽く頭を振る。

「めぐみはんは椿先生の奥さんや」

 二人を交互に眺めていた天野が声をかける。

「よろしくお願いします」

 めぐみは再び頭を下げる。

「あいにく椿は不在にしていますが、ゆっくり見ていってくださいね」
「ありがとうございます」

 隆則は会釈を返すと、受付とパネルで区切られた展示スペースへと入る。

 壁面には絵画のサイズで20号とか、30号とかいうのか、新聞紙を広げたくらいの大きさの絵がずらりと並んでいる。それがすべて女性の裸体像だったので、隆則はやや圧倒される。

 隆則は一番入り口に近い端の絵に近寄る。それは飾られた絵の中ではいくぶん小さめの、女のトルソを描いたものである。額に垂らした赤く長い髪の間から微笑む裸女の顔を見た隆則の胸に、微かな不安がよぎる。

鎖縛 5
BJ 10/24(土) 03:13:32 No.20091024031332 削除

 いよいよ明日は大阪天王寺のマンションへ引っ越すという日、とりあえず廊下に置いた荷物入りの段ボールを眺めて、和洋は溜め息をついた。

「ちょっと荷物が多すぎるんじゃないか。食器なんか持っていっても、どうせ料理なんか作らないよ」
「私が作るのよ。週末にはちょくちょく行くつもりなんだから。きれいに片づけておいてね」

 朗らかに答える瑛子の声に、和洋はもう一度溜め息をこぼした。今度は苦笑も込めて。

 先日のパーティーに出席した夜から数日、妻はどこか沈んだ様子を見せたり、かと思えば不自然に明るかったりと、妙に落ち着かない様子だった。しかし、この時はもう元の妻に戻っていた。

「明日、荷物を運び終えたら、ベッドを買いに行かなきゃ」
「ベッドねえ。必要なのかな」
「あの部屋の感じだと、布団はおかしいわよ」
「それならダブルベッドを買うか」
「何言ってるの、ばか」
「だって君もちょくちょく来るんだろう?」

 洗濯物をたたんでいる妻の肩を、和洋はそっと引き寄せた。

 時刻は午後2時。璃子は友達と遊びに出掛けて、いない。

 何か言おうとした瑛子の唇を、和洋の唇がふさぐ。そのまましばらく、和洋はじっとしていたし、瑛子も静かに身を任せた。時計の秒針が時を刻む音だけが寂とした部屋に響き、窓から差し込むやや春めいてきた日差しは暖かかった。
 
 瑛子が身を離す。「まだ、昼間じゃない――」。そう、つぶやくように言った妻の、わずかに乱れた前髪に隠された瞳は、悪戯な光をたたえていた。

「いいじゃないか。最後の晩餐だよ」
「なあに、それ」
「君は最高に美味しそうってことさ」

 和洋は瑛子の手を取って立ち上がらせると、そのまま夫妻の寝室へと連れて行った。瑛子も逆らいはしなかった。部屋に入り、またしばし抱き合った後で、二人はむしろ言葉少なに衣服をほどき始めた。
 娘が大きくなってからというもの、夫婦の営みは格段に減っている。まして自宅でのセックスとなると、この数年間でも数えるほどしかしていなかった。それだけにまだ日も高い昼のうち、白くかがやくような裸身があらわになっていくのを見て、和洋は疼くような昂りを覚えた。

「あんまりじろじろ見ないで」

 ベッドに横たわった和洋の顔に、瑛子は脱ぎさった白のブラウスをぱさりとかけた。石鹸のにおいにまじって、なつかしいような彼女の残り香が鼻腔に広がった。
 白い布に視界を閉ざされたままでいると、女の手がそっと下腹部に触れる感触がした。その手は温かみを確かめるような仕草で和洋の肌を撫ぜ、やがて突き立った男性自身を包む。
 不意に、その部分に柔らかい女の息がかかった。次の瞬間、和洋は妻に含まれていた。
 
 セックスでは常に受け身の妻が口を使うことは珍しかった。期せずして、先ほど自身が口にした「最後の晩餐」という言葉が頭をよぎる。もっとも、いま食べられているのは和洋だった。
 付け根のあたりを唇で締めつけつつ、敏感な部分を柔弱な舌先が細やかに伝っていく。淫靡というのとは少し違う、情愛のこもった口技。噴きこぼれる吐息の熱さが、和洋を駆り立てる。
 やがて妻は一度唇を離し、芯の入った肉柱の硬さを確かめるように頬をぴったりと寄せた。それから愛おしむような仕草でその柱をつかむと、ゆっくりと自らをあてがっていった。和洋をくるんだ瞬間、妻のそこは羞じるようにきゅっと収縮した。

「もう目隠しを取ってもいいかな」
「だめよ。見ないで」

 前屈みに身体を倒し、瑛子は和洋の胸に覆いかぶさった。餅のように柔らかな乳房が押し付けられる。小鳥が餌をついばむ感じで、和洋の胸板から唇にかけて瑛子がキスをする。今日の妻は珍しく女豹じみていた。ずいぶんと可愛い女豹だ。和洋の恋女房だ。

 くいっくいっと一定のリズムを刻みながら、和洋を包んだ瑛子の尻が浮き沈みする。
 音も立てず、顔をおおっていたブラウスが落ちる。
 和洋の目の前に、妻の顔がある。とろりと潤んだまなざし。頬だけが林檎のように紅潮し、薄らとかいた汗でひかっていた。

「好きだ」

 前後の脈絡なく、和洋はつぶやいていた。そう告げた瞬間、妻の膣がまたきゅっと収縮するのが分かった。

「君が、好きだ」

 和洋はもう一度言った。瑛子はいやいやをするように頸を振った。しかし和洋を熱くつかんで放さないその部分だけは、まるで痙攣するように幾度も締めつけを繰り返した。
 それは幸福な午後だった。そしてある意味では間違いなく、「最後の晩餐」でもあったのかもしれない。

鎖縛 4
BJ 10/22(木) 00:58:18 No.20091022005818 削除
 パーティーも佳境を迎えたころ、和洋はふと傍らの妻を見て、びっくりした。瑛子は酷く蒼褪めた顔色をしていた。

「どうしたんだ? 気分でも悪いのかい」

 もともと酒の強い女ではないが、しかし今日は申し訳程度にしか飲んでいないはずだった。

「ううん、久々ににぎやかな場所に来たから、たぶん人に酔ってしまったんだわ」

 健気にもにこりと微笑んで瑛子は応じるが、やはり無理をしているように感じられた。

「もう帰ろうか――いや、ごめん。この後にスピーチをしなければならない予定になっていた。それが終わったらすぐ戻ろう」
「気にしないで。でも、ちょっとお手洗いに行ってくるわね」

 あなたはスピーチに集中してね――そう言って、瑛子はまた軽く微笑し、頼りない足取りで会場出口へと歩いていく。ついていってやりたかったが、まさにその時、和洋は名前を呼ばれて、ステージ袖に連れていかれた。


 出番を待ちながら、和洋は先ほどの武仲との会話を思い出していた。

『木内さん、いや、瑛子さんとお呼びしましょうか。ともかく、あなたの奥さんのような有能な部下を持てて、当時の私は幸せな上司でしたよ。これはお世辞ではありません。本当にずいぶんと――楽しませてもらいました』

 妻の旧姓である木内から名に呼称を改め、そんなふうに昔を語る武仲の口元には、薄らとした笑みが浮かんでいた。
 瑛子は何かにはっとしたように一瞬、瞳の黒を大きくしたが、すぐに、『いいえ、当時はご迷惑ばかりお掛けして……まるでいたらない部下でした。部長にはいつもかばっていただいて、本当にありがとうございました』と言って頭を下げた。その声音は普段よりも幾分か低いように感じられた。
 武仲は和洋の方を向いた。

『幸せ者といえば、あなたがそうですな、瀬戸さん。瑛子さんはそのころ、社内の男どものアイドルだったのですよ。そのアイドルをあなたは射止めたんだ。お子さんはいらっしゃるのですか?』
『娘が一人おります。今度、高校1年生になります』
『ほう、それはそれは。さぞ可愛がっておられるのでしょう』
『まあ可愛がってはいるつもりですが、娘もこのくらいの歳になれば憎たらしいばかりですよ』

 おどけたように言う和洋に、武仲は『ふふふ』と小さくわらった。

『けっこうじゃないですか。私などはついに子供を一人も持つことなく、そればかりか数年前には妻もなくしてしまいました。といっても、死別ではありませんよ』

 離婚したのか。口には出さず和洋が思った瞬間、

『奥様とお別れになったのですか?』

 そう声に出したのは瑛子だった。和洋が少し驚いて彼女を見ると、瑛子はさっと顔色を変えて、『すみません。余計なことを言って』と謝った。

『いや、気にすることはない。その通りなのだから』

 武仲は鷹揚な表情でうなずく。その瞳にはやはり、薄らとした笑みが浮かんでいた――。



「皆様、すこしの間こちらにご注目お願いします――」

 和洋は壇上に立った。いくら歳をくっても、営業としてのキャリアを重ねても、スピーチというものは緊張する。やはり自分は技術畑の人間なのだ。大量の視線を意識しまいと、あえて天井のシャンデリアを見つめながら、和洋はそんなことを考えた。


「――業界を取り巻く状況が刻々と変化を迎えているこの折に、私もまた、大阪という新たな土地で、己の力量を試す良い機会をいただいたと――」


 覚えてきた文句を繰り返しながら、盛装した男女の群れ集う華やかな会場を和洋は見渡す。
 ふと――
 会場後方の片隅に、シックな紺のドレスを着た人影が見えた。あれは――瑛子だ。
 その正面に立っているのは――あの大柄な体格は――武仲か? 


「――私どもの仕事は、絶えず売上げとのにらめっこですが、しかしその傍らには常に、創業以来の理念である『幸福のクリエイト』を置きつつ――」


 ふたりは何か話をしているようだが、もちろんその表情までは見えない。
 瑛子の具合は良くなったのだろうか?

 そういえば――先ほどの武仲は妙な発言をしたような気がする。あれは何だったろう。そうだ、彼は部下であったOL時代の妻を褒めながら、こう言ったのだ。――ずいぶん楽しませてもらった、と。考えてみれば、どうにも意味の判然としない言葉だ。


「――それでは、皆様のご健勝を祈念して乾杯いたします。ご唱和よろしくお願いします。――乾杯!」


 「乾杯!」の大合唱。和洋は掲げた杯に口をつけた。その杯を下ろしたとき、もう会場の後ろに武仲の姿はなく、なぜか出入り口の方を向いている妻の背中だけがあった。

春が来た〜〜その後
道明 10/21(水) 00:04:15 No.20091021000415 削除
H県の知事公室に高遠優子がいる
まさに、個性的な有力候補同士の死力を尽くした激しい選挙戦だった

(あの時、私の中に生まれたあの感情・・・・
 不貞な行為を許せる訳がない
 しかし、あの場でそのことを詫びる情けない父親の姿
 そんなものをどうして清純な娘に見せられようか
 それにしても・・・あの人、抜けしぁしぁと
 『私には、お前たちの笑顔が命なんだ』・・なんて)


この部屋の主、新藤知事が秘書の美樹を従えて、会議から戻ってきた


「お待たせして申し訳ありません、高遠さん」

「いえ・・・・それより、私へのお願いとはどのようなことでしょうか?」


「ええ、そのことで今も県議会の会派の代表に根回しに行っておりました
 実は、あなたに副知事への就任をお願いしたい」

「私に?!副知事になれと?」


「はい、あなたは暫く行政経験を積まれればきっと、良い知事になれる
 わたしは、1期限りで知事の職をあなたに譲ります
 そのつもりで、副知事への就任を承諾して頂きたい」

「それは・・・あの時、私があなたの不貞の事実を暴露しなかった返礼とでも?」


「いいえ、違う・・・我が県民は知事に私を選んだが、私はあなたの方が知事に相応しいと思うからです
 良く考えて、ご返事下さい」



優子が新藤の真意を測りかねて、目の奥を探っている
新藤の目には迷いがない・・・本心からそのように思っていると優子は感じた

「はい・・・・しばらく、考えさせて下さい」

「良い、ご返事を待っていますよ・・宜しく」



知事公室から出て行く優子の後姿を見送る新藤
その新藤の顔を美樹が見ている

「知事・・良からぬ事をお考えでは?」

「非情になれぬ不完全な善人は、悪人の餌食になる・・・・鴨がねぎを背負ってやってくるんだ
 私が、いただくよ・・・・あの美味そうな肉を」



新藤が美樹に流し目でウインクをし、抱き寄せる

「何といっても、今回の一番の功労者は君だ・・・君の働きが無ければ完全に負けていたよ」

「有難うございます、それをご理解頂ければ私は・・・・・ああぁ、あん、もう・・・」


「どうするんだい?・・彼氏は?結婚するんだろう?」

「ええ、します・・・・でも、私は知事について行きます・・・どこまでも」


「そうかい・・・私も、しばらくはこの君の肢体で満たされそうだ」

「しばらく?・・だ、なんて・・・そうは、させるものですか・・・・あうぅぅ・・」


「若いのに、なんとしたたかな女なんだ・・君は」

「あん!・・・そう、瑞希さんと沖田さんの事は心配なさらずに・・私にお任せを」

「ああ、頼む・・・・・」


県民の幸せと、夢の実現に向けて、これまで歴代の知事が真摯に執務してきた知事の公室
その神聖なる場所が偽善の気に満ち、男と女の肉の擦れ合う淫靡な音で溢れる・・・・


「ああぁぁ・・・たまらない」

 女が叫び、男が唸る

                        了



鎖縛 3
BJ 10/19(月) 22:14:33 No.20091019221433 削除
 その年度の終わりも押し迫った夜のことだ。

 和洋と瑛子はふたり揃って、N電気の主催するパーティーに出席した。
「大阪かー、大変だね、瀬戸君も」
「こんなにきれいな奥さんとかわいい娘さんを置いて。つらいなあ」
 普段、質素な暮らしをしているので、こんな時こそ豪華な食事に酒を楽しみたいところだが、今度の異動の話を聞いている先輩社員が次々と声をかけてきて、そんな暇もない。こんな時、瑛子は微笑を絶やさず、実に如才なく振る舞う。OL時代の経験がいまだに生きているのだろう。

 と――

 思いがけない人物がいた。
 背が高く、がっしりとした男っぽい体格をしている。年齢は和洋よりもひとまわりほど上のようだが、厳しい顔つきにみなぎる精気はとても若々しい。スマートに着こなしたタキシードの板のつきようが、ちょっと外人のよう。
 フィート本社の武仲専務だ。


 フィートは家電製品販売の大手で、もちろんN電気との関係も深い。営業課に籍を置く身としては、専務の武仲ともむろん面識はある。
 武仲も和洋に気がついて、かるく手を挙げ、グラス片手に近寄ってきた。

「元気そうじゃないか」
「お久しぶりです」
「聞いたよ。今度、大阪へ行くそうだね」
「まあ、3年ほどです」

 言いながら和洋は、隣の瑛子を紹介しようとした。
 だが――
 和洋は驚いた。なぜなら瑛子は明らかに驚愕した表情で、その大きな双眸を開き、武仲を見つめていたからだ。

「驚いたな――」

 その台詞は武仲から出た。「木内君じゃないか」
「あ……」瑛子は夢から醒めた人のように、落ち着かなげな瞬きをした。「お久しぶりです、武仲部長」

 ――部長?

「ははは、瀬戸君が混乱しているようだ。――説明しよう。私は昔、別会社に勤めていて、中途で今の会社に引き抜かれたんだ。瑛子さんは前の会社で私の部下だったのだよ」武仲はふっと視線を瑛子の左手に移し、そこにきらりと光る指輪を見た(なぜかその時、瑛子は動揺したような仕草で、右手で隠すように指輪に触れた)。「退職後に結婚したというのは風の噂で知っていたが、まさか君のワイフだったとはね」

 武仲は感慨深げに言った。

春が来た 98
道明 10/19(月) 19:52:06 No.20091019195206 削除
壇上でじっと見つめ合う、父と娘
その姿は、娘を持つ父親なら一度は経験している
穢れを知らない娘との、現実の父親との対面だ
此処に来て、新藤に動揺が走る
この愛娘の清純な感性を嘘で誤魔化せるものではない


(・・・この娘と私はそんな絆でつながっている)


たとえ、聴衆は誤魔化せたとしても・・・・父娘の縁が切れる!


(・・・この娘をそんな女性に、私が育ててきたのだ)




不思議だ、この性魔、怪物が娘の発した言葉で固まっている
そして・・・・・・・・

(・・・・ふぅ・・これまでだなぁ・・・・少なくとも、真実を話し謝罪すれば
 この娘との縁が残る可能性はある・・・・みんな、すまない、それしか・・ない)



新藤の周囲の空気が落ちついてくる


「・・・・すまなかった・・・・・私は」


会場にいる全ての者が、父娘の対話に耳を澄ます
誰もが、これまでの流れと新藤の雰囲気で、父が発する次の言葉が何であるか確信していた

新藤とは逆に、優子は何故か苛立ち、動揺している・・視界にはこの父娘しか映らない

(私は・・私は・・何て酷い事をしていたのか!
 あの仲の良い、幸せな父と娘の仲を裂く・・・私が見たあの美しい父娘の仲をこの私が・・)



優子の心の中に、これまでの自分ではない新しい自分が生まれた

(駄目、駄目よ・・本当のことを言っちゃ駄目・・・・お願い!お願いだから・・)


新藤は意を決している
話し始める瞬間、優子を振り返りじっと目を見つめた
そして・・・

「・・私は、自分の選挙のために、お母さんやお前たちを利用した
 相手候補の高遠さんが持っていない、夫婦や親子の幸せな家庭を見せつけようとした
 これは、卑劣な行為だ・・・・私は男らしく、高遠さんと同じ条件で戦うべきだった
 そんな行為の報いがきた・・・みんなを苦しめてご免よ・・・・・許してほしい」


静かだが、低い落ち着いた口調で話す言葉は聴衆の心に染みる


「いいかい?・・・よーく聞いてほしい
 神に誓って、私はお母さんを泣かすようなことはしていないし、これからもしない
 私には、お前たちの笑顔が命なんだ」


会場にいる新藤の支持者はもちろん、高遠候補の支持者からも感動の泣き声が漏れる
真実がどうであれ・・・全ての者はこれでいいと思った


壇上で優子が新藤に歩み寄り、手を差し延べる
二人は無言でしっかりと握手を繰り返した
 


拍手で沸き返る県民会館の前に、黒塗りの車が主人を迎えに来た

「幹事長・・・首尾は如何でした?」

「うん・・・上々だ!
 高遠優子君は俺が見込んだとおりの候補だった
 相手の新藤候補は・・・・・・いずれ、我々の強敵になるだろう
 ふん・・面白いじゃないか・・この国は、まだまだ切磋琢磨が必要だよ
 ・・・反対に、彼を俺の跡継ぎにしてもいいなぁ
 きっと、彼は、俺を超える・・・・それを、見てみたい」

「ほうぅ・・・それほどの人物ですか?」

「うん・・・・彼は全ての人を味方にできる不思議な魅力をもっている
 一つ間違えば大変危険な人物だがなぁ・・・・だが、今のような混乱した社会では
 そんな、強い神がかりなリーダーを国民は待ち望んでいる
 ・・・・・・・・ああ、そうだ・・・これは厳命だぞ
 今回、取得した彼に関する資料は写真、ビデオなど全て破棄しろ!いいな!
 それが・・・我が国のためになる・・・・・新藤君は生かすんだ!」

・・・・・・この男にも、真の春が少し見えて来た

               完

春が来た 97
道明 10/18(日) 23:03:34 No.20091018230334 削除
会場入り口の扉付近に立つ妊婦にむかって新藤は叫ぶ


「無理をするな!瑞希君・・・お腹の子に、もしものことがあったら、ご主人にお詫びのしようがない!」

「いいえ、私が信頼している上司が悪人扱いされ、お腹の子の出生に疑惑をかけられているんです!黙ってはいられません
 間違いなく・・・このお腹の子は私と主人との大切な第2子、この子の名誉のためにも疑惑を晴らしておかなければ・・・母の、母の務めです」


気迫のこもった母親の叫び
この叫びを遮ることのできる者など、この会場に存在しない
真実はどうであれ、母なる女性が我が子の父を夫であると宣言したのだ


優子のシナリオは突然の登場者に狂い始める

(瑞希さん・・・あなたは間違っている
 新藤候補のしたことを許してはならないのです・・女性として、妻として絶対に!
 どうして?あなたは妻の義心、母の真心まで売ってしまうのですか!)



予想外の展開にも、自立した強い女性のプライドが優子を怯ませたりしない


「そうなんですか・・・新藤候補とは不貞はしていないと仰るのですね・・・」


優子の視線は瑞希のその後方・・・・涼しい眼をして立っている美樹に向けられている
身重の瑞希をこの場に連れ出せたのは・・・・美樹!美樹からの働きかけ?
そのように優子は直感した・・・・・・


(少しずつ見えてくる・・・私の目の前に立っている男が、情を通じた女たちの女人柵で守られている
 ・・・・・許せぬ!この男・・・・財力と権力で女を操る!!)



「新藤候補・・・助かりましたね
 あなたがお答えになる前に、瑞希さんが否定された
 瑞希さん・・・早く病院に戻られて、養生してください
 あなたの将来にとって、本当に大切な・・大事な赤ちゃん・・・・そうでしょう!
 でも、女性として一番大切なものを失くさないように・・・お願いしますね」


瑞希が美樹に支えられ会場を去っていく
優子は青年が持ち込んだ、写真や記録ビデオを見ている
しかし、この場ではその内容を明かすことは、さすがにできない・・・・


お腹がでているとはいえ、瑞希の一段と艶を増した肢体からは周囲にえも知れぬ色香が漂う

(瑞希・・・ああ、瑞希・・よく言った・・・これで私は勝てる!)


残るは・・・・沖田と遼子のこと


「新藤候補!・・・・あなたは卑怯な人です
 自分の口からは何も言っていない・・・そんな男なのですか?
 もう一つのことは、あなたのご家族にもわかるようにお話し下さいませんか
 改めて、お聞きします
 あなたは知事になるために、、愛人の女性を部下を結婚させようとしたのですか」



新藤の愛娘が顔をあげる
目には涙が光っていた


「お父さん!・・私の好きなお父さん!お願い、お母さんに本当のことを話して!」


(えっ!なに・・・・お嬢さん・・・私は、私は・この人の心をこんなに苦しめていた・・ああぁぁ)


 この愛娘は清純で穢れを知らない・・・・優子の言葉に娘の感性が共鳴しているのだ
 新藤の娘の心からの叫びに、優子の目も涙で曇った

見えない檻 30
生き物係 10/18(日) 22:17:34 No.20091018221734 削除


章子は田舎から戻ると久美子の部屋をお土産をもって訪ねた。

社宅では一番の年上と言うこともあり、章子は社宅に入って以来、色々と相談をしている。
挨拶をする娘たちの姿、仕草をみて章子は疑問に思ったことがある。

そのことを章子は久美子に聞いてみる。
言葉を詰まらせながら久美子は語ってくれた。

飼育の始まった頃、飼育係りの若林は突然男たちを連れてやってきた。
久美子は慌てて子供たちを部屋に遣るが、男のうち幾人かはお土産を持って娘たちの部屋に行った。

久美子は居間の絨毯の上で全裸にされ飼育されている事が多かった。
声が聞こえるようにと居間の戸は全部開けっ放しになっていた。
子供対の手前、声を出すまいと堪えている久美子を男たちは逝く寸前で止めるを繰り返しをされた。
半狂乱になって乱れる久美子に若林は冷たく言われた。

「感じたら声を出せばたっぷり逝かせて遣る」

一人は乳房を弄りながらもう片方の乳首を噛んでいる。
もう一人は股に顔を埋めてあそこをしゃぶっている。
腰を浮かせ男の舌が膣の奥に受け入れ易くしているのを確認した男は舐めるのを止めた。

我慢しきれなくなった久美子は遂に求めるための声を出してしまった。
一度歯止めが外れると快楽の為なら平気で声を出すようになる。

正常位で犯されながら久美子は男との腰の動きに合わせて体を密着させ嬌声を出していた。
膣の奥まで突かれた久美子は激しくのけぞって逝った。

「嫌ぁぁ凄い〜お願い〜もっとああぁ〜逝く」

久美子が逝くと同時に男もたっぷりの精子を膣の奥に放った。
離れた男に変わって次の男が覆いかぶさってきた。
前の男の精液を掻き分けながら硬くなった男のものが挿入されます。
羞恥のタガの外れた久美子は感じた声をあげ子宮の奥深くの射精を求めます。
飼育係りの若林に仕込まれた言葉をオウムの様に繰り返しています。

「出してぇ〜お願い〜欲しい〜嫌ぁやめてぁ〜逝く」

男が大量の精を子宮の奥に発すると同時に久美子も逝った。
久美子の膣から流れた男の物がシーツを汚した。

ふと気がつくと夫のベッドで男に肩を抱かれながらバスタオル一枚で久美子を見ている視線に気づいた。
声を上げようとする久美子の口を男が唇をかさねてふさいだ。
舌が久美子の舌に絡みつく、舌の根まで吸われた久美子は体を大きく反らして感じてる。
甘い声だけが部屋の中に響いている。

体を起こされた久美子は後ろから乳房を揉まれ首筋を強く吸われ赤い痣がつけられていく。
夫のベッドの上では久美子と同じことが行われている。
バスタオルを取られた裸体にキスマークが刻みこまれていった。

仰向けになった男の硬くなったものに久美子は膣口にあて腰を沈めて行く。
少しづつ久美子の中に隠れていった。

久美子が横を見ると夫のベッドの上で躊躇いながら男に跨って挿入をしていた。
半分まで入った所で一瞬戸惑って久美子を見たが意を決したように腰を沈めた。
男に言われるまま腰を浮かしたり沈めたりしているうちにスムーズに動くようになっていった。少しづつ感じた声を出した。

気づくと久美子も腰を激しく振って男が子宮の奥に出して欲しいとお願いをしている。
下から強く突き上げられ久美子は男と一緒に逝った。

夫のベッドの上の二人もほぼ同時に逝った。

それ以降夫が家に居る時も平気で飼育をするようになる。
夫の目の前で平気で久美子を飼育するのである。
久美子を夫の前の椅子に座らせ服の中に手を差し込んで愛撫をするのである。
ブラウスのブタンを外しブラの中に手を入れ乳房を揉だりスカートのファスナーをさげ尻からあそこを撫でたりする。

首筋胸にも平気でキスマークをつけていく。
拒否をせず甘んじて受ける久美子を夫は汚いものを見る眼でにらんでいた。
久美子は感じると声を出すように飼育をされているので仰け反りながら声をだした。

夫幸一が自分のベッドに腰を掛けて久美子の様子を見ている。
うつぶせにされ高く腰を突き出し硬い逸物を受け入れて久美子は乳房を揉まれていた。
男が深くまで挿入しやすいように腰を動かし一匹の牝と化した。

夫幸一はそんな久美子に嫌悪を催しながらも何ヶ月もしていなにので勃起していた。
幸一の横に誰かがもたれて来た。黒いガーターベルトにストッキングである。
無意識的に幸一は押し倒していた。
激しいキスを繰り返し首筋から乳房を愛撫していく、あそこに触れると濡れている。
体中についている無数のキスマークと噛み痕を見て幸一は更に興奮する。
自分もと重ねる様につけていく。一つつくたびに体を反らせて声を上げる。

遂に正常位で幸一は挿入をした。首に手を廻し腰を幸一の動きに合わせている。
久美子は唇を噛締めて涙を流しながら見ていた。
幸一が激しく突いて子宮の奥深くで逝った。

久美子もそれを見ながら腰を大きく振って逝った。

久美子は章子に泣きながら語った。

「貴女の感じたままよ。三年前から・・・私達もう駄目」

それを聞いていた章子は思いっきり久美子の頬を叩いた。

「何弱気な事を言ってるの。いい?私達の夫なんか妻の私達が居なければ唯の地採の社員よ。
誰が偉くしてやったと思ってるの、私達よ。
久美子さんもそれを肝に銘じて強くでなきゃ、解った」

久美子は泣きながら頷いた。

もうひとつの人生 6
kyo 10/18(日) 21:58:34 No.20091018215834 削除
「お待たせ」

 隆則の姿を見つけた天野が片手を上げながら近づいて来た。

「と言われても別に待たしてへんな。ちょうど19時や」
「相変わらず時間に正確だな。天野の職業じゃ珍しいんじゃないか」
「サラリーマン時代の癖が抜けへんのや」

 天野はちょび髭の、どこかコメディアンを思わせる顔をほころばせる。隆則の昔からの友人である天野は大学時代に漫画サークルに所属し、在学中から時々商業誌に作品を発表したこともある。

 一時はプロを目指したこともあるが、結局メジャー誌でレギュラーを持てるほどの運と実力はなかったようで、二年留年したあげく広告代理店に就職した。しかしプロになる夢は捨てきれず、それまでの少年漫画から青年漫画へ方向転換し、いくつかの雑誌に継続的に掲載されるようになった。

 そこで天野は5年前に思い切って脱サラし、今はコンビニ売りの風俗誌を中心に作品を発表している。

 従業員300人の会社で社長に次ぐポジションにある隆則とは住む世界が違ってしまったが、隆則はかえって天野が脱サラした後の方がよく付き合うようになり、関西に出張するたびに尼崎に居を構える天野と飲むのが習慣になっている。

 童顔のせいで髭がないと相手から軽く見られるという理由で生やしているそうだが、天野にとって髭は自由業の象徴でもあるようで、似合わないから剃れと言っても聞き入れない。

「まだ早いな。飲みに行く前に面白いところへ連れていったるわ」
「面白いところって?」
「この前小説の挿絵の仕事で知り合った画家の個展や。といっても堅苦しいもんやない。エロ小説の表紙になるような人やから滅法色っぽいで」
「ふうん」

 天野の言う「エロ小説」の文庫本や新書は毎月結構な数が出版されていることは隆則も知っている。どれも一応写実的な中にも、男にとっても妄想の対象となりやすいように、胸や尻が強調されているのが特徴である。

 隆則も若いころは官能小説を読んだこともあり、購入のきっかけが扇情的な表紙絵だったこともあるが、基本的にはいかにもステレオタイプの女性を描いたそういった絵にはあまり関心がなかった。

「あまり興味がなさそうやな」

 そんな隆則の気持ちを見通したように天野がニヤリと笑う。

「まあ、話の種やと思って一緒に来いや。ちょっと変わった趣向のある個展やからな」
「変わった趣向? いったいどんな趣向だ?」
「それは行ってみてのお楽しみや」

 そう言うと天野は隆則を先導するように歩き始めた。

鎖縛 2
BJ 10/18(日) 04:31:33 No.20091018043133 削除

 和洋はN電気に務めている。
 もともとは技術畑の人間であったのが、中年を超えてから営業の管理職にまわされた。本人としては、ずっと新製品開発の現場に携わっていたかったのだが、会社の命令では仕方ない。
 仕方ない――のだが、しかし2月の人事で大阪への異動が言い渡された時には、さすがに渋い顔になった。
「3年したら、本社に戻すから。今、大阪支社が業績悪化で大変なのは知っているだろう? 会社としては君の手腕に大変期待をしておるんだ」
 人事の上役からは、同情を込めた口調でそう言われた。
(3年か・・・)
 長いな、と和洋は思う。
 春からは璃子も高校生になる。これからいよいよ成長し、やがては親元から離れていく前の時期に、一人娘と一緒に過ごせないというのは、人生の大きな損失に感じてしまう。

 その前に忘れられてしまうかもな――

 冗談混じりに考え、和洋は誰にも見られないように、くすりとわらった。


「3年は長いわね」

 和洋の報告を聞いた瑛子は、すっと眉を寄せて考え込むような表情をした。
 異動を言い渡された時は娘のことばかり考えたが、思えば結婚して16年、妻と離れて暮らしたことはない。一緒に寝起きすることが自然になりすぎて、この妻とも離れて暮らすことになることに思いがいたらなかった。
「璃子も高校生になるし、大変な時期に迷惑を掛ける」
「あなたが謝ることじゃないわよ」瑛子は少し怒ったような声で言い、それから無意識じみた仕草で和洋のネクタイにそっと触れた。
 次に顔を上げた時、瑛子はわらっていた。
「迷惑なんかじゃなくて…。ただ、あなたが気の毒なのと、わたしが淋しいだけ。もちろん璃子も」
 とっさに言葉が出てこない和洋に、瑛子はすっと背伸びして顔を寄せ、軽く口づけた。それからもう一度、照れたような笑みを見せて、ぱたぱたと台所へ戻っていく。

「うわーラブラブー」

 ふと背後から声がして振り向くと、璃子がバスタオルで髪を拭きながら、にやにやとした悪戯な顔で立っていた。
「お前、見てたのか」
「見てたよ。――あ、しまった、携帯持ってたら写メ撮ったのに」
「何言ってんだ」
 あきれ声を出す和洋に背を向けて、璃子はぶらぶらと居間に向かいながら、「でも淋しいなー。お父さんがいなくなるなんて」と、すねた子供じみた口ぶりでつぶやいた。

「いなくなるわけじゃない。週末にはちょくちょく戻ってくるさ」
「わたしも大阪に遊びに行っていい?」
「いつでも。お母さんと一緒に来なさい」
「それはダメよ。ラブラブなふたりの邪魔したくないもん」
「ばか」

 舌打ちしつつも、和洋の胸にはじんわりと温かいものが湧いていた。

鎖縛〜さばく〜 1
BJ 10/16(金) 01:19:13 No.20091016011913 削除

 居間に入ると、コーヒーの香りが鼻腔をくすぐった。
 朝の香りだ。
 和洋はあくびをひとつして、ソファに身体を沈めた。

「寝ぼすけさん。まだ二日酔いが残ってるの?」

 ブラックコーヒーの並々と入ったカップをテーブルに置きながら、妻の瑛子が呆れたように言った。
「年々、身体がきつくなる。もう歳だな」
 苦虫を噛み潰したような顔をして、和洋はカップに口をつけた。
「最近、そんなこと言ってばっかりね」
「他人ごとじゃないぜ。僕が歳をとれば、君だって同じだけ歳をとっていく」

 言いながら和洋は、それでもこの妻に関しては歳月の進みが遅いと感じている。白のTシャツに薄青のスラックスというシンプルな装いの内側にある肢体は、出会った頃と同じまま、すらりとしている。

「そうね。でも、あの子が大人になるまでは、お互い、元気でいましょう」

 瑛子がふっとした笑みを見せたその瞬間、まるで計ったように、娘の璃子が階段を駆け下りてくる軽やかな足音が響いてきた。和洋と瑛子は一瞬同じように音の近づいてくる方を見て、それから顔を見合わせて何となく笑った。

「あーもう、髪くしゃくしゃでいやんなる。お母さん、きょうは朝ご飯いいよ。食べる時間ないもん」

 寝起きのむくんだ目を不機嫌に細めながら、璃子は居間に入ってきた。「あ、お父さん、おはよー」
「おはよう」と応えながら和洋は、「この娘は毎朝、おれを見るたびに『あ、お父さん』と言うな」と思った。

 今年、中学3年生。中高一貫校に通っているため、最上級生とはいえ呑気なものだ。柔らかな黒髪とぱっちりした目は、母親似。寝起きの悪さは父親譲りである。

「何言ってるの。ダメよ、朝食摂らないと、頭働かないんだから」
「頭働いてたって、どうせ成績は変わんないよ」

 憎まれ口を叩き、璃子はぱたぱたと洗面所に消えていく。

「何よ、髪くらいで大騒ぎしちゃって」
「君だって若い頃はああだったろう」
「何よ、お爺ちゃんみたいなこと言って」

 いけない、怒りの矢がこっちにも飛んできた。


 瀬戸和洋は46歳、妻の瑛子は44歳である。
 二人の出会いは今から16年前にさかのぼる。かといって別に派手なドラマがあるわけではない。当時、瑛子はOLをしながら趣味で書道教室に通っていて、その師範が和洋の叔母だったのだ。「いい子がいるから、紹介してあげる」と叔母に言われ、なかば嫌々会いにいったのが、その日のうちに惚れてしまったのだから、和洋は単純な男である。
 瑛子の方はそれほど単純ではなく、当初は和洋との付き合いに消極的だった。お調子者の叔母は、自ら二人をくっつけようとしておきながら、「あの子、あんなに綺麗で性格もいいのに、彼氏がいるって話を聞いたことがないのよ。たぶん昔、大失恋したのね。あんたも大変ねえ」などと無責任なことを言った。
 しかし、和洋があの手この手を使ってデートに誘ううち、次第に距離は近づいて、堅かった表情もいつしかするりとほぐれ、瑛子は柔らかな笑みを見せるようになった。
 その笑顔に、和洋はまた惚れた。

 出会って1年後、二人は結婚した。翌年には娘の璃子が生まれた。当時、和洋が務めていた会社が倒産したこともあって、決して順風満帆の船出ではなかったが、夫婦はともに歩んできた。出会いの頃、至極おとなしかった女は妻になり、母になって、いつの間にか気の強さもたびたび見せるようになった。そのことにも、和洋は満足していた。




春が来た 96
道明 10/14(水) 23:08:02 No.20091014230802 削除
高遠優子候補が語り続ける
それはまさに、聴衆を前にして清楚で誠実な美人キャスターの真骨頂を発揮した瞬間だ


「昨夜、ひとりの若者が情報を持ち込んできました・・・許せぬと」


会場は水を打ったように静まりかえり、優子の次の言葉を待つ


「その若者も、決してまともな生き方はしていません
 しかしそれは、恵まれない家庭環境で育ち、生きるためにヤクザな世界へ入り込んだもの
 その彼が、あなたは偽善を装い自分の家族までも騙し、悪魔の所業を重ねていると」


「ふううう・・・・・・」


新藤の額に汗が滲む



「あなたは、部下であった秘書の人妻女性を妊娠させたのですか?
 あなたは、愛人であった女性を忠実な部下に引き合わせ、結婚させようとしたのですか?
 そんなあなたが、知事になってどのように県民の真の幸せを実現するのですか?
 どうなんですか・・・・新藤候補」



新藤の愛する家族の目の前で、優子は心を鬼にしてこの男の仮面を剥ごうとしていた


「私は、私は・・・・そんなこと・・」


「していないと言うのですか!・・・新藤候補
 彼には師匠と呼んでいた親代わりの老人がいました
 社会からはみでた人生を、肩を寄せ合って生きてきた二人
 筋違いとは言え、敵討ちだと言っていましたよ・・・新藤候補」



会場に沈黙が流れる
新藤の妻は優子を睨みつけ、今にも泣き出しそうな娘をこの場から引き揚げさせようとした


「お父さん・・・・・そうなの?本当にそんなことを?」

愛娘の一途な視線が新藤の胸を突き刺す



「お父さん!お父さん!否定しないの?」

「あなた!娘のために何か言ってあげて・・・ねぇ」



会場の空気はより重く淀む
新藤は意を決するように閉じていた目を、妻と愛娘に向ける


「すまない・・・・私は職場でのことを家庭では話したくなかった
 公務とはいえ、人の心を傷つけてもしなければならない事もある
 私は、過酷な任務を部下に課し、酷い目にあっているその部下を救うことができなかった」



その時、会場の入り口の扉が開く


「いいえ!助け出してくださいました・・・・
 この激戦の選挙戦終盤で不利な立場になるにもかかわらず、暴力に屈せず・・あなたは!
 私は、そんな・・・あなたを信じてずっと待っていました」


会場にいる全ての者の耳に、女性の透き通った声が届く

見えない檻 29
生き物係 10/12(月) 09:46:28 No.20091012094628 削除



こうして章子の歓迎会と悦子の送別会は終わった。

博文が本社に勤務になってから始めての盆休みである。

本社の課長以上は帰省の場合、乗り物の手配を本部で準備をするので博文も新幹線を手配してもらった。

夫の実家に帰省した章子に同じ職場にいて今はあの憎らしい上司の妻の智子から「会いたい」と電話が有った。
章子は会いたくはなかった。
支店に勤務中は夫婦に散々嫌がらせをされ半分ノイローゼに章子はなって病院にかかったこともあった。今更何をと思っている。

昔、勤務していた会社の近くの居酒屋で待ち合わせをした。
智子と昔の仲間何人かが待っていた。
乾杯乾杯を繰り返しドンチャン騒ぎをして昔話に花が咲きお開きになった。
帰り際智子が話があると言うので喫茶店で酔いを醒ましながら話をした。

智子の話によると、夫が首になるかもしれないと怯えていると言う。
どうも話の内容では本部の人間に失礼な事をしたと言うのである。
そのときに章子が一緒にいたので仲を取り持って欲しいと言うのである。

章子は直ぐにピンと来た。あのホテルでの榊の一言だと気がついた。
何とか彼女の話を聞くだけ聞いて、直ぐその後上司に電話をして会う約束をした。

ホテルで待っていると上司が来た。
青い顔をした上司は章子に榊の怒りを何とかして欲しいと頼んだ。
子供がまだ小さいので首にだけはなりたくないのである。

こんな下衆な男に博文がひどい目に遭わせされていたかと思うと腹がたってしょうが無かった。
困らせてやろうと下着のつけていないミニの奥を見せながら組んだ右足を上司の前にだした。
『膝まづいて爪先を舐められる』心の中で舌をだして蔑んだ眼で見ていた。

突然上司は床に座ると、章子のハイヒールを脱がしストッキングの上から足の親指を口に含んだ。章子の体を電流が走ってあそこが濡れてくる。

上司の告白は章子の自尊心を十分満足されるものであった。

「昔から章子さんの奴隷になりたかった。章子さんが入社したときからずっと思ってました」

章子がガーターからストッキングを外し上司はそれを脱がすと生足を親指から一本一本舐め始めた。
爪先から舐めていった上司は太腿についた無数の赤い痣とキスマークを見て愕然とする。
これがあの憧れていた清楚だった章子かと。

「つけてみたい。貴方の愛した印を私の体に刻んでみたくない」

「はい、お願いしたいです」

上司は言われるままに章子の服を脱がして体中に刻み込まれた無数の痕を見て更に驚く。

べッドの上で上司は章子の体に情痕を刻んで打った。
キスマークや歯形をつける事で上司の章子という錯覚に陥っていた。

裸になった上司を仰向けに寝せ章子は上司のものを舐めている。
硬くなった逸物を咽喉の奥まで銜えた。
激しくしゃぶって逝きそうになる上司に章子は恫喝をする。

「我慢しなさい。じっと我慢したら榊に口を利いてあげるから」

上司は我慢汁を漏らしながら耐えている。
そろそろ限界と思った章子は跨って挿入をした。

挿入をしながら榊に上司のことを聞くとそんな話があったかと首を傾げていた。
話を聞いた章子は上司に解決したと伝える。
安心した上司が下から突き上げて射精をしようとしているのを感じたので意地悪をしてみる。

「智子さんにこのこと言おうかな?」

焦った瞬間上司は章子の中で逝った。


朝まで上司を帰さずに情交を重ねた章子はその足で智子を訪ねた。
上司の首の話は無くなったと智子に伝えながら自慢げにキスマークのついた胸から首筋をワザと見せ付けた。
『あなたの夫がつけたのよ』章子の目は語っていたのを智子は見逃さなかった。

唇を噛んで下を向く智子の後ろから抱きつくと章子は耳元で言った。

「聡子さんの夫が私に首筋にこうやってつけたのよ」

透き通るほど白い智子の首に章子はキスマークをつけた。
智子は抵抗が出来ずにされるがままであった。
逆らえば夫の仕事が・・それだけは避けたかった。

帰ってきた上司は章子たちを見て驚いていた。

章子は何も言わず、智子の前に足を出して見せた。
突然上司は足の前にしゃがむと章子の足に愛撫を始めた。
勝ち誇ったように章子は二人に言った。

「約束を守って頑張って偉くなってね。博文は絶対に帝都の上に上がるから。
智子さんも夫の尻を叩いて頑張らしてね」

もうひとつの人生 5
kyo 10/11(日) 18:23:25 No.20091011182325 削除
(綺麗な肌だ――雪のような白さというのはこんな肌を言うのか)

 ゆかりのうなじから胸元のあたりまでの肌の見事さに、隆則は感嘆の念を抑えることができない。

 隆則は焦る気持ちをぐっと堪えながら、ゆかりのブラウスを脱がしブラジャーのホックに指をかける。小さな音がしてホックが外れ、やや小ぶりの乳房が顔を出す。

「ああ……」

 ため息のような声と共に、白い肌がほんのり桜色に染まる。そっと乳房に触れるとゆかりの裸身が電流に触れたようにブルッと震える。

(この肌が――この身体が俺だけのものなんて――信じられない。まるで夢を見ているようだ)

 隆則はゆっくりとゆかりの乳房を揉み上げる。手のひらに伝わるゆかりの体温が徐々に高まってくる。隆則はピンク色をした乳首に接吻するともう一方の手をそっと伸ばし、ゆかりの股間に触れる。

 ゆかりもすでに興奮しているのか、パンティの生地は心なしか湿っている。パンティを降ろそうとした隆則の手をゆかりが押さえる。

「駄目よ……」

 ゆかりは隆則の目をじっと見つめながら首を振る。

「どうしてだ」
「駄目、結婚してからでないと」
「結婚するよ。そう言っただろう」

 そうだ、俺はゆかりと結婚する。そう決めたはずだ。確かゆかりも承知してくれたはずだ。

「駄目、出来ないわ」
「どうしてだ」

 ゆかりは俺を嫌いなのか。いや、嫌いだったらこんなことを許すはずがない。ゆかりはそんな軽い女じゃない。

「どうして駄目なんだ、ゆかり。言ってくれ」
「だって……」

 ゆかりは哀しげな視線を向ける。

「隆則さん、もう結婚しているじゃない」
「えっ?」

 その言葉とともに、ゆかりのから一気に現実感が消えていく。身体が浮き上がるような感覚──頼りなく崩れていくゆかりの白い肌──。

「ゆかりっ。待ってくれ」

 隆則はベッドの上に起き上がる。どうやら自分の声で目が覚めてしまったらしい。

(またあの夢か……)

 仁美が実家に帰っていて良かった。寝言で昔の女の名前を呼んだりしたら大変だ。

 しかし、ゆかりと別れてから20年も経つというのに、まだ俺は忘れられないのか。

(いや……)

 夢はますますリアルになっていくばかりだ。まるで夢の中でもうひとつの人生を生きているように。

もうひとつの人生 4
kyo 10/11(日) 18:22:29 No.20091011182229 削除
「これはみんな千鶴が作ったのか?」

 食卓に並んだ焼き魚、肉ジャガ、胡瓜の浅漬けなどを眺めた隆則は感嘆の声を上げる。
「当たり前じゃない。私じゃなきゃ誰が作るの」
「大したものだ。これならいつでもお嫁に行けるな」
「十三歳じゃお嫁になんか行けないわよ。結婚できるのは十六歳から」
「よく知っているな」
「もう、すぐに馬鹿にするんだから」

 千鶴は唇を尖らせる。

(母親似だな)

 最近急に大人っぽくなった娘のそんな顔を見ていると、隆則は改めて思う。目の大きなはっきりした顔立ちは、いつか仁美の実家で見せられた、子供の頃のアルバムの妻の姿に良く似ている。

(まあ、仁美に似て良かった。俺に似ていたら美人とは程遠い顔になっただろう)

 隆則は思わず苦笑する。

「何を笑っているの、お父さん」

 千鶴が缶ビールのプルトップを引くと、隆則のジョッキに注ぐ。

「お、サービスがいいな」
「いつもお母さんがしているでしょう。お母さんが遊んでいるからって、お父さんに不自由な思いをさせるのも可哀そうだわ」
「お母さんはお父さんの代わりに帰省しているんだ。遊んでいるわけじゃないぞ。ちゃんと京都の山城の家にも顔を出してくれている」
「それにしては楽しそうだったわ。帰省する前の二、三日はうきうきして鼻歌交じりで家事をしていたんだから」

 千鶴はため息をつく。

「生まれ育った場所へ帰ることが出来るのが楽しいんだろう」
「そんなものかしら」
「お母さんは千鶴と違ってこの横浜が故郷というわけじゃない。まあ、千鶴も将来お嫁に行って、この土地を離れたらお母さんの気持ちが分かるよ」
「お嫁になんか行かないわよ」
「それじゃあ、ずっと独身で暮らすのか?」
「そういう意味じゃないわ。お嫁に行くっていう感覚が古いのよ。私は、好きな人と一緒になるだけ」
「ほう、千鶴はなかなかしっかりしているな」
「またそうやって馬鹿にする」

 千鶴は再び唇を尖らせる。

「そういえば、この前お母さんと一緒に観たお芝居、どんなお話だったの?」
「ああ、あれか」

 隆則は浅漬けをつつき、ビールを飲みながら芝居の筋を千鶴に説明する。千鶴は興味深そうに頷きながら隆則の話を聞いていたが、やがて顔をしかめる。

「なんだか勝手なお話ね」
「どうしてだ? 50年も一人の相手を思い続けるなんてロマンチックじゃないか」
「どこがロマンチックよ。一人の相手を思い続けたいのなら結婚なんてしなければいいじゃない。そんなの、配偶者に対する裏切りだわ」
「配偶者なんて、千鶴は難しい言葉を知っているな」
「またそうやって馬鹿にする」

 千鶴は頬を膨らませる。

「だって、そうじゃない。その二人は夫や妻に看取られながら、ああ、自分たちは50年間の美しい秘密があったと思いながら死んでいくの? 随分勝手だとは思わない?」
「思うだけならいいんじゃないかな……」
「思うだけって?」
「いや、何でもない」

 隆則は慌てて言葉を濁す。13歳の千鶴はもうセックスのことは知っているだろうかなどと隆則は考える。

(最近の中学生は色々なところから情報が入ってくるから知っているだろうな)

「急に黙っちゃって、変なお父さん」

 千鶴はそう言うと、肉ジャガのジャガ芋に箸の先を突き刺し、一口でほうばる。

「女の子なのに行儀が悪いぞ」
「ほんなとはほとほとははんへいないほ」
「口に物をいれたまましゃべるんじゃない」
 
 隆則は呆れたようにそう言うと、ジョッキのビールを飲み干すのだった。

春が来た 95
道明 10/8(木) 21:58:56 No.20091008215856 削除
投票日を明日に控え
県民会館の大ホールは新藤・高遠両陣営の支持者で満席だ
まるで合衆国大統領選挙の演説会場の雰囲気そのものだ・・・・・

そして・・討論が開始された
日常生活に身近な子どもの安全、地域防犯やゴミ処理などの県民生活から小学・中学の教育問題、地域コミュニティの活性化、地域経済対策などあらゆる分野で双方の主張がぶつかり合う
弁舌は互角だが、流れは行政実務に長けた新藤候補が少しずつ高遠候補を引き離していく形勢だ


「私は長年培ってきた行政経験を活かし、県民ひとり一人の幸せを願い・・・
 全力で困難な事業に取り組んでいくことをお誓い申しあげる・・・」

理路整然と語り掛ける、バリトンの男声は聴衆を魅了し県民に勇気と希望を与える
それは静かにヒタヒタと心を侵略する・・・まるで槍衾・・・林の如くだ
対抗馬の高遠候補の政策の考え方の甘さを叩くのではなく
言ってみれば・・・逆にフォローして経験の差を浮き彫りにし
新藤の実務経験の深さを聴衆に印象付ける
新藤は父親が娘に話しかけるように・・・・・・・優子の政策をも飲み込んでいく

一方の高遠候補は、女子アナ特有の流暢な話し口調の中に
若さと情熱・・・・そして、未成熟ではあるが完成されていない人間がもつ可能性を強く訴えていく
しかし、実務経験の差は如何ともしがたく、高遠候補にしては日頃の切れが見られない

話題が漸く、候補者の家族や趣味へと移った


「皆さんにご紹介します・・・・・これまで、私の影、日向になって支えてくれた
 私の妻です・・・その隣にいるのが長女と次女・・・この家族が私の宝です」



この時、新藤が初めて高遠候補を見下した視線を送った

『あなたには、このような家族はいないだろう・・・この世で幸せを共に求め合う、愛するパートナー・・・・・どうだ、参ったか』



「羨ましい・・・素晴らしい、ご家族ですね・・・・これまで、なんの苦労もなくすくすくと・・・・本当に良いご家族」


高遠優子が、大きく息を吸った


「私、選挙前に新藤候補が下の娘さんと腕を組んで歩いているところをお見かけしました
 なんて、仲が良くて楽しそうな父と娘さん・・・・道を渡ろうとしている目の不自由な人をごく自然に当たり前のように、手助けされた素敵なお父さん・・・・でした」



「そ、そうなんだ・・・高遠さん・・・見てたんだ、あの時の様子を」

高遠陣営の支持者達は天を仰ぐ
これは駄目だ!決戦の場で言うことではない・・・我々の大将はやはり女だったと



「そんな素敵な夫であり、父親である新藤候補・・そのあなたが県民の幸せを求めて知事を目指す・・・・
 私にはわからない、どうしてそんなあなたが・・・わからない」


「わからない?・・・何がですか、高遠さん」


「どうして?どうして!
 人妻である部下を身篭らせ、腹心の部下のフィアンセを愛人としたのか
 人の為せる所業ではない酷い事をなぜしたのか」


「な・・・なんと、今・・・・・高遠さん」


新藤の表情は強張り、口が震える
会場内は騒然となり、前列に構えていた報道陣のフラッシュとシャッター音が雷光した

見えない檻 28
生き物係 10/8(木) 16:18:57 No.20091008161857 削除

美佳は前のはだけた乳房が見えるブラウスの前を押さえて慌てて家に帰った。

おませな小六の娘には母親の首筋や乳房についた赤い痕がどんなものか理解をしていた。
何も言わずに部屋に篭った。

着替えをして飼育係りの浅岡がくるのを待っていた。
今年で四年目の飼育を向かえる。

美佳はものすごく勝気な性格である。負けることが大嫌いと言ったほうがいい。
今回長山 悦子の夫が西日本事業部とはいえ副部長で転勤したことは面白くなかった。

四年前、夫祐樹が本社勤務になり、榊が尋ねてきて飼育の話をした時は話の途中で受諾を断りました。

「帰ってください。そんな話受けるつもりはありません。侮辱するにも程があります。
例え夫が職を失っても受けません。馬鹿にしないでください」

けんもほろろに追い返された。狡猾な榊にしても始めての経験であった。
仕方がなくからめ手から落とすことにした。

四五日後夫祐樹が嬉しそうに帰ってくると美佳に報告をした。
現在、祐樹は本社の営業課長代理である。これでも同期では出世の一番手である。

夫の話は美佳にとって晴天のヘキレキであった。
「統括事業本部に課長として来ないか」と本部長自らが上司の営業部長を通じて打診してきたのである。
本部に勤務することは地採の祐樹には有り得ない事である。
そのことは美佳にも理解できるが夫はそのことを理解していないとしか思え無いのである。

『私の飼育と引き換えと考えるのが妥当である』美佳はそう確信した。

明日もう一度榊に会って話を聞こうと美佳は電話をかけた。
会う時間と会う場所を指定された。

指定されたホテルの部屋の前に立った美佳は、ドアを開けると二度と後戻りが出来ない気がした。
後戻り出来ない理由は美佳の服装である。
依頼主の会長から贈られたブランド品のワンピースを着ている。
『飼育に承諾なら着て来て欲しい』メッセージにはそう書いてあった。

気がつくと約束の時間は過ぎている。
決断のつかない自分に腹が立って涙が出てきた。まだドアの前で躊躇している。
時間だけが過ぎてゆく。

突然扉が開いた。
驚いた美佳の目の前に榊が立っていて手を取られ部屋に引きずりこまれた。

「会長、美佳奥様です。お待たせしました」

「遅かったな。来ないかと思っていた」

「すいません」

前の椅子に座り謝る美佳を会長は満面の笑顔で見ていた。

「もう一つの約束は・・」

会長が後ろに回って美佳のワンピーのファスナーを下げた。
「あっ」美佳は小さな声をあげたが抵抗は諦めていた。

電話で指示されたとおり、美佳は約束を守り下着を着けてこなかった。
勝気な美香にとって苦渋の決断である。
夫祐樹の出世の為の大義名分を立ててはいるが電話で飼育の内容を聞いた結果少しは興味があった。

ワンピースが脱がされ上半身が露になった。
会長が耳朶を舌で舐めた瞬間、背筋がぞっくとしたのは美佳には始めての経験である。
耳朶を何回も甘噛み、耳の穴に舌を差し込まれ舐められているうちに美佳は感じてきた。
息が少し荒くなっている自分が恥ずかしくなった。

『嫌だ、こんなことで感じるなんて、はしたない』
心の中で思えば思うほど芽生えた小さな快感が波紋のように広がっていく。

「帰ります。帰らせてください。こんな遣り方卑怯です」

快感の波紋を打ち消すように強い口調で美佳は言った。
会長は驚きもせず美佳の脇の下から廻した手で乳房を揉みながら確認をしてきた。

「この手を払いのけられますか?」

そう言うと会長は強く揉んできた。一瞬払いのけるのが躊躇われた。
乳房への愛無なんてここ何年も無いのである。
何ヶ月かに一度の祐樹との性交渉は愛撫もそこそこに祐樹が勝手に逝くものであり美佳は独りでいつも残されていた。欲求不満がいつも渦巻いていた。

見透かしたように会長は言葉を続ける。

「阿久津くんは仕事や出世には興味があるけど美佳君には興味は全く無いよね。
君みたいな魅力的な女性を放っておくなんて」

乳房を揉む手が止まった。

「でも美佳君に全くその気が無いなら仕方ないよな。諦めよう」

その後、会長が何かを言おうとしたのを遮って榊が口を挟んだ。

「会長、それは不味いです。確かに美佳奥様は綺麗で聡明で勝気です。
亡くなられた奥様に良く似ておられます。

でも、今会長が遣ろうとしていることは、帝都GPの制度全般にかかってきます。
私とすれば承服しかねます」

呆気に取られてた美佳の乳房を揉むのを再開した会長は大きくため息をついた。

「でもな榊、俺の気持ちも解るだろう。何とかして遣りたい。
出来るだけの事を美佳にしてやりたい」

その後の会長と榊の遣り取りを美佳は聞いていた。
結局会長は榊の言葉に従った。

「会長今後の阿久津君の処遇は如何しますか?本部ですかそれとも」

「榊君君たちの問題だろう、私が口が出せる状況は終わった。残念だが」

美佳は自分のせいで祐樹が完全にエリートコースから外れる。
勝気な美佳には面白くありません。心の中で葛藤が続きます。

乳房を揉むの手がいつの間にか強くなっている。
乳首を指で挟んで強く捏ね繰り廻す。美佳は濡れているに気づいた。

『不味いワンピーが汚れる、我慢しなきゃ』思えば思うほど濡れてくる。

顔が近づいてくると無意識に目を瞑ってキスを受け入れた。
舌が美佳の口の中で暴れるのを舌を絡めて受け止めていた。

会長の愛撫が首筋に移った時、美佳は喘ぎながら搾り出すように言った。

「私 飼育受けます」


四年前のあの日のことを思い出しながら浅岡達が来るのを待っている。

夫祐樹は本部付きの課長となりメキメキと頭角を表わしてきた。
このままでいくと最少年の部長か支社長かと言われている。

浅岡が男たちを連れてきた。

パンツのファスナーを下げ手を入れてあそこをまさぐっている。
焦ることなくじっくりと指でクリトリスを刺激する。
濡れてきているのが指に伝わってくる。
膣に入れた指を締めてくる。指を奥まで入れて掻き回すと大きくのけぞる。

「美佳奥様の声が聞きたいな。聞かせてよ」

首を振って否定する。
激しい抵抗をするが別の男にパンツと下着を脱がさせ下半身むき出しである。。
指が自由になったので更に奥まで指を挿入する。
溢れた液が指を伝って下に落ちている。


もう一人はTシャツの中でブラをずらして乳房を揉んでいる。
もう一人が首筋に舌を這わせて感じる部分を探している。
時々強く吸ってキスマークをつける。抵抗を出来ずに体を震わせ耐えている。

乳房を弄っていた男がTシャツを脱がしにかかった。抵抗も無く美佳は全裸になった。

指を抜いた男があそこに吸い付いてきた。

「汚い〜舐めないで〜シャーワ〜浴びさせて〜」

男の舌が突き刺さるとその動きの合わせて腰を浮かせている自分が情けなかった。
男が挿入をしてくると快楽に興じて男の白い液を喜んで受け入れた。

春が来た 94
道明 10/4(日) 00:17:20 No.20091004001720 削除
翌朝『ヤクザ男、知事候補への恐喝及び監禁などの容疑で逮捕』の報道が流れる
詳しい内容は報道されない、警察もまだ事情聴収の最中なのだ
瑞希と沖田は救出され、昨夜の内に病院へ移されたとの情報を
新藤は今朝、聞かされていた
逮捕者は老人だけで他の仲間は姿が見えなかったという・・

報道関係者が新藤を取り囲んでいる


「新藤さん・・・投票を明後日に控えたこの時期です、是非とも有
権者が正しい審判が下せるよう、事実を伝える責務があなたにあると思います・・・どうかお話しを」

「私もそのつもりでおりました・・・すべてお話ししましょう
 ・・・実は、私がまだ副知事になる前の頃ですが・・」


「新藤候補!・・・政権党のあの幹、幹事長から急ぎのお電話です!」



突然、新藤の選挙スタッフがワイヤレスの受話器を持って駆け込んでくる
報道陣は何事かと騒然となる


「あの!?・・・幹事長から私に電話!?
 もしもし、新藤ですが・・・はい、ええ・・・えっ!それは・・少し考えさせてください・・はい、はい
 ・うーん・・・みなさん、申し訳ない・・・暫くお待ちを願います」



30分後、新藤が会見場に現れた


「みなさん、申し訳ない・・・私的な事情は別の機会にお話しすることにしました」

「逃げるんですか!・その私的な事情が有権者の投票行為の判断に必要なんですよ」


「それは分かっています・・・しかし、それより今の電話なんですが
 相手候補が公開での討論会を申し込んできました
 政策全般から私的なところまで含めて、対面形式でのね・・・
 私はこの申し出を受けねばなりません・・・私は逃げるような卑怯な男じゃない
 みなさんの知りたいことも、相手候補が間違いなく聞いてくるはず
 ・・・それで十分でしょう」



報道陣はビッグニュースとばかりに、引き揚げていく
その後姿を見送る新藤


「さぁ・・美樹!駅前に行くぞ・・・最後のお願いをするんだ」

「先ほどの電話は?」


「ああ・・・あの大幹事長が私に華やかな死に場所と機会を設けてくれた?
 違うよなぁ・・・これは起死回生のチャンスだよ
 昨夜、君が捧げてくれた聖水で我は蘇り・・だ・・・・・ははははは
 帰って来たら、昨日の続きだ・・・・・もっと、生気を頂くよ」


新藤がポンと美樹の尻をたたき
ついて来いとばかりに軽快に選挙カーに乗り込んでいく
何度も絶頂を極めさせられ、この男の精を注がれた女の腰がプリプリと左右に振れる


美樹もまた、一夜の肉交で・・・・この男の虜になっていた




見えない檻 27
生き物係 10/3(土) 22:18:48 No.20091003221848 削除

悦子はシャワーを浴び飼育係りの指定した服に着替えて男たちを待った。

達夫は西日本事業本部の副本部長として異例の出世を遂げ四月に赴任をした。

これで悦子は美佳に勝ったと思った。一年遅れで来た美佳とは相性が合わなかった。
悦子の夫が本社の営業課長代理からのスタートに対して美佳の夫は本部課長からのスタートである。それも面白くないのであった。
悦子は持ち前のお嬢様育ちの個性を使い社長のお気に入りにもなった。
その結果どうかは知らないが今回の異例の出世となった。

娘二人はミッションスクールの寮に入った。

今この家には悦子一人である。それも月曜日で終わる。
月曜日夫のもへと行く。

後二日でこの生活も終わると思うかと安堵の反面残念がる気持ちがある。
五年間の事を思うと疼いてくる淫乱な自分がいた。

相良が五人の男を連れてきた。
泣いても笑っても笑ってもこれが最後の飼育である。

尋ねてきた男たちのテンションが妙に高い。
悦子は中学の娘の体操着とブルーマ姿であった。
この学校のブルーマは闇のネットで高値で売られている。
悦子にピチピチであったがそれが男の興奮を余計誘った。

相良の静止の言葉も聞かず悦子に飛びついていった。
シャツとブルマを取ると四十過ぎの人妻である。
年の割には良いスタイルではあるが、腹回りなど付くところには脂肪がついている。
妊娠線も男の欲望を誘った。
そのアンバラスが男たちを興奮のるつぼにおとした。

ブルマの股の部分は先程『帝華倶楽部』でたっぷりと出された精液と悦子の愛液で汚れていた。
それを見せられた悦子は恥ずかしさで顔を赤くしながら更に濡れてくるのを感じた。
膣に入れて掻き回していた指を濡らしていたのをみた男たちは歓声をあげる。

捲られたシャツから出た乳房は新しいキスマークと古いキスマークがマダラ模様になっている。その上に更に模様を重ねていった。
所々歯形模様がアクセントを飾る。 

夫へのお土産と言われ首筋に無数のキスマークをつけられた。
噛み傷のおまけもついた。


目隠しをされ男の上に乗せられた。
男に跨った悦子は飼育された通りに抵抗なく男のものを膣口にあて体を沈めていった。
奥まで沈め終わった悦子は懐かしさで子宮の奥が疼いた。

「嘘っ・・専務ですか?専務ですよね」

目隠しを取った悦子はうれしさのあまり専務に抱きついた。
章子に取られたかと思った専務である。
五年間悦子の隅々まで専務の色に染められてきた。専務の望むことは何でもしてきた。
専務は悦子のものであり、悦子は専務のものであるそんな自負もある


腰を振りながら膣を締めると専務の物が硬くなって突き刺さった。

「すご〜い、専務の硬い。もっと突いて滅茶苦茶にして〜」

腰を激しく振って専務に精液を奥に放ってと要求をする。
専務が悦子をしっかりと抱きしめ激しく突き上げて逝った。
膣の奥がしっかりと専務の液を受け止めた。その快楽に酔って悦子は逝く。

突然専務から剥がされ仰向けにされると次の男が挿入してきた。
専務との甘い余韻は一辺で吹き飛ばされた。
男の動きは悦子を快楽の底に落とすには十分であった。
専務の目の前で快楽に溺れるのは避けたくて堪えていた。

悦子の腰を抱え奥まで密着すると更に腰を前に突き出す。
唇を噛締め声を出すまいとする。感じてると悟られまいと虚しい抵抗である。
男の動きが突然止まった。悦子を腰を振って男を奥まで咥え込む。
小刻みに動く悦子の膣に男が射精をする。

専務と男の物を流しながらうつ伏せなった悦子に挿入をしていく。
悦子自ら腰を振って挑発をすると壷の一番深いところが熱くなるのを感じた。

五人の男が次々と射精をしていった。
精力の余った若者たちである。遠慮会釈なく悦子の膣に出し続けた。

もうひとつの人生 3
kyo 10/3(土) 11:30:11 No.20091003113011 削除
「あっ、ああっ、ああンっ……」

 仁美の白く大きな臀肉が淫らに蠢き、隆則の下腹部に押し付けられる。「もっと深く――」とねだるようなその仕草に引き込まれるように隆則はぐっと腰に力を入れ、抽送の速度を速める。

 濡れた粘膜の擦れ合う、ぬちゃっ、ぬちゃっという卑猥な音と、隆則の下腹部と仁美の尻がぶつかるパンッ、パンッという滑稽味を帯びた音が寝室に響き渡る。

「気持ち良いか、仁美」
「ああっ、い、いいっ」
「どこが気持ち良いんだ、言ってみろ」
「ああ……お、お○○こっ」

 そんな卑猥な言葉を仁美が吐くと、隆則は満足そうな笑みを浮かべる。

(ようやくここまで調教した)

 仁美は16年前に見合いで結婚したときは処女であるばかりかオナニーの経験すらなく、当然のことながら女の悦びも知らなかった。真面目で、初めてキスをするときも少女のように震えていた仁美が自ら裸の腰を振りたてて、あからさまに快感を訴えるようになるまで、どれほど長い時間がかかったことか。

 もともと仁美は性に対しては消極的であり、千鶴が生まれた後は3年間、ほぼセックスレス同然となり、大げさでなく夫婦の危機が訪れたこともある。

(あの時の仁美は本気でセックスは生殖のためだけにあると考えていた節がある。それがこの変わりようはどうだ)

 情感が高まってきたのか、仁美の肉襞はリズミカルに収縮し隆則のペニスをくいっ、くいっと締め付ける。

「バーを出るとき、わざと俺を誘っただろう」
「な、何のこと……」
「とぼけるんじゃない。大きなケツをプリプリ振って俺を誘っていたくせに」
「そ、そんなことしていないわ」
「それなら無意識のうちにやったのか。仁美は生まれながらの淫乱女だな」
「ひどいわ……何てことを言うの」

 仁美は「あーん」とため息のような声を上げながら、隆則の肉棒をキューンと締め付ける。

「うっ……」

 思わず射精しそうになる快感をぐっと堪えながら、隆則は仁美の尻をパシッと軽く叩く。

「こらっ、出そうになったじゃないか」
「悪いことを言うから、お仕置きしてあげたのよ。隆則のおチンチンに……」

(おチンチンなんて言葉も、以前の仁美なら絶対に口にしなかったものだ)

「隣の席に座っていた若いカップルの男が、物欲しそうに揺れる仁美のケツにじっと見とれていたぞ」
「アアン、そ、そんなの嘘よ……若い子がこんなおばさんのお尻に見とれたりするものですか」
「嘘じゃない。それだけ仁美のケツはエロいってことだ」

 隆則は再び仁美の尻を平手打ちする。

「エロいなんてひどいわ。ア、アアーン、ぶ、ぶたないで」
「ダメだ。ケツを振って他の男を誘った仁美をお仕置きをしないとな」

 そう言うと隆則はまた仁美の尻をスパンキングする。

「ア、アンっ、さ、誘ってなんかいないわ。わ、私は無実よ」
「本当か?」
「本当よ。仁美のお尻は、隆則さんだけのものよ」

 そう言うと仁美はまたくい、くいと隆則を締め付ける。限界に近くなった隆則は仁美の背中にのしかかるようにしながら、腰の動きを早める。

「アアっ、も、もうダメだわっ」

 仁美が絶叫するような声を上げる。隆則が腰を引こうとすると、仁美はそうはさせじと、隆則の下腹部にぐっと尻を押し付けるようにする。

「今日はいいのっ。このままで」

(安全日ということか?)

 15年以上夫婦生活を送っているが、いまだに仁美の生理の周期が分からない。もともと仁美があまり規則的でないせいもあるが。

「俺ももうダメだ。いっていいか、仁美っ」
「いいわっ、このまま、き、来てっ。あなたっ」

 緊張を解放した隆則の迸りを子宮底で受け止めた仁美は「い、いくっ!」と絶叫しながら裸身を震わせるのだった。

もうひとつの人生 2
kyo 10/3(土) 11:29:02 No.20091003112902 削除
「お芝居には感動したけれど……」

 仁美がカクテルを一口飲むと、話し出す。

「舞台には登場しない、主人公の奥様の立場に立ってみれば複雑ね。自分以外の女性を50年も思い続けている男と結婚しているなんて」
「奥さんは気づいていないから問題ないだろう」
「あら、あなたはそんな風に考える人なの?」

 仁美は眉を上げ、隆則を軽くにらむ。

 隆則と仁美が観たのは、舞台上に並んで座った2人の男女が、手にした台本を読み上げるだけのシンプルな朗読劇である。1988年の初演以来、世界各国で上演されており、日本での上演回数も300回を超えている。

 幼馴染み同士の男と女。男は真面目で女は自由奔放。正反対とも言える彼らは思春期を迎えた頃に互いを意識し、一度は結ばれる寸前まで行くがどうしても友達以上にならない。

 それぞれ違う相手と結婚し別の道を歩む二人だったが、ある日偶然再開したことがきっかけで互いを激しく求め合う。

 しかし男は結局それまで築いた地位も名誉も家庭も捨てられず、かといって女への愛も捨てることが出来ない。女は寂しさから身も心も人生も持ち崩す。そんなストーリーが主人公の男女が50年間に書いた手紙を読むという形式で語られる。

「仁美にはそんな相手はいないのかい」
「馬鹿ね、いる訳ないじゃない」

 そう言うと仁美はクスクス笑う。

「そうかな。高校や大学時代には本当に何もなかったのかい?」
「なかったわよ。寂しい学生時代を送っていたわ」
「本当かい?」
「本当よ。めぐみに聞いてもらってもいいわよ」

 岡田めぐみは高校の頃からの妻の親友で、今も生まれ育った町──妻の実家がある神戸で暮らしているという。

(確か、高校の同級生と結婚したと言っていたな)

 隆則はめぐみには会ったことはないが、定期的に会っている仁美から近況を聞かされているためか、なんとなく昔からの顔なじみのような気分になっている。

「めぐみさんといえば、今度帰省した時にも会うのかい?」
「めぐみだけじゃなくて、他の友達二人にも会うわよ」
「卒業から20年以上経つのに仲が良いな」
「一年に二度、お盆と暮れに会っているだけよ。定期的に会い出したのはここ10年くらいだわ」
「俺も一緒に帰って、めぐみさんに確かめてみようかな」
「いいわよ。仕事の都合が付けられるんならね」

 そう言うと妻はまた小さく笑う。

「うーん、それはちょっと難しいな」

 隆則が取締役管理本部長を勤めている中堅どころの人材サービス会社はここのところ成長が著しく、極めて業務が多忙である。京都にある実家にはここのところ1年に1度、年末ギリギリに帰省できれば良いほうである。

「そういうあなたの方に案外、そんな相手がいるんじゃないの?」
「いるわけないじゃないか」
「あら、高校から大学まで付き合っていた彼女はどうなの」
「それはその時だけの話だよ」
「男の人の恋は別名保存っていうしね。どうだかわからないわよ」
「仁美にしては難しい言葉を知っているじゃないか」
「仁美にしては、っていうのはどういう意味なの? 私も最近はパソコンのスキルは随分上がったのよ」
「千鶴に教えてもらって、だろう」
「もう、意地悪ね」

 隆則の手の甲を抓ろうとする仁美の手を、隆則は軽く押さえる。

「今夜はこのままこのホテルに泊まっていこうか?」
「……ダメよ。千鶴が待っているわ」
「明日は休みだよ。中学二年にもなったら朝食くらい自分でとれるだろう」
「中学二年にもなったら、両親がいきなりホテルに泊まってくるなんて言い出したら、何をするのかわかっちゃうわよ」

 仁美が笑いながら隆則の手を外す。

「それに、こんなところ贅沢だわ」
「家のほうが落ち着いて出来るのか?」
「馬鹿ね。ビール一本で酔っ払ったの?」

 仁美はそう言うとわずかに残ったカクテルを飲み干す。

「ご馳走様。そろそろ帰らないと、門限に間に合わないわ。ここは私に奢らせて」

 仁美は立ち上がるとレシートを取って立ち上がり、レジに向かって歩き出す。スーツのタイトなスカートの生地を持ち上げている仁美の尻が、誘うように揺れている。

 ふだんは貞淑そのものと言った仁美だが、ふとした瞬間に匂い立つようなフェロモンを感じさせることが隆則にとっては不思議であった。

 カウンターの隣の席に座っていたカップルの男が、むっちりした熟女の尻の動きに目を奪われているのに気づいた隆則は、欲望の高まりが現れていないかズボンの前を気にしながら仁美の後に続くのだった。

(注:本文中の『ラブレターズ』のあらすじにつきましては一部パルコ劇場のHP等より引用させていただきました)

もうひとつの人生 1
kyo 10/3(土) 11:24:26 No.20091003112426 削除
 2時間の舞台は二人の主演俳優の力演のためかほとんど長さを感じさせなかった。何回かのカーテンコールに応えたベテラン男優と、気鋭の若手女優が舞台袖に姿を消すと、山城隆則は席を立つ。

 仁美もゆっくりと立ち上がりながら、火照った顔を隆則に向ける。仁美はすっかり劇中人物に感情移入してしまったのか、かすかに瞳をうるませている。

「嫌だ、恥ずかしい」

 隆則にじっと見られていることに気づいた仁美はほんのり染めた顔を伏せる。
 先月40歳の誕生日を迎えた仁美だが、そんな仕草は少女のように初々しい。隆則は自然に仁美の腕を取り、劇場を出る。
 舞台が始まる前に軽く食事は済ませたので、腹は減っていない。しかしこのまままっすぐ家に帰るのももったいない。

「ホテルのバーにでも寄っていこうか」

 隆則が声をかけると仁美は少し戸惑ったような表情で「千鶴が心配しないかしら」と言う。

「母親の帰りが遅いのを娘が心配するなんて逆だろう」
「だって……」

 仁美は拗ねたように唇を尖らせ、携帯を取り出し、メールを打つ。すぐに返信があり仁美は「千鶴ったら……」と小さく笑う。

「どうした?」
「これを見て」

 仁美が差し出した携帯の画面には「門限なんか気にしないで、明日からしばらくお別れだからパパとのデートをゆっくり楽しんできて」という短い文章にハートマーク、そして千鶴が自分の顔の代わりに使っているショートカットの女の子の顔の絵が並んでいる。

「保護者の許可が出たところで、行こうか。仁美ちゃん」
「もう、あなたまでひどいわ」

 仁美は肘で隆則を軽く打つ。隆則は再び仁美の腕を取ると、夜の街をホテルに向かって歩き出した。

春が来た 93
道明 10/2(金) 19:52:26 No.20091002195226 削除
老人が駆けつけた警官に手錠を嵌められる
この男も一端のヤクザ、肝が据わっている・・・もうジタバタしない
連行される途中で、新藤の方に視線を向けた


(見抜けなかった・・・女好きのぼんぼん助平親父と思っていたが、是非もない
 女がこの男の魅力に引き寄せられ、姦られる・・性獣のような精力的な強靭な体躯
 ところが・・・・頭は仏?いや聖か?
 無欲?そんな人間などいるはずがない・・この状況では自己保身に走るのが常
 なのにこの男ときたら・・・
 この歳になって、最後にとんでもない化け物に出くわしたものだ)



「新藤さん・・・私はもう歳だ、二度とお会いすることは無いだろう
 しかし残念だ・・・・あんたの行く末をこの目で見てみたかったよ
 ふん、ふふふふ・・・まあ、人生ってこんなもんだ・・・祈ってるよ、当選を・・
 あんた、獣のようだが純な人、人のようだが魔物!・・ひょっとすると・・わははははは」



パトカーのサイレンとともに老人の笑い声が遠ざかっていく
気が動転しているスタッフを引き揚げさせ、美樹は新藤の側にいる


もはや、どう足掻いてもこの選挙の勝敗は決している・・・・・・
己の撒いた種とは言え、最期は潔い態度だった
この男を叱咤激励し、肢体を触らせ唇までは許しはしたが・・美樹の夢も、もうこれまで


「私、そろそろ・・・」



帰り支度を始めた美樹の後姿を見つめている新藤の鼓動が高まる
新藤の視線が、女の肉付きの良い臀部からスラリと下る引き締まった太腿のラインへ注がれる


「美樹・・・お願いだから、今夜は側にいてくれ!」



美樹もこの男の本質をまだ理解できていない
この男の並外れた魔力的な怒張に貫かれた女・・遼子と瑞希がこの男に決して逆らえぬ女になっている理由を


「もう終わりにしましょう・・・あの女が知事になるのは癪にさわるけれど
 あなたも良くやったわ・・・劣勢を跳ね返し、ここまで追い詰めたんだもの
 でも・・・・・・・・・これまで」


美樹は新藤の方を見ることなく呟いた



「わかったよ、美樹・・・・・冷たい女だ、君は
 じゃ・・・お別れに最後のキスをしてくれないか・・・頼むよ」


「ええ・・・・いいわよ・・・楽しい夢を見させてもらったわ」



美樹が新藤に優しく抱かれ、甘く舌を吸われる
静かに、別れの儀式が始った


いつものように、美樹を抱く新藤の手が美樹の引き締まった尻肉を撫でている
美樹は目を瞑り、吸われるままに舌を新藤に預けている


(ほんとうに、この人・・・キスが上手・・・蕩けそう・・・
 夢は砕けて、夢と知りか・・・・・・・でも、今夜でお別れね
 ・・・・・・・・・なに?興奮して・・・堅いものを圧し付けちゃって!)

見えない檻 26
生き物係 10/1(木) 16:48:22 No.20091001164822 削除

章子が井澤たちに抱きかかえられて退場した後から人妻の宴が始まった。

今年参加の人妻たちの服装は上は薄手のブラウス、下はスカートである。
例年は娘の体操着とか超ミニのスカートとか眼で男を刺激するのが大半である。
それに比べると今年は地味の感じがする。

ブラをつけないので乳房が透けているブラウス、普通のスカートである。
人妻の普段の格好をさせたのであるがどの人妻も淫乱を体の隅々まで教え込まれている。
そのギャップを楽しもうというのである。


司会の村川が仰向けに寝て膝を抱えるように指示をする。

下着を着けていないのでスカートが捲れ肛門も膣も全開となる。
思っただけでも恥ずかしい格好である。

一瞬ためらうが拒否出来ないことを骨の髄まで教え込まれている。

悦子がおずおずと横になって言われたポーズをとった。
足と手を縛られ身動きが取れなくされた。

飼育係り相良の指名を受けた男が悦子の足元に座り込んだ。
じっと覗き込んでいる。 廻りの男たちも一緒に見ている。

別の男がブラウスのボタンを外して乳房を剥き出しにした。
片側を揉み解しながら片方を吸っている。
恥ずかしさと快感であそこが濡れてくる。
息を吹きかけながら男が悦子に聞いてきた。

「悦子奥さま触れても宜しいですか?」

我慢しきれなくなた悦子は大きく頷くと男が優しく触れてくる。
悦子の待ちに待った瞬間であった。
無意識に男を誘いあそこを引くつかせている。
あそこに触れた瞬間乳房をきつく吸われて二重の快感に襲われた。
くっきりと吸われた痕が乳房に残る。

下の男も負けじとあそこを愛撫しながら太腿に吸い付く。
赤い筋が無数についていき、数に比例して悦子は昇り詰める。
両手で乳房を揉みながら首筋にも快楽の痕を残そうとする。

「嫌〜首は止めてっ子供たちに見られてしまう」

まだ母親の理性が残っています。
あそこに下の男が吸い付いた瞬間母親の理性は無くなり快感を貪る牝の習性が顔を覗かせました。
へへらと笑っていた別の男がコーラ壜かと思うような立派な逸物を悦子の口に押し込みました。
徐々にゆっくりと入れていきます。咽喉つまりしながらも全部受け入れました。
対抗意識で下の男も膣に挿入します。
阿吽の呼吸で悦子が快楽を求めるように出し入れを繰り返します。
悦子は身動きが取れずに虜になったきりです。

少し早く咽喉の奥に大量の精を発しました。
飲みきれずにむせ返り悦子は大量の精液を吐きました。
少し遅れて胎内に大量の精液を射精した。

手足を自由にされた悦子は正常位で挿入した男の背中に手を廻し抱きついた状態で逝きます。
腰を男のものが深く刺さるように動かして享楽を貪っています。
膣が男の白濁した液で満ちるとき満足する悦子がおります。


1m50程の間隔で寝かされ全員が同じポーズを取らされた。
足と手を縛られ身動きが取れなくされた。

悦子の横は美佳である。

四年目の阿久津美佳 39歳 小六の娘がいる。
飼育係りは浅岡、依頼者は会長である。

その形で手足が固定されたので隠すことは不可能になる。
手足を縛られた瞬間美佳の膣の奥に電流が走った。
「アツッ 違うの」思わず小さな声が漏れた。
縛られるだけで感じて濡れていくのを知られたくない。
男たちの前で平気で恥部を晒す自分が恨めしかった。

じっと見ていた男が耳元で囁いた。

「美佳奥様濡れてますよ。感じてるのですか?」

首を大きく振って否定をする。否定すればするほど濡れてくる。
男たちの視線が熱く突き刺さる。
あそこが熱くなってくるが自分でいじる事が出来ないもどかしさ。
臀部をもぞもぞと動かす。何かが湧いてくる。
しゃがみ込んで覗かれていると愛液が流れ肛門を伝わって床に落ちた。

「我慢できない。お願い触って〜ねえぇ〜」

美佳の甘えた声に我慢しきれなくなった男がしゃぶり付いた。
舌を美佳の奥まで差し入れ湧き出る液を舐め取ろうとしている。
腰を突き出して快感を貪る。それが美佳に出来る唯一の動きである。

甘えた声が甲高くなり悲鳴に近くなった。
男に挿入を一生懸命促すと男は我慢できなくなり遂に硬くなった物を挿入してきた。
美佳の待ちに待った瞬間だった。奥まで進入したモノをきつく締め上げる。
今まで締め上げたことなどは無かった。初めてである。
更に奥まで侵入した男は奥に射精をした。

縛っていた縄を解かれた美佳はうつ伏せにされ次の男に犯された。
乳房を揉まれ首筋にキスマークがつけられる。
尻を高く突き出し男の動きに合わせる。
男が一旦動きを止めると腰を振って快楽を貪る。それを繰り返して美佳と同時に逝った。


三年目の久美子 41歳 中二と小六の娘がいる。
久美子は咽喉の奥まで男に犯されながらあそこをしゃぶられていた。
太腿に男が自分のものである印を刻んでいく。
膣に進入した舌が膣壁を擦る。
仰け反って受け入れ易い体勢の久美子に男が入れてきた。
上下の口の中で男根が暴れる。二人の男が同時に逝った。
抜かれて大きく開いた上下の口から白い男の液が流れ出ている。
上の口から涎に混じって流れた白い液を見た男達は異常に興奮した。

男達は喜んで久美子の上下の口を塞ぎ射精を繰り返していく。
飲みきれない精子が久美子の頬を伝わって溢れている。

膣は男の精液で一杯でなったのでそれを掻き出してから男が抱いてくる。
そのたびごとに久美子は逝った。何べん逝ったかはわからなかった。

縛っていた縄を解かれ、久美子は騎乗位で遣るように言われしぶしぶと男に跨った。
溢れた体液が太腿を伝わって流れている。
恥ずかしげに俯きながら硬いものを膣に当てと男が腰を押さえる。
締め付けながら腰を振って久美子は逝った。

小柄な恵を一人が抱え込んで指を膣にいれ大きく開いた。
廻りの男たちは手は出さずその様子を厭らしい眼で見ていた。

恵にすれば恥ずかしい所を丸出しそれだけで息が荒くなって膣の奥が熱くなってきた。
『不味い』と思った途端と奥からツーっと愛液が出てきた。
男がそれを見て膣を舐めてきた。優しい愛撫である。

手足の拘束を解かれた途端恵は太腿で男の頭を挟んでいた。
舌がクリトリスを擦る。硬くなったクリトリスを噛まれた。

「もっとお願い。強く噛んで。好きにして〜」

膣に入ってきた指を恵の愛液が濡らしていく。
挿入される指が一本増えるごとに子供みたいな体を硬直させ男を欲しがった。

一番硬くてデカイ男が飼育係りの松原に指名された。
その大きさを見た恵は恐怖で震え首を大きく振って否定をした。

「嫌〜壊れちゃう、勘弁して〜」

男が恵の膣に当ててきた。廻りの男たちはその具合を息を呑んで見ていた。
亀頭の先が少し入った。べちょべちょにぬれているせいかスムーズに入っていく。

三分の二程入ったところで恵の膣の奥に当たった。
抜いて行くとめりめりと音がして膣壁が剥がされていくそんな気がした。
ぐりぐりと奥に挿入されると恵は先程より奥に入っているのを感じた。

恵の甲高い声が部屋中に響いた。小柄な恵の膣に根元まで納まったのである。
男の動きに合わせて恵も腰を動かしている。
子宮の奥深くに射精をしたとき恵みは腰を突き出して逝った。


一年目の香代子 37歳
香代子は横目で久美子たちが遣られている様子を見ていた。
一年目の香代子は夫亨平が本社勤務になった後に妊娠を知った。
初めての妊娠であった。
飼育係りの並木は扱いに戸惑っていたが依頼主の常務は大喜びであった。
現在六ヶ月の幼児がいる。

男たちに陵辱されキスマークと歯形が無数についた香代子の乳房を吸って母乳を楽しんだ。
香代子は上下の口から男の白い体液を乳房から母乳を流してぐったりと横たわっていた。






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