BBS2 2008/02 過去ログ



卒業後 74(終)
BJ 2/29(金) 15:23:56 No.20080229152356 削除

 ―――――――――――――――――――*―――――――――――――――――――――


 黒衣の男が、暗色に変光させた照明の下で、煙草を吹かしている。
 この部屋にある原色は、男が吹かす煙草の赤い火しかない。

 女がやってきて、男の前に立った。


「私も、今夜ですべてを片付けるわ。会社も辞める。あなたにも、もう二度と会わない」
「そうかね。長い間ご苦労だったな」


 あっさりと男は答え、黒革のソファに音もなく腰を下ろした。


 女は立ち尽くしたまま、そんな男を見下ろしている。


「最後にひとつだけ教えて。あなたにとって『彼女』はどういう存在だったの? 何だかんだと言葉を弄していたけど、本当のあなたの望みは―――」
「最初から言っていたじゃないか。『彼女』は俺の好みのタイプだとね。知っているだろう?」


 生まれてから一度も、俺は嘘を言ったことが一度もないんだぜ―――


 冗談めかした普段の口調で、男は云う。


 女はしばし、そんな男を凝然と見つめた。


「それにしては―――、今夜はあっさりとひいたのね」
「分かっているからだよ。そのうち、また戻ってくるとね」


 男は―――微笑した。


「あいつがこれまでに目にしたものは、『彼女』と暮らすかぎり、いつまでもあいつの脳裏にまたたきつづける。決して失われることはない。君はあの男をよく知らないから、信じることが出来たんだよ。俺はあいつを知り抜いている。男というものの欲望のつよさを知り抜いている」


 くすくす、と男はわらいごえをあげた。


「いつか、またあいつは“つづき”が見たくなる。それはそんなに遠い日じゃない。そして、『彼女』もきっとそのことを分かっているのさ。賭けてもいいよ」


 確信に満ちた言葉に、女は数歩後ずさった。
 そして、云った。


「私はもう二度と戻らないわ」
「君ならそうだろう」


 男はうなずいた。


「『彼』も―――もう二度と戻らない。『彼』は『彼女』を愛している。私はそれを知っているし、信じているの」
「愛情にもいろいろな種類がある。奴のそれはサディスティックなものを伴っているのさ。いや、マゾヒスティックというべきかな。男がどんな生き物か、君なら身をもって知っているだろうに。だが、もう今夜は議論はやめよう」
「そうね。―――さようなら」


 女は振り返って、ドアのほうに歩みを進めたが、また立ち止まった。


「私は―――信じているわ」
「信じるのは君の自由だよ。―――おやすみ」


 最後の言葉には答えず、女は部屋を出て行った。


 ―――――――――――――――――――*――――――――――――――――――――


 ようやく、明子が赤嶺の部屋から出てきた。
 ひどく顔色が蒼褪めていたが、私たちを見て、にっこりと微笑った。
 妻はYシャツに、これは赤嶺の部屋から失敬してきたシーツをまとっただけの姿だ。

「携帯でタクシーを呼んで、まず私が自宅に帰るわ。そこから車をまわして、瑞希さんを連れて帰る。あなたは別のタクシーで帰って、今夜は自分のマンションで休んで。明日、私が瑞希さんをあなたのマンションまで送っていくわ」

 もう一刻も妻と離れたくない気分だったが、明子の目顔でその意図を察した。

「分かった。妻を頼む」
「ありがとう―――明子さん」

 うつむいていた妻が、深々と明子に頭を下げた。
 まだ胸元に吊り下がったままの髑髏が、きらり、と鈍く光った。

「本当にごめんなさい。迷惑をおかけして・・・・明子さんにも・・・、あなたにも。こんな・・・・・私のために」

 かすれた声で言う妻の身体を、私は抱きしめた。
 艶やかな髪の毛が私の頬をくすぐる。

「遼一君にもお詫びしなければ・・・・・ひどい目に遭わせてしまったあの子に」

 苦しそうな息遣いとともに、耳元で妻の声がした。

「俺も一緒に謝るよ。とりあえず、今夜は心配しないで。ゆっくり休んで、そして明日になったら、絶対に俺たちの家へ戻ってきてくれ」

 私は言い、またきつく妻を抱いた。

 そんな私たちを見つめながら、明子が携帯電話を取り上げた。




 夜が明け、朝になり、昼になり、そしてまた夜になった。

 私はずっと部屋のマンションで待ちつづけていた。
 妻を。
 この部屋はもう、彼女には入りたくない場所かもしれない。だが、ここは私と妻の五年間の生活がすべて詰まった場所だった。
 私はそこで待っていた。妻の帰りを。
 不安と、高鳴るような胸のときめきを同時に感じながら。


 やがて、チャイムが鳴った。
 弾かれたように玄関へ駆け寄って、ドアを開ける。
 そこに、彼女はいた。明子のものらしい衣装は、少し若めだったが、よく似合っていた。
 私は彼女を抱きしめ、部屋の中へ導きいれた。


 しばし、無言のまま、私たちは向かい合ったソファに座り込んだ。
 以前はこういうとき、すぐに煙草を取り上げたものだったが、私はもう二度と吸う気はなかった。妻は身ごもっているし、何より、私は変わらなければならなかった。
 それに―――、こうして黙って、彼女の顔を見つめていられることが、今の私にはこれ以上なく幸せなことだったのだ。


「コーヒーでもいれようか」
「あ・・・私が」

 立ち上がった私に、妻も慌てたように腰を浮かせた。

「いいんだ、俺がやる」
「でも・・・・・」

 困ったような表情は、以前とまるで変わらなかった。
 自然とわきあがってくる笑みを噛み殺しながら、私はキッチンへ行きかけ、その途中で思いついて、CDのコンポに向かった。
 ラックに並んだなかから、一枚を抜き取って、コンポにかけた。

 やがて、流れでる、メロディー。
 ポール・サイモンとアート・ガーファンクルの、息のあったハーモニー。


「この曲は・・・・・・・」


 立ち尽くしたまま、妻が呟く。


「そう。“サウンド・オブ・サイレンス”だよ。俺たちが初めてふたりで一緒に見た、あの映画のテーマ曲」


 私は言って、妻に笑顔を向け―――



 そのまま、凍りついた。



 妻が泣いていたからだ。



「どうして・・・・・・」


 愕然とした私のほうを見ず、妻は両手で顔を押さえて忍び泣いている。

 その、手指の間から、吐息のような呟きが漏れた。





「『卒業』―――――」





 私には―――

 分からなかった。


 本当に分からなかったのだ。


 どうして妻が泣いているのか。
 どうしてそんなに哀しい顔をするのか。
 
 どうしても―――分からなかった。
 だから―――分からなかったから、近寄って、何も言わずに彼女を抱きしめた。


「大丈夫。大丈夫だから」


 私は囁き、両腕に力をこめる。


 しめやかに流れつづける、沈黙の音。
 妻の嗚咽。


 そして―――

 遠くから新たな一台のバスが近づいてくる幻影を、妻の鼓動を胸で感じながら、私は瞼の裏に見ていた。



卒業後 73
BJ 2/29(金) 15:03:30 No.20080229150330 削除

「どうだね、いまの『彼女』の姿は? さっきも言ったとおり、実に綺麗だと思わないか? ふふふ、哀れといえば哀れだ。お前たちの言葉で言えば、女性に対する冒涜の極みか。もともと美しく整った身体に、こんな醜い髑髏の飾りまでつけられて、ね。だが、ここまで身を堕とし、醜く変えられてなお、『彼女』は美しい。いや、醜のなかにあってこそ、かえって際立つ類の美がここにはある。そんな『彼女』ははたして不幸だろうか」


 妻の両腕を吊ったまま、赤嶺は微動だにすることなく、語りつづける。
 吊られた妻の肢体が揺れている。男の目を楽しませるだけの飾りを、直接加えられた白無垢のような裸身が揺れている。
 切れの長い瞳も、揺れていた。揺れながら、涙を滲ませながら私を見つめていた。


「以前にも言ったと思うが、俺は幸不幸なんて言葉は嫌いでね。だが、あえてその言葉を使うならば、『彼女』は際限のない不幸の中を生きてきた。この美しい身体も、男たちに汚されるためだけに在ったといっていい。お前は嫉妬しないか? この肉体を最初に弄んだという『彼女』の義兄という男に」


 赤嶺は、薄くわらった。


「得られないものを求めつづけることこそが不幸だということに、『彼女』は気づかなかった。己が身に与えられた美を武器にしてもっと自由に生きていくならば、ずっと多くのものが得られたはずなのに。けれど今、『彼女』はこれまでのすべてを断ち切ろうとしている。解放されるんだよ。俺ならば、そんな生き方を『彼女』に与えることが出来る。一年前の天橋立で俺が言った台詞を覚えているか。『彼女』は“その気になれば誰よりも歓びを得られるし、誰よりも美しく変わっていける”―――そして、お前はこれからそんな彼女をずっと目にすることが出来るんだ。―――明子、無駄だよ」


 唐突に、赤嶺が明子の名を呼んだ。
 背後から、明子が忍び寄って、手に持った花瓶で赤嶺を打とうとしていた。
 悔しげに唇を噛んで、明子は花瓶をおろした。


「・・・相変わらず勝手なことを言うのね。私も―――ずっと自分が縛られているように感じて生きてきた。もっと自由になりたくて、この息苦しさから解放されたいとずっと願ってきた。だから、あなたの誘いにのったのよ。だけど、そこにも結局、何もなかった。私が誰よりもよく知ってるわ。まして、瑞希さんは私とは違う。本当に求めてくれるひとがいる」


 明子は私を見た。妻と同様、彼女の瞳も泣き濡れていた。


「彼の名前を呼んで、瑞希さん。怖がらないで。あなたは独りじゃない」


「わ」


「わたし―――」


 ぽろぽろと涙を零しながら、妻が私を見る。
 この一年だけでも、幾度彼女が涙を流すところを私は目にしただろう。
 その度に、瑞々しい希は彼女の身体から抜け落ち、失われていった。


 だから、私は立ち上がらなければならない。ここに来る前に誓ったはずではないか。
 ―――今夜、私はベンジャミンになるのだ、と。
 何を失っても、どれだけ痛めつけられても立ち上がり、彼女を教会から連れ出すのだ、と。


 ゆらり、と私は立ち上がる。
 妻を見た。
 妻だけを見た。


「瑞希」


 名を呼んだ。この世界でただひとつの意味を持つ名前を。


 口を開けようか開けまいか迷っているような、困惑した童女のような表情が私を見ている。


 どうか怖がらないで。
 信じて。
 私は祈る。


 そして―――
 ふるえる唇が、ついに私の名前を呼んだ。


 私は走り出した。
 武器にする十字架はない。何もない。ただ、身一つで走り出す。


 赤嶺が妻を放した。その顔面に、私はもう一度拳を突き出した。
 今度は、当たった。赤嶺は私の拳を避けなかった。

 ふらり、と赤嶺がわずかに後退する。

 私は妻を抱きしめた。


 もう二度と放さない。放すものか。
 そんな想いが浮き出て、力いっぱい抱きしめたその肢体は、壊れそうなほど脆く、細い。今さらながら私はその危ういような細さに、激しい痛みを覚えた。
 だが、生きている。妻は生きて、ここに在って、おずおずと私を抱き返していた。
 私は泣き、けれどその涙を拭って、妻とともに立ち上がった。


 赤嶺は静かにそこにいた。
 いつものように超然とした表情で。先ほど受けたはずの私の拳も、傷の痕すらとどめていない。


「もう十分だ。もう金輪際、お前の誘惑にはのらない。俺は俺のやり方で、瑞希を幸せにする。お前には決して分からないのかもしれないが、何と詭弁を弄そうと、お前はたくさんの人々を苦しめたんだ。それは俺も同じだけれど、俺はこれからその罪を償う。お前にもいつか償わせてみせる」
「分かっていないのは、お前のほうだよ。自分のことも、他人のことも、お前はいつだってまるで分かっちゃいないのさ」


 燐光をたたえた目で、揺るぎなく赤嶺は私を見つめた。


「だけど、今夜はもう、俺も喋り疲れた。もともと喋るのはあまり好きじゃないんでね。お前たちがいなくなったら、すぐにでも寝ることにする」


 すっと踵を返し―――、
 赤嶺は部屋を出て行った。

 しばし立ち尽くした後で、私は妻の肩を支えながら、その部屋を後にした。



卒業後 72
BJ 2/29(金) 14:55:32 No.20080229145532 削除

「ちかく見たことのない感動的な場面だったぜ。主が留守中の部屋にずかずか上がりこんできただけのことはある」

 いつもどおりの素っ気無い口調で言って―――
 蔑むような、それでいて面白がっているような独特の表情で、赤嶺は私を見下ろした。


 なぜ、こいつがここに現れるのだ。
 私は―――もう一度、明子を見た。蒼白な顔で、明子は左右に首を振った。


「少し前に、俺の部屋からビデオを持ち出しただろ。そんなことが出来るのは明子しかいないし、俺の知っている明子は、撮られるのは好きでも、他人が撮られた映像で楽しむ趣味はないんでね。あの映像を見せるとすればお前しかいないし、お前を連れてくるつもりなら、今夜しかない」


 淡々と、赤嶺は語る。

 大理石の彫像のように彫りの深い、感情を読みにくい顔。ダークスーツを着込んだ大柄な身体は、照明の下でなお闇に溶けているようだ。


「お・・・・まえは・・・・」


 しぼりだした私の声は、地獄の釜の底から出てきたようにしゃがれていた。


「おまえは・・・どうしてそこまで俺たちを苦しめる? いつだって何でもないような顔をして・・・・お前にとって、俺たちは思うとおりになる玩具なのか? お前はそう思っているのか!」
「俺には、お前の言う意味こそわからないね。不法侵入された側に罵声を浴びせるなんて、たいした根性だな」


 外人のように、赤嶺は肩をすくめて見せた。


 わかっている。こいつはたとえ死を目前にしたとしても、このあくどいまでの冷静なポーズを決して崩さない。
 目の前にいるのは、そんな男なのだ。

「それに『俺たち』とは誰を指しているのだ? 俺はいったい誰を苦しめたのかな? それが分からない。思いつくままに名前を挙げていこうか。最初はまず、あの少年―――遼一君と言ったかね」


 腕組みした手の指を、赤嶺はひたひたと動かした。


「お前が気づいていたのかどうか知らないが―――、あの少年は『彼女』のことを心から好いていたのだよ。やさしい伯母さんとしてではなく、ひとりの女としての『彼女』を、その身も心も欲しがっていた。けれど、それはお前という夫がいる以上、決して叶わない望みだった。少なくとも、あの子はそう思っていた。俺は、彼が欲してやまないのに、本当なら一生手に触れることを諦めなければならなかったものを、その手に触れさせてやったんだよ。感謝されこそすれ、恨まれる筋合いなどないね―――」


 すっ、と―――
 右手を上げて、赤嶺は私の顔面を指差した。


「そしてお前は、俺のおかげで、普通なら味わえない種類の快楽を味わうことが出来た。あの少年と同じように。お前のような嗜好の人間にとっては、この数ヶ月はたまらない時間だったのじゃないのかね。“最愛の妻が他の男によって奪われていく”―――そんな妄想が実現していくのを目の当たりにしていくのは、どんな気分だったかな」


 俺がお前に用意したのは、最高のエンターテイメントだっただろう―――


 囁きかけるように、闇の精はそう告げた。


 この男は何を言っているのだ―――


 目眩めく非現実のなかで、私は惑乱する。


「そう、最高のエンターテイメントだ。あまつさえ、妻が性を売り物にする女に変えられ、堕とされていくさまを、お前は目にした。そのときお前はどれだけ興奮し、どれだけ勃起したんだ? 正直に言えよ。もはや体裁を繕う必要もない。『彼女』はもう全部分かっている」


「だ」


 黙れ―――!


 私は叫んだ。


「おやおや、まだ『彼女』の前で本性をさらけだすのが怖いのか。それほど大事な女なのに、どうしてお前はさっきから『彼女』をまともに見ようとしない? どうして目を背けているんだ? 答えてほしいね」


 つうっ、と私の背筋に冷や汗がつたい落ちる。
 眼前の男は、私の恐れを深く見抜いていた。


 そのとき。


 ぐらり―――


 傍らの妻が前方へ、ゆるやかに倒れこんだ。


「瑞希!」


 叫び、私は彼女に腕を伸ばす。


 Yシャツ一枚を羽織っただけの裸身が揺れる。
 苛酷な日々を越えてなお、優婉さを失わないまろい乳房に取り付けられた、凶々しい銀髑髏の飾りが揺れる。

 獣のように低くうめいて、抱きとめた私の腕から逃れようと、妻は暴れた。哀しいほど力のない両手で。

 麻痺した半身でその抗いを受けながら、ずくずくと痛む私の両目は、暴れる妻を見ていた。その下半身、優美な太腿のあわいは、あのビデオで見たそのまま、淡い翳りを失った真っ白な丘に縦筋だけが刻まれている。
 その縦筋にも光るものがあった。花弁を貫きとおした金のピアス。その金の輪に嵌った紅玉が光っていた。


「実に綺麗だろう? 本物のルビーだよ。新しい門出を祝って、俺が贈ったものだ。胸の飾りも『彼女』によく似合っている」


 私は―――脱力した。
 それをきっかけに、跳ね跳ぶように妻の身体が、私から離れ、床に倒れ伏した。
 すすり泣きが、聞こえた。
 その嗚咽が耳に入った瞬間、魔風のような怒りが私の身体を抱え上げて、わけの分からぬ言葉をわめきたてながら、私は赤嶺に向かっていった。
 拳を突き出した。
 ひょいっと軽やかな動作で、赤嶺がそれを避ける。

 つづいて、顎の下に激烈な痛みがきた。

 瞬間、意識と身体が宙を飛んだ。
 悲鳴。明子と―――それから妻の悲鳴だった。


「あなた―――!」


 仰向けに転がった私に、妻がすがりついてくる。しかし、顎に受けた打撃で、私の口からは荒い呼吸が出るばかりだった。指先ひとつ動かせない。
 黒衣の男が近づいてきて、その妻の細腕を奪い、無理やりに立たせた。


「俺が昔、ボクシングをやってたことは知ってるだろ? そんな奴に、武芸の心得がまるでない男が向かってくるなよ」


 背の高い赤嶺が、小柄な妻の両腕を一掴みに頭上高く持ち上げている。
 女性の象徴であるふたつの箇所に飾りを付けられ、姿を変えさせられた妻の総身を、痛みと目眩が間断なく襲う私の目にさらけだす。


「何より、まだ話は終わっていないんだ。遼一という少年、そしてお前の話は済んだ。最後に『彼女』の話をしなければならない」


 こぼれるような胸乳に、重たげにぶら下がった銀のペンダント。それに赤嶺の手が触れた。
 ちゃらり、と音がした。



羞恥95
風水 2/29(金) 11:13:38 No.20080229111338 削除


 栗本先生のレディースクリニック旁でのプレイを週末に控えたその日
 妻の生理が昨日終わったのは確認済み

 生理が終わった時 特に性欲が増す妻・・・今晩こそ話しを切り出すチャンスです。

『落ち着け・・・あせるな』自分に言い聞かせ 風呂から上がる妻を寝室で待つ私 
 妻とのエッチを前に こんなに緊張したのは記憶にありません。 

 今日の妻は 普段以上に長湯のような気がします あせっている私の気のせいでしょうか?
寝室に来てからも やけにのんびりお顔のお手入れ・・・
いつもの倍のスピードで灰皿が山になっていきます。

 やっとベッドに潜り込んだ妻
「裕美子 生理終わったんだろ?」
「ええ・・・あなた したくなっちゃったの?」
「裕美子だって 久々にしたいくせに」
「へへへっ やっぱり分かる?」

 下着に手を滑り込ませると 秘唇は暖かいぬめりを帯びています。
「なんだ もう濡れてるんじゃん」
「だってぇ・・・あん」

 下着を脱がせ秘唇に舌を這わせます。
「あーん・・・気持ちいいよぅ・・・」
「裕美子 いっぱい感じてな」

 ゆっくりと時間を掛け 舌でクリトリスを 指で膣口を刺激すると
 濃い目の愛液が溢れてきました・・・

「ぁぁぁ 気持ち良い・・・あなたぁ もう入れてぇぇぇ」
 チャンスです

「裕美子 ちんちん欲しいのかい?」 
「ぁぁ ほ、欲しいの・・・」

「俺のお願い聞いてくれたら ちんちん入れてあげるよ」
「あーん はやくぅぅぅ」

「実は俺なぁ 裕美子の同級生の栗本先生とな・・・」
「く、栗本君 な、なんなのよぅ・・・ぁぁぁ」
「その栗本先生と話したんだけどなぁ」
「ぁぁぁ あなたぁ ク、クリポンと何話したの?」
 膣口からは愛液が肛門まで溢れてきました。

「先生の同級生だった伊藤裕美子がね 俺の妻だって事・・・でね・・」
「いやーん ぁぁぁ 何でそんなこと話したのよぅ」
「でね 裕美子 俺 頼んだんだよ・・・」
「ぁぁぁ あなた な、何頼んだの」


「一度でいいからさぁ 裕美子の診察に立ち会わせてくれって・・・」



千代に八千代に
信定 2/29(金) 09:44:59 No.20080229094459 削除
第七十一章

 蘇った千代のことを考え、昨夜は興奮してなかなか寝つくことができなかった。
とは言え肉体的にも疲れていたせいで、知らぬうちに眠りについていた。
朝は爽快な気分で目を覚ました。
大きな安堵を得たせいで深く眠れたようだ。
日が昇ってから時間が経っていることに気付き、慌てて起き上がった。
急いで支度を調えて千代のいる部屋のドアをノックした。

 千代はベッドの上に座っていた。
「すみません寝過ごしました。すぐに朝食の支度をします」
小さく首を振ってからそっと頭を下げた。
幸雄は千代が何を言いたいのかがすぐに分かった。
本当は自分がしなくてはならないのに、体調が復調していないことで、それができなかったことを謝っているのだ。
「千代さんはまだ寝ていなくちゃだめです」
幸雄は断固として言った。

 千代の快復を知った横山は案の定、子供のように泣いた。
「もう、もう、二度と、あのようなことはしないで下さいね。
万が一、万が一ですが、そのようなことになりますれば、今度は私もご一緒しますっ」
横山は小さな胸を張り涙顔で凛然と言い放ったのである。
主治医も完全な千代の復調には驚いていた。
一にも二にも幸雄の献身的な介護のおかげであると繰り返していた。
声帯が潰れたせいで再び声が出せる可能性は著しく低いと、幸雄を別室に呼んで告げた。
最初に首が絞まったときに潰れたのだろうと言っていた。
落胆したが気長に構えるしかない。

 今日も幸雄は屋敷の中を動き回るが、今までとは勝手が違う。
千代を抱きかかえて移動することがなくなった。
千代が蘇ったことは心から嬉しい。
だが、いつものように夜を迎える時の浮き立つ気分は湧上がってこなかった。
千代の肉体を弄ぶことができなくなったからだ。
また以前のように一人で慰めることとなった。
思い出すことはあまりに生々しく、狂おしかった。

 蘇生した翌々日から家事をしようとしたので幸雄は仰天した。
「だめですよ、そんな体で」
体を休めるよう幸雄は声を荒げ、強引に千代を抱き上げてベッドまで運んだ。
人形ではない千代の柔肌の艶めかしさを肌に感じてどぎまぎした。
「すみません」と耳元で千代の呼気を感じた。
思わず硬く目を瞑った。
その時、声が出せないという千代に対して激しい性欲がわきあがった。
数日後、幸雄は医者からの許可を得たこともあり、千代がベッドから降りることを容認した。
元の部屋に戻ると言ったが「自由に使ってもらっていいですから」と言って幸雄はそれを許さなかった。
自分のベッドを使っていて欲しいと言うのが本音である。

 千代は少しずつ家事をするようになった。
やはり千代の作る手料理は旨い。
二人っきりでテーブルに向かうのが嬉しい。
「旨い、旨い」を連発し、幸雄はガツガツと食べた。
まだ完全に復調していないことを理由に、千代のそばから離れない。
家事をこなす千代の横に常にいた。
ことあるごとに「何かあってはいけないから」と言う幸雄に千代は小さく微笑んだ。
幸雄は千代の一挙手一投足を見守っていた。
伸び上がってものを取る姿に心がざわめき、床に置いてあるものを屈んで持ち上げる丸い臀部に生唾を呑み込み、
台所に立つ後ろ姿の括れた腰やふくらはぎを盗み見て下半身を硬くし、たおやかな千代の動作に欲情した。

 丁寧に頭を下げる千代をちらっと見て、白湯を入れたガラスでできたアンティークなポットをテーブルの上に置いた。
ベッドから手の届く位置にそのテーブルを移動させた。
硬い顔をした幸雄は部屋を出て行くためドアに向かった。
ドアノブに手を掛けたまま動きを止めた。
不意に振り向きベッドにいる千代に駆け寄った。
「すみません千代さん、僕は」
そう言ってベッドに伏せった。
「隠してなんかおけない。僕は千代さんに惨いことをした」
幸雄は嗚咽を漏らしていた。
千代は幸雄の腕にそっと手を置いた。
幸雄はビクッと体を震わせた。

「毎日、毎日、千代さんを、吾妻形人形のように。始めは我慢したんだけど、どうしてもだめで」
千代の表情は穏やかだった。
「どんどんすることが、僕の性質が異常になってゆくようで、僕は狂ってるんだっ」
幸雄はウウッと呻いた。
「我慢できなかったんですっ、狂おしいほど」
幸雄は千代の布団をはねのけた。
始めてこの手で脱がせた寝間着姿が目に飛び込んだ。
千代の切れ長の生きた目を見た。
表情は先ほどと同じように穏やかだった。
「僕が、僕がいなければ、千代さんは助からなかったんだ」
千代の目が少し揺れた。
幸雄は目色を変えていた。
「だから、だから、欲しいんだっ」
そう言って寝間着に手をかけた。



飼育室2
湯葉 2/28(木) 23:09:36 No.20080228230936 削除
JR中央線のM駅から私鉄に乗り換える。
黄色く塗られた車輌内は混み合うというほどではなかったが、座席はすべて
埋まっていた。
体つきに比べ、大きなデイパックを背負った郁実の姿に同情を感じたのか、
老婦人が席を詰めてくれた。
「あ、大丈夫ですから」と慌てたように郁実が言う。
それでも老婦人のせっかくの気遣いを無碍に断っては申し分けないと思ったのか、
郁実は戸惑ったような顔を髟カに向け、そして老婦人に会釈をすると空けられた
空間に座った。
背負っていた紺色のデイパックを下ろして太腿の上に置き、少し恥ずかしそうに
視線を下向ける。
よく見ると、それはずいぶん色の褪せたデイパックだった。
(……まだ、持っていたのか)と、髟カは思う。
七年前のあの日も郁実はこのデイパックを背負っていた。
そして、今と同じように髟カは郁実を見下ろしていた。
ベンチの上、顔を両手で覆ったまま、泣きじゃくる郁実を。



紅葉の色を映したようなうなじから、小さな耳に唇を移した。
薄い耳朶を口中に含み、甘噛みすると、郁実の息はさらに荒くなった。
乳首を弄んでいた右手は、次の目的の場所に向かって別の生き物のように
動き続ける。


二本の指で郁実のジーンズのジッパーのつまみを掴み、一気に下げた。
真昼の光の中にその部分が晒されようとしていることに気づき、腕の中で
郁実の抵抗が大きくなる。
「だ、………だめです、………もぅ、やめてください」
髪を小刻みに揺らし、悲鳴にも近い、細い声を郁実はあげていた。

ウエストを締めていた郁実のベルトをいったん、きゅっと絞り、ベルトの
穴から鉄のピンを外す。
ジーンズのフロントホックがぷつっという音を立てた。
郁実は髟カの動きを手で押し止めようとするが、それも叶わないと知ると、
両腕を胸の間に差し入れ、懸命に突き放そうとした。
…………だが。

ベルトとホックを外され、Vの字にはだけられたデニム地の間には、薄く
頼りなげな布地の感触があった。
それよりもなお、布地の内に秘められている感触を髟カの手は求めた。
激しく上下する郁実のお腹に手を当てる。
布地よりきめ細かな手触りの下腹部が熱を孕んでいた。

吸いつくような肌に掌を密着させ、そのまま下方にずらす。
頼りなげなショーツの締め付けをかいくぐった指先が、すぐに肌とは異質の
ものをとらえた。
「ゃ、………やっ」
絹糸のような感触だった。
四本の指をショーツの中で左右に広げ、叢の柔らかさを愉しむ。
縮れの少ない、直毛に近い恥毛だった。
一本一本は長いのに、生えている範囲の狭い叢だった。

中指の先端が恥骨の盛り上がりを感じ取る。
丘の頂きに当てていた中指をゆっくりと真下に滑らせていった。
堅く閉じられていた二本の太腿も、指の侵入を拒むことはできなかった。
「……ぁ……あ……ぃやぁぁぁ」
突き放そうと髟カの胸元に押し当てられていた郁実の手は、すでにその力を
失っていた。
髟カの中指がちりちりと恥毛を巻き込みながら、恥丘を下り、秘めやかな溝を
なぞっていく。

指の背が郁実の履いているジーンズの底布の感触を感じ取ったところで、
伸ばしていた中指を鋭角に曲げる。
「……ぅあっ、……ぁっ」と、郁実が声をうわずらせた。
そこに郁実という女の源泉があった。
細くて深い窪みの中には驚くほどの熱い蜜が湛えられていた。
粘液は指の挿入とともに、じゅくっと溢れ出し、髟カの指を伝った。

予想外の郁実の反応だった。
髟カの理性の箍が音を立てて外れていく。


「……郁ちゃん、………見せてほしい」
返事はなかった。
郁実は顔を左肩の方に傾け、堅く瞳を閉じていた。
強く唇を噛んだ顔も、うなじも羞恥の色に染まっていた。

ごくっと唾をのみ、郁実のウインドパーカーのファスナーを下ろしていく。
すべてのボタンが外されたフランネルのシャツと水色のブラジャーが見えた。
どちらもすでにその役目を果たしていなかった。
ファスナーを下げきり、パーカーの襟元を掴んで、前をはだける。
水色の細ひもだけが掛かる丸くて華奢な肩が光の中に晒される。

そして、郁実のジーンズのベルトのあたりを掴み、髟カの腕が大きく動いた。
剥き下ろすという表現の方が近かったかもしれない。
その荒々しい所作は、飢えた牡そのものだった。
ずずっと身体ごとずらされ、郁実の両肩はベンチの背もたれの一番上に位置を
移していた。
髟カの手の中にあった二枚の布が太腿から膝小僧を過ぎ、足首に落とされる。
山の土に汚れたウォーキングシューズの上、まだ硬さの残る濃紺のジーンズが
ごわごわと束ねられ、その上に、くしゃっと丸まった淡いピンクのショーツが
かぶさっていた。
ショーツは完全に裏返り、紡錘形の濡れ染みをつけた底布が木漏れ日の中に
晒されていた。

髟カはベンチから立ち上がった。
郁実のすべてをその記憶の中に刻みたいと思った。

牡の本能をどんどん昂ぶらせていく髟カと異なり、郁実は放心したように
虚空を見つめていた。
その表情に違和感を感じるだけの余裕は、髟カにはなかった。
視界の端、ベンチの上に放り出されていた銀色の小箱が目に入る。
デジタルカメラだった。
記憶よりも確実に今の状況を記録できる道具。
それを髟カは手に取った。

まるで、一度も陽に晒されたことがないような素肌だった。
淡雪のような肌の上で、二つの色が強烈なアクセントを放っていた。
桜の蕾色をした両の乳首と、縦長に切れた臍の下、下腹と太腿の三角地帯に
生えそぼる漆黒の恥毛だった。
もう一つの色、女にしかない色を髟カは見たいと思った。
堅く閉じられている丸い膝小僧を両手で掴むと、髟カは左右に広げた。
予想された抗いはなかった。郁実は感情の回路を閉ざしていた。
郁実の膝の間隔をさらに髟カは開いていった。

木のベンチの端には紺色のデイパックが置かれていた。
ベンチの中央にはその持ち主である郁実が小柄な裸体を晒していた。
それは髟カの記憶の中にあるどんなヌード写真よりも扇情的な構図だった。
ジーンズと下着のからまる足首を支点として、郁実の二本の脚は蛙のように
開かれていた。

両の太腿の付け根、鼠径部が窪んでいる。
男の手で無惨に広げられた両脚の腱に引かれ、縦の亀裂がほころんでいた。
淡々とけぶる恥毛の下、二枚の肉ひだは道を開け、濡れ光る小さな膣孔が
陽光を浴びていた。
髟カは夢中でシャッターを切った。
シャッター音に似せた電子の音が息詰まるような静寂を掻き乱す。
耳障りなその音は被写体にも届いているはずだったが、郁実はその屈辱的
ともいえる姿勢を変えなかった。
素顔を晒し、乳房を晒し、腰を突き出すようにして女性器を晒していた。

堰を切るとはこういう状況のことをいうのだろう。
突然、郁実の瞳から涙がはらはらとこぼれ、頬を伝った。
両手で顔を覆う。
二つの瞳からこぼれ出た涙は下あごで交わり、胸元に滴り落ちていた。

その涙は欲望に我を忘れていた髟カを現実に引き戻した。
(……おれは、…なんてことを…)。
謝ろうとするより先に、への字に結ばれでいた唇を郁実が開いた。
ひっ、ひっ、と、しゃくり上げながら、切れ切れに言葉を紡ぐ。
「ごめんなさい」と言っていた。
髟カは混乱した。白昼、全裸も同然の姿にし、性器を露出させるという
恥辱を強いたのは自分だ。
なのに、なぜ、怒らないのか。なぜ、謝るのか。
髟カには理解できなかった。



羞恥94
風水 2/28(木) 10:38:05 No.20080228103805 削除


「あなた このごろ何か変だよ 隠し事有るんじゃない?」
 栗本先生と会って1週間経った日曜日 妻がいきなり切り出しました。

「浮気でもしてるの?」
「まさか・・・俺は裕美子以外 まったく興味無いよ」
 普段はのんびりしているのに なぜか感だけは鋭い妻です。

「そうよね あなたには浮気する根性も甲斐性も無いもんね」
「・・・・・・・・」
 確かにここ1週間 私は栗本先生からの電話を待ち 落ち着かない日々が続いています。

「また 例の整体院に行こうとか考えてるんでしょ」
「ま、まさか・・・そんな事 考えても無いよ」
 あぶない あぶない 挙動に注意しなくては・・・


 そんな毎日を過ごしていた私に 栗本先生から待望の連絡が有りました。

「矢野さん ご連絡 遅くなってすいません 色々と忙しくて・・」
「いえ とんでもありません」
「で、例の件なんですが・・・・・・」
「はい 日程は決まりましたか?」
「ええ 来週の土曜日 時間は21時からでいかがです?」 

 私は仕事の予定を思い出し・・・その日は仕事 でも21時からなら楽勝です。
 妻も予定が無かったはずです 妻は今生理中 来週の週末なら問題無し。

「はい 来週の土曜 21時 たぶん問題ありません」
「では その日で決定しましょう」
「はい 妻とその時間におじゃまします もし 都合が悪くなった場合 早めにご連絡いたします」

「当日は 助手として私の他に一人参加させる予定です それは大丈夫ですよね」
「はい 問題ありません・・・ただ 最初から他人が居ると 妻が嫌がるかもしれませんので
 できれば 途中から参加していただいた方がよろしいかと・・・」
「なるほど 確かにそうですね・・・では そのように段取りします」
「お願いいたします いや 今から楽しみです」
「私も楽しみですよ 色々とプレーに関しては考えましたので お楽しみに」
「そっちは おまかせいたします・・・では 来週の土曜日におじゃまします」
「はい では失礼します」

 さて あとは妻を納得させるのが私の仕事です。





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ネット妻A
baku 2/27(水) 23:02:46 No.20080227230246 削除
「吉田くん、そこでは、よくみえないだろう。こっちにきてごらん。きょうは強気に言って、ハダカにさせちゃうから。ま、みててごらん」

パソコンに近づき、画面右端の小窓をみると、トレーナー姿の首から下の女性が、映しだされていました。

ayako 「沖田さん、みえますか?」
沖田 「うん、みえてるぞ」
ayako 「きょうは、沖田さんの姿は、みせてもらえないんですか?」 
部長は、となりにいる私にちょっと困った顔をみせたあと、

沖田 「きょうは、カメラの調子が悪いんだ」
ayako 「そうなんですか。すこし残念です」
沖田 「そんなことより、オッパイみせなさい」
ayako 「え」 
沖田 「前も、みせてくれたじゃないか。オッパイと、それと、きょうは、パンツもだ」
ayako 「・・・・・」
沖田 「いつか、みせるって、言ったじゃないか」
ayako 「・・・・・・・・」
沖田 「どうした!」
ayako 「きょうの沖田さん、なんだか怖いです」

すべて文字だけのメッセージなのだが、沖田のむきだしの欲望が、相手に伝わってしまったのかもしれない。

ayako 「・・・私は、やさしい沖田さんが好きです」
沖田 「うん」
ayako 「いろいろ悩みをきいてもらったり、励ましてもらったり」
沖田 「いや、僕は、話を、きいているだけだった」
ayako 「それでも、私は、救われました」
沖田 「怖がらせて、ごめん」
ayako 「いえ」
沖田 「おっぱいみせてなんて、二度と言わないよ」
ayako 「沖田さん」

その直後、画面のトレーナーは、その女性自身にまくりあげられ、ブラがみえ、そしてブラもはずして、ふくよかな乳房とピンクの乳首が、私たちの目にとびこんできた。

ayako 「沖田さん、みえますか?」
沖田 「み、みえる。ayako、もう十分だよ。風邪ひくといけないから。隠しなさい」
ayako 「はい。喜んで、いただけましたか?」
沖田 「うんうん。ayako、ありがとう。もう、遅いから寝なさい」
ayako 「はい」
沖田 「おやすみ」
ayako 「おやすみなさい」

ayakoがログアウトすると、部長もログアウトした。
「な、もうね、この人妻は僕の、いいなりなんだよね。ははは」
精一杯の強がりかもしれない。部長特有のオヤジギャグなのかもしれない。でも、私は、(部長は、本当に純で心やさしい人なのかもしれないな)と、おもいました。



羞恥93
風水 2/27(水) 10:31:32 No.20080227103132 削除


「は、はぁ せ、性的なプレーとしてですか・・・」
「そうです 診察プレーです・・・できれば 普段の診察以上に恥ずかしい診察をお願いしたいのです」
「な、なるほど・・・しかし 看護婦が居るしまずいですよ」
 栗本先生は拒否しません 私の提案に興味を持った様子です。

「栗本先生  診察が終わった後 これくらいの時間から というのはいかがでしょうか?」
「そうですね まあ実行するとなると この時間しかないですよね
 うちの病院は 夜でも看護婦一人は居るんですが 入院部門の2階からは降りてきませんから・・
 しかし なぁ・・・ゆみちゃん いや奥さんも了承済みなんですか?」

 食いついてきました あと一押しです。
「いえ まだ話はしていません しかし前回の診察から丁度半年が経ちます 今がチャンスなので
 ・・・必ず説得いたします」

「ウチとしては トラブルになるのは非常に困るんで・・・
 うーん・・・・・分かりました。ご協力しましょう 私としても興味の有る提案です」
「ありがとうございます 日時などは 栗本先生にお任せいたしますので・・・」
「はい で、矢野さん そのプレー内容なんですが・・・」
「はい なんでしょう」

「これはヤメテ貰いたい とか有ったら教えてください いわゆる禁止ブレーですね」
「禁止プレーですか・・・そうですねぇ とりあえす本番行為と唇にキスするのはちょっと・・
 あとはですね・・・特に無いと思います 妻を指とかで逝かせて貰っても結構ですし
 でも 基本は婦人科の診察の延長 ということで・・」

「わかりました 決行日までに色々考えておきます・・・それとですね矢野さん 
 私とご主人以外を立ち会わせるのはどうです? もちろん一人か二人ですが・・・」
「それはOKです 妻もその方がより恥ずかしがると思います」
「了解です それでは 日程を調整してご連絡します」
「よろしくお願いします」

 その後 妻の小学校当時の思い出話を数分聞き 私は栗本氏の病院をあとにしました。

 自宅まで のんびり歩きながら どうやって妻を説得するかだけを考えていました。
せっかく栗本先生が了承してくれたのに 妻が拒んでは・・・

 良い案は思い浮かびません 
婦人科の診察に時間外 しかも私が同行する どう考えても怪しまれるでしょう。

 結局 正直に話す以外に手はなさそうです 日程が決まったら妻に告白です。
あとはタイミング・・・もうこれはエッチの最中 それしか考えつきませんでした。

 妻の了解は貰えるのでしょうか?



千代に八千代に
信定 2/27(水) 09:19:53 No.20080227091953 削除
第七十章

 幸雄は八代に変わる使用人を雇うことはしなかった。
他人に今の生活をいささかも干渉されたくなかったし、千代のことは全部自分の手でおこないたい。
もちろん、充実した性生活のじゃまをされたくない、というのが基底にある。
しかしながら掃除、洗濯、食事の支度と実に大忙しであった。
なにもこんなにでかい家にしなくても良いではないか、などと恨めしく思う。
いずれは売り払ってこぢんまりとした家に住み替えようと幸雄は本気で考えているのだ。そう、千代と二人で。
今日も朝から付きっきりの介護が始まる。
だが幸雄は苦痛ではなかった。
愛する千代を抱きかかえ、食事を与え、トイレへ風呂へベッドへと連れて回った。
夜は千代の体を使ってその日溜まった精をまさに吐き尽くす。
「ごめんね、ごめんね、好きだよ、好きだよ」
体に似合わずそんなことを呟きながら千代の全身を吸いしゃぶり、腹へ背へ尻へと白濁を飛ばすのであった。

 その日も例の如く風呂場で千代の体を清めたあとベッドへ運んだ。
はち切れそうな股間を押え、トイレからいそいそと戻ってくると、ベッドの上で千代が座っていた。
幸雄はギョッとして、持っていたワインボトルを落としそうになった。
柔道のため成人になってもアルコールは控えていたが、千代の身体を弄ぶようになってからは、たしなむようになった。
アルコールの力でもっと淫らな気分になれるからだ。
「え?ち、千代、さん」
千代がこちらを振り向く。
トーキー映画のコマ送りのようにゆっくりとした動作だった。
千代の黒目が幸雄を捕らえた。
穏やかな表情だった。
茫然と立ちつくす幸雄の目からは涙が溢れていた。

 口を開きかけたが、辛そうな表情で喉を押えた。
白い喉には、赤黒く変色したロープの痕が生々しく残っている。
消えてしまえと願いながら、幸雄は毎日そこに唇を押し当てていた。
千代は唇を『お』の字の形にしたあと『あ』の字に変えて何か言った。
呼気の音しか聞こえなかった。
幸雄は涙で濡れる目を大きく見開いた。
何を言っているのかが分かったからだ。
始めは『ぼっちゃん』と言おうとして、『さちおさん』と言い直したのだ。
千代が言い間違えたことから、脳が正常に戻ったことを幸雄は確信した。
両手で乳房を隠している千代の腰にすがりつき、幸雄はまるで子供のように泣きじゃくった。
幸雄が泣きやむまで、綺麗に刈上げた洗いざらしの髪を千代の手が優しく撫でていた。

「声が、出ないのですか?」
幸雄はそれを思い出し、顔をあげた。
千代は小さく頷き、涙と鼻水でぐしゃぐしゃに濡らした幸雄の顔を澄んだ目で見つめた。
幸雄の耳元で『助けて下さったのですね』と言った。
耳元だったので呼気だけで十分言っていることは分かった。
幸雄はガクガクと頷いた。
千代の吐息を耳に感じ、全身に鳥肌が立った。
生気を抜かれた人形のように動かない千代と、生を取り戻した千代とでは、その生々しさは雲泥の差だった。
『すみませんでした』
今度は吐息が耳の穴に吹き込まれ、今度はブルブルと首を振った。
「良かった、本当に、良かった」
幸雄は子供のように腕で目をこすっている。

 暦に目をやり、あれから長い時が経過していることを知った。
その間幸雄が付きっきりで介護してくれたことを悟った。
もちろんその間の記憶はない。にもかかわらず、体調はほぼ万全だ。
千代の体調管理に幸雄が心血を注いだことを物語っていた。
千代は感動した。
そして自分が幸雄のベッドに寝ていること、全裸であること、幸雄が下着姿であること、
油の瓶やくず入れを見て、夜な夜な何をしていたかをも察した。
「もう、だめですっ、死んじゃ、絶対にだめですから」
涙ながらに訴え、千代にすがりついた。
幸雄に対して愛おしさが込み上げた。
甘やかされて育てられ少々我が強いが、豊かな感性や知性を持ち合わせ、常識人であり、なかなかの思想家でもある。
父親による逆説的な影響なのかもしれない。
良いところは受け継ぎ、悪いところは反発したのだろう。
幸雄の性格から考えると、始めは千代に対し性的欲望を必死で制御し、介護のみに専念していたはずだ。
だがそこは血気盛んな若者、性に対して強い欲求があるのは当然のことだ。
逆に持ち合わせていない方が異常とも言えるからだ。
千代を裸にする機会は頻繁にあった。
とうとう堪えきれなくて、自慰行為の対象として人形のように動かぬ千代の肉体を使用することとなった。

 覚醒したといっても、養生が必要であることは歴然である。
散々泣きじゃくったあと、千代に横になるよう優しく言い、幸雄はそっと出て行った。



ネット妻@
baku 2/26(火) 21:35:23 No.20080226213523 削除
私(吉田辰夫 47歳)は、営業職です。
その日、取引先の沖田部長(55歳)と、新製品についての商談をし、そのあと一杯飲もうという予定になっておりました。

「沖田部長、最近、ゴルフは、どうです?」
「いや〜、ずっといってないんだよね。仕事終わると、家に直行で。」
沖田部長は、単身赴任で、一人マンションに住んでいます。
「直行ですか?ゴルフより楽しいことが、あるとか」
「そうなんだよ。あ、吉田君、よかったら、僕の家で、のまないか?」
「よろしいんですか?わたしはかまいませんよ」
「そかそか、見せたいものがあるし。じゃ、タクシー拾おう」

私は、直感で、みせたいものというのが、ゴルフ好きの沖田部長がゴルフよりのめりこんでいるものだとすぐわかりました。

「さあ、遠慮せず、くつろいでくれ」
部屋につくと、部長は飲み物の支度を、はじめました。
「あ、部長、手伝います」
「いいからいいから、きょうは、きみがお客さんだから」

ソファに座ると、ビールと、チーズ、ナッツがテーブルにおかれました。
「きみにね、みせたいものっていうのは、ちょっとした自慢なんだが」といい、壁よりの大きな木製デスクの上を指さした。
「パソコンですか?」
「そそ、最近、ネットに凝りだしてね」
「良いサイトでも、みつけられたんですね」
「いや〜、サイトっていうよりも」

部長は、たちあがり、パソコンを起動させ、
「お、ログインしてるな」と、つぶやいた。

ログインときき私は、ピンときた。
「部長、メッセンジャーですね」
「そそ」
「親しい人ができたとか」
「親しい、たしかにそうかもしれない。吉田くんさ、人妻のハダカって、みたことある?」
突然の質問に、すぐに返事ができず、
「え、あ、、えっと、ないです」
「なかなかそういう機会って、ないもんね。で、見たい?」
「あ、はい、正直、私も男ですから」
「うんうん、ログインしてるayakoっていうのは人妻なんだが、きょうきみに見せたいものっていうのは、このayakoなんだよ」
「まさか、そのひとのハダカを?」
「ハダカだけではないが、私の言うことならなんでもきく。ふふ、ちょっとドキドキしてきただろ」
「はい、かなりドキドキです」
「よし、はじめようかな」

と、沖田部長は、ayakoに「今、帰った」と、メッセージを送った。

ayako 「おかえりなさいませ」
沖田 「ライブカメラが、ついてないぞ」
ayako 「すいません、今つけます」

まもなく画面の右端に、相手からの映像が届いた。



卒業後 71
BJ 2/26(火) 19:02:13 No.20080226190213 削除


 私と明子が赤嶺のマンションに立ったとき、すでに時刻は深夜だった。
「カードキーは?」
「ないけど、暗証番号を覚えてるから大丈夫」
 明子が玄関横のセキュリティーに向き合っている間、私はしばし佇んで、少し前に訪れたときにそうしたように、赤嶺の部屋を見上げた。
 あのときは、妻に聞きたいことでいっぱいだった。今は―――妻に言いたいことがたくさんある。

 『卒業』という映画がある。私と妻が初めて席を並べて見た映画だ。妻はそのときすでに幾度もその映画を見ていた。ラストシーンに行き着くたびに、ひどく悲しい気持ちになるのだ、と彼女は言った。それでも、また見てしまうのだと。
 なぜ妻はあの日、あの映画を私と一緒に見ることを望んだのだろう。妻はあの映画に何を見ているのだろう。私には分からない。
 分からないけれど、私は今夜、『卒業』のベンジャミンにならなくてはならない。その先に何が待っていようと、彼女を迎えにいかなければならない。彼女もきっとそれを待っていてくれる、そのことをほかの誰でもなく、自分自身でつよく信じて。

 硝子扉が開く。
 私たちは目で合図しあって、マンションの中に入った。


 赤嶺の部屋は6階にあった。
 ドアベルを押す。明子の話では、今夜、赤嶺はいないのだから、応答に出るとすれば、妻しかいない。
 けれど、しばらく待っても何の反応もなかった。
「―――あけるわね」
 明子が鍵を差し込む。
 ドアが開いた。
 真っ暗だ。室内には明かりひとつついていない。けれど、暖房は暑いほど効いていて、なかに人がいることはたしかだ。
 手探りで、廊下の照明のスイッチを押した。
「瑞希―――」
 呼びかけたが、返事はない。
「奥の部屋よ」
 明子が言う。
 靴を脱がなくていい洋式の部屋に、私は足を踏み入れた。
 暗色で統一されたリビング―――数年前に訪れたときとあまり変化はない―――を素通りして、明子に示された奥の部屋へ向かう。
「瑞希」
 ドアの前でもう一度、名を呼んだ。やはり、返事はない。
 不穏なリズムで、胸が高鳴る。
「あけるよ」
 言いながら、ドアノブをまわした。

 その部屋も、やはり真っ暗だった。夜の闇がそのまま入り込んでいるような漆黒の中で、閉ざされたカーテンの前、窓辺に置かれたベッドの白いシーツが浮かび上がっている。

 その上に―――妻はいた。ひっそりとベッドに座っていた。

 ドアを開けた私に反応する様子もなく、ぼんやりと座り込んだ妻の横顔は、まるで別人のように白く冴えていた。

 置き人形のように。

 先程とは別種の不安に襲われて、私は妻のもとへ駆け寄った。
 抱きしめた。


「ごめん―――」


 口からあふれでてきたのは、そんな言葉だった。そんな言葉しかなかった。けれどそれは私がもっとも言いたかった言葉であり、言わなければならない言葉だったのだろう。情けないことに、そのときにはもう、この不甲斐ないベンジャミンの目からは、涙が零れていた。泣きながら、私は何度も「ごめん、ごめん」と妻に詫びつづけていた。

 腕の中でうごめくものがあった。
 暗闇に仄白くひかる妻の顔が、私を見上げていた。
 私を見ていた。画面越しでない、今ここにたしかにいる妻の瞳が。この瞳が、私はずっと好きだった。瑞々しい希(のぞみ)。その名前を初めて目にしたときに、私の胸が感じた何かが、そのまま色となって宿ったようなこの瞳に、私は虜になったのだ。

「あなた―――」

 目の前でそう呼ばれることがこれほど嬉しいことだったということに、私は初めて気がつき、また情けなく涙を流した。
 力いっぱい締めつけた、細い、あまりにも細い肢体の、その腕が私の襟首にしがみついた。

「あなた―――ごめんなさい、ごめんなさい」

 口走るように言うその声を聞きながら、私もまた相変わらず謝りつづけた。抱きしめた身体から伝わってくる熱を、全身で感じながら。



「再開の挨拶はそれくらいにして、とりあえず早くここから出ましょう」
 ドアの辺りに立ち尽くしたままの明子が、冷静な言葉を投げた。
「明子―――さん」
 妻の細い声に、明子はやさしい微笑を浮かべた。けれど、その裏側には、何か微妙な不安のようなものが張りついているように見えた。
「彼女の言うとおりだよ。早く、ここから立ち去ろう。俺たちの家に帰らなくちゃ」
 そう言って、ようやく私も―――わらえた。無様な泣き笑いだったが。

 妻はうつむいた。

「帰れません・・・・」
「分かってる。遼一のことだろう」
 見開いた妻の瞳に、私はうなずいて見せた。
「遼一から直接、話を聞いたんだ。遼一には本当にすまないことをした。けれど、遼一はすまながっている。自分のせいで、君がいなくなってしまったと思って、あいつ、泣いていたよ」
 私は妻の手をとった。
「君にも本当に申し訳ないことをした。ずっと、長い間・・・・。もう、絶対に同じ過ちは繰り返さないよ。だから・・・、本当はこんなことを言えた義理じゃないけど、どうか戻ってほしい。君は俺のすべてなんだ。君と、君の子供が」

 掌の中の、小さな手がふるえた。

「私の・・・・・」
「君の、そして俺の子供だ。それなのに信じてあげられなくて、本当にすまなかった。俺が君を不幸にしてしまった。もう絶対に、そんなことはしないと誓うよ。もう一度だけ・・・・俺を信じて、戻ってほしい。君のこと、遼一だって決して恨んでやしない。君が戻ってくることは、遼一の願いでもあるんだ」

 私は言葉を吐き続けた。ただただ必死で。


 あのとき―――あの天橋立の最後の夜、私は彼女から差し伸べられたこの白い手を、握り返すことが出来なかった。そこから、すべては狂い始めたのだった。けれど、今、その手は私の手の中にある。もう二度と放すことは出来なかった。そんなことをすれば、今度死んでしまうのは私だった。それを知っていたから―――、私はどれだけみっともなくても、必死の言葉を並べ続けないわけにはいかないのだ。


「あなた、ごめんなさい・・・・」

 私の手を握り返しながら、妻は呟いた。

「ごめんなさい。本当にごめんなさい。逃げてしまって・・・あなたからも、遼一君からも逃げてしまって・・・・私、最低な女です。そうじゃない・・・・ずっと最低だったけれど、今ではもう・・・・。あなたが迎えにきてくれて、本当にうれしいです。私は最低だけれど、不幸なんかじゃないです。私は幸せです。でも・・・・私にはそれに見合う価値はありません」
「そんなことはない。幸せというのなら、俺は瑞希からありったけの幸せをもらった。自分からは何も与えずに、君からあらゆるものを奪ったんだ」


 瑞々しい希。
 何という―――残酷なことをしてしまったのだろう。
 痛々しいほどか細い、眼前のこの女から私はそれを与えられ、あまつさえ奪い、一方の彼女は何もかもを失くしてしまった。


「もう何も言わないでくれ。俺と一緒に来てくれ。この一ヶ月の事情はすべて知っているんだ。謝らなければならないのは君じゃなくて、俺なんだよ。償わせてくれ。そのためには何でもする。何だって出来る」
 まだ動かない妻の薄い肩に腕をまわして、私は彼女をベッドから下ろした。
 細すぎる足首が床に降り立った瞬間、ふらりと身体が揺れ、私の胸にもたれた。


 ―――そのときだった。
 不意に、目の前が明るくなった。室内の明かりが灯ったのだ。


 明るくなった視界が、今日ようやく妻の姿形をくっきりとらえた。
 妻はYシャツ一枚を羽織っただけの、ほとんど素裸にちかい格好だった。そのとき初めて、私はそのことに気づいた。


 ひらかれている妻の白い胸―――
 その双つの柔らかな頂きに、ピアスが嵌まっていた。
 ピアスには銀製のペンダントがそれぞれぶら下がっている。禍々しい髑髏のペンダント。その重みで、以前はつんと上向きに張っていた乳房が、わずかに下に垂れていた。


 声もなくそれを見、それからドアのほうへ私は視線を向けた。

 明子が驚愕の表情を浮かべていた。その見つめる先には、赤嶺の姿があった。



羞恥92
風水 2/26(火) 10:28:06 No.20080226102806 削除



「いやはや 何ともお話づらいのですが・・・わたくし 結婚しておりまして子供も一人おるんですが・・・」
「はい・・・EDの件ですか?」

「いえいえ おかげさまでそっち系の心配は無いのですが・・・
 わたくしの妻は 裕美子と申しまして 栗本先生の病院に通っておるんですよ・・・
 そうなんです 先生と同級生の 伊藤裕美子でございます。」

 栗本先生はコーヒーを飲んでいた手を止め 目を見開き
「ほ、ほぅ ゆみちゃんの旦那様でしたか・・・ 
 いやぁーびっくりしました ・・・い、いや奇遇ですね」
 本当に驚いたのでしょう 先程までの落ち着いたしゃべり方とは別人です。

「あっ 奥さんに向かって ゆみちゃん だなんて 失礼」
「いえ とんでもありません そのままで結構です」

「矢野さん 奥さんに会うの ほんとに10何年振りでした 
 昔の面影残っている というより ほとんど変わってないですよ すぐ分かりましたから
 で、ゆみちゃんのご主人が私に相談とは?」

「他言無用でお願いしたいのですが・・・・
 妻 裕美子は 定期的にこちらで子宮頸癌の検診を受ける予定だと聞いております」
「ええ 前回その兆候らしきものが有ったんで 年齢的にも半年に1回の検診を勧めました」

「そう聞いています で 笑わないで頂きたいのですが・・・
 妻の診察に 是非私を立ち会わせて欲しいのです。」
「そ、それは診察に何か不安が有って ご主人が立ち会いたい と言うことでしょうか?」
「いえ とんでもありません 癌に対する不安は有ります しかし 診察自体に不安が有るわけではありません」
「それでは・・・」

「お恥ずかしながら 私の性的な欲望でございます・・・
 妻が産婦人科でどんな診察を受けるのか・・・単にそれが見たい という欲求でございます」
「・・・い、いや そ、それは・・・」
「婦人科の診察を受けた後 妻の性欲は通常ではありません
 私も診察の話を聞き 普段以上に妻を求めてしまいます」
「・・な、なるほど 確かにそのようなご夫婦はいらっしゃいます・・・し、しかしねぇ」

 思いを栗本先生に明かした私は 既に落ち着いていました なんとか先生に了承をもらうため
「栗本先生 病院の診察に素人が立ち会うことなど 不謹慎で違法な事だと思います
 そこで 栗本先生には 妻の定期的な検診 とは思わず・・・・
 あくまで 性的なプレーとして妻を診察して貰いたいのです」



悪夢 その100
ハジ 2/25(月) 22:08:03 No.20080225220803 削除

「奥さんは少年たちの注意を惹くためにあのような破廉恥なふるまい―――自慰行為をおこなったのだ。浩志くんを守るために」

 羽生はずいぶん早くからそのことを確信していたようでした。言われてみれば、思い当たることばかりです。

『不自然ですな』
『いくら命令されたとはいえ―――まるで自分ひとりに注目を集めたいかのような』
『誰かが近くにいるようだ』

 映像をみながら、羽生が口走った言葉です。彼はその時点で正確に事実を指摘していたのです。
 彼にしては珍しくそれを誇ることをしなかったのは、話の流れを止めたくなかったからでしょうか。

「もう、おわかりでしょう。秋穂先生の不可解な言動の数々―――そのいづれも根底にあるのは、浩志くんへの献身―――そう、無限の愛」

 まるで、詩でも諳んじるような調子で羽生はつづけます。

「レイプ騒動を否定されるのも、まさに浩志くんのため。彼女―――いえ、あなたがた夫婦は今回の事件に息子さんの関与を疑っている。浩志くんを加害者にしないようにするには、事件自体をなかったことにしたほうが都合がよい―――ちがいますか」

 突然、話を振られた私はすぐには返事ができません。ましてや、そのことについて妻自身がどう考えているのか――問い詰めたところで、おそらく彼女は答えてはくれないにちがいありません。―――しかし、羽生の言葉には説得力がありすぎました。

 ―――秋穂なら、やりかねない

 私は半分諦めるような気持ちで、そう思いました。彼女の気性からして―――また、近頃の言動から、それは十分にありえると踏んだのです。
 どちからというと、物事に拘泥することなく、何事に対しても淡白な印象の妻。しかし、この数日間における息子、浩志に対する執着ははじめてみせるものでした。

 秋穂は―――やはり何も答えてくれません。肯定も否定もしません。それは無関心なのか、達観なのか。ただただ静観を決め込んでいます。

「なんと美しい親子愛―――普通であれば、そう称えられるべきでしょう。しかし―――」

 羽生は私だけに聞こえる声で言いました。無反応で攻めどころのない妻よりも、わかりやすい私を標的に選んだようでした。

「この場合の母親と息子は血が繋がっていない。もう少し、うがった見方もあるでしょうな」

 顔色を変える私に羽生は含み笑いで応えました。

 第五の人物―――最初、羽生は犯行現場を間近で見ていた人間をこう呼んでいました。それはいかにも、今回の件の黒幕的存在を匂わせるものであり、直前の

『誰かの命令で、我々と一緒ににビデオを鑑賞した?』
『最近、ご主人以外の男性と関係をもたれたことは?』

 二つのクエスチョンからも、羽生がその人物と妻との関係を疑っているのは明らかです。
 それが息子の浩志だったとすると―――
 
 浩志と秋穂―――母と子のただならぬ関係。嫌でも、それを連想してしまいます。
 そして暗い想像をたくましくする私に羽生はこう告げるのです。

「本当のことを知りたいですか」

 それは喉元にひやりとしたものをあてがわれたようで―――私はまるで酸欠のように、大きく喘ぎました。
 私の反応をたっぷり楽しんでから、羽生は口もとを歪めました。

「残念ながら、奥さんと息子さんは―――」





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千代に八千代に
信定 2/25(月) 11:56:26 No.20080225115626 削除
第六十九章

 千代と二人きりの生活が始まった。
食事を与えなくてはならない。
大学に行くまではずっと寮に入っていたので自炊することが多かった。
おのずと料理は覚えた。
強面とも言える外観からは想像もできないが、手先はなかなか器用である。
洗濯もこまめに行った。
料理はレパートリーが広く、自分自身の食事に関しては問題はない。
しかし千代に関しては問題だらけであった。
食事を与えても口から吐き出してしまう事があるので、手で押えながら無理やり食べさせるしかなかった。
それは風呂に入れる時よりも重労働であった。
あらゆることを付きっきりで行い、幸雄は全てを犠牲にして奉仕した。
千代はまるで緑児のようであった。

 幸雄は徐々に要領を得てきた。
湯船の中では若さにまかせ、欲望を立て続けに放出させたあの日以来、
風呂場では千代を抱いたまま自慰行為を行うのが常習となった。
何をしても拒否せず、愛した女性が自分の思い通りとなるのだ。
もはや性欲に関しては抑えることは出来なかった。
風呂場では女の部分を子細に観察しながら洗った。
遠慮がちにではあるが、千代の身体を弄くりながらも欲望の赴くままその行為に耽った。
夜は寝ている千代の寝間着を捲り上げて見ながらそれをした。
日に何度か行う、終えた後の心地よい倦怠感は幸雄を大胆な気分にさせた。
同時によこしまな考えがグングンと首をもたげた。
それを自覚するが、もう思いのままで良いと思うようになった。

 千代の横に寝るようになった。
始めは寝間着に勃起した男根を擦りつけて励んでいたが、
そのうち裾を捲り上げ、腿や下着に擦りつけて快感を得るようになった。
終えたあと抱きしめたまま朝を迎えることもあった。
とうとう千代には寝間着を着せず、自分も褌を解いて寝るようになった。
千代を抱きかかえ、幸雄にとって一番性欲を掻き立てる、太ももの間に差し込んで行為を行うようになった。
始めは恐る恐る触れていた乳房に唇を押し当て、先端を口に含むこともした。

 背徳感を抱きながらも幸雄はどんどん大胆になっていった。
始めは陰毛をしゃぶった。
おそるおそる柔らかい部分に舌を這わせる。
やがて太ももを抱きかかえて、指で広げたそこの内も外も唇と舌で味わうようになった。
腰の下に枕を入れ、後ろの窄まりまでも舐めしゃぶった。
女の構造は完全に把握した。
ベッドの上で両足を開いたまま押さえつけ、そこに巨根を擦りつけることもした。
もう挿入する場所も手探りで分かる。
千代の顔を舐め回しながら「ほら、もう僕にまかせればいいよ」などとうわずった声で囁き、
顔を赤くしたまま入れる真似をして興奮するのであった。
先端をその部分に押し当てて挿入しとうとするが、さすがにまだ残っていた理性が押し止めることになる。
その変わりに己の巨根に油を塗りたくり、後ろから括れた腰を掴み、
やはり油を塗った千代の腹や尻にそれを擦りつけながら、腰をぶつける自慰行為を始めるようになった。
俯せにして滑らかな千代の足に毛むくじゃらの太い足を絡め、官能的な太ももをピタリと密着させ、
尻と言わず太ももと言わず、そこに油まみれの男根を差し込み、
乳房を握りしめたままベッドを軋ませ、女のような呻き声を上げるのである。
今度は仰向けにして、体重がかからないよう配慮してのしかかり、千代の両足を自分の腰に巻き付ける。
なかなか巻き付かないので「ごめんね、ごめんね」と言いながら、解けないよう褌で千代の足を縛ったりもした。
そのまま油をまぶした花弁にねっとりと男根を擦りつけ、肌を密着させ、なよなよと腰をくねらせるのである。
やがて幸雄は腰が砕けるような鋭い快感を得るのであった。
風呂場で抱きかかえたままさせる排尿行為も愉楽の一つになった。
便所では便通を促すために、後ろの窄まりを唾液で濡らした指で長時間刺激してやったりもした。
目を血走らせそれさえも覗き込むようになった。
どんどんと変質的な性質が造られてゆく自分に嫌悪感を募らせ、恐れおののくようになった。
そう感じる反面、愛した女性の体を使っての射精行為はもう制御できなくなっていた。

 翌年、日本国憲法が公布された。
旧態依然とした事柄全てにメスを入れる日本の最高権力者、マッカーサーが強制する旧弊を打ち破る民主化は、
一般国民にとってはまさしく開放であった。
類を見ない上からの革命が行われたのである。
”マッカーサーは日本のへそである。なぜなら朕の上にあるから”
などと、今までは考えられなかった冗談さえ公然と紙面に載った。
アメリカはビキニ環礁で原爆の実験を行った。
信じられないことに日本に原爆を投下した一年後だった。
日本に二発も落とした原爆のデータ収集に成功し、更なる破壊力を求めて実行したのである。
他国の思惑など今は眼中にない日本国民は、哀しみを乗り越え戦後の復興に全力を注いだ。

 千代と二人っきりの生活は続いた。
その間八代から連絡が入った。
空襲で足に大怪我をして動けない状態だという。
幸雄はふんだんに金を送り養生するよう申しつけた。
心配をかけないよう、千代のことは入院中の横山には伝えていなかった。
秘密の行為は言うまでもない。
無事退院した横山が挨拶に来た。
たまに幸雄が見舞いに来るが、千代は一回も来なかった。
妙だなとは思っていたが、そのことを幸雄に聞くわけにもいかない。
そして自分が入院した日に悲劇が起こっていたことを知り、横山は衝撃を受けた。
入院中に千代が見舞いにきてくれないことに対し、とても寂しい思いをしていた。
毎日そんなことばかり考えていた自分を呪った。
ベッドの上で変わり果てた姿にすがりついて横山は泣いた。
横山にとって千代は命の恩人であり、年はずっと下だが心から尊敬している女性である。
空襲で多くの人を助けた超人的な千代が、こんなことになろうとは思ってもいなかった。
庄次郎のいる世界へ行きたかったのかも知れない。
そう思う横山は新たな涙を流した。
千代との約束で空襲でのことは誰にも言っていない。
横山はその快挙を声を大にして訴え、日本国民に知らしめたい気分であった。



卒業後 70
BJ 2/24(日) 12:10:02 No.20080224121002 削除

「もう二度と同じことは繰り返さない。誓うよ」

 目の前の明子に―――
 いや、明子の姿をした妻に私は言った。

「瑞希のいない人生はもう考えられない。そうじゃないな、最初の最初からそうだったんだ。・・・・言葉だけじゃ信じてもらえないだろうか」


 明子は何も言わない。ただ、私を静かな目で見つめている。
 私は鞄を引き寄せ、中から退職届の写しを取り出した。


「この前、遼一がやってきた日の翌々日にこれを会社に出したよ。今日が仕事納めだった。―――明日、大阪に戻る」


 赤嶺のもとへ。
 妻のもとへ。
 どうしても私は行かなくてはならないから。


「辞めたの―――会社」


 明子が目を丸くした。


「瑞希がいなくなれば、働く意味も生きていく意味も無い。俺の唯一の宝なんだ」
「本気なのね?」
「本気だよ。どうか信じてほしい」


 明子はしばし黙って、考え込むような表情をした。
 それから、言った。


「あなたの言葉にはふたつ間違いがあるわ」
「何・・・・だろう?」
「唯一の宝、じゃないわ。あなたにはもう子供がいるのよ」
「ああ・・・そうだね。俺の、子供だ」
「そうよ。あなたの子供よ」


 明子は―――わらった。


「もうひとつは?」
「明日大阪へ戻る、じゃないわ。今日、今から行くのよ。急げばまだ新幹線に間に合う時刻だもの。―――行きましょう」



 ・・・それから一時間後にはもう、私たちは車中の人になっていた。

「なんとか最終に間に合ってよかった」
「新大阪に着いたら、直接、赤嶺のマンションに向かいましょう。これ、以前もらっていた彼の部屋の合鍵よ」

 明子が鍵を取り出して、私に見せた。

「今日、赤嶺は仕事で帰宅しないはず。部屋にいるのは瑞希さんだけよ」

 心臓がどきんとした。
 妻とはもう一ヶ月会っていない。

「君は―――あのDVDを赤嶺の部屋から持ち出したんだろう? その合鍵を使って」
「そうよ」
「そのとき、瑞希には会ったのか?」
「会ったわ」
「どうだった?」
「私のことは覚えていてくれたけど、精神的にかなり衰弱していたし、あまり話が出来る状態じゃなかった。事情も詳しく教えてくれなかったし、その気もなかったみたい。ただ、“子供を産む”ってそれだけ繰り返し言ってたわ。そのこと以外はもう、頭の中にはないんだと思う。あのひとは“おかあさん”になったのよ。本当に、それだけに」

 赤嶺も、言っていた。

 ――― 一時期はかなり精神的に錯乱していたけれど、最近は落ち着いてきたようでね。今は腹の子供を無事に産むことだけを考えている。


「瑞希にとって、母親になることはどんな意味があるんだろう?」
「分からないわ。私も子供を産んだことはないし。でも、瑞希さんにとっては特別な意味を持っているんでしょう」
「俺は・・・・正直言ってよく分からないんだ。子供を持つということが、父親になるということが、どういうことなのか今まで考えたことがなかったから」
「世間のたいていの父親もそんなものかもしれないわよ」明子は深い表情を瞳の中に浮かべた。「だけど、これだけは間違えないで。瑞希さんにとっての子供の意味は、あなたの子供だからってところに重みがあるの」
「分かってるよ」
「本当に?」
「ああ、分かってる。それで・・・瑞希の身体のほうはどうなんだろう。元気で―――無事でいるんだろうか」


 ―――あんたの身体に手を入れさせてもらってええかな。


 あの、佐々木の言葉が脳裏に蘇る。

「心配しないで。今のところは大丈夫よ」明子は上目遣いに私を見た。「そもそもあいつらの言葉がどれだけ本気で語られたものだか分かりはしないけど、出産前の身体にそんなことをして、お医者さんに見つかったら、それこそ会社倒産を招く事態になるもの。それに・・・どちらにせよ―――あなたを連れてくるにせよ、来ないにせよ、知ってしまった以上は私、絶対にそんなことさせなかった」
「君はどうしてそこまでしてくれるんだ。ほとんど付き合いもなかった人間に対して」
 私の問いかけに、明子は猫のような表情で一言「女だからよ」と答えた。意味のつながりが不明瞭で、単純明快な回答だったが、明子という女性の内面をこれ以上なくあらわした言葉のように思えた。
「ありがとう。本当に感謝してる」
「―――それにね、私、御伽噺のよくある終わり方が好きだったのよ」

 唐突に、明子はそんなことを言った。

「何?」
「“それからふたりは結婚して、いつまでも幸せに暮らしました”っていう、あのお決まりのフレーズ。長い間、どろどろした世界で生きてきたし、私自身もこの先、普通の結婚が出来るかどうかわからないけど、だからこそ、夫婦というものに私なりの理想があるのかもしれない。現実はいつもそううまくいくものじゃないけど、少なくとも、私の目に届くところにいるひとには、そうあってほしい。そうなってほしいの」
「君なら―――出来るよ。君はつよいから」

 心底、そう思っていた。

「ありがとう。あなたもそうなって。誰にも負けないで。自分に―――負けないで」

 私はうなずいた。
 車内アナウンスが、もうすぐ名古屋に到着することを告げていた。


 新大阪に着いてすぐ、タクシーを拾って、赤嶺のマンションに向かった。
「あいつは今夜はいないんだよね?」
「いないはず。そのほうがとりあえず都合がいいわ。早いとこ瑞希さんを連れて、別の場所に移りましょう」
「赤嶺はどんな反応をするだろう」
「読めないわね。だけど、対峙しなくちゃならない。恐れちゃ駄目よ」
「恐れてなんかいないよ。今のあいつには怒りしか感じない」
「そうね。でもやっぱり―――恐れちゃ駄目。決して丸め込まれないで」

 真剣な顔で明子は言った。

「君は―――これからどうなるんだ? 会社での君の立場は?」
「私? 私は大丈夫。どのみち、もうS企画は辞めるつもりだから。いつまでもつづけてられることじゃないし。そろそろ新しい道を探さなきゃ」
 しかし、そのとき私は、暗い車内でも明子の顔に不安な翳が差したのが分かった。
 誰もが―――不安なのだ。
 赤嶺のことを考えた。あいつにも不安はあるのだろうか。あいつが弱っているところなど、私はこれまで見たこともない。

「もう着くわよ」

 考え込む私の耳に、隣で明子の声がした。



羞恥91
風水 2/24(日) 12:08:11 No.20080224120811 削除


 約束の土曜日 私は会社です 朝から仕事にまったく集中できません。
なんとか予定の仕事の半分程度をやっつけて 体調不良を理由に定時少し前に会社を出ました。

 8時までは だいぶ時間が有りましたが 途中手みやげにケーキを買い
栗本先生の『レディースクリニック旁』に向かいました。
病院と通りを挟んだ蕎麦屋で軽く腹ごしらえをし、その隣の喫茶店で時間をつぶすことにします。

 窓際に座り 栗本先生の病院を眺めていると不思議な感覚が湧いてきました。
『裕美子が あの建物の中で下着も取り去り 足を広げて陰部を見られた』

 病院のコンクリート壁の内側では 私にとって非現実な世界が毎日展開しているはずです。

 女性が見知らぬ男性の前で 自ら下着を脱ぎ 足を広げて陰部を観察され 指を入れられる・・・
 一般の男性には 一生の目にする事の出来ない光景でしょう。

 
 妄想の世界に浸っていると あっという間に8時が近づきました。
 会計を済ませ 対面のレディースクリニック旁に向かいます。

 エッチングの施されたガラス戸のエントランス その脇に有るインターフォンを押しました。
「はい どなた様でしょう?」
「栗本先生 矢野でございます。 少し早いですが よろしいでしょうか?」
「大丈夫ですよ 鍵を開けますので中へどうぞ」

 カチャ 鍵の開く音とともに ガラス戸は自動で開きました。
玄関スペースで靴を脱いでいると カチャと 鍵が掛けられたようです。

 スリッパに履き替え待っていると 程なく栗本先生が『診察室』のプレートの有る部屋から出てきました。
「栗本先生 今日は無理言ってすいませんです。」
「いえいえ 別に予定は無かったですから どうぞこちらへ」

 診察室へ入っていく栗本先生 その後をついて行きます。
栗本先生は診察室を通り抜け 奥の応接室へ向かいました。

 診察室を通り抜ける時 私の目にカーテンに囲まれた内診台が飛び込んできました。
じっくり見たかったのですが 最初から変に思われても困るので・・・
横目で目に焼き付け 素知らぬ振りで通り過ぎました。

 応接セットを勧められたので
「失礼します これ おみやげのケーキです 甘い物大丈夫でしたか?」
「はははっ 私甘党なんですよ ありがとうございます さっそくコーヒーでも入れましょう」

 栗本先生はケーキを持って 隣室に消えました。

 数分後ケーキとコーヒーを持ってきた栗本先生
「まー コーヒーでも飲みながら・・・で、相談とは何でしょう 
 たしか プライベートな事とおっしゃいましたよね」

 コーヒーを一口飲み
「はい 何度も迷ったのですが・・・ここまできたのですから 正直に申し上げます」
 私は腹をくくって話し始めました。



卒業後 69
BJ 2/22(金) 19:14:25 No.20080222191425 削除

 パソコンの画面には、絶頂に達し、そのまま意識を失った妻の顔が大写しになっている。

 映像はそこで静止していた。

 声も出せず、動くことも出来ないまま、私はその妻の表情を眺めていた。
「―――コーヒーいれようかな。キッチン使わせてもらうわね」
 明子が立ち上がり、やがてカップをふたつ抱えて戻ってきた。
 差し出されたカップを、私は黙って受け取る。
 そんな私の表情を、明子は依然としてあの観察するような目で見ていた。
「そろそろ・・・・教えてもらえないか」
「何を?」
「君がわざわざ東京までやってきて、こんなものを俺に見せたわけだよ。―――まさか、S企画の新商品の感想を俺に聞きに来たわけじゃないんだろ」
 それはもちろん皮肉だった。言った自分が一番傷つく皮肉。しかし、明子は静かに私を見返して「当たってるわよ、それ」と言った。
「何だと」
「感想を聞きたい、ってところだけね」
「どうして・・・・」
「どうしても。答えて。あなたはあの映像を見て、どう感じたの?」
 怒鳴り散らしたいほど気分の悪い問いだった。けれどそう口にする明子の表情はあまりにも真剣で、私は気を呑まれた。
「吐き気がした。胸が悪くなった。赤嶺と、それからS企画の人間全員を殺してやりたくなった。これで充分か?」
「そうね。充分よ」
 明子は手に持ったカップを正座した膝の辺りに押し当て、うつむいた。
「正直に言うわ。最初、赤嶺が奥さんをモデルにビデオを撮っていると知ったとき、私は、それがあなたの要望でもあるのかと思ったの」
「俺の・・・・要望?」

 そんな、馬鹿な。

「二年前、あなたは奥さんを欺いて、赤嶺に抱かせようとした。その件に関しては、私も片棒担いでいるから偉そうなことは言えないけど・・・・。こんな職業をしているから余計分かる、ひとの欲望ってどこまでも底が無いものよ。欲望が欲望を生み、次第次第にエスカレートしていく。現に去年の夏、天橋立で、あなたはまた奥さんを赤嶺に委ねてしまったんでしょう?」
「だからと言って・・・・・妻を、瑞希をAVに出演させようなんて、そんなこと、本気で、俺が望むと思ったのか?」
「分からないわ。私、あなたのことよく知らないもの」
 にべもなく、明子はそう切り返した。
「それにあなたには赤嶺がいた。あれほどひとの心を読み取って、巧みに唆していく男を私は他に知らないわ。自分が操られていることにも気づかずに、赤嶺の意のままに動いている人間を私は何人も見てきたもの」
「あいつは・・・・・いったい何を考えているんだろう?」
「さあね。けれど、あなたとは違った形で、赤嶺が奥さんにつよく執着していることだけは分かっているわ。信じられないくらい、強引な手口まで使ってね」
 明子はため息をついた。
「最初の質問にまだ答えてもらってないな。君はどうしてあのビデオを俺に見せたんだ?」
「言ったでしょ。あなたの感想を聞くため。というよりも、あなたの反応を見るためね。それ次第で、私はこれからの私の態度を決めなくちゃいけないから」
「意味が分からない」

 深く澄んだ目で、明子は私を見つめた。

「たしかに赤嶺は酷いことをしている。けれど、あなたはそんな赤嶺の危うさを知りながら、ずっと長い間、奥さんを彼に預けてきたんでしょう? いえ、赤嶺がああいう人間だからこそ、あなたはその分スリルを味わうことが出来たんじゃないかしら。だけど、それは奥さんが望んだことじゃなかった。たとえ、彼女の承諾があったとしても、肉体的な痛みが伴わなかったとしても、これはドメスティック・バイオレンスに近いものがあると私は思うの。ひとりの女としての意見よ」


 ドメスティック・バイオレンス―――家庭内暴力。
 明子が口にしたその重い言葉に、私は打たれた。


「私は―――今のあなたの望みを叶えてあげられる。あなたと奥さんを会わせてあげられるわ。それはすべてを捨てたつもりの奥さんにとっても、心の底から望んでいることかもしれない。だけど、それが本当にいいことなのかどうか、私には分からないの」
「俺が・・・・・瑞希の夫としてふさわしくないと言いたいのか」
「将来的な話よ。―――いま、あなたが奥さんに会えば、彼女は救われるかもしれない。会って、子供のことや、遼一君のことをきちんと話せばね。だけど・・・・」

 明子の言わんとすることが私にはようやく察せられた。

「将来的な話の意味が分かったよ。君は俺がいつか・・・また同じことを繰り返すと疑っているんだ。現に・・・去年のことがあるから」
「一度幸福を味合わせてから、その幸福に裏切られるのは、最初から絶望の中にいるよりも辛いことよ」


 その言葉に、私は黙り込むしかなかった。
 明子はそんな私をじっと見つめていた。
 それから、いきなりこんなことを言った。


「私ね、二年前の奥飛騨のとき、一度だけ、奥さんとふたりきりで話したことがあるの」
「どんな・・・・話?」
「昔話よ。その頃の私は、赤嶺がつよく関心を見せている奥さん―――瑞希さんがどういうひとなのか、興味を持ってたの。だから、品がないけれど、瑞希さんにあれこれ尋ねたわ。彼女は自分のことを話すのが好きじゃないみたいだったけど・・・・。そのとき聞いたのが、昔、京都の旅館で仲居をしていた頃の話」

 叔父夫妻の経営していた旅館か。

「瑞希さん、どう見ても客商売向きに見えないから、私、ちょっと驚いちゃって。そう言ったら、彼女も“やっぱり苦手だった”って言うのね。とくに笑顔をつくるのが苦手だったって」

 ふっと明子は過去を思い返すような表情をした。

「女将さん・・・・叔母さんにそのことでいつも怒られていたそうよ。10代のころらしいけど、その叔母さんに呼ばれて、よく鏡の前で笑顔の練習をさせられたと言っていたわ。たまに時間のあるときは、ひとりで鏡を見ながら、笑顔をつくる練習をしていたんですって。“でもどれだけ練習しても、ちっともうまくならなかったんです”―――そう言って、困ったような感じで微笑ったときの瑞希さんの顔を、今でもよく覚えてる」


 私は―――想像した。
 まだ10代の、娘の頃の妻が、鏡台の前にひとり座って、つくった自分の笑みを眺めている光景を。


「瑞希さんはたしかに不器用なひとなのかもしれない。でも彼女は彼女なりに、あなたに対していつも真剣で、一生懸命だったと思うの。そう思うから―――、私はこれ以上、彼女を傷つける真似はしたくない」
「それじゃあ・・・・、今のまま瑞希を放っておくと君は言うのか」
「そんなことは言わないわ。あのAVにしろ、やり過ぎもいいところだし。最低限の約束だけは守られているけれど」
「約束?」

 ビデオの中でも、たしか、そんな言葉が出てきた。

「いまAVと言ったけど、あれは赤嶺と交わした契約の手付けのようなものなの。瑞希さんに最後の覚悟を促すため―――といっていいのかしら。だから、あの映像は尻切れとんぼで終わってる。おかしいと思わなかった? “本番”がないなんて」

 たしかに、あれだけ酷く責められながら、妻が挿入されるシーンはなかった。

「それは最初の赤嶺と瑞希さんとの約束にそうあったから。妊娠初期のセックスはご法度でしょう」
「だけど、ある意味それ以上にひどいやり方だったじゃないか」
「たぶん瑞希さんは、AVなんて見たこともないと思う。ただセックスを撮影したビデオくらいの知識しかなかったんじゃない? 赤嶺との約束では、出産まで挿入場面の撮影はなしということになっていたし、あの映像の最初は本当に“面接”のような気持ちだったんじゃないかな。たしかに最低限守るべきところはたしかに守られたけど、逆にそのことが脅しにもなってたのね。遼一君のときもそうだわ。脅したり、言葉で責めたりしながら、最後の一線だけは強制しなかった」
「だからどうだと言うんだ? あいつのやってることは無茶苦茶だ。瑞希は馬鹿だ。どうしてあんな奴のことを信じるんだ」
「―――他に誰もいないからよ。信じる信じないの問題じゃない」

 暗い目で明子は私を見つめた。

「あなたに瑞希さんを馬鹿だという資格はないわ。彼女が妊娠したとき、あなたはその子が自分の子供だと、どうしても信じてあげなかったでしょ」
「状況が状況だったからだよ」
「分かるわ。だけど―――信じてあげてほしかった」

 明子はほっと息をつき、私も黙った。



羞恥90
風水 2/22(金) 12:38:41 No.20080222123841 削除


「そ、そんなの 昔の事よ・・・ともきち君かぁ 何年も会って無いなぁ」
「栗本先生って いい男じゃないの 産婦人科の院長か・・・もてるんだろうな
 裕美子 あの先生にアソコ広げて診察されたんだね」

「・・・あなた そんな事言わないでよ 恥ずかしいじゃない 
 病院なんだから・・・しょうがないでしょ」

 妻の下着に手を入れると暖かいぬめりが
「裕美子 濡れてるよ・・・」
「・・・ぁん・・・」
 
 下着を脱がせ 足を広げる
「栗本先生 裕美子のこんな姿見たんだね・・・指も入れられたんだよな」
「ぁぁぁぁ あなたぁ い、言っちゃいや・・・」

 秘穴に指を入れ ゆっくりかき回し
「こうやって 指入れられたんだ・・・裕美子 濡れたろ」
「ぁぁぁ そ、そんなぁ ぬ、濡れなかったよぅ・・・」
「栗本先生 いいなぁ 俺も裕美子の診察姿 見せて貰いたい・・・」
「ぁぁぁぁ だ、だめぇぇぇ・・・あ、あなた い、入れてぇぇぇぇ」

 極限まで膨張した一物を秘穴に添えると すっと入っていきます 凄い濡れ方です。
「ぁぁぁ ちんちんおっきい・・・気持ちいいぃぃぃ」

 私が放出するまでに 妻は3回程絶頂を迎えたようです。

 ぐったりする妻 時々ピクッと全身が動いています。
「裕美子 どんどん敏感になってきたね」
「あーん あなたのせいよ・・・・疲れちゃう」

「あのさ・・・今度 栗本先生 自宅に招待したら?」
「えーっ やだぁ」
「なんで?」
「んーん なんとなく 恥ずかしい・・・」
「残念だな 裕美子の子供の頃の話とか 聞けるかと思ったんだけど・・・」

「あなた いやらしい事考えてるんでしょ 分かるわよ」
「まっさかー 純粋にそう思ってるだけだよ
 別に お医者さんごっこの事聞きたい訳じゃないよ もう裕美子から聞いたし」
「・・・あやしい・・・」

 そんな会話の日が続き 栗本先生と約束した土曜日はあっという間にやってきました。



千代に八千代に
信定 2/22(金) 11:35:32 No.20080222113532 削除
第六十八章

 手拭いに石鹸を泡立て首から丁寧に洗ってゆく。
首から肩を優しく拭い、腕を洗い、指先まで泡立て、
そっぽを向きそろりと胸を撫で、腹を洗い、腕を回して背中に泡をまぶしていった。
その間、千代の体は軟体動物のように幸雄の腕の中でダラリとしていた。
そして男の自分には絶対にはない、脂肪の柔らかさに生唾を呑み込む。
幸雄はあらぬ方向を見ながら、千代の両足を開き、指に絡めた泡まみれの手拭いを股の間に入れる。
女性の部分は優しく扱わなければならない、ということは知っている。
ため息を何度も漏らしながら、そこはできるだけ丁寧に洗う。

 俯せにしようとした時、幸雄の腕から千代の体が滑り落ちそうになった。
アッと声を出し、慌てて抱き留める。
そして乳房を誤って握ってしまった。
子供の頃に食べたウスベニ某とかいう菓子のように柔らかかった。
乳房は分厚い掌の中にすっぽりと収まった。
掌には乳首がころっと当たる。
その掌は自然とゆっくりと動いていた。
だらしなく口を開いていた幸雄はハッと気付き、慌てて手を離す。

 思った以上に尻が大きく見えるのは、腰が括れているせいであること知った。
同時に千代の腰がこれほど細いとは思いもよらなかった。
その括れた腰に腕を絡め、ぐいと持ち上げる。
なまめかしく尻が浮き上がった。
またしても幸雄の喉が唸った。それは大きな音として聞こえた。
石鹸を掴み、手拭いの中で転がす。
誰もいないのに入り口に視線を泳がせ、思い切って深い切れ込みの中に丸めた手拭いを押し込んでいった。
そこは前よりも念入りに洗ってやった。
次はすらりと伸びた足の番だ。
太ももからふくらはぎ、そして足首には特に強い性欲を覚え、幸雄はうろたえたのであった。
鼻息を荒くし、両方の太ももを撫で、ふくらはぎから足の指先まで丁寧に洗った。
細身の割には全身くまなくしなやかな筋肉がついていることを幸雄は知った。
脂肪に隠れた、著しく発達した内筋に幸雄は舌を巻いたのである。

 丁寧に髪を洗い、顔を拭い、泡を洗い流したあと、湯を流して十分に暖めた檜の床に千代を横たえた。
湯船に千代を入れるため、幸雄はふんどしをはずした。
その部分はずっと前からこの状態だった。
何をどう考えても血液が拡散せず萎えることはなかった。
まるでそれを見つめているように、千代の顔がこちらを向いている。
もちろん千代に分かろうはずもないが、幸雄は顔を赤くして股間を手で隠した。
自分で分かっているのかいないのか、その大きさは尋常ではなく、手で隠しおおせる一物ではなかった。
野球のグラブのような幸雄の大きな掌でもだ。
人の二の腕のようなその根本を掴み、無理やり自分の腹に押し付けた。
先端がへそを隠してしまった。

 抱きかかえたまま湯船に浸かると、腕の中で浮力により千代が丸くなった。
愛おしさがこみ上げる。
両膝をかかえ横抱きにしている千代の濡れた髪が肌をくすぐる。
熱くたぎった男根が柔肌に触れるたび、幸雄のよこしまな部分をズクズクと刺激した。
幸雄は持ってきた歯ブラシに磨き粉を盛った。
千代の後頭部を掴み、顔を自分の方に向ける。
焦点を合わせず、自分を見てくれないことがとても哀しかった。
半開きの唇に指を入れ、口を開かせる。
あまりに柔らかい唇に、幸雄の下半身は唸りを上げていた。
あの字に開いた口の中を覗き込む。
真っ白な歯が綺麗に並んでいる。
肌色の小さな舌が見えた。
突然その唇を吸いしゃぶりたい衝動に駆られたが、辛くも残っている自制心がそれを押し止めた。
それを理性というものならば、消えて無くなればよいとさえ思った。
幸雄の激しい息が千代の口の中に吐き込まれた。

 湯を含もうとしないので難儀だったが、泡だらけの口の中をなんとか洗い流すことができた。
愛する人の全身を磨き上げた幸雄は、大事を成し遂げた達成感と心地よい充実感に浸っていた。
腕の中では糸の切れた操り人形のようだ。
幸雄に余裕が出てきた。
湯の中で千代の体をぐるりと回し、膝の上に後ろ向きに乗せてみた。
感情を高ぶらせた幸雄はゾクゾクさせながら、脇の下からぬるっと腕を入れる。
褐色の腕はまるで大蛇のように白い肌に巻き付いた。
そのまま内股に手を入れて千代の両足を少し広げた。
千代の背中で刺激を与えられ、悲鳴を上げていた二の腕のような男根が、揺れる薄い陰毛の間からそそり立った。
白の太ももと黒いそれとの明暗に目眩がした。
上から覗き込みながら、欲望を吐き出さない限りそれは衰えそうにない、と思った。
何回できるだろうか、とも思った。
その色より少し薄い幸雄の右手はそれを掴み、さすり、左手を千代の濡れた髪の中に潜らせて後頭部まで梳いた。
髪を全部後ろに流し終え、額の生え際まで見せる千代の顔を見つめた。
自然と目は唇に向く。
新鮮な快感を得るため、さするのを右手から左手に変えた。
今まで一物を掴んでいた右手が、食い入るように見つめていた唇に向かった。
”なんて柔らかいんだ”
唇を弄びながら左手の反復運動がおのずと大きくなる。
波立つ湯が浸かっている千代の髪を揺らした。
太い指を少しずつ含ませていった。
荒い息をもう止めることはなかった。
”千代さんは僕がいないとだめなんだ”



飼育室1
湯葉 2/21(木) 22:55:34 No.20080221225534 削除
雨足は小田原駅を過ぎたあたりから一段と強くなってきた。
台風崩れの熱帯性低気圧は、今朝早くに関東地方を縦断し、日本海へと
抜けたが、雨雲は依然、関東地方に残り、大粒の雨をもたらしていた。

徐行運転を告げるアナウンスとともに、ぶるんと車体が震え、「のぞみ」が
減速を始める。
土曜の昼前、車内には家族連れの客が目立った。
シートに長時間拘束されていた子供たちが口々に「えーっ」という、不満の
声をあげる。

「あーあ。勘弁してくれよって感じ、な」
ため息混じりの声は、すぐ隣の座席からも聞こえた。
寺澤髟カが尻ポケットから携帯を取り出していた。
「おれ、唐木に電話してくるわ。遅れそうだって」
「……からき、さん」
窓際に座っていた女が、思い出そうとするように小首をかしげる。
「ああ、郁実は知らないさ。本社の開発三課にいるおれの同期。田舎者は
道に迷いやすいからP駅まで出迎えてやるってさ」
ははっと短く笑い、
「唐変木のくせして、そんな殊勝なことを言いだすからこの大雨だって、
文句を言ってやる」
笑顔のままに、夫の髟カがデッキに立つ。
いつにない饒舌さは、やはり本社への帰還と課長代理というポストが現実の
ものになったからだろう。

連結部の自動ドアの向こうに夫が消えていくのを見届け、寺澤郁実は視線を
窓の外に戻した。
視界を雨滴が斜めに横切っていく。
在来線並みに速度を落としつつも、「のぞみ」は停車することなく、あえぐ
ように終点を目指していた。

新横浜駅を過ぎると強化樹脂の窓の向こうでは、超高層ビルが次第に密度を
増していった。
陰鬱な空と冷たい秋雨のせいか、街に週末のはなやかさは感じられなかった。
頂きに雲を抱いたコンクリートの塊が睥睨するように街を見下ろしている。
………まるで、墓石のよう。
雨煙に白く霞むビル群を見つめながら、郁実は思う。

不意にコーヒーの香りが漂う。
「……どう。……帰ってきたって感じ」
穏やかな声が問いかけてくる。
デッキから戻ってきた髟カの姿が窓ガラスに映っていた。
両手に紙コップを持っている。
「十五年ぶりなんだろ、東京」
コーヒーを受け取りながら、郁実は曖昧に微笑み、「はい」と答えた。

………そう。
絶望という泥濘に沈み、膝を抱えていた日々から、もう十五年が過ぎていた。
……「まだ」というべきかもしれない。傷は今でも時折疼いた。


「のぞみ」は定刻より二十分遅れで東京駅のホームに滑り込んだ。
背にデイパック、片手にキャスター付きの大きな旅行鞄を転がしながら、
郁実と髟カは在来線のホームへと急ぎ足で向かう。
人の多さと、駅構内の変わりように、郁実はたちまち方向感覚をなくした。
「おいおい。本当におのぼりさんだな」
笑いながら髟カが差し出す手に「ごめんなさい」といいながらすがりつく。
いつもの大きな手だ。夫のその手が、今の郁実には唯一の道標だった。


寺澤郁実、三十二歳。夫の髟カは三十五歳。
三年という年の差と、育った町に違いはあれ、髟カも郁実も東京生まれだ。
髟カは中高一貫の私学から都内のK大に進み、卒業後は東京に本社を置く大手
デベロッパーの堀野建設に就職した。
一方の郁実は都立高校を卒業した後、ほどなくして東京を離れている。
なぜ、郁実が京都で一人住まいを始めたのか、その理由を髟カは知らない。
おばんざい屋でアルバイトをしながら学費を貯め、中京区にある昼間定時制の
看護学校に入学したのは二十歳のときだった。
その翌年、女手一つで郁実を育てた母親が他界している。
兄弟はおらず、わずかに母方の遠縁の親戚が山形にいるだけだった。
郁実はそのまま京都市内にある総合病院に准看護婦として勤めた。

きっかけは七年前、京都支社に赴任していた髟カが腎臓結石に罹り、郁実の
勤める病院に入院したことだった。
髟カにしては珍しく、積極的なアプローチだった。
「郁ちゃんがおれの担当になったとき、おれは運命ってやつを信じたね」
後に、酒の酔いに鼻先を赤らめながら、髟カは言った。

ナースステーションの前を通るとき、髟カは艶やかな黒髪を純白のナース帽の
内に束ね、忙しそうに働く郁実の姿をいつも探した。
けっして、今どきの美人ではない。身長も他のナースと比べて小柄だった。
だが、切れ長の瞳に、小づくりの鼻や唇、練り絹のような肌の白さと透明感は、
京人形のようなゆかしさを感じさせた。
そして、表情には、ひたむきさと気弱さの両方が漂っていた。
それが郁実に出逢ったときの髟カの第一印象だった。

郁実にすれば、過剰気味のルーチンワークに担当患者がまた一人追加された
という、それだけの印象しかない。
看護婦に恋心を抱く入院患者は少なくなかった。
郁実も過去に二人の患者から交際を申し込まれたことがあるが、それは患者
たちの勝手な幻想だと思っていた。
病床の患者にやさしく話しかけ、身体の状態を気遣うのはそれが自分たちの
仕事だからだ。
隔離された空間、不安定な精神状態という土壌に芽生える恋心など、健常な
日常に戻れば、たちまち冷めてしまうはずだと思った。

だが、その男は違った。
およそ、ひと月の入院後も三日と空けずに髟カは病院を訪れた。
かつての病室仲間の見舞いという口実だったが、ナースステーションの前の
ロビーで郁実を待っている時間の方が長かった。
「こまります」と、半泣きになりながら郁実は髟カの誘いを断り続けたが、
最後には通用口前の歩道に膝をつかんばかりの勢いでデートを申し込まれた。
勤務交替の時間帯だった。私服姿のナースやドクターが通用口を行き交う。
そうした同僚たちに気づかれないよう、郁実は小声で髟カに言った。
「あ、………あの、ぜったいに、一度だけと約束してください」

初めてのデートは祇園祭の宵山にあたる日だった。
東山のレストランで食事をし、国立博物館で有名寺院の名宝展を観た。
その後は祭り見物の人混みを縫うようにして、鴨川に足を向けた。
浴衣姿のカップルが等間隔で腰を下ろす鴨の河原に、こぶし二つ分ほどの
隙間を空けて郁実たちも座る。
ゆったりしたブルーのサマーセーター、クリーム色のチノパンツ姿の郁実が
西の空を眺めていた。
炎のような日没の色に染まる山鉾に、思わず「きれい」と郁実がもらした。
「わたし、じつは初めてなんです。祇園祭。人の多い場所って苦手だから」
立てた両脚を二本の腕で包むようにし、膝の上に傾けた頬をのせる。
「だから、いつもテレビで見てたんですよ。でも、やっぱり、違いますね。
まぢかで見る方がずっと自然で、きれいです」
それは髟カも実感していた。山鉾ではなく、郁実のことを。
病院の蛍光灯の下で見るより、こうして自然の光の中で見る郁実の方が
ずっと美しく、艶めかしいと思った。

突然、髟カは立ち上がると郁実の方を向き、石だらけの河原に膝をついた。
「……あの、……来年も、再来年も、おれと一緒に来てください」
思わず声に力が入ってしまった。たちまち額に汗が滲む。
「えっ」と、戸惑った顔がこちらに向けられる。
郁実の肩越しに若いカップルが座っていた。ことの成り行きを察したのか、
カップルの女の方が髟カに向かい、親指をぐいっと突き立てた。

髟カの告白は止まらない。
真剣だった。一世一代の賭けだった。
「いつか、おれと、一緒に、そばに、いつまでもいてくれませんか」

男の顔は夕映え以上に赤く染まっていた。
脈絡を欠いた言葉の意味を考えるのに郁実は数秒を要した。
背後からパチパチと拍手の音が聞こえた。
郁実が振り向くと高校生らしいカップルが両手をメガホンのように口元にあて、
「おめでとぉ」と祝福していた。
髟カの方に視線を戻す。
郁実は「そんなぁ」と絶句した。

初めてのデートの日に結婚を申し込む男の神経を疑った。
とっさに頭の中でカルテの注意事項を検索したほどだった。
この半日の間で知ったことといえば、男は有名企業の社員であり、建築士であり、
カツ丼とニシンそばが好物ということくらいだ。
自分はどうか。ただ頷いていただけだったような気がする。
相手のことを何も知らずに求婚してくる髟カの無謀さに呆れた。
そして、呆れながらも、髟カの一途な想いは郁実の心の芯にさざ波を立てた。


在来線のホームに続く階段を重い荷物を抱え、寺澤髟カと郁実が上っていく。
到着した電車から吐き出された人波が狭い階段上で交差する。
髪を黄色く染めた革ジャン姿の若者が、どんっと郁実の肩にぶつかった。
「きゃっ」という悲鳴はホームに響く大音量のアナウンスにかき消された。
髟カが若者を呼び止めようとするが、それより早く、郁実は体勢を立て直し、
「ごめんなさい」と、階段を駆け下りる相手に向かって頭を下げていた。
「違うだろう。ぶつかってきたのはあの革ジャン野郎だ」
「うううん。前を見ていなかったわたしが悪いの。……ごめんなさい」
今度は髟カに頭を下げる。

「ごめんなさい」……。結婚後も変わらない郁実の口癖だった。


交際期間は二年間に及んだ。
お互いに仕事が忙しくなり、重なる休日が少ないということもあったが、
髟カは時間をかけ、郁実との関係を大切に育みたいと思った。
郁実が他の男性に心を許すとは思えなかった。
自惚れではない。その生真面目さが郁実そのものだった。
尽くすタイプというのだろうか。昔の日本映画に登場する女性のように、
男に対していつも控えめで、献身的な雰囲気を漂わせていた。
しかし、それに甘え、性急に郁実の心の中に踏み込めば、何かを壊して
しまうような、一抹の危うさも髟カは感じていた。
それは経験として知ったことだった。

初めて唇を交わしたのは祇園祭の宵山の日からすでに四カ月が過ぎていた。
その日は平日だったが、髟カは仕事の都合をつけ、有給休暇を取った。
どうしても、もう一歩だけ郁実との距離を縮めたかった。

インディゴブルーのストレートジーンズに、モスグリーンのウインドパーカー、
同系色のウォーキングシューズというのがその日の郁実のファッションだった。
背中に紺色のデイパックを担ぎ、洛北に位置するK山への登山道を行く。
太い杉の根が地表に張り出し、蛇のように絡み合っていた。
そんな急峻な山道を二人は手をつなぎながら一歩ずつ登っていく。
山肌は燃え立つほどの紅葉に彩られていた。
錦繍の山並みを背景に、はにかむ郁実の写真を、ときにはタイマーモードで
腕を組み合った二人の写真をデジタルカメラで撮る。
やはり平日に来てよかった、と、髟カは思う。
週末にはハイカーでにぎわうであろうその山道も、今は木の葉擦れの音と
山雀の囀りしか聞こえなかった。

小一時間ほどで山の中腹、山道の脇に設けられた小さな四阿にたどり着いた。
二人は檜材を並べて造られたベンチに並んで座り、谷から吹き上がる秋風に
汗を乾かしていた。

「ああっ、風が気持ちいいですねぇ」
まるで、風呂上がりの子どものように郁実の頬が紅潮していた。
「でも、やっぱり運動不足だな。少し山歩きしただけで、もう汗だくです」
額とうなじの汗をオレンジ色のスポーツタオルで拭いながら笑う。
郁実はペットボトルのお茶をひとくち飲むと、頬と同様に血色を増した唇に
飾り気のない黒の髪ゴムをくわえた。
両手を頭の後ろに回し、セミロングの黒髪を後ろで一つに束ねようとする。

「………郁ちゃん」
髟カは左腕を伸ばし、郁実の左肩を掴んだ。
(え?)と、はにかんだような笑顔が一瞬、凝固する。
そのまま抱き寄せると、唇から髪ゴムが落ちた。
男がしようとしているその先の行為を悟り、郁実の表情が強ばっていく。
咄嗟に結ばれた唇に、髟カは唇を押し当てた。

風が吹き、周辺の木の葉がざわっと揺れた。
真昼のミラーボールのように木漏れ日が動く。

薄く目を開けてみると、郁実の瞳は堅く閉じられ、握られたままの両手は
それぞれの太腿の上に置かれていた。
くの字に折れ、くっつきあっている膝頭が震えている。
二十代の半ばを過ぎようとする女性が、まるで処女のような緊張感を全身に
漲らせていた。
髟カも遊び慣れているわけではないが、郁実の初心な反応には内心、驚きを
感じた。

郁実はそれまで詰めていた息を徐々に鼻孔から漏らした。
光に向かって凛と伸びていた花の茎が、日陰の中でしおれていくように、
髟カの腕の中に体重を預けていく。
それが髟カに精神的な優位性を与えた。
唇をいったん離すと、薄い肩をさらに抱き寄せ、自分の胸元に郁実の横顔を
押し付けるようにする。そして、顔を上向かせた。
長い睫は、またすぐに重なり合ったが、桃色の唇はほんのわずかに開かれ、
真白い歯がこぼれていた。

小さく、艶やかに張った唇だった。
上唇に比べ、ぽってりとした厚みの下唇が情の濃さを思わせた。
もしかして、本当に男を知らないのかもしれない……。
ふっと兆した思いを髟カは一瞬で否定した。
郁実はもうすぐ二十六歳になる。立派な大人の女性だ。
これほどに男を惹きつける魅力をもっていて、処女であるわけがなかった。
この唇も、すでに男の味を知っている。
何人かの男にむさぼられ、そして、この唇で男の……。
思わず湧き上がった黒い妄想を髟カは慌てて打ち消す。
郁実にどんな過去があるにせよ、今、この唇を独占しているのは自分なのだ。
髟カは覆い被さるようにして郁実の柔らかな唇の感触を味わった。

唇を重ねながら、郁実の細い背中に回していた左手を髟カはゆっくりと
滑らせていった。
ウインドパーカーのサラリとした感触はすぐに尽き、ザラリとしたデニム地に
変わる。
華奢なウエストから、まろみを帯びて張り詰めた臀部へと。
立ち姿を背後から見る限りは、まるでスポーツ系の少女のように、小気味よく、
くりっと引き締まった臀部だった。
それが今は違った。自身の体重と硬い木のベンチに圧迫され、双臀の量感が
ことさらに強調されている。
女を感じずにはいられないS字のラインだった。
インディゴブルーのジーンズ越しに郁実の肌の温もりが伝わってくる。
慈しむように臀を撫でていた掌に、指先に、じわりと力を込める。
性戯を予感させる初めての愛撫に郁実が身を捩った。
かまわず、髟カは郁実の臀を掴み寄せた。
ベンチの上、片臀を浮かされる格好になった郁実がくぐもった声をあげる。
刹那、開かれた上下の歯の間に髟カは舌を滑り込ませた。

真空のような一瞬の静寂と逡巡の後、肉の結びつきが、また、じりっと
深まっていく。

郁実は、口腔内に侵入してきた異性の舌におずおずと応えてきた。
歯磨きのペーストだろうか。微かにミントの味がする郁実の熱く、薄い
舌を吸い出し、髟カは舌を絡めた。
舌の表面の微細な粒を刮げ取るように舐め、舌裏の粘膜の感触を味わい、
唇の裏側と健康的な歯茎の間をなぞっていく。

頬にあたる郁実の息が熱く、乱れていた。
互いの唾液が自然に湧きだし、舌の動きで撹拌される。
顔を仰向けている分、混ざり合った唾液は、郁実の口中に流れ込んだ。
ときに、こくっと喉を鳴らし、郁実はそれを飲んでいた。
飲み切れない唾液が二つの唇の間からこぼれ、郁実の口角を濡らす。

キスだけで終わらせるつもりだった。
だが、郁実の従順さは髟カをどこまでも暴走させた。

大きな左手は郁実の小さな頭を支えるような位置にあり、汗に濡れた
黒髪の中に分け入っていた。
もう一方の手はモスグリーンのウインドパーカーの内側に隠れていた。
パーカーの前裾から差し込んだ右手、その指先を髟カは動かした。
郁実が内側に着ていたフランネルシャツのボタンを裾から外していく。
ふさがれた唇の中、(うぅっ)と郁実が声を出した。
そして、首を二度、三度と横に振る。
だが、髟カに行為を中断する気はなかった。
今までの人生で誰よりも恋い焦がれた女性の肉体が今、腕の中にある。
それは、夢想していたより小さく、薄く、頼りなげな肉体だった。
それでいて、女としてのたしかな存在感があった。
その存在を髟カは自分の肉体のすべてで確かめたいと思う。

ボタンを外すたびに指先が郁実の汗ばんだ素肌に触れた。
シャツの下、郁実が身につけていたのは胸元を覆う下着だけだった。
すべてのボタンを外し終え、シャツの前を開くとウインドパーカー内に
籠もっていた熱気がにわかに上昇した。

荒い呼吸とともに上下する鳩尾から、華奢なつくりの肋骨を髟カの掌が
たどっていく。
指先はすぐに胸を覆う硬い布地と細かな刺繍の凹凸を感じた。
郁実の胸のふくらみに五本の指をかぶせる。
グラビアアイドルのような見事さはない。
掌にすっぽりと収まるほどの慎ましい大きさだった。
置いた指をやんわりと丸めていく。
(くぅっ)と郁実の頭が後ろに反った。
左右のふくらみを交互に揉みしだき、ブラジャーを押し上げた。
ウインドパーカーの中、ぷるっとこぼれ出た肉の自然な弾力を、
母性の象徴でもある隆起を再び掌の中に包み、髟カは歪めた。
羽二重餅ほどにきめの細かな肉丘を掌全体で絞り込むようにする。
そして、丘の頂きにあった小さな突起を親指の腹で転がした。
いつか赤児が生命のよりどころとするであろう部分を玩弄する。
親指に人差し指を添わせて摘む。
くいっと引き伸ばして、右に左にと捩る。
たちまち指の中で郁実の乳首が尖り、硬くなっていった。

「あぁっ」
加えられる性感に耐えきれなくなった郁実が唇を振りほどいた。
はぁはぁと空気をむさぼるようにして上気した頸を仰け反らせる。

汗の匂いは気にならなかった。むしろ、女性特有の甘い化粧水やリンスの
匂いと混ざりあい、媚薬のような興奮を髟カにもたらした。
すっかり桜色に染まった、たおやかな頸筋を髟カの唇が追いかける。





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卒業後 68
BJ 2/21(木) 19:50:37 No.20080221195037 削除

 私はずっと憧れていた。

 退屈な毎日の裏側にたしかに存在しているはずの非日常の世界、そのくすんだ色合いに、私はずっと惹きつけられていたのだ。
 赤嶺という男は、だから私にとって非日常の使者だった。他のさまざまな交友関係が絶えていっても、あいつとだけは付き合いがつづいたのは、あいつが引き連れている世界の危うさと妖しさに、抗いがたい魅力があったからだ―――と思う。
 一方で、私にとって妻は・・・・・・とても一言では言えない。彼女は私の日常の保証者、私の唯一の財産。初めて出会ったときから、彼女は静かに、けれど深く、私の心に食い入った。
 初めて出会ったときから―――いや、そうではない。始まりはあのとき、見合いの話を持ってきた親戚から、あの一枚の写真を見せられた瞬間からだった。

 それは板敷きの廊下に立つ、着物を着た女の写真である。両手を前で重ね、すっと背筋を伸ばし、正面からカメラを見つめている生真面目なまなざし。女は笑みを浮かべてはいない。きつく結んだ口元は、女の切れ長の目の印象とあいまって、怒っているように見えるが、事実はそうではない。
 左側の窓から差し込む弱い光が、女の顔に微妙な陰影をつけている。

 写真に写っている女が、後に私の妻となる女だった。私と出会う以前の、今よりも若い妻。私が言うのもおかしいが、写真の女はとても綺麗だった。だが、それだけではない。端正な女の相貌に浮かぶどこか不安気な表情、張りつめた佇まいが妙に心に残った。このとき彼女はいったい何を考えていたのだろう―――そう思わせる何かが写真にはあって、当時の私はそれがとても知りたくなった。実際に彼女と会って、話して、もっともっと彼女のことをよく知りたいと私は思ったのだ。

 今でも私はその写真を大事に持っている。時折、取り出しては眺める。あれはいったい誰が撮った写真だったのだろうか。奇妙なことに、傍らに妻がいないとき、私が脳裏に描く彼女は、今でもこの写真の姿をしている。
 赤嶺と妻は、私にとって対極にある存在だった。一方は薄暗い非日常を、もう一方は日常に在ることの意味を、誰よりも感じさせてくれる存在。
 一昨年の夏、私はふたりをひきあわせた。そのときから、私の世界はぐらぐらと揺れ始めた―――。



 ―――――――――――――――*――――――――――――――

 ふたりがかりで、妻は責められていた。

 まどろっこしい筆を捨てた金倉の口が直接、妻の拡げられた場所へ吸い付き、舌で触れている。
 引き伸ばされた花弁に、剥き絞られた肉芽に、ぽっかり開いた秘口の戸口に、金倉の舌が伸び、ちろちろと舐めまわす。
 若い男は喘ぎ、うねる上半身にとりついて、白い胸の屹立を口に含みながら、汗でぬら光る肌身のあちこちを不器用な手つきで撫でまわしていた。


『え――――あ、、、、、っ』


 仰向けに横たえられ、肘と膝で交差させられた手足を、縛り上げられた狸のように宙に浮かせたままの妻の、淡くけぶるような裸身がくねる。
 紅潮しきり、額に蒼い静脈を浮かせた妻の顔が激しく左右に振りたてられる。
 その口に、若者が口を寄せた。
 もはや抗う気力をすべて喪失させられたような情態の妻は、半開きの唇に差し込まれる舌を、目を白黒させながら受け入れた。
 舌が、絡められた。


『うれしそうやなぁ、奥さん。手練れの中年男と、若い男のふたりに一緒に可愛がってもらえる機会なんて、普通の女はそうそう経験できへんで。AV女優になってよかったなぁ』


 若いホテルボーイとキスをしている妻の横貌を、真横から撮りながら、佐々木が笑い声で言った。
 ふと、妻の頸がかくかくと前後に振れ、若者の口から離れた。

 視線が―――飛んでいた。


『お、この奥さん、もうそろそろ我慢の限界みたいやで。今にもイキそうや』


 佐々木の言葉に、金倉がいっそう気を入れて、妻の秘部を責めだしたのが分かった。
 狂おしげな吟声が高くなる。


『切れます。切れちゃう・・・・あ、あ、切れる・・・・』


 くなくなと頸を揺らしながら、うつつない声で妻が叫んだ。


『そうやない。“気持ちいい”やろう? “****舐められてイキそうです”や。言うてみいや』


 佐々木の声にもうわずかな反応も見せず、妻は『切れる、切れる』とうわごとを言いつづけ、頸を振りつづけていたが、やがて盛り上がった胸がさらに隆起し、白い喉首がぴんと反った。


『あ、あ、許して。死にます。落ちる・・・・』


 眦が吊り上り、相の変わった顔が最後にそう口走り―――
 しなやかな肢体が弓のように、ぴんと張りつめた。
 その緊張がテグスを伝わって、今まさに崩壊した部分にいっそうの痛苦を与えた。



『あ――――――はっ』



 一声高く、妻は啼いた。


『あーあ、奥さん、漏らしてしまったわ』


 女園から顔を離した金倉が呟く声。
 それとほとんど同時だった。


『もう―――我慢できない』


 若者が制服のズボンと下着を下げ降ろした。
 かたく隆起したものが、ぐうっと膨らみ、したたかに白濁をしぶいた。
 放たれたそれが、妻の顔に振りかかる。
 白濁が高い鼻梁を濡らし、形の良い顎の辺りにまでしたたっていくその様を、ビデオカメラがとらえた。
 映像は何も処理されていないのに、私にはそれがスローモーションのように見えていた。


 ゆっくりしたコマ送りで、汚されていく妻が。
 私の目に、鮮明に、映って。
 映って、いた。



 ・・・金倉に抱えられるようにして、妻が浴室から出てきた。
 幾分、血の気が戻っているが、足腰はまったく立たないようで、支えられながらようやく妻は、床に座り込んだ。
 艶々と光る洗い髪をうなじにまとわりつかせたまま、がっくりと崩れ落ちた妻の、手足の拘束と足枷は外されていたが、首輪とそれに繋がったクリトリスのリングだけは、まだ彼女の一部を締めつけている。
 
『よぉ洗ってもらったか、奥さん?』

 うつむいた妻の、頸だけが小さく縦に動いた。

『さっきはいい絵が撮れたわ。あの坊やも、こんな美人の奥さんが小便漏らしながらイクとこを見ちゃ、そりゃあもたんかったやろな。すっきりしたら、慌ててパンツ履いて、職場復帰しよったわ』

 くすくすと笑いながら、素裸でへたり込み、本当の女奴隷のような裸身をさらしている妻の総身をカメラが舐めていく。

『よくもまぁ、カメラ向けられた状態で、あんなに派手なイキっぷりを見せてくれたな。さすが赤嶺さんの見込んだ女や、たいした淫乱やで。自分でもそう思うやろう?』

 赤嶺の名が出て、今さら私の胃の腑に鈍痛がはしった。

『返事せな、奥さん。あんたはついさっき、画面の向こうの大勢の男たちに恥知らずなよがりっぷりをさらしたんやで。ちゃんと“見ていただいてありがとうございました”ってお礼を言わんと』
『・・・・はい』
『そら、カメラ見て。ご挨拶や』

 金倉の手が、妻の顎を掴み、色褪せた顔を上向かせる。
 気弱に潤んだ瞳が、カメラを見た。

『わたしは淫乱です・・・・それを思い知りました。恥ずかしくいく姿を大勢の方に見ていただいて・・・・とてもうれしいです』


 ありがとうございました―――


 そう言って、妻は深々と頭を下げた。

『そうやな、奥さん、見られて悦ぶマゾ女やったな。それはさぞ感激な体験やったやろう』
『はい』
『ほんなら、奥さんの****どうなったか見せてもらおうか。自分の指で拡げて見せてみいよ』

 ふっと妻の視線が落ち、自らの手で剃毛され、深い縦筋をさらすその部分を向いた。
 白く小さな手が、ふるえながらその器官にあてがわれる。

『もっと威勢よく拡げてみなよ。そうそう―――』

 叱咤しながら、カメラがその部分をクローズアップしていく。
 映し出されたそこは、無惨な様相を示していた。リングに絞られたクリトリスは腫れあがり、普段の桜色から深紅をとおりこして赤黒くなっている。長い間、クリップに挟まれ吊り出されていた部分の秘唇も同様に変色していた。
 男の手が画面に映り、繊細な指がくつろげているそこをくいっと摘まんだ。

『このピラピラも少し伸びてしまったかもなぁ。奥さん、パイパンだから、はみだしたら目立ってしまうねえ』
『あと何ヶ月かすれば、ここから赤ん坊が出てくるなんてとても信じられん眺めやな―――』

 カメラが上向いて、うつむいた妻の顔を下から覗き込む。
 乱れた黒髪を、金倉の手がはらって、顔をよく見せるようにした。

『奥さんが頑張ったから、約束どおり、子供は産ませてもらえるよ。うれしいやろ、奥さん?』
『はい』
『でも最初に言ったとおり、産まれた子供は養子に出すんやで。そのほうがあんたにとっても、子供にとっても幸せや』


 潤んだ瞳が揺れた。


『返事はどうしたんや、奥さん』
『はい・・・・』
『奥さんはこの身体で稼いだ金を、養子に出した夫婦に渡す。それが牝犬お母さんに出来る精一杯のことやで。でも、子供手放したら、奥さんそのうち逃げてしまうかもなぁ。どっか他に男つくって、そいつと手に手をとって消えてしまうんやないか?』
『そんなこと・・・・』
『ほぉ、逃げないんか? 一生、うちのAV女優として、男の玩具になってやっていく覚悟があるんか?』
『わたしは・・・・逃げません』


 ぽつりと呟くように、妻はこたえた。


『そうやな。奥さん、今まで散々好き勝手やってきて、充分人生を楽しんだもんな。これからは懺悔の日々や。あんたがこれまで生きてきて、迷惑かけたひとたちの分まで、社会奉仕せなな』
『AVが社会奉仕か』

 金倉がわらう。

『奉仕にはちがいあらへん。―――だけどな、奥さん。言葉だけでは信用出来へんのよ。口先だけでは何とでも言えるからな。身をもって奥さんの真心を示してもらわんと』


 カメラがふっと上後方にずれて、座り込んだ妻の総身を映した。
 妻は顔を上げて、カメラを見た。


『ただでさえ、淫乱多情な奥さんや。ほっといても男たちが群がってくるし、そのなかのひとりに真剣に“逃げよう”って誘われたら、奥さんもほだされてその気になってしまうかもしれへん。そんなことのないよう、あんたの身体に手を入れさせてもらってええかな』



 身体に―――手を入れる?


 意味が分からない。

 私と同様だったらしい妻が、戸惑った顔でぼんやりとカメラを見つめた。

『まともな男には金輪際相手にされへんよう、奥さんのその美しい身体にメスを入れさせてもらうってことだよ。まずは―――そうね、さっき剃ってもらったオケケやけど、もう二度と新しいのんが生えてこんよう、完全に処理して永久脱毛させてもらおか。それから―――』

 佐々木の手が伸びて、クリトリスに繋がった糸を掴んだ。『うっ』と声をあげて、妻の顔がゆがむ。

『この感度のいいお豆の皮も切除したらどうかな。どうせ剥き出しなら、とことんまで剥き出しのほうがええやろ。そこの皮がなくなったら、いつでも男を欲しがって発情しつづける躯になるんやて。そうなったら、もうAV女優かソープくらいしかやることないわな』



 あはは―――と佐々木の笑い声がする。


 あまりにも、
 あまりにも悪辣な、言葉。
 妻の人権を完全に無視した言葉。

 今度こそ、私は吐きそうになった。

『さっき吊り上げてよく伸ばしてあげたピラピラにもピアスを付けさせてもらおうか。いや、もっと大きめのリングのほうがええな。両側に穴あけて、リングでひとつに閉じるんや。面白いやろ』


 気死したように、なかば感情を失っていた妻の顔色が青褪めている。
 折れそうなほど細い肢体が、ふるえていた。


『奥さんくらいの美形で、そんな奇形の****をしているAV女優なんか、ひとりもおらへん。売れっ子になれるで、奥さん。SM専門やけどな。そうなったら会社も儲かるし、あんたを真面目に愛そうとする男なんてもう二度と現れへんから、逃げる心配もなくなる。一挙両得やね。どうや、奥さん』
『それは――――』


 褪せた唇がかすかに動き、絶句した。


『何もかも捨てたんやろ? 男の玩具になって一生送るんやろ? ならそれでもええやないか。顔をいじれって言ってるわけやない、あそこだけや。まあ、一生、銭湯には行けへんくなるやろうけどな―――。どのみち、今のあんたには誰もおらへん。もとの旦那には愛想を尽かされて、子供も手放さなきゃならん。もう、あんたに戻るとこはないんよ』


 あっさりと言い放った佐々木の言葉に打たれたよう、妻はびくりと身体をふるわせた。



 誰もいない―――



 低く、つぶやく声がした。
 妻の目から涙がつっと零れた。
 あふれた。

『こら、泣いたらあかんよ、奥さん。あんたを苛めてるわけやないねんで。あんたに自分の今の立場を理解してもらおうと思って言ってるこっちゃ』
『はい・・・』
『決心ついたんか? どうや?』

 佐々木の手がひたひたと妻の頬を叩く。
 その手を受けながら、妻は『どうにでも・・・してください』とかすれた声で言った。

『投げやりな口調やな、もっとうれしそうに“よろこんで手術をお受けします”って言わな』

 嗚咽をつづけるばかりの妻は、佐々木の言葉にただ頸を振るだけだった。
 そんな身も心も弱りきった妻を、裸の金倉が背後からやんわりと抱きしめた。

『奥さん、もうそんな泣かんと。可愛いお顔が台無しじゃないか。大丈夫だよ、淋しいときには呼んでくれたら、いつでも相手をしてあげるからね』

 猫撫で声で言いつつ、折れそうなほど頼りない細身を抱きしめた金倉が、妻に口づける。
 妻は抗わなかった。そればかりか、瞳を瞑り、差し込まれる唇を受けながら、両腕を伸ばして、金倉の頸を抱いた。

『お』

 そんな妻の反応に一瞬驚いたような顔になり、それから金倉はいっそうきつく妻の口を吸った。吸いながら、首輪とクリトリスを繋ぐ糸をぴんぴん弾いて、妻を鼻で啼かせた。

『そやそや、そんなふうに素直にしてれば、たっぷり可愛がってもらえるで。厭なことかてすぐに忘れられる』


 泣き濡れた瞳だけが動いて、カメラを見た。


『忘れさせて・・・・何もかも』


 そう、言った。


『そうそう。そんなふうにして、他のことみーんな忘れて、ち*ぽのことだけだけ考える牝になればいいんだよ。そのほうがあんたも幸せだ』
『メスになる・・・・犬にでもなります・・・・・だからもう何も考えさせないで・・・・言うとおりにします・・・・・何でも言うとおりにしますから・・・・ぜんぶ、ぜんぶ忘れさせて!』


 最後のほうはほとんど悲鳴だった。
 叫んで、妻はそのまま顔を金倉の股間に埋めて、屹立したグロテスクなものをぱくりと口に含んだ。


 頬をへこませ、
 喉をうぐうぐ言わせながら、
 忘我の表情で、目の前のものに吸い付く妻。
 母親の乳首に吸い付く幼児のように、この世にはそれ以外すがりつくものなど存在しないように。


『ようやく堕ちきってくれたようだね。素敵だよ、奥さん。あんたはそのほうがずっと魅力的だ』


 金倉が床に身体を倒していく。仰向けにまたがった妻の尻を、自らの顔のほうに向けさせて、シックスティナインの姿勢をとらせた。


『腰を落として。“****舐めてください”って言うんだよ』


 命じられ、妻は口に金倉のものを含みながら、しっとりと股間を落としていく。一瞬、口中から怒張を吐き出し、『****を舐めてください』と、たしかに言った。


『可愛いよ、奥さん。可愛い牝犬だ』


 ほくそ笑みながら、妻の股間に口を吸い付ける。
 ぎゅうっと眉根を寄せながら、それでも口の奉仕は怠らず、一心な表情をビデオカメラの前にさらして、妻は怒張を唇に受けつづけた。

 何もかも許しあった男女しかとらない体位で、妻と、それから少し前までは顔も名前も知らなかった醜い中年男が絡み合っている。
 互いを、貪っているような、その姿態。
 獣の交わりだった。
 妻がその獣の一匹だった。
 ぼろぼろに傷つき、血を流し、何もかも失った獣は、理性の枷から解き放たれ、ただただ肢体を愛玩され、愛玩していた。


 脳髄の芯が白く霞んでいる。
 霞んでいるのは私だ。
 血が流れている。
 流しているのは私の心だ。



 嗚呼―――



 私は呻いた。
 画面の中で、妻も呻いていた。


『いい・・・・・気持ちいい・・・・』


 ぐらぐらと頭が揺れて、白い喉が怒張から離れ、うつつなく声を出す。
 眦から涙がぽろぽろ零れている。


『いたくない・・・・やさしい・・・・やさしくして・・・・・もっと』
『こうされるの好きなんだね、奥さんは』
『すき・・・・・やさしいのすき・・・・きもちいい・・・して・・・・こわして・・・・何もかもこわして・・・・わたしをこわして』


 すすり泣くような声で妻が啼く。
 ぶるぶるっと、雪白の臀部がふるえた。




『いく・・・・・・・』




 そう、告げて―――

 今まで見たなかで、一番静かに、一番哀しく、けれど一番くるおしい姿で、妻は、無明の空へ飛び立っていった。



千代に八千代に
信定 2/20(水) 13:21:28 No.20080220132128 削除
第六十七章

 担当医の忠告も聞かず手前勝手に退院させたのだから、このような事態もありうることは頭では分かっていた。
幸雄は愚鈍ではない。非常識な人間でもない。
一流の大学に難なく合格し、その学部の中では高い水準を誇るといわれる法学社会学を学び、
文武両立を不屈の精神で文字通り実行してみせ、主席に近い成績で卒業した男でもある。
こんな状態になった千代だからこそ、自分のそばに置いておきたい。
その時はただただその一心に支配されていた。

 その不屈の精神をもった男が指先を震わせながら寝間着の裾を掴んだ。
千代が愛用している洗いざらしの寝間着だ。
大事に使用しているのは知っている。
庭先で他の洗濯物と一緒に広げて干してあるのを何度か見た。
誰もいない時を見計らって、そっとその匂いを嗅いだこともあった。
そのあとは惨めな気分と言いようのない高揚とが混在する数日間を過ごすことになる。
着ている姿を一度だけ見たことがあった。
ただ干してあるとくすんだ色と言ってもよい渋い色だが、千代が着ていると艶やかに見えるから不思議だ。
”これは伊勢木綿です”
恥ずかしそうな顔で千代がそう言ったのを思い出した。

 めくり上げると真っ白な太ももが目に飛び込んだ。
目眩がした。息を吸い込み生唾を呑み込んだ。
息苦しくなり、思わず目を瞑った。
見てはいけないものだからだ。
”こんなことしても良いのだろうか? でも看護するのは自分しかいないではないか”
短時間の間によこしまと善意がごちゃまぜに自問自答を繰り返した。
”これは千代さんのためにすることなんだ”
この自問自答は始めから結論ありきではあったが。
目の前に現れた白の下着に幸雄の喉がゴクリと鳴った。
白の敷布には黄色いシミが広がっている。
だが強い異臭はそれではない。
幸雄は思いきって下着に手をかけて引き下ろした。
強い異臭が鼻を衝くが、それどころではなかった。

 濡れた陰毛に釘付けになった。
細く柔らかそうな陰毛の先端には、無数の小さな水玉ができていた。
自分の荒い鼻息に気付き、慌てて息を止めた。閉じたときに口からブッと音がしたほどだ。
思い切って千代の両足を持ち上げて膝を立ててゆく。
見ていてはいけないのだと頭の隅では思っているのだが、目を離すことができなかった。
幸雄は二十の半ばを過ぎた年になるが、女性と交際した経験がない。
勉学や柔道でそれどころではなかったのだ。
故に童貞である。
女性のそこは想像するのみで見知っているわけではない。
目の前にある、さらけ出された千代のそこを見ても、興奮に息苦しい思いではあるが、
何が何だかよく分からない、というのが現実であった。
そこでアッと声を出し、慌てて部屋を出て行った。

 別室からもってきた大量の薄紙で拭ったあと、汚れたベッドに寝かせておくわけにもいかず千代を抱き上げた。
救済するときは無我夢中だったので気付きもしなかったが、千代の体はとても軽いのだ。
抱き上げられた千代は両手を重力に引かれダラリと垂らし、死人のような目で床を見つめていた。
体重の軽さとあまりの反応のなさに哀しくなった。
自分の寝ているソファーに寝かせようと思ったが、少し考えたあと抱いたまま部屋を出て行った。
体を洗う以外にないと思ったからだ。

 抱いたままゆっくりと階段を降りた。天井の高い薄暗い廊下を奥へと向かった。
その突き当りに檜をふんだんに使用した、一人ではとても広すぎる豪華な風呂場がある。
「なんだか落ち着かないです」
桃色に頬を染めた湯上がりの千代が笑いながら言ったのを思い出した。
また哀しみが込み上げた。
千代を抱いたまま湯に触れてみた。幸雄は小さく頷いた。まだ十分に温かい。
まず自分が裸になった。
千代に分かるはずもないのだが、全部脱ぐのをためらってふんどし姿となる。
鍛え抜かれた幸雄の体は筋肉の塊であった。動くたびに浅黒く分厚い胸と上腕筋が盛り上がる。
横たえた千代の胸元がはだけていた。
十も年上の女性とは思えない肌の艶である。
幸雄は千代を抱き起こし、寝間着を脱がせてゆく。
できるだけ見ないようにしているのだが、まばゆいばかりの白い肌は嫌でも目に入る。
下着を脱がせるときには上半身をかかえているので、顔は乳房の目の前にあった。
想像していた以上に綺麗な乳房だ。
千代の肌の香りに自分の意志とは関係なしに、全ての血液が下半身に集められてゆくのを感じた。
肌の色よりも濃いめの乳首を見つめ、そこに伸びてゆく手を慌てて引っ込めた。
幸雄はブルンと首を振り軽々と千代を抱き上げて立ち上がった。



羞恥89
風水 2/20(水) 11:04:43 No.20080220110443 削除


 電話を切って 大きく息をつき唾を飲み込みました 口の中がカラカラです。
コーヒーのお代わりを頼み 暫く先程の電話での会話を反芻してみます。

 とりあえず昨晩は不作法な事は無かったようで 一安心 
私の妻が患者の一人だということも気づいていない様子です。  

 熱いコーヒーとニコチンで少し気持ちが落ち着きました。
あとは 栗本院長と妻が 私の申し出を受けてくれるかどうか?

 緊張から一転 淫らな期待で下半身に血流が集まってきました。
とりあえず 来週の土曜日・・・栗本院長の反応を見て それから妻に・・・

 コーヒーを飲み干し 自宅に向かう私 その頬はたぶん緩んでいた事でしょう。


「ただいま〜」
「あらっ あなた早かったのね 忙しいようだから遅いのかと思ってたわ」
「ああ 急ぎの仕事有ったんだけど 気合いでやっつけてきたよ」
「ふーん 今食事の支度するわ   あなた なんか機嫌良さそうね」
「まあね」

 軽やかな気持ちで食事と風呂をすませ 寝室でビールを飲む私
 風呂上がりの妻は
「あなた ほんとに嬉しそうね 何があったの?」
「いや何 仕事がうまくいっただけだよ・・・
 それより裕美子 昨日の夜な  山下さんと近所の居酒屋で飲んでたら・・・」
「飲んでたら?」
「裕美子がびっくりするような人に会ったよ」
「私がびっくりする人?・・・誰かしら?」

「裕美子の同級生・・・」
「えーっ 私の同級生? 誰なの?」

「・・・産婦人科の栗本先生・・・」
「うそっ! 本当?」
「ああ 本当だ・・・たまたま加藤君の知り合いの女の子と飲んでて・・・俺も挨拶した」

「栗本先生 裕美子が俺の嫁とは気づいてなかったけどな・・・別に言わなかったし」
「・・・なんか・・・やだなぁ・・・」
「別にいいじゃない それと焼肉屋の田中さんも一緒だったよ」
「・・・」
「裕美子の幼なじみに会えるとは 思ってもみなかった・・・
 あのふたりって 小さいときお医者さんごっこした仲間だろ?」



羞恥88
風水 2/19(火) 14:45:33 No.20080219144533 削除


 翌朝 妻は相変わらず元気一杯で
「あなた 昨日は遅かったのねぇ 帰ってきたの気が付かなかったわ」
「ああ 山下さんと盛り上がっちゃったんだ・・・」
 栗本先生と会った事を話そうか迷いましたが 結局話せません。

「ちょっと忙しいんで 今日は早めに出るわ」
 何となく妻を前に黙っているのが気まずくて コーヒー1杯の朝食で家を出ました。

 仕事をしていても落ち着かず 時間ばかりが気になります。
残業もせず 定時に退社し 会社の近くのホテルの喫茶コーナーに向かいました。

 熱いコーヒーとタバコで気を落ち着かせ・・・・財布から 昨日貰った名刺を取り出します。

 時刻は午後6時を過ぎています もう診察時間は終わっているでしょう。
何度も躊躇しましたが 思い切って 栗本院長の携帯の番号を震える指で押しました。

「トゥルゥルゥルゥルゥ トゥルゥルゥルゥルゥ・・・」
 5回ほど待ちましたが 応答はありません 知らない番号の電話には出ないのでしょうか?

 残念な気持ちと安堵感の中 タバコに火を付け大きく吸い込み
『俺 何やってるんだ・・・やっぱりやめよう』
 そう思って携帯をポケットに入れようとした時 着信音が・・・

 液晶には 今日登録したばかりの『栗本先生』の文字  慌てて 通話ボタンを押しました。

「もしもし 先程電話頂いたでしょうか?」
「あっ 栗本先生 と、突然お電話して申し訳ございません
 わたくし 昨晩ご一緒した矢野と申します まだお仕事中でしたでしょうか?」

「ああ 矢野さんですか  いえいえ 仕事はもう終わってますよ 
 知らない番号だったんで・・・で、何かご用でしたか?」
「いや 大した用事では無いんですが 昨晩はわたくし酔っていたようで・・・
 何か失礼をしたんではないかと思いまして」
「とんでもないですよ 矢野さんが一番紳士的に飲んでいらっしゃった」
「そうですか・・・それならよかった 実はですね・・・」

 迷いましたが ここまできたら戻れません
「実は 私のプライベートなんですが 一度先生に相談に乗って頂きたい事があるんですよ」
「ほぅー プライベートの相談ですか・・・私に出来ることならいいですが
 言っておきますが 金銭的な事だったらお断りしますよ」
「いえいえ そういう事では無いんです・・・ 近々 時間を作っていただけませんか?」 

 少しの沈黙がありました 栗本先生も昨日会ったばかりの男の申し出に警戒しているのでしょう
「わかりました 来週の週末 土曜日の夜でいかがでしょう
 場所は 私の病院でよろしいですか? 8時になれば邪魔は入りませんので」

「結構でございます わたしく病院におじゃまいたします 夜8時でよろしいでしょうか?」
「来週の土曜8時ですね 予定しておきます」
「勝手なお願いをして申し訳ございません では来週の土曜日・・・失礼します」
「はい ではその時に」

 この電話が 私達夫婦と栗本院長そして田中友吉社長との永い付き合いのスタートとなりました。



千代に八千代に
信定 2/18(月) 14:04:15 No.20080218140415 削除
第六十六章

「脳に障害を受けている可能性も考えられる、ということを申し上げたのです」
「そんな」
「どの程度酸素が途絶えたかにもよりますが、現状では何とも」
かかりつけの医者は眉間にシワを寄せてそう言った。
「ここまで頸部を圧迫されたにも関わらず蘇生するとは信じられません」
自分の喉を手で押え、首を振った。

 息を吹き返した千代を見て幸雄は獣のような叫び声を上げた。
規則的に上下する胸を見て、脈を確認し、かすかな呼吸を耳で聞き、ふたたび幸雄は躍り上がった。
直ちに医者を呼んだ。
付いてきた二人の看護婦が丁寧に千代の身体を拭ってくれた。

「万が一、万が一ですよ、脳に障害があったとしたら、どうなるのですか?」
泣きそうな顔で身を乗り出す幸雄に医者は「うーん」と唸った。
「程度にもよりますが、このまま昏睡状態が続くことも考えられますし、
目覚めたとしても運動、知覚、学習障害などが考えられます」
えーっ!と言ったきり幸雄は絶句した。
「現状では何とも申し上げられません」
先ほどと同じことをくり返し「とにかく今は安静が第一です」と言った。
「分かりました」
幸雄は唇を噛みしめる。
「それにしても見事な処置です。我々でも非常に難しいことですよ。脱帽です」
「無我夢中でした」
「この女性は首の根本を強く縛っておられます。絞まった部分を見ると分かるのですが生前にそれは行われています。
自分の命を絶つのですから精神が錯乱している可能性もありますが、これはそれ以前の精神力のような気がします」
幸雄は息を呑んで医師の顔を見つめた。
「いずれにしても経緯は分かりませんが、二度のこのようなことの無いよう見守って下さい」
幸雄は丁寧に礼を言った。
「坊ちゃん以外では助からなかった可能性もあります。
何故ならば、縄が解けるまで頸部が絞まらないよう抱きかかえられること、また刃物なしで解くことができる人だからです」
玄関先で振り返った主治医は柔和なまなざしを向けた。
幸雄は唖然とした顔で血の滲んでいる自分の指先を見つめた。

 千代は入院することとなった。
二日経っても症状は変わらなかった。
医師らの説得に応じず、幸雄は勝手に退院させてしまったのである。
「本当にあなた一人で介護されるのですか?」
「ええ、僕が看ます」
断固として言った。

 幸雄のベッドに横たわっている千代は目を瞑っていた。
形の良い唇をわずかに開き、規則的に胸が上下している。
横山を病院へ連れて行って戻ってくるまで約二時間。
その間、どの位ぶら下がっていたのだろうか。
その考えを追い払うように激しく首を振った。

 別の部屋にあった大きなソファーを運んできて自分の部屋の隅に置いた。
不測の事態が起こった場合すぐに対応できるよう、夜はそこに寝るのだ。
社長は新しもの好きで西洋かぶれということもあり、ベッドを愛用している。
その影響で幸雄もベッド派となった。
幸雄の愛用しているベッドは、体の大きさに合わせ特注で作らせた代物だ。
いわゆる金に物を言わせてということだ。
特大のベッドに横たわる千代はまるで子供のようだ。
千代の寝顔を見つめ目尻に涙をため、心底安堵した。
柔道の試合が終わったときのような疲労感に襲われた。

 脳に障害を来しているとはとても思えない穏やかな表情だった。
見ろ、こんなに綺麗な顔をしているではないか。
何が脳障害だ。
間違いに決まっているではないか、あのやぶ医者め。
千代の表情を見て幸雄は希望を持つようになった。
ベッドの上で微動だにせず、胸だけが規則正しく上下していた。
その間幸雄は何一つ手を付けられない状態で見守ることしかできなかった。
看護婦に指導されとおり定期的に体の向きを変えてやるが、千代の体に触れるたびにドキドキする。
体を拭いてやろうと浴衣の帯に手を伸ばすが、指先が震えてできなかった。
荒い息のまま絞ったタオルを握りしめた。

 その夜、寝入っていた幸雄は異臭に気付いて目が覚めた。
跳ね起きてベッドの上を見た。
暗くて分からないが、千代の顔がこちらに向いていることは間違いない。
白い顔がボーッと見える。
電球のスイッチをひねるが灯らない。
電気の供給が遅れていることに気付いた。
幸雄は慌てて灯油ランプに火を灯した。

 千代の目が開いていた。
幸雄はアッと声を上げ目を覗き込むが、瞳は動いていなかった。
半開きの唇からはよだれが見えた。
痴呆のような千代の表情に打ちのめされた。
喜びも束の間、幸雄の希望は打ち砕かれたのである。
しかし落胆している場合ではなかった。
異臭は千代からであることがすぐに分かった。
「どうしよう」
大きな図体で右往左往した。



羞恥87
風水 2/18(月) 10:39:45 No.20080218103945 削除


 なんと・・・産婦人科の院長先生で栗本さん

 グラスを持つ手が何故か震えてきました。
 動揺を悟られないように 静かに口に運びます しかし好物の麦酒はまったく無味無臭です。
 
 妻の秘部を広げ そこに指まで入れた男が目の前にいます。
 しかも 彼は妻の幼なじみ 

 焼肉屋の田中さん 妻が話していた お医者さんごっこをした同級生でしょう。

 この身体の震えは 嫉妬なのでしょうか それとも・・・・

 山下さんが栗本さんに話しかけました。
「栗本さんは 産婦人科の先生でいらっしゃいますか
 いやー 素晴らしい職業ですねぇ 実は私 この近所で風呂屋をやっておるんですよ」

「いやいや 産婦人科も結構大変な仕事なんですよ ま、何かありましたら何時でも・・・」
 そう言って 栗本院長が私達3人に差し出した名刺 そこには携帯番号が・・・

「皆さん ご商売されていてうらやましい。
 わたくし しがないサラリーマンやってます矢野と言います 
 山下さんとは倅同士が仲がいいもんで おつき合いさせてもらってます。」
 なんとか 声が震えずに話すことが出来ました。

 突然みくるちゃんが
「栗本先生って 親切なんですよ 私調子悪かった時 時間外なのに無料で診察してもらっちゃった」

 加藤君がイヤラシイ笑い顔で
「えっ みくるちゃん 妊娠でもしたの?」
「まっさか〜 生理痛が酷かっただけよ」
「いや〜 栗本先生 こんなカワイイ子の診察が出来るとは・・・うらやましいですな」
 山下さんもいやらしく続けました。

 私は 妻が目の前の男性に診察されている姿が目に浮かび・・・嫉妬と淫靡な期待で胸が高鳴りました。


 小一時間程 他の5人の宴席は盛り上がったようです が 私はほとんど会話を覚えていません。
 酔いが妄想を増幅させ ひとり自分の世界に浸っていたようです。

 山下さんとふたり のんびり歩いて自宅に帰ると 妻はすでに寝ているようです。

 書斎のPCを立ち上げ 妻のオナニー動画を再生しました。
『ぁぁ 栗本先生は裕美子のおまんこ 広げて診察したんだ 指も入れ・・・クスコで広げて・・・』
 一物をトランクスから取り出すと 既に先端には透明な液が糸を引いています。

 メディアプレーヤーの中の妻は 絶頂に向けクリトリスを転がしています。
『ぁぁぁ・・・ゆ、裕美子・・・・』
 絶頂を迎える妻 それと同時に私も震えながら白い精を大量に放出してしまいました。



羞恥86
風水 2/17(日) 12:41:21 No.20080217124121 削除


 あの『日本整体研究所』での出来事から数ヶ月が経ちました。

 妻とは 相変わらず週に2度程のペースで合体していますが 
 あの日以来 妻は絶頂を迎える時 必ずと言って良いほど
『逝くぅぅぅ・・・見てぇぇぇ』と口走るようになりました。

 尋ねても否定しますが あの日の事を思い出しているのでしょう。

 私は・・・書斎に籠もり あの日のビデオで何度自分を慰めた事かわかりません。
 今見ても 当時の興奮が蘇り あっという間に射精に至ってしまいます。


 あれから数回 山下さんと『影法師』でのショーを見に行きました が、妻は一度も同行しませんでした。

 その日も山下さんと加藤君の3人で『影法師』でのショーを堪能し 
 その足で 近所の話下手な主人がやっている居酒屋『縁無』へ食欲を満たしに向かいました。


 暖簾をくぐり『縁無』に入ると・・・・そこには 加藤君のお気に入り 
『クラブXL』のみくるちゃんが男性二人と座敷で酒を飲んでいました。

「あれっ? みくるちゃん 今日はお店休みなの?」
「加藤さんじゃないですか おひさしぶり〜♪ 私 週に1回お休み貰ってるのよ」

 奥の席に座ろうとする私達に みくるちゃんの連れの男性が
「みくるちゃんのお知り合いですか? よかったらご一緒にどうです?」

 加藤君が軽いノリで
「それじゃ おじゃましま〜す」
 私と山下さんも席に着きました。

「みくるちゃん そちら彼氏なの?」
 加藤君の問いに これまた軽いノリでみくるちゃん
「ちがいま〜す 加藤君と同じ 私のお客さんで〜す
 一度お店で会った事有るはずなんだけど・・・覚えてないよねぇ」

 加藤君が今度は少しまじめに 二人の男性に向かい
「これは 失礼 お店でお会いしていましたか・・・
 私 加藤と言いまして整骨院やってます こちらが飲み友達の 山下さんと矢野さんです
 みくるちゃんは私のお気に入りなんですよ これからもよろしくお願いしますね」

 二人組の男性は私達に笑いながら会釈をし 赤ら顔の派手な服装の男が 
「私もみくるちゃんのファンなんです 恋敵ですね はははっ 
 私 田中と言いまして 焼肉屋なんぞやってます
 で こっちが同級生の栗本 大通りに有る産婦人科の院長先生です クリポンって呼んでやってください」 





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卒業後 67
BJ 2/16(土) 19:29:07 No.20080216192907 削除

 私は今まで、アダルトビデオというものをあまり見たことがなかった。
 いつ頃から規制が緩くなったのか、私は知らないけれど、ずいぶんと過激なものが増えたというのは知っている。
 そこには剥き出しで、底のない欲望と妄想があふれているようで、同じ男でも、背筋がぞっとするようなものがあった。
 はるか昔、赤嶺にそんな感想を言ったことがある。
 赤嶺はふんとわらって、それは皮肉のつもりか、と言った。私は苦笑して、そんなつもりはない、と答えた。

『言いたいことは分かるぜ。そうだ、実際醜いね。集団ぶっかけ、顔射、中出し、スカトロ・・・、はては獣姦なんてものもあるな。醜くて、どろどろした男どもの欲望。だからこそ、面白い。ネットと同じさ。規制が緩くなって、リスクなしで楽しめると分かれば、ひとはいくらでも醜くなれる。ある女の作家が書いていたよ。AVってのは、不幸な女、或いは女の不幸を男たちが覗き見て楽しむものなんだってね。偏見まじりの意見だが、なるほどと思えなくもない』


 その説でいくと、さしずめ俺なんかは、女たちの不幸を食い物にして生きているってわけだ―――


 悪びれるわけでもなく、赤嶺はしゃらりと語った。

『お前はそれでもいいのか? 疑問に思ったりはしないのか?』
『聖人君子みたいなことを言うなよ。お前も俺もご同様、すばらしき男たちのひとりだぜ』赤嶺はふっとわらった。『だいたい幸不幸なんて概念は曖昧だね。男も、女も、人間すべてしょせん獣の一種だろう』

 つづけて、言った。


『―――獣には、そのときごとの快、不快しか問題にならないのさ』


 あれはそう、まだ妻と結婚する前の、あいつとの会話―――。



 そして、今―――
 パソコンの画面には、獣たちが蠢いていた。
 
『ご自由にお触りください』―――その強制された妻の言葉を受けて、若いホテルボーイは目の色を変えながら、年上の女のひらかれきった女体のあちこちを、指と舌で試していた。

『あそこの毛、剃ってるんや・・・。俺、女のあそこ、こんなにはっきり見たの、初めてですよ』

 興奮で声をふるわせながら、若者は無残に糸吊りにされ、紅蓮の肉をさらすそこに指を触れさせた。


『熱い。それに・・・、ひくひく動いてる』
『感じてるんだよ。それにしても、君も奥さんに感謝しないとな。こんなにぱっくり****開いて見せてくれてるんだから。なかなかいないよ、ここまでしてくれる女は』
『彼女は絶対こんなことさせてくれないっすよ。・・・・さっきから奥さんって言ってますけど、このひと、人妻なの?』
『人妻だった、かな。―――奥さん、どうなの? 今の自分の身分を言ってみてよ』


 カメラが妻の顔に向けられる。
 佐々木は的確に、執拗に、「女の不幸」を絵にしようとしている。


『ほら、質問にはすぐに答えな。今の奥さんは何なんや? さっきも自分で言うとったやろ?』
『マ、ゾ・・・・女・・・・・・・わたし・・・・みだらな・・・・マゾ女・・・です』


 陰湿な責めを心身に受けつづけ、その様子をビデオに収めつづけられた妻―――高熱にうなされているようなその表情。切れ長の目は開いてはいたが、瞳は熱に浮かされたように宙を彷徨っていて、ほとんど意識を失う一歩手前に見えた。


『そうそ。奥さんは自分から人妻を辞めて、ただのマゾ女に堕ちたんやったな。よく出来ましたと言いたいとこやが、“わたし”やのうて、きちんとマゾ女の本名さらしたほうがええな。そら、年もいれて、もう一度言うてみ』

『わたし・・・瑞希は・・・・35歳の・・・・・みだらなマゾ女・・・です』

『マゾの、牝犬やな。そうやろ? 分かったんなら言いなおさんと』
『はい・・・瑞希は・・・・・35歳の・・・・・みだらなマゾ・・・・牝犬です』
『男なら誰にでも尻振ってついていくんやな。どうや?』
『はい・・・・ついていきます・・・・』
『尻を振って、やろう?』
『はい・・・・振ります・・・・お尻』
『振ってみせえや、今、ここでも』佐々木の指がぐいぐいと、妻の汗ばんだ頬を押した。『若いお兄ちゃんが、奥さんの大好きなち*ぽ勃たせて、食い入るように見とるで。牝犬なら嬉しそうに、尻、振ってみせんと』


 吐き気をもよおすような佐々木の言葉。しかし、妻の反応はなかった。ただ、ぐったりと弛緩していた。


『まだ、おねむには時間が早いよ、奥さん。言われたことはすぐにしないとなぁ』


 金倉の声が聞こえた。と思う間に、弛緩した妻の顔が張りつめ、額に静脈の筋が浮いた。



『んッ―――あ、あああ』



『どないしたんや、奥さん。そんな大声上げて―――』


 カメラが金倉と、その覗き込む妻のあらわな秘部に近づいた。
 金倉の太い指が、後ろのすぼまりに差し込まれたところだった。


『ここはまだヴァージンなんでしょう? 奥さん。きつくて、いい感じに指を締め付けてきますよ』


 蕾に挿入された指が、ゆさゆさと揺すられる。


『いっ・・・・痛いです・・・・そこはだめ―――』


 言葉の最後が、甲高い悲鳴でかき消えた。指から逃れようと思わず身悶えしたときに、摘まれたままの花弁と肉芽が罰を受けたのだ。


『奥さん、すぐにここでも男を受けなきゃならなくなるんだよ。なあに、奥さんはここもすごく敏感そうだし、すぐによくなるって』
『やめて・・・・そこ、やめて・・・・お願いします・・・・ごめんなさい・・・振りますから・・・・お尻・・・振りますから』


 最後はもう、ほとんど涙声での哀訴だった。
 目を丸くした若い男の、呆然とした表情が少しだけ映った。



 ・・・カメラが少し引いて、妻の仰向けの総身をとらえる。


『―――じゃあ、いこうか。教えたとおりの台詞言いながら、いいと言うまで、尻、振りつづけるんやで』


『は・・・・い』
『ほな、やってみ』



『わたし・・・瑞希は・・・・・』


『35歳・・・・』

『マゾの・・・・みだらなマゾ・・・・』

『牝犬です』

『うれしいときには・・・・お尻を振って・・・・よろこびます』


『見て・・・・ください』



 のたり、のたりと、
 それでも必死な動きで。
 画面の中央に映し出された妻の、裸の下半身が揺れる。
 小ぶりな尻が蠢く。



 あ、あッ、、、、ううッ、、、、、



 はぁはぁという息づかいの中に、時折、そんな声が混じる。
 尻を動かすたび加えられる、吊り上げられた陰唇とクリトリスへの電流。
 自らの動きで与えられる、性器への刺激。


 ―――ああ・・・・っ


 悦美と同時にはしる痛み。


 ―――ぐっ・・・・ぁは・・・・


 それがずっと、

 ずっと繰り返されるのだ。



 悦、痛、悦、痛、悦、痛、悦、痛、悦、痛、悦―――



 見ているこっちのほうが、気がおかしくなってしまいそうな、

 そんな、自涜だった―――。



 カメラが動いていく。尻を揺すりつづける妻の周囲をぐるりとまわって、あらゆる角度から、妻の裸身、濡れそぼった肉の蠢き、その剥き出しの表情をカメラは収めていく。


『カメラ、見い。奥さん』


 真上に立って、垂直に妻を見下ろした佐々木の声がする。
 とろりと溶けた妻の瞳が、ビデオカメラに映る。


『もう何がなんだか分からないって表情やな。牝犬の顔や。首輪がよく似合ってるで』
『は・・・・・い』


 返事をする唇の端から、よだれが垂れ、落ちた。


『そないに尻振って、見てもらえるのがよっぽどうれしいんやな』
『・・・は・・・い・・・』


 声を出すたび、ぜいぜいと息が切れる。


『・・・・・うれ・・・・・うれしい・・・です』
『坊やはどうや。綺麗な奥さんが実はこんな牝犬で、がっかりしたか?』


 カメラが若い男を向く。魂の抜けたような表情で、若者は憑かれたように尻を振りつづける妻を眺めている。


『坊や』
『あ・・・・はい。いえ・・・・すごく興奮してます。もう、おかしくなりそうなくらい・・・・いきそうです』


 カメラが妻の顔へ戻る。


『よかったなぁ、奥さん。頑張って媚びてみせた甲斐があったようやで。あの坊や、欲情して、もうびんびんなんやと』

『あ・・・・・う・・・・うう―――』

『頑張ったペットには、ご褒美をやらんといかんな』


 猫なで声で言いながら、カメラが妻の顔へ近寄っていく。
 瞼まで紅潮した膚に、ぷつぷつと浮かんだ玉の汗。鼻腔は喘ぐように開いている。
 獣たちに囲まれ、本当の牝犬のように苛まれつづけながら、獣に染め変えられようとしているひとりの女。美しく、蟲惑的な――― 一匹の獣。彼女は私の妻だった。
 全身の関節が軋みをあげていた。



千代に八千代に
信定 2/15(金) 16:26:40 No.20080215162640 削除
第六十五章

 身体の器官全てが弛緩した状態で、天井からぶら下がっていた。
幸雄は悲鳴を上げながら、千代の両足を掴み持ち上げた。
「ばかな、ばかな、ばかな」
幸雄は吼えた。
千代の下半身は汚物にまみれていた。
そんな悪臭はものともせず、泣きじゃくりながら幸雄は千代を抱き支えていた。
目は閉じていて、半開きの唇から舌を覗かせている。
希望のない、最悪の状態であった。

 千代を下ろすには、どうしても手を離さなければならない。
幸雄は歯をカチカチと鳴らしながら、離れたところに置いてあるテーブルを見た。
横に踏み台にしたと思われる椅子が転がっている。
「ごめんよ、ごめんよ」
嗚咽を漏らしながら、幸雄は千代の足をそっと離し、テーブルに飛びついた。
ガガッと音を立て、引きずった。
すぐに千代の体を支え、テーブルに上がった。
柱に巻き付けられたロープは硬く縛られている。
ロープを切る刃物が欲しい。
幸雄はそのことを、愕然と気付いた。
どこにあるのかなど恐怖で考えがおぼつかない。
思いついたが包丁は台所だ。そして階下だ。
千代を離すわけにはいかない。
首がもう二度と絞まらないよう、片腕で千代を抱きかかえ、ロープを解きにかかった。
はかが行かない作業に気が狂いそうだった。
「くそっ、くそっ」
柔道のため深爪だが、それすら剥がれて血まみれなる。
そんなことは物ともせず、目を血走らせながらガリガリと音をたてている。
肩に乗っている千代の頭がユラユラと揺れている。
全ての骨が溶け去ってしまったかのようにグニャリとしている。
それを意識するたびに新たな涙を流し、息をするたびに、涙と鼻水が混ざったアブクが口の中で作られる。

 こんなロープどこにあったのだろう。
もしかしたら地下の倉庫で探し出したのかもしれない。
天井に頭が当たるので、幸雄はめったに入ることはない。
それに適した物を、暗い地下室でゴソゴソと探す千代の姿を頭から追い払う。
幸雄の必死の行為により、次第にロープは解けてゆく。
幸雄の顔が泣き顔で嬉々とした、奇妙な顔になる。
遂に千代の首からロープを外した。
外れるとすぐに口から吐しゃ物が溢れた。
幸雄は慌てて千代を横たえ、口の中の吐しゃ物を吸い出した。
実行したことはなかったが、武道の有段者である幸雄は人工呼吸のやりかたは知っている。
初めての接吻であるが、よこしまな思いは微塵も浮かばなかった。
何度も人工呼吸を試みるが、息を吹き返す気配はない。
諦めの気持ちが芽生えるのを、頭を振って必死で振り払った。
千代の吐しゃ物を口の周りに付着させ、幸雄は頭を抱え込む。
「嫌だよぉ! こんなの嫌だぁ!」

 吼えたあとすぐに思い直し、ガバッと顔を上げ袖で口を拭い、そのまま涙を拭い、愛する人に息を吹き込んだ。
千代の胸が大きく膨らむ。ただそれだけだった。
テーブルの下に紙が落ちていることに気付いた。
人工呼吸を施しながらその文字を見た。

『今まで良くしていただいてありがとうございました』

 千代の書く字は美しかった。
新たな涙が溢れ、千代の白い顔を濡らしてゆく。
それを太い指で優しく拭う。
庄次郎を失った哀しみはあまりに深かったのだ。
原爆の悲劇は、ほぼ正確に日本国民に伝わっていた。
千代は絶望したのである。

 天皇よりも上位の最高権力者、マッカーサーが既に日本国を統治していた。
そのふてぶてしい態度に日本国民は釘付けになった。
戦争に負けたため、戦争犯罪人として政治家や軍の幹部が処刑されるだろう。
あとを追うように殉職者も続出するだろう。
しかし、国民の殆どが胸を撫で下ろしていた。
鬼畜米兵と罵倒していた国民だが、復讐や憎悪より平和を願ったのである。
その鬼畜米兵により、目の前で親を焼かれ、子を殺され、残され絶望した者も未来への希望を選択したのだ。

 だが、千代は別の道を選んだ。

 愛する人をなくし、呪われた人生を振り返り、未来への希望を失ったのだ。
戦国の乱世に生きた、忍びの者の末路のように。

 力尽きた幸雄は、ゆっくりと千代から離れた。
両手で顔を覆い、声を上げずに泣いていた。
布が擦れるような音が聞こえた。
全身に鳥肌を立てた幸雄は、顔からゆっくりと両手を離した。



卒業後 66
BJ 2/15(金) 05:03:00 No.20080215050300 削除

 金倉が戻ってきた。その後ろから、ボーイの制服を着た若い男―――まだ、社会人になって2,3年という年頃に見える―――が、戸惑った顔で現れた。


 無関係の第三者を突然、撮影に参加させるなどと―――そのようなことが許されるのか、これは仕込みではないのか―――私は傍らの明子に問うた。
『あんな子知らないわ』にべもなく、明子は言った。『―――まったく、無茶なことするわね』
『そんなあっさりした言葉で片付けないでくれ』私は奥歯を噛み締めた。『あいつらに嬲られているのは・・・・俺の妻なんだ』
『私に八つ当たりしないで』
 言葉とは裏腹に、明子の口調は穏やかだった。その瞳は相変わらず謎めいていて、ひどく冷静に私を観察しているような気がした。


 その、誰とも知れぬ若者は、室内の光景を見、そして破廉恥といえば破廉恥極まりない格好を強制された妻の肢体に目を丸くした。
『すごい。AVの撮影って本当だったんですね。―――あ、顔出して、本当に大丈夫なんでしょうね? 困りますよ、やっと伝手でこのホテルに就職したばかりなんですから』
『絶対分からないようにするから、大丈夫だって。それより、もっとこの奥さん見てあげてよ。この奥さん、おとなしい顔して、いやらしいとこ見られるの大好きでね』
『さっきロビーで見かけて、綺麗な奥さんやなぁと思ってたんですよ』拘束され、仰向けに横たえられた妻の裸身に、若い男が近づいていく。『それが・・・・こんなことされてるなんて・・・。うわぁ、すげえ。こんなに拡げられたあそこ、俺、見たことない』
『触ってもいいよ』
『え・・・・・』
『いいから、いいから』


 若い男の指がおずおずとした動きで、艶光る鮮紅色の粘膜に触れた。


『う・・・っ』という妻の呻き声が聞こえた。


『でも大丈夫ですか? ビラビラもクリもやばいことになってるけど・・・・痛くないんですか?』
『痛いのがイイんだよ。この奥さん、マゾだからね。その証拠にぐっしょりだろう、そこ』
『ええ・・・・。でも信じられないな。こんなに美人なのに、マゾだなんて』
『―――だってさ。若い子を幻滅させてしまったみたいやで、奥さん』


 カメラが妻の顔を映す。何の―――本当に何の関係もない第三者、それも一回り年下の若者にあまりにも屈辱的な裸身を視姦される恥辱に、妻は真っ赤な貌を捻じむけ、涙の滲んだ瞳をかたく瞑っている。
 長い睫毛の先がふるふると震えていた。


『何とか言いなよ、牝犬奥さん―――』


 佐々木の指が、妻の高くとおった鼻筋をつるりと撫でた。


『いくら顔を隠そうとしても、奥さんのいやらしいところは丸見えなんだよ。彼だけやない、もうじき日本全国の男たちがあんたの身体を見るんや。こんなんで羞ずかしがってるのは阿呆らしいで』


 ほら、ちゃんと顔を見せて、彼に自己紹介せな―――


 佐々木はくなくなと頸を振る妻の鼻を掴み、強引に顔を正面に向けさせた。妻の口がぱくぱくと開いて、何かを言った。


『何? よぉ聞こえんわ』
『・・・・む、むり・・・・・です・・・、そんなこと、でき―――――あぐっ!』


 いつの間に横たわる妻の顔の隣にいざりよった金倉が、首輪とクリトリスを繋ぐ糸をつよく弾きたて、その言葉を中途でさえぎった。


『“いや”はなし。“無理”もなし。“できない”もなし―――だよ。今日は奥さんの覚悟を見るためにこうしてわざわざ集まってるんだ。これ以上我がままを言いつづけるのなら、あの約束も守れないよ』


 約束―――?


『う・・・っ、・・・・あうっ・・・・・や、やめてください・・・それ・・・ちぎれちゃう・・・』
『それなら、早く言わないと。ほら、こんなふうに―――』


 下卑た笑みをカメラに見せながら、金倉が妻の耳元に口寄せる。
 細やかな柳眉が新たな恥辱のために、きつくしかめられた。


『分かったね? じゃ、目を開いて、坊やの顔をきちんと見て。まずは名前と歳から、彼に告白するんだ』


 目元が赤く染まり、潤みきった瞳がようやく開かれる。



『わたしの・・・名前は・・・・瑞希です』



『歳は・・・・35です』



『へえ! そんなにいってるんだ。全然分からなかった』
 間抜けな相槌を、若い男がいれた。
『思ったより年増でがっかりか?』
『いや、そんなことは・・・・・』


『次は? 奥さん』
『本日は・・・・はしたない格好で・・・・失礼しております』

 佐々木が哄笑した。

『たしかにはしたない格好やな』
『―――それで? つづきはどうしたの?』

 口ごもる妻に、焦れたように金倉がまた糸嬲りを再開する。



『あっ、あっ、やめて!・・・・・見苦しいところをお見せして・・・・ああ・・・・本当に・・・・すみません』



『皆さまが仰られたとおり・・・・わたしは・・・・みだらなマゾ女・・・・です』



『そんなのは今のあんたを見れば一目瞭然やけどな』嘲るように佐々木が言う。『ほんで?』



『皆さまに可愛がっていただき・・・・・いやらしく・・・・濡らしてしまった・・・わたしの・・・・・・わたしの・・・・』



 ****―――



 語尾が消え入った。



『お目にかけやすいように・・・・・・いっぱい・・・・ひろげ・・・・ていただきました・・・・・ありがとう、ございます・・・・・どうか・・・・・よく・・・・よく、ご覧くださ・・・・い』
『見られるの好きやもんな、あんたは』
『は・・・・・い』
『まだあるでしょ、奥さん。最後まで言わなきゃ』



『お気に・・・・召しましたら・・・・・どうぞ・・・・ご自由に・・・・・お触りください・・・・・わたしを・・・・・悦ばせて・・・・ください』
『マゾの奴隷奥さんのくせに、えらく都合のいい要求やな、それは』
『申し訳・・・・ありま・・・せ・・・』


 嗚咽がついに言葉をかき消した。


『まあ、そうゆうことやから、君、この奥さんの躯、好きにしてええで』


 カメラが若者を向く。
 呆然とした顔で、若い男は妻を見下ろしていた。


『すげえ・・・・・ほんまにAVみたいや』
『今さら何を言うとるんや』佐々木は苦笑した。『でも、威勢よくち*ぽ勃っとるな。若いだけあって頼もしいやないか―――』



卒業後 65
BJ 2/14(木) 20:03:10 No.20080214200310 削除

 声が流れ続ける。
 妻の声が。
 苦痛と快楽がないまぜになったその響き。言葉はもはや意味をなしていない。
 ビデオカメラに映し出される妻の姿は、熱病に浮かされるひとのようだった。


『ちょっとカメラ、****に向けてよ』


 先程からずっと、こじ開けられた妻の秘口を筆でねぶりまわしていた金倉が、カメラを手招いた。


『すごい濡れでしょう。こんな状態でも****嬲られると感じてしまうんだねえ、奥さんは』


 言葉どおり、潤沢に濡れ光る妻のその器官は、普段の光沢のあるパールピンクから、目の覚めるような薔薇色へと変わっていた。
 テグスで吊り出された花弁と、根元まで剥かれた肉芽が、痛々しく充血している。

『****ひくひくしてる。物欲しそうやな。奥さん、もういきたいんやろ? 我慢は身体に悪いで』

 しかし、それは無理なのだった。淫靡な筆さばきの刺激を受けつづけても、同時に間断なく与えられつづける痛苦が、官能の解放を許さない。あるいは、オルガスムに達した瞬間に予想される、さらなる痛苦への恐怖が、妻に耐え難い忍苦を課しつづけているのだ。

『しかし―――、こっちもさすがに疲れたな。少し休憩しようか』

 立ち上がった金倉が、画面から消えた。
 カメラが妻の顔を向く。

『まるで出産中の若妻のような顔やね、奥さん』

 張りつめ、火照りきった顔色で、玉の汗を流し、奥歯をきりきり噛み締めている妻の表情は、たしかに佐々木の言うよう、出産の最中の女の顔に見えなくもなかった。

 画面には映らないが、金倉が電話をしている声が聞こえる。ルームサービスを注文しているようだ。妻にはおそらくその声も聞こえていない。ただただ、彼岸と此岸の境界を漂っている―――そんな、表情だった。

 この場にいるはずの、赤嶺はどうしているのだろう。一度も画面には現れていない。あいつは今、どんな気持ちでこんな妻を眺めているのか。

 金倉が戻ってきた。

『手軽につまめるサンドイッチを注文してきたよ。奥さんにはフランクフルトのほうがよかったかな』

 開かれっぱなしの秘裂、そのクリトリスをひとさし指でぴんと弾いて妻を呻かせながら、金倉が悪趣味な冗談を言う。


『いやいや、奥さんはそろそろ“本物”に飢えてるところやろう。―――食べさせてあげるよ。上の口やけどな』


 かちゃかちゃ、とベルトを外す音がした。
 カメラが下を向き、佐々木のペニスが映る。
 その向こうに、薄目を開けた妻が見えた。


『口、開けて。奥さん』


 妻はぼんやりとそそり立つペニスを見つめている。
 薄い唇が―――開いた。


『しっかりしゃぶるんや、奥さん。歯を立てたらあかんで』


 佐々木のものが、妻の小さな口に押し込まれた。


『こら、太巻き食ってるんとちゃうんやから、しっかり舌を使わな』


 叱咤され、妻はなんとか口を使おうとするが、しかし、不自由な姿勢と体力の消耗のためか、しごく緩慢な動作だった。


『しゃあないな。下の口にサービスして、奥さんの目を覚ましてやってくれ』
『アイアイサー』


 ふざけた返事が返ってくる。カメラはペニスを頬張った妻の顔から離れない。
 金倉による筆の刺激が開始されたらしい。アップになった妻の顔にさっと赤みが差し、眉根が苦しげに寄せられた。
 唯一呼吸を許された鼻から、熱い息が噴きこぼれる。

『目ぇ覚めたんか? なら、舌を使って奉仕するんや。今日は私を撮影してくれてありがとう、って気持ちこめてな』

 仔兎のように紅に染まった鼻頭を、佐々木の指が弾く。
 それが合図のように、ようやく妻の舌がペニスに絡みはじめた。

『まだまだやなぁ。そんなつたないフェラじゃ、一時間経ってもいけへんわ。もっと本気だしてみいよ』
『そんなら罰ゲーム設定しようか。ルームサービスが届くまでに、佐々木クンをいかすことが出来たら奥さんの勝ち。出来なかったら、ルームサービスを運んできたホテルの人間に、奥さんの今の姿を見てもらう』
『ええな、それ。でもボーイやったらええけど、女の子やおばちゃんやったら無理やな』
『そのときはまた別の罰ゲーム考えればいい』
『決まった。―――そういうわけや、奥さん。****おっぴろげた今のかっこ見られたくなかったら、精一杯頑張ってフェラするんやな』佐々木の声に含み笑いが混じった。『まあ、ルームサービスくるまで、もう10分もないやろうけどな』
 その声とともに、いきり立つペニスがぐいっと押し込まれ、妻は苦しげにむせた。


 今の妻にしては、それは精一杯の努力だったのだろう。
 蜘蛛の巣のように拡げられた性器を筆で嬲られ、身悶えするたびに過敏な部分にはしる痛みに鈍い悲鳴を搾られ、汗の浮いた顔面を揺らしながら、妻は必死で佐々木のペニスをしゃぶり、舌で愛撫した。
 汗が飛び、唇の端からよだれの糸が引く。
 凄惨な―――光景だった。
 見るに耐えない光景だった。
 そして結局、妻の努力は報われずに―――


 チャイムが鳴った。


『はーい、出ますよ』金倉が大声で言った。『―――残念だったね、奥さん。タイムリミットだよ』


 その言葉も、もうおそらく妻の耳には聞こえていない。

 金倉がドアに向かう。その様子をカメラが追う。
 途中、ちらっと男が映った。ベッドに座って、煙草を吹かしている―――赤嶺だ。
 今日―――初めて見るあの男。
 まるで他人事のように、責められる妻を眺めていた。


『ビンゴ! 若い男だ』

 嬉々として、金倉が叫んだ。

 カメラが妻に戻る。ようやく口中からペニスを引き抜かれた後も、唇は締まりを失って、ぽっかり開け放たれたままだ。
 その唇に、佐々木の指が入れられ、小さな口を横に引っ張った。そんなくだらない玩弄に抗う力はもはや妻にはない。


 金倉と誰か―――ホテルの従業員―――の会話がかすかに聞こえる。


『もうすぐお客さんがくるで、奥さん。そんな情けない顔しとらんと、しっかり笑顔で迎えて、卑猥な****たっぷり見てもらわんとな』


 妻の額に浮いていた汗が一粒、流れた。



千代に八千代に
信定 2/14(木) 11:48:23 No.20080214114823 削除
第六十四章

 幸雄は魂の抜け落ちたような千代を置いて、後ろ髪を引かれる思いで横山を病院へ連れて行った。
横山はやはり入院が必要だった。
必要がないと言い張る横山をなだめすかした。
落ち着きを取り戻した横山に詳細を聞いた。
動揺している千代の前では聞きにくかったからだ。
あの日の前日「朝の散歩は櫻井だけが同行する」と社長から言われていた。
朝食の時間を過ぎても戻ってこない二人を心配し、外に出たときにそれは起こった。
半壊した旅館の瓦礫の下敷きになり全身の打撲でのたうっていたが、
奇跡的に助かった横山はその日、居ても立ってもいられず身を引きずるように探し回ったのである。
その光景は東京大空襲で経験しているとはいえ次元が違った。
薄墨のような雨で全身びしょ濡れになりながらも、横山は地獄図の中を歩き回った。
そしてコンクリートの床に挟まれ息絶えていた社長を見つけ悲鳴を上げた。
そこには庄次郎がいなかった。
社長の人脈のてずるをフルに利用し、救済に来た軍や警察と共に探したが庄次郎は見つからなかった。
破壊し尽くされた瓦礫の中を何日もかけ、丁寧に探してくれた。
爆発の光で消滅した以外に考えられない、という結論に達した。
庄次郎の荷物が、息絶えていた社長の近くに落ちていたことも理由であった。
貴重品が入っている荷物を置いて行くはずもないし、何より社長を置き去りにするはずがないからだ。
何万人もの人が、跡形もなくこの世から消滅しているから。
幸雄や千代に連絡することをためらい、横山は苦悩した。
横山は知る由もないが、黒い雨で庄次郎の血痕は流されてしまっていた。

 幸雄に対しては、幼少の頃は甘やかしていたが成長するごとに厳しくなった。
母親が生きている頃から公然と浮気をするような父親であったが、仕事に関しては一目置いていた。
父親が死んだのは哀しい。しかし幸雄はそれをすんなりと受け入れた。
身を切り裂かれるような哀しみがわいてこないことに対しては、慙愧に耐えないということはある。
それよりも一刻も早く千代のそばに行きたかった。
横山を入院させ、幸雄は慌てて戻って行った。
父と共に、盛大な葬式で庄次郎を送り出してやりたい。
悲しみに暮れる千代をこの手で抱きしめてあげよう。
そう、千代はもう独り身だ。
とても千代にはふさわしいとは思えないが、後家ということになる。
未亡人のほうが似合うかな。
幸雄の心は浮き立っていた。

 帰宅途中ずっと笑みを浮かべたままであった。
「帰りました」
弾んだ声のあと、そのままの顔で耳を澄ませた。
この屋敷には千代以外にもう誰もいない。
千代の心の支えになるのは自分しかいないのだ。
会社のことはあとで考えればいい。
残った者でなんとかなるだろう。
規模を縮小してもいい。
あまり忙しい思いはしたくない。
できるだけ千代と二人の時間を作っていきたいから。
この屋敷で、これからずっと。

 夜中に何度、その部屋に入りたい衝動に駆られたことか。
入浴中の千代を見たくて忍び足で近づくが、その自分の姿に嫌悪したこともあった。
初めて会ったときから心を奪われていた。
千代と顔を合わせた夜は、狂ったように自慰行為に励んだ。
それ以後、千代のことしか考えることができなくなってしまった。
先の柔道の大会では準決勝で負けた。
試合中に千代のことを考えていた。
アッと思ったときには体が宙に飛んでいた。
気を許したのは今まで何度か戦ったが、負けたことがない相手だったからだ。
幸雄に初めて勝った相手はうれし泣きをしていた。
その相手は決勝戦であっけなく負けたのである。
あまりに不甲斐ない自分に情けなくなった。
今度は足腰立たないくらい、ぶちのめしてやる、と心に誓った。

 千代の返事がない。
広い屋敷の中、玄関の音が確認できる部屋にいる。
声や音がすると千代はすぐに顔を出す。
そのあまりの早さに驚いたことが何度もあった。
この時間に出かける用事は無いはずだ。
出てこないのはおかしい。
「千代さん」
幸雄は大きな声を出した。
反応はない。
胸騒ぎがした。
もしかしたら出て行った?
いや、黙って出て行くような人ではない。
幸雄はそう思うや否や千代の部屋に走った。

 階段を踏み外しそうになり声をあげ踏ん張った。
千代の部屋の前で息を整える。
名を呼びドアを叩くが返答がない。
強く叩いたが同じだ。
幸雄はドアノブを掴み、手前に引いた。
開かない。
鍵がかかっているのだ。
心臓が竦み上がった。
身を屈め後ろに数歩退きドアに体当たりをした。
分厚いドアだが、柔道で鍛え抜かれた体でぶち破ることは紙を破るごときであった。
幸雄はドアを踏みつけて中に入った。
宙に浮いている両足が見えた。
武道を極めた男とはとても思えない、甲高い悲鳴が部屋にこだました。



卒業後 64
BJ 2/13(水) 22:00:43 No.20080213220043 削除

 性器というもっとも繊細な器官をこれでもかと拡げられきったまま、まったく身動き出来ない状態にされた妻の恐怖はどれほどのものだろう。
 しかも、その様子は冷徹なビデオカメラによってすべて記録されつづけているのだ。
 パソコンの画面越しという圧倒的な距離で、そんな妻の苦しみと接している私には、しかしとてもこれが過去に本当にあった出来事だとは思えない。
 過去。そう、これはすべて過去のことなのだ。すべて終わってしまったこと―――。
 今この瞬間、私には何も出来ない。妻がどれほど苛まれても私には何も出来ない。
 出来ることといえば―――、この映像の結末を見届けることだけだ。けれど、それは私にとっても地獄だった。



『怖がってるね、奥さん。でもそんな表情も色っぽいよ。奥さんはいじめられるのがよく似合う』
『やっぱりこの奥さん、SM専門の女優になってもらったほうがええな。これだけの美形で、NGプレイなしやったら、相当なファンが期待できるで』

 先程までは撮影に徹していたようなカメラマンの佐々木だが、自身も興奮してきたのか、今では地の言葉らしい関西弁で、積極的に妻を辱める言葉を吐く。

『輪姦、ぶっかけ、レズ、アナル、ストリップ・・・・楽しみだねえ、奥さん。これからまだまだ色んなことを経験できるよ。第二の人生というのにふさわしいじゃないか』

 哄笑とともに、金倉がまた鞄から何かを取り出した。―――これ以上、まだ何かあるというのか。

 金倉が取り出したものは、何の変哲もない筆だった。

『これ、何か分かる? そう、ただの筆だよ。奥さん、日本的な顔立ちしてるから、お習字とかも得意そうだねえ。でも、今日は奥さんが紙代わりになってもらうよ』

 紅潮しきった顔の瞳だけを動かして、妻は金倉の手にあるものを見た。何をされようとしているのか分かったのか、その瞳に鋭い怯えがはしる。

『ああ、これは経験済みなんだ。でも、今日は一味違うと思うよ。―――ほら、口を開けて』

 命じられ、眉を切なげに寄せながら、薄く開いた妻の唇に、筆が強引に押し入れられた。

『もっと口を開いて。舌でねぶるようにして、よく舐めて』

 苦しそうに鼻で息をしながら、妻は筆に舌を絡めた。
 唾液が十分に筆を湿したところで、金倉はようやく唇のあわいから筆をひき抜く。
 仰向けに横たわる妻の、若々しく盛り上がった乳房の頂点を、筆がさっと刷いた。

『たっぷり楽しませてあげるよ』

 こそぐるような動きで、金倉の筆が乳首の先をつつき、小さな乳輪の周囲をさらさらとなぞっていく。
 丹念に、執拗に。
 柔らかかった桜色の乳首が、その微弱な刺激にしこり立っていくのが分かった。

『噂どおり、いい感度をしてるね、奥さん』

 ツンと立った淡い果実に、ねちねちとした筆が触れつづける。右、左、右・・・・と交互に乳首を弄られていくうちに、ゆたかな乳房の全体が波立っていく。

『く・・・・うぅ・・・・っ』

 はぁはぁという喘ぎとともに、ふくらんだ鼻孔から仔犬の啼くような声が噴きこぼれた。

 目尻に涙が溜まっていた。その涙をすくいとった筆が、撫子色に染まった瞼や鼻頭、たおやかなうなじを撫でまわして、ついに腋下に達したとき、妻は今度こそ高く啼いて、くなくなと頸を振った。その動きが、首輪に繋がれた糸からリングを嵌められたクリトリスへつたわり、妻のあらたな苦鳴を搾った。

『ここも性感帯? 感度が良すぎるのも考えものだねえ、奥さん。まだ****に触れないうちにこんなじゃ、最後まで身体がもたないよ』

 汗ばんだ細身のあちこちに筆を触れさせながら、金倉が含み笑いした。

 敏感な刺激を受けるたびに、拘束され、宙空に浮かんだままの手足がぴくぴくとわななく。
 金倉が仰向けの妻の下半身へいざりよった。ぶらぶらと漂う脚のそのなめらかな足裏を、残酷な筆が舐めまわしていく。

『い・・・・ぁ・・・・っ』

 か細い声とともに、きれいに整った形をした足指が蠢き、足首が引き攣れるようにくねった。同時に、足枷に付けられたテグスがぴんと張りつめ、引き伸ばされた陰唇がさらにめくりあげられた。


『んんんっ!』


 魂消えるような声が妻の喉もとから放たれた。


 火照り、涙と汗でひかる妻の顔がアップにされる。眉間に深い皺が刻まれ、唇が半開きの状態でふるふると震えている。


『奥さん、痛い? それとも気持ちいい? たぶんその両方やな―――』


 カメラをかまえる佐々木が、ねっとりといたぶる声で妻に言う。


『あーあ、綺麗なお顔が台無しやね。もっとええ表情せな。―――これは奥さんへの罰なんやで。今までこの淫乱な身体で、さんざん色んな男を弄んできたんやろ? その最大の被害者が奥さんの旦那と子供や。それは分かっとるな? こら、何度も言わせんと、カメラ向けられたときは目を開いて、こっち見て』


 こいつは―――何を言っているんだろう?


 苦悶に喘ぐ妻が、ようやくのことで薄目を開いた。


『ほら、“ごめんなさい”言うてみ。今まで奥さんが生きてきて、迷惑かけたひといっぱいおるんやろ? そのひとたち全部に“ごめんなさい”言うてみ。淫乱ですみませんでしたって、これから一生かけて償いますって、きちんと声に出して謝らんと』


 何という理不尽な要求―――いや、要求ともいえない強制。
 腹の底から、私は燃え上がるような怒りを覚えた。

 けれど―――
 妻はカメラを見た。

 私を―――見た。



『ごめ・・・・んなさい』



 ふるえる唇のあわいから言葉が零れる。


 金倉の筆がまた、妻の躯のどこかを嬲る。


『あううっ! ・・・うっ・・・あぐっ・・・ごめんなさい・・・・ごめんな・・・さい・・・あ』



 あなた―――



 最後に妻は、そう私の名前を呼んだ。



 ぐらり―――と意識が遠のいた。



『まだまだ。そうやってずっと詫びつづけるんや。許してもらえるまでな』


 彼方で佐々木の声がする。


 すっと金倉が妻の剥き出しの性器のほうへ身体を映したのが、画面の端に映った。



悪夢 その99
ハジ 2/13(水) 18:39:29 No.20080213183929 削除

「どうして、その人物が浩志くんだったのか。特定した根拠には説明が必要でしょう」

 羽生の口調からは抑揚が抜け、すっかり事務的なものになっていました。

「単純な逆算なのですが、デジカメとシャックとかいう少年が持っていた浩志くんの携帯電話が彼自身の手もとに戻っていた―――これは極めて重要な事実です」

 そう言うと、羽生はいったんは仕舞っていた銀色の電話を再び掲げてみせました。彼が浩志から“くすねた”という―――それはディスクのなかで、あの少年が弄んでいた機種と同型のもののようです。シャックという少年は浩志の携帯を使って、まんまと妻を誘き出し―――そして。

「待て」

 私は合点がいかず、その先を制しました。

「最後にそれを持っていたからといって、息子がその場にいたというのは早計じゃないのか。後で少年たちから譲り受けたかもしれないし、誰か他者の手を介している可能性だって―――そうだ。あのメモに名前のあった翔子という女の―――」
「翔子にはすでに確認を取ってあります」

 今度はお返しとばかりに、羽生のほうが口をはさみました。先ほどの携帯電話とは別のものを取り出します。

「先ほど、メールでね―――この数日間、浩志くんはずっと翔子の家にいたそうです。おそらく、今回のことがあってすぐに転がりこんだのでしょう。彼女が言うには―――滞在中、浩志くんは限られた人間としか接触していない。そして、家を訪れたときから、ずっと、さっきの紙袋を大事そうに抱えて離そうとはしなかった」

限られた人間のひとりが例の柴崎トシキで、息子を保護した彼から私は情報を得ていたのでした。柴崎は自宅以外のところに浩志を匿っていると言っていました。それが翔子という女のところだったのでしょうか。

「とにかく―――浩志くんは現場にやってきた。見物に来たのか、はたまた、乱暴されている秋穂先生を助けにきたのか。詳しくはわかりません。しかし、来てはみたものの、そばには近寄れなかった。息を潜めて、遠くで隠れているしかなかった―――何故か。それはシャック―――少年たちが浩志くんに危害を加えるような発言を度々していたからです」

「おそらく、浩志くんには彼らに立ち向かう度胸はなかったのでしょう。しかし、愛する女性が辱められている姿をみて、せめてカメラだけは止めなければと、なけなしの勇気を奮ったのです。そして、それを援護する形で―――」

「奥さんは自分に注意を惹きつけるために、あえて、あのような破廉恥な行為をおこなった。結果的に浩志くんを庇うことに成功した―――少年たちの誰ひとり、浩志くんの接近に気づかなかった。あれほどの至近距離にありながら、誰もが秋穂さんのからだに夢中になっていたから」

羽生は息継ぐ間もなく、ただ滔々と述べ続けるのでした。





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悪夢 その98
ハジ 2/13(水) 18:33:00 No.20080213183300 削除

「何故、秋穂先生が突然あんなことになってしまったのか―――理由がわかりますか」

 すぐ近くにいるはずの羽生の顔が霞みました。私は考えるのがひどく億劫で―――そして、疲れていました。
 それでもそれが妻の自慰行為のことを言っていることはわかりました。

「彼らに官能に導かれてしまったから―――それとも、あれが先生なりのけじめのつけかただったから―――」

 私は無意識にですが、うなづいていました。
 たしかに彼女は少年たちに向かって、何度か『償い』という表現を使っていました―――お互いの弱いところを見せ合うことで、痛みや苦しみを共有しあう。そんなふうにみえないこともなかった―――もちろん、そのような綺麗事が通用するはずはないのだけれども。

「そのどれもが正しく―――しかし、いずれも正解ではない」

朗々と喜びを詠い上げるかのような羽生の声だけが響きます。

「だが、今の我々と同じく第三者的な立場の人間がその場にいたとしたら、どうでしょう」

 未成年の少年たちに、他校とはいえ経験も見識も豊かな女教師の尊厳が犯され、なおかつ、それを外からじっと窺う影―――その異様な空間での第三者の存在理由など、私にわかるはずもありません。羽生の謎掛けはより一層混迷の度合いを増すばかりです。

「そして、そのことに奥さんが気づいていたとしたら」
「――――――」

「奥さんだけがというべきでしょうか。少年たちにカメラのほうを気にする素振りはなかった。カメラに触れようとする者がいるなどとは、想像もしていなかったにちがいない―――その人物が顔見知りだったら―――いえ、秋穂さんにとっては大事な人間だとしたら、どうでしょう―――助けを求めますか」

 体幹に電流が走ったような衝撃を受けました。その瞬間にすべて悟ったような気がします。
 
 おそらく、妻はそうはしない。相手が愛する人間なら、なおさら―――。

「その人物とは、まちがいなく浩志くんです」

 断言する羽生を私は力なく、見返しました。
 そう―――確かに、息子は私との不思議な邂逅のあと、秋穂を―――少年たちの後を追っていきました。あの場所にたどりついたとしても不思議はありません。

そして―――

 妻自身も証言していました。浩志はそこにいた。『見守っていてくれた』―――と。

「あの自慰行為は―――浩志くんを助けるためのものだったのです」



卒業後 63
BJ 2/13(水) 06:34:17 No.20080213063417 削除

『はーい、よく言えました。―――おっと、まだそのポーズ崩しちゃ駄目。そのままじっとしてるんだよ』

 金倉が画面から消え、すぐに鞄を抱えて戻ってきた。


『この鞄には今日、奥さんと遊ぼうと思って持ってきた玩具がいっぱい入ってるんだよ。全部、試させてもらうからね』


 そんなことを言い―――
 まず、金倉が取り出したのは、何の変哲もない赤いゴムテープだった。

『奥さんは縄には慣れているそうだけど、今日はこれだよ』

 仰向けに横たわり、膝を肘の部分でで支え持って、あたかも蛙のような姿勢で股を開いている妻。
 その妻の両の肘と膝を、金倉はゴムテープでぐるぐるに巻いていく。
 肘と膝を交差させられたまま、無毛の股間を開ききった屈辱的な格好で、妻の手足は不安定に宙空をぶらぶらと漂っている。

 つづいて金倉は鞄から、黒い筒のようなものをふたつ取り出した。トイレットペーパーの芯を少し大きくしたようなそれに、カメラが寄る。
 カメラに向け、金倉は黒い筒をぱかっと開いて見せた。どうやら枷のような器具らしい。それぞれにテグス糸がぶらさがっていた。
 宙に浮いた足首を引き寄せ、金倉はその枷を嵌めた。つづいてもうひとつ。妻の細い足首の両方に、無骨な足枷が付けられる。
 そして―――
 金倉はその足枷にぶらさがっている短い糸を掴んで、先端をカメラの前にかざして見せた。


 糸の先に、極小の洗濯ばさみのような器具が付いていた。


 金倉がにやりと笑い、剥き出しの妻の性器の陰唇を摘まむ。


 まさか―――
 厭な汗が私の背中をつたいおちた。


『ちょっと痛いかもしれないけど、すぐよくなるから我慢するんだよ』


 摘まみとられた片側の陰唇を、洗濯ばさみ状の器具が、噛んだ。


『あううっ!』


 疲れきったようにされるがままになっていた妻が悲鳴をあげ、腰の辺りが跳ね動いた。


『慌てない、慌てない。ほら、もう一個』


 悲鳴とともに、もう片方の陰唇にも器具が取り付けられた。―――


 足枷と妻の花弁を挟みとった器具を繋ぐ糸は、ごく短い。
 ゆえに、留められた妻のその部分は伸びきり、蝶の羽のように広げられた状態になっている。妻がもがいて脚を動かせば、陰唇はさらに引っ張られ、痛みは増すばかりだろう。


 あまりにも酸鼻な光景。だが、それで終りではなかった。


 次に金倉が鞄から取り出したのは―――首輪だった。


『ふふふ、これはね、奥さんご愛用の首輪なんだそうですよ。これを付けられると、途端に牝犬に変わってしまうという魔法の首輪―――。でも今日はそれだけじゃないんだなぁ』

 カメラに映し出された首輪にも、足枷と同じように、テグス糸が付けられていた。
 その先に付いていたのは―――これは小さいリング状の器具だ。

 無惨なまでに拡げられ、充血した肉襞をさらしあげられている妻の秘裂に金倉の指が伸びて、先端だけがあらわなクリトリスの包皮を剥きあげる。


 完全に露出させられた微小な肉粒に、金倉はそのリングをかけ、―――絞った。


『ひゅっ』と異様な空気音が妻の喉から漏れ、総身がわななく。痙攣した足首の動きがテグス糸をつたわって、張りつめた花びらをぐいぐい引っ張り、妻は『ん―――っ』と狂おしい声をあげた。

『そんなに暴れるんじゃないよ。大事な商売道具がちぎれてしまうじゃないの』

 愉快気に笑いながら、クリトリスを締めつけるリングに繋がった首輪をくいと引っ張る。妻がまた呻いた。

『ほら、頸を上げて。首輪、嵌めるから』

 紅潮しきり、玉の汗の浮いた妻の頬を、金倉はぱしぱしと叩いた。
 先程から、自分からは一切、意思を伝える言葉を吐かなかった妻が、そのとき初めて『こわい、こわい』と、うなされたように声をあげた。

 心の底から―――怯えきっていた。


『すぐによくなるから。奥さん、マゾの牝犬なんでしょう?』


 そして、金倉は喘ぐ妻の耳元に口を寄せた。



 ―――前にこの首輪を嵌められたとき、奥さんが何をしたか、

 ―――全部知ってるよ。



 そう、囁いたのが―――、
 私には分かった。

 
 金倉の言葉は、妻の肢体を幾重にも縛る枷以上の効果をあげた。
 見開かれっぱなしの妻の瞳が、その瞬間、さらに大きくなり、喉がごくりと鳴った。


 よろよろと―――
 仰向けの妻は頸だけをかすかに上げた。唯一自由に動かせるその箇所の、その動作が、今の妻にとっては精一杯の動きだった。


 金倉が妻の頸に首輪を取り付けた。
 ぴんと張りつめるまでテグスをたぐって、リングを嵌められた剥き身のクリトリスを飛び出させるまでたぐって、金倉はしっかりと首輪に固定した。

 蛙のような姿勢―――と先程までの妻を見て私は思ったが、いまやそれは解剖台にのせられた蛙へと変貌していた。身体のあちこちをピンで留められ、いまにもはらわたを切り裂かれそうな蛙―――。

 それは妻の『女性』へ加えられた徹底的な凌辱だった。性器の内奥も、クリトリスまでも限界まで露出させられたまま、妻はもう身動きひとつとれない。いや、ほんのわずかな身体のわななきですら、妻の身体の敏感な神経がもっとも張り巡らされた部分に、痛烈な刺激を与えるのだ。

 糸で引かれ、クリップに噛まれ、クリトリスを絞られたその器官を、カメラが大写しにした。


『まるで、活けづくりみたいやな―――』


 これは―――佐々木の言葉だ。


『綺麗な****だと思ってたけど、こうしてみるとさすがにグロテスクだね』


 金倉が―――言う。


 カメラは次に、そんなふうに―――グロテスクなまでに『活けづくり』にされた妻の、真っ赤に染まった顔をとらえた。


『奥さん、目を開いて』
『ちゃんとカメラ見てよ』
『どう? 奥さんのために用意したフルコースは』
『料理されてるのは奥さんだけどね、あはは』
『なかなか味わえないよ、こんな刺激』
『もっと嬉しそうにしてみてよね』
『ほら、わらって。奥さんのいやらしすぎる姿を皆が見てるよ』


 誰が何を言っているのか―――
 そんなことはもう、

 どうでもよかった。



卒業後 62
BJ 2/12(火) 21:24:20 No.20080212212420 削除

 どことも知れぬバーでの場面は、そこで終わった。

 画面が切り替わる。

 次に現れたのはホテルの一室らしき部屋で、金倉はベッドに腰掛け、妻はその隣で肩を抱かれている。
 私が驚愕したのは、まるで台風にでも遭ったかのように、妻の着ているドレスのところどころが破け、衣服の下の肌までが露出していることだった。先程までとの一番の違いは、スカート部分の丈で、それは膝どころか生白い太腿まであらわに見えているのだ。私は今まで妻がミニスカートを履いているのさえ、見たことがなかった。


『奥さん、始ったよ。カメラ見て』


 金倉に促されて、妻が正面を向く。その顔色だけですでに妻がかなり消耗しているのが分かる。

『さて、あれから我々は大阪の街をちょっと歩いて、ホテルに入りました。途中、またちょっと奥さんが我がままを言ったので、罰として、ドレスのあちこちを鋏で切っちゃいました。お分かりでしょうかね』

 金倉の手が生白い太腿を撫で、それからスカートの端を摘まみあげた。それは丈を短くされただけでなく、縦に長く切れ込みを入れられていて、摘まみあげられた箇所から、腿の付け根までの一部があらわになる。

『ここもね』

 胸の辺りに指がかかる。もともと襟ぐりが深く、乳房の半分までが露出しているようなドレスだったが、その下部にも切れ込みは入れられ、指で押さえられると黒の布生地は乳丘を横断するように隠しているだけにすぎず、まるみの形がほぼ完全に分かる。

『まるで強姦された後みたいな格好でしょ』

 あはは―――と金倉はわらった。
 ぼろぼろのドレスをまとった妻は、その隣で微動だにしない。
 疲れた表情は本当に強姦されたようだ。

 もともと人ごみが苦手なたちで、あまり外へは出たがらず、たまに街中を歩くとすぐに人に酔ったような感じになる妻だ。あのドレス姿でも相当なものだったろうに、こんな惨めな格好をさらしながら歩くのは、私が想像するよりもっと負担だったろう。
 辛いという以上に―――、
 私はなんだかひどく哀しくなってしまった。

『まあ、これで奥さんも懲りて、おとなしく言うことをきくそうです。何しろ、初出演なのでね。ぼくらも相当やさしく接してあげてるつもりなんですが。―――それでは奥さん、服を脱いで、全国の皆さんに自慢のヌードを見てもらおうねえ』

 はい、と―――妻は答え、立ち上がった。
 無惨に切られたドレスのホックが外れ、するりと床に落ちる。

 妻は裸になった。

『手で隠そうとしない。気をつけの姿勢になるんだよ』

 カメラが近づいていく。

 色白の肌を、頼りないほどに細い手足を、豊かな黒髪に隠れたうなじを、つんと張りつめた乳房を、太腿のあわいにそこだけ漆黒を見せる恥毛を。

 さまざまな角度から、生まれたままの頼りない裸身を、無機質なビデオカメラが舐めていく。記録していく。

 気が―――狂いそうだった。
 カメラ越しに見える妻の裸身は、よく見知っているはずなのに、まるで他人のもののようだ。けれど、皮肉なことにその裸身が他人のものではないことは、今、私がこうして感じているあまりにもリアルな痛みが証明している。

 ふと―――横からの視線を感じた。
 傍らの明子が、私の顔をじっと見つめていた。

「何?」
「いいえ、何でもないわ」

 しごく落ち着いた声をそう答える明子に、私は不審なものを感じたが、今はそれを気にする余裕もなかった。


 カメラが妻の全景を舐めまわす間、妻はじっと直立不動の姿勢で立っていた。

『奥さん、顔もいいけど、身体はもっといいね。どこも崩れていないし、色白だし、男好きのするエロい身体だ。スレンダーなのに、出るとこは出てるし』

 言いながら、ぶよぶよした手でなめらかな臀を撫でた。

『この身体なら絶対に売れっ子になれるよ。デビューするにはちょっとトウが立っているけど、今は熟女が人気だからねえ。長く活躍できるはず。いい時代でよかったね。奥さん、しっかり稼ぐんだよ』

 ぴしゃり、と裸の臀部を、金倉の手が打つ。

『返事はどうしたの?』
『はい。すみません』
『そうそ。そんなふうに素直に返事しなきゃね。じゃあ、奥さん、女優デビューにあたって、新しく生まれ変わったところを全国の皆さんに見せてもらおうか。そこに座って』

 声とともに指差した床には、青いビニールシートが敷かれていた。
 言われるまま、妻は細い肢体をそのシートの上に正座させた。

 金倉がいなくなり、浴室から何かを持ってきて、正座した妻の前に置いた。


 カメラに映されたそれは、湯の入った桶、ボディーソープ、そして剃刀だった。


『今日で奥さんはこれまでのすべての生活と手を切ることになる。それはもう分かってるね?』
 わずかに痛みを堪える顔で、しかし妻は『はい』と答えた。
『これからがあんたの第二の人生だよ』
『はい』
『これはその記念の儀式だね』ふざけたように重々しい口調で言う金倉の口元は、下卑た笑みを刻んでいた。『自分で剃刀を当てて、あそこの毛をすっぱり剃ってみせてよ』

 妻は―――うつむき、じっと目の前に置かれたものを見た。

『大丈夫。奥さん、雰囲気が若いから、パイパンもよく似合うさ』

 妻はまだじっとして、微動だにしない。いや、出来ないのだろう。

『いつまでもぐずぐずしてると、またきついお仕置きだよ。ほら、早く』

 いらいらとした声を金倉があげる。私には分かる。この男は本当はいらついてなどいない。ただ―――妻を嬲ることに悦びを覚えている。吐き気を覚えずにいられない、そんな声の調子だ。

 小枝のような指が、剃刀を手にとった。



 眩暈がする。
 眼球の底が乾いているのが、自分で分かる。
 そんな乾ききった眼がとらえる画面の中の妻は、しゃがんだ姿勢で自らの股間に剃刀を当てている。
 わずかに股を開き、泡立ちをまぶしたそこを、妻の繊手に握られた剃刀が危うげな動作でなぞっていく。

 あまりにも惨めで、滑稽な光景だった。それを私の妻が演じていた。

『もっと股を開かないと、怪我をするよ』

 笑いを含んだ声で、傍に立つ金倉が言う。

『剃り残しがあったら余計おかしく見えるからね。奥さん、濃いほうじゃないから、簡単なことだろう』

 妻がさらに脚を拡げる。剃刀が引かれる。剃りとられたものが泡立ちにまぎれ、浮いている。
 カメラは冷静に、克明に、そんな妻の所作を記録している。

 左手が桶の湯をすくいとって、その部分にかけた。洗い流されたそこには、くっきりとした縦筋だけが刻まれていた。
 金倉がタオルを渡す。それを受け取って、妻は自らの手で姿を変えさせられた股間を拭い、それからシーツの上にこぼれたよごれをぬぐった。

『終わったの? じゃあ、そのシートの上に仰向けに寝てみてよ』


 言われたとおり、妻は仰向けに横たわった。
 飾り毛を失った秘部が、無残なまでに白く、あらわだ。


 変貌した裸身を晒し、瞳を閉じて横たわった妻が、何かの供物のように見えて―――
 私の胸を激しく衝いた。


『膝を上げて。脚、もっと開いて。―――もっとだよ。膝を両手で抱えて、そうそう、いい格好だよ』

 金倉の指示で妻がとらされた格好は、まるでおむつを取り替えるときの幼児のそれだったが、童女と化した妻のその部分が割れて内側に覗いた生々しい薔薇色の器官は、大人の女性のそれに違いなかった。
 カメラが無毛のそこに近づく。

『綺麗に剃れてるよ、奥さん。まるでおぼこみたいだ』

 膝を抱え、外に拡げている腕が、ぴくりと動く。

『これからしばらくは毎日自分で剃るんだよ。産婦人科の検診もパイパンでいってもらおうかね。医者の先生、きっとびっくりするだろうな。ちゃんと、自分の趣味で剃りましたって言わなきゃ駄目だよ』

 くすくすと笑いながら、金倉は仰向けに横たわる妻の足元にかがんだ。


『動くんじゃないよ』


 金倉の指が、あらわな裂け目をすっと左右に拡げていく。
 鮮やかな妻の内側が露出した。カメラがまた近寄って、その部分を撮る。


『とっても綺麗だよ、奥さん。本当におぼこみたいな色だ。淫乱のくせに、ね。こういうの、特殊体質って言うのかな。モザイクではっきり見せられないのが、皆さんに申し訳ないくらいだ』


 言葉とは裏腹に、私と明子が見ているこの画面は、何の加工も施されていない。だから、妻のその器官の形も、金倉の言う『おぼこみたいな色』も、何もかもがあらわだった。
 妻のすべてが、カメラの前にさらけだされていた。


『ほら、奥さん、言うんだよ。“生まれ変わった私を見てください”って、この映像を見てる全国のひとたちに』


 花弁をくつろげながら、一方の手で金倉は妻の内腿をぴたぴたと叩いた。


『“これからもずっとこの****をよろしくお願いします”ってね。ちゃんと気持ちを込めて言うんだ』


 その瞬間も、カメラは動かなかった。
 金倉の手で拡げられ、内奥をさらした女の器官がただ映されつづけるなかで、切れ切れな妻の声が流れた。



『生まれ変わった私を・・・・見てください』



『これからも・・・・よろしくお願いします』



 私はたしかにそれを聞いた。



千代に八千代に
信定 2/12(火) 11:02:26 No.20080212110226 削除
第六十三章

 幸雄は幸せだった。

「八代さん大丈夫でしょうか」
千代は戻ってこない八代の安否を気遣っていた。
「ほとんどの交通網が遮断されていますからね。でもむこうは空襲にみまわれていない地域なので大丈夫だと思います」
憂慮の面持ちで胸に手を宛がう千代の横顔を見つめた。
「父達の方は櫻井さんも同行していますので心強いです。もちろん横山さんも」
幸雄は言う。
千代は小さな笑顔を見せた。

 千代は幸雄のためにこの屋敷にとどまっていた。
難民の殆どはここを出て行ったが、まだ数人が残っている。
備蓄してある食糧や衣料品などを惜しげもなく難民に与えていた。
「すみません、勝手に」
「いやいや、ぜんぜん構いません。困ったときはお互い様ですから」
千代がクスッと笑った。
「どうかしましたか?」
幸雄は千代につられ口元をほころばせた。。
「ごめんなさい。坊ちゃまって恐い人かと思っていました」
「えっ、そんなことはないですよ」
戸惑う顔の前で筋肉質のてのひらを振った。
「始めは黙ったまま、口も聞いてくれませんでした」
「そ、そうでしたっけ」
「そうです」
十以上も年の離れた千代だが、小首を傾げる仕草に年の差は感じない。
そんな千代に見つめられて幸雄は顔を赤くする。
「その、坊ちゃまって言うのはやめてもらえませんか。横山さんにも言っているのですが、全然やめてくれませんし」
照れ隠しに口を尖らせる。
「分かりました。では、幸雄さんで宜しいですか?」
千代はちょっといたずらっぽい顔で微笑んだ。
「そうですね、それでいいですよ。では少し用事があるので」
幸雄はあたふたと二階へ上がっていった。

 数日後、広島に新型爆弾が落とされたことを千代たちは知った。
その時はまだ、想像を絶する被害であることは、正確には伝わっていなかった。
数百人が亡くなった、数千人が焼け出された、市ひとつが消滅した、いや被害はそれほどでもないなど、
その後入ってくる情報は混乱を極めた。
「大丈夫ですよ」
不安げな表情の千代に幸雄は穏やかな口調で言う。

「私、行ってきます」
落ち着きをなくした千代が宣言するように言い放った。
「行くって、どこへです?」
「広島へ」
「えーっ、そんな、無理ですよ」
「でも、私、行きます」
完全に冷静さを欠いていた。
こんなにうろたえる千代の姿を見たのは初めてだった。
身の回りの簡単な荷物を抱え、本当に出て行こうとした千代を、幸雄は抱き留めて制したのである。
体に触れたのは二度目だった。
全身を密着させるほどに抱擁したのは初めてだった。
後ろから抱いた腕の中で身悶えする千代に激しく欲情した。

”た、堪らない”

「私行きますから」「ちょっと待ってください」の押し問答が続いた。
幸雄は下半身の疼きを悟られないよう必死だったが、取り乱す千代に分かろうはずもなかった。
「千代さんがいなくなったら僕はどうすればよいのですか?」
その一言は効いた。
幸雄の腕の中で千代の体の力が抜けた。
密かに千代の髪の匂いと体臭を鼻一杯に吸い込んでいた。
頭がクラクラした。
「ごめんなさい。取り乱して」
そう言って抱擁からすり抜けたとき、幸雄は淡い寂寥をおぼえた。

 不安げな日々を送っているとき、三日後、今度は長崎に大型爆弾が落とされたことを知った。
入ってくる情報は、次々に被害の凄まじさを増していった。
千代は背を向け両手で顔を覆い、肩を震わせた。
幸雄はそっと千代の肩を抱いた。
千代の体は震えていた。
やがて意識して強く千代を抱きしめる。
「心配ありませんから」
不謹慎なことを考えながら、髪を撫で背をさすり、胸の内では凄まじい欲望と戦っていた。
同時に、こんなに千代に愛されている庄次郎に対し、憎しみにも似た感情を覚えた。
嫉妬の炎が身を焦がした。

 不安な日々を過ごしていたさなか、電報が届いた。
横山からだった。
自分は無事であること、今のところ二人の消息が分からない旨が簡素に書いてあった。
千代がおどおどとした目で幸雄を見た。
幸雄は唇を噛みしめていた。

 二発の原爆を投下し、罪もない多くの人々をこの世から抹殺したあとも、
アメリカは執拗に空襲を続け殺戮を繰り返した。
日本は無条件降伏となった。
これにより今まで常識として微塵も疑っていなかった事柄全てが、非常識となってゆくのである。

***********************************************************

玄関先を掃き清めていたとき、ボロ雑巾のようなありさまの横山が転がり込んできた。
千代の悲鳴のような声を聞きつけ、幸雄が階上から転がるように降りてきた。
千代から水をもらい、玄関を入ったところで横山がうずくまっていた。
「横山さんご無事でなにより」
「遅くなって申し訳ございません」
振り返った千代の瞳は怯えていた。
幸雄は笑みを作って見せた。

「社長が、亡くなられました」
横山は沈痛な面持ちで呻くように言った。
「えっ、父が」
幸雄は絶句し、白い顔をした千代を見た。
「早くお知らせしようと思ったのですが、全てが混乱しておりまして、申し訳ございません」
横山は唇を噛みしめる。
「あっという間に何万人もの人がこの世から消滅したのです。まさに文字通り塵となって。悪夢としか」
言葉が途切れ、千代を見る横山の目に涙が滲んだ。
幸雄は横山につれて千代を見た。
表情の無い顔にゾッとした。

幸雄の「櫻井さんは?」の質問に横山は苦悶の表情を浮かべ、力なく首を振った。
千代は支えていた横山の上半身をゆっくりと起き上がらせる。
「軍の方たちにお願いをして、施設やら、病院やら、怪我人の収容所をひとつ残らず探したのですが」
社長の名を出し、横山は強引に頼み込んだに違いない。
徹底的に調べたはずだ。
だからここへ戻ってきたのだ。
千代の唇が微かに震えていた。
「痛恨の極みであります」
千代の体がグラリと揺れた。
凄惨な美しさだ、と不謹慎ながら幸雄はそう思った。

「千代さん、申し訳ありませんっ」
横山は頬を涙で濡らしていた。
「いいえ、とんでもありません。横山さんだけでもご無事でよかったです。
本当にありがとうございました。ゆっくり休んで下さいね」
床に頭を擦りつける横山に、千代は穏やかな表情でそっと言った。



卒業後 61
BJ 2/11(月) 21:23:38 No.20080211212338 削除

 パソコン画面のなかでは相変わらず、金倉が愚にもつかないことを言い、それに妻が律儀にこたえる場面がつづいている。


『しかし―――奥さんの子供も可哀相だよね。不倫してデキちゃったうえに、母親がAV女優じゃねえ。おっと、見ている方に説明しておくと、奥さんのビデオ出演はこれ一本で終いではありません。S企画の専属として、奥さんが歳をとって商品価値がなくなるまで、もしくは会社が潰れないかぎり―――あはは、私がこんなことを言っちゃいけない―――ずっと女優業をつづけてもらいます。そういう契約だったよね?』
『はい』
『大丈夫、奥さんなら50までは余裕でいけるね。でも、もうその頃には赤ちゃんも中学生になってるわけだ。きっと学校でも虐められるよ、母親がAVなんて出てたら』
『・・・・はい』
『可哀相でしょう。奥さんのせいで、子供がそんな目に遭っちゃ』
『はい』
『―――ぼくの友人でねえ』金倉は目を細めた。『子供を欲しがってる夫婦がいるんだ。旦那のほうが不妊症でねえ。奥さんの産んだ子供ならきっと可愛いにちがいないから、彼ら、養子にしてくれるかもしれないよ。ぼくから頼んであげようか』

 うなだれた妻の肩を撫でながら、金倉はよどんだ笑みを浮かべる。

『ね、そのほうがいいよ。奥さんはAV女優としてビデオ出演をつづけながら、足長おじさんならぬ足長おばさんになって、稼いだお金を毎月送金したらいい。この仕事もなかなか厳しいんだ、そもそもが子育てしながら出来るもんじゃない。奥さんには毎月何本も出演してもらうつもりだし、淋しいなんて思う暇もきっとないよ。―――誰にとってもそのほうが都合がいいと思うんだけど、どう?』

 こたえない妻の頬を、金倉の指がつついた。

『ほら、返事はどうしたの?』
『はい』
『カメラ見て。赤ちゃん、養子に出すね? 子供にとってもそれが一番いいんだよ』

 聞き取れないほどかすかな声で、妻は『はい』と言った。カメラがぐーっと近寄って、その表情を大写しにする。顔を上げ、妻がそのカメラを見返した。切れの長い瞳が濡れていた。

『ああもう、駄目じゃない、泣いちゃ。これじゃ、よってたかって奥さんを虐めてるみたいだ。ぼくはこれからの同僚として、奥さんのためを思って言ってるんだからね』

 薄笑いを浮かべながら、子供をあやすように金倉の手が妻の頭を撫でた。抗わず、それを受ける妻の総身はいつにもまして小さかった。


『ほら、奥さんの仕事の第一歩だよ』

 座席の下の鞄から、金倉が大きめの包みを取り出した。

『今日の衣装が入ってる。とりあえず、それに着替えてもらうから』
『あの・・・・どこで?』
『トイレでいいじゃない、そんな、着替えくらい。あ、今着けてる下着は全部脱ぐこと。奥さんはこれからノーパンノーブラで過ごしてもらうからね』

 妻はまだぼうっとして、渡された包みを、まるで大切なもののように胸に抱えている。

『指示されたことは手早くするんだ。たかが着替えでしょ。これから奥さんは、監督の指示があれば、いつでもどこでも素っ裸にならなきゃいけないんだよ』

 にやにやしながら、金倉は妻の小さな耳たぶを引っ張っる。
 ほんの一瞬、苦しそうに眉根をたわめ、妻は―――カメラではなく、その右側をすがるような目で見た。
 そのとき―――



『どうしてそんな顔をする? 約束しただろう』



 聞き覚えのある―――声がした。


『今日は“いや”は許さないよ』



 間違いない。
 赤嶺の声だ。

 すっかり忘れていた。画面には映っていないが、この場には赤嶺もいるのだ。妻を監視するためか、それとも“監督”として指示を出すためか―――。
 ずっと痛みつづけている胃の腑が、その声を聞いた瞬間、灼熱とともにでんぐり返るような心地がした。激しい憎悪。眩暈。しかし、妻は赤嶺の声を聞いて一瞬うなだれ、それから立ち上がって画面から消えた。
 そんな妻の姿にも、私の胸は張り裂けんばかりに痛んだ。



 妻が―――戻ってきた。

 ノースリーブの黒のドレスを着ている。胸元の切れ込みがえぐるように深く、剥き出しの色白の乳房の半球が見えている。羽織った黒網シースルーの上掛けは、その露出をかえって妖しく目立たせていた。どう見ても、堅気の女の服装ではない。ここが普通の酒場なら―――そのようだが―――客の目が妻に集まっていることは想像に難くない。それを証明するかのように、うつむいた妻の頬には血の気が差していた。

『おー、綺麗、綺麗。奥さんは細身だから、ドレスがよく似合うわ。あんまり綺麗だから、店のひとたちも皆、奥さんを見てるよ。ほらほら、何、うつむいてるの。顔を上げて、堂々としてなきゃ。それから脱いだ下着も渡して。―――よしよし、いい子だよ、奥さん』

 金倉の声が聞こえるが、カメラは妻のあらわにされた胸の辺りをズームアップで撮っている。蒼みがかって見えるほど白い乳房は、うっすらと血管さえ透けて見えていた。

『奥さん、着痩せするタイプなんだね。想像してたより、ずっと大きなおっぱいだわ。むっちりしてて、形も良いし』

 肉でたるんだ金倉の手が、シースルー越しに妻の乳房に触れた。大きさと柔らかさを確かめる動きで、醜い手が色白のふくらみを撫でさする。

 不意に、その手が上掛けを横にはだけさせ、妻の肩から下がびくりとふるえた。

『動いたら、後でお仕置きだからね』

 金倉の声。カメラは相変わらずアップで、妻の胸を撮っている。ふくらみにようやく引っかかっているようなドレスの、片方の乳に金倉の手がかかり、すっと下に引きはだけた。


 ぽろん、という音が聞こえそうな具合に、妻の左の乳房が露出した。


『う・・・・』と小さな声が聞こえ、妻の左手があらわにされたものを隠そうと動く。


『動くなと言っただろう、奥さん』


 さっきよりもどすのきいた声で、金倉が言う。


『何ならここで素っ裸になってもらってもいいんだよ。奥さんは逆らえないんだし。もっと羞ずかしい目に遭いたいんなら、俺はそれでもかまわないよ』


 妻の手が―――止まる。だが、そのふるえはやまない。


『小さくて可愛い乳首だねえ。淫乱なわりには綺麗な色をしているじゃない』


 ねっとりと絡みつくような声とともに、金倉の手指が雪白の丘に息づいた薄紅の乳首を摘まみ、こりこりと弄る。
 ほとんど、自分自身が蹂躙されている気分で、私は息を呑み、それを見つめた。
 芋虫のような手が、ようやくドレスを引き戻す。

『さあて、奥さんも少しほぐれたところで、場所を変えようか。しばらくはその格好で街を歩いてもらうよ。堂々と背筋を伸ばして、ね。羞ずかしがってたりなんかしたら、奥さんが余計辛い目に遭うだけだよ。―――ほら、しっかり立って』

 妻の小柄な背を、金倉がぽんぽんと叩いて促した。



卒業後 60
BJ 2/10(日) 03:09:22 No.20080210030922 削除

 バーを出て、私たちはそろって荻窪の私のアパートへ向かった。
 一まわり歳上の、一人暮らしの男の部屋に、明子は躊躇することなく上がった。
「殺風景な部屋ね」
 的確な感想を述べる明子に答えず、私はノートパソコンをつける。この部屋にはテレビもデッキもないため、DVDはパソコンでしか見れない。
 明子は黙って先程のディスクを渡した。
「ここまでついて来ておいてなんだけど、私、外へ出てたほうがいいかな?」
「いや、そばにいてほしい」
 彼女の目的が分からないなりに、私はすべての事情を知る明子にそばにいてほしかった。
「わかった」
 私のとなりに、明子はぺたりと腰を降ろした。



 映像が―――始まる。

 パソコンの画面に、妻が映った。一月近く姿を見ていない妻。以前会ったときもあまり顔色が冴えなかったが、今、こうして無機質なディスプレイに映る彼女の顔は、妊娠して肉がつくどころか、一回り小さくなったようだった。痩せて、目が大きく、鼻梁が高くなったように見える。
 水色のブラウスに、薄い白のカーディガンを羽織っていた。そのどちらにも見覚えはない。場所は―――どこだろう。どこかのバーのように見える。さっき私と明子が出てきたバーより、もっとうらぶれた感じの場末の酒場のようだ。
 カメラは舐めまわすように、少しうつむき加減の妻を撮っている。このカメラを扱っているのが、佐々木という男なのか。

『奥さん、もっと顔を上げて。カメラをきちんと見て』

 その佐々木のものらしい、叱咤する声が飛んだ。
 妻が顔を上げて、正面からカメラを見た。以前は透きとおるようだった瞳に、何かぼんやりとした膜のようなものがかかっているように感じる。カメラ越しにも痛いほど妻が緊張しているのが分かった。それだけで私まで怖くなった。
 カメラが横にずれて、知らない中年男の横顔が映る。太って崩れた体型をした男。顔のあちこちに染みがある。「彼が金倉よ。“男優”の」と明子が囁いた。

『さて、じゃあ自己紹介しようか。奥さんの名前とそれから歳ね』
『はい』

 画面の妻が返事をして、何か言いかけたところで、

『奥さん、何度も言わせないでよ。もっとちゃんとカメラを見なきゃ』

 と、佐々木の声が飛んだ。

『申し訳ありません』 

 妻は詫び、相変わらず緊張したまなざしでカメラを正視した。

『私の名前は瑞希と言います。名字は・・・・・勘弁してください。歳は35歳です。よろしくお願いします』

 ぺこりと、妻は頭を下げ、それから言われたとおり、カメラを向いた。

『瑞希さん、ね。―――いえいえ、こちらこそ今日はお世話になりますよ、いろいろとね』

 画面の端で、金倉が下卑た笑みを見せる。そのやにさがった表情と黄色い歯を見て、私は気分が悪くなった。

『それにしても奥さん、綺麗だねえ! 35にはとても見えないわぁ。よく言われるでしょ、そんなふうに』
『言われません』
『ご謙遜、ご謙遜。さあて、それじゃ、その綺麗な奥さんがどうして今回AVに出演することになったのか、ご本人の口から説明してもらいましょうか』
『私は―――』

 口を開き、開いたところで、妻は絶句した。瞳はかろうじてカメラを向いているが、視線は左右を彷徨っている。

『また、固まっちゃった。何しろ初出演なもので、奥さん、緊張しております。そんな怖いことは何もないのにねえ』

 金倉がカメラを見て、にいっと笑った。

『こういう初々しい反応もいいでしょう? でもね、この奥さん、見かけによらないの。本性はとんでもない淫乱なんですよ。そうでしょ、奥さん?』
『・・・・はい』
『何が“はい”なのかきちんと言わなきゃ駄目だよ』
『はい。仰るとおり・・・・、私はとんでもない淫乱です』
『あはは、そうそう。結婚する前も、結婚してからも、もの凄い数の男と関係を持ってきたんだそうです。それもほとんどは自分から誘いをかけて、ね。そうでしょう?』
『はい。私から誘いをかけました』
『それで色んな男に抱いてもらったんだ?』
『はい。抱いてもらいました』
『そんなふうに結婚してからも淫乱な男遍歴を重ねているうちに、ついに天罰が当たって、他の男の子供が出来ちゃった。驚くなかれ、この奥さん、現在も妊娠中なんですよ』

 カメラがすっと下にずれて、妻の下腹部を映す。

『まだ間がないから、お腹はぽっこりしていないけどね。この奥さん、ゴムの感触が嫌いで、相手の男にはいつもスキンなしでやらせていたそうです。そうだったよね?』
『はい。いつも・・・・』
『いつも、何? ちゃんと言葉に出して言わなきゃ。私は生でされるのが好きでした、って』
『はい。私は生でされるのが・・・・好きでした』
『そうじゃなきゃ感じられないんでしょう?』
『はい。感じられません』
『まあ、自業自得だね。それで結局、不義の子供を宿すことになった。でしょう?』
『はい。私は―――』

 妻の顔はいっそう蒼褪めていた。


『不義の子供を・・・・宿しました』


『ふふふ。でも結局、妊娠したことが旦那さんにバレちゃって、三行半をつきつけられちゃった。それで生活費と出産費用を稼ぐために、こうしてAVに出ることになったとそういうわけなんですね。可哀相にねえ、奥さん。だけど本当に可哀相なのは、もとのご主人のほうだよね。浮気されて、子供まで作られちゃってねえ。奥さんだって、それは分かるでしょ?』
『・・・・はい』
『じゃあ、謝ってみせてよ。カメラ越しに旦那さんがいると思ってね。ほら、早く』

 強制され、妻はあらためてカメラを見つめた。
 長い睫毛が2,3度しばたく。
 ふるえる唇が動いた。


『本当に・・・・申し訳ありませんでした』


『なんだかよそよそしいなあ。心もこもっていないみたいだし。まあいいや。旦那さーん、もしこのビデオを見ていたら、今日はぼくがあなたに代わって、奥さんにたっぷりお仕置きをしてあげますから安心してくださいね』



 何だ。
 何だ、これは。



 声にならないうめきを私はあげた。


「落ち着いて。まだ始ったばかりよ」

 明子が囁き、私の手をぎゅっと握った。

「だって、これは・・・・・これは何一つ真実を語っていない。嘘ばっかりだ」
「当たり前じゃない。これは作られたAVよ。金倉が言っていることも、奥さんが言わされていることも、すべてが作り事の設定にすぎないわ」
「だけど・・・・残酷すぎる。こんなものは・・・・・残酷すぎる」
「分かるわ。分かってる」私の手を握る明子の手に力が加わった。「少し、休憩する?」

 私はその手を邪険に振り払った。

「まだ・・・・・始ったばかりなんだろう」
「そうよ」

 穏やかに明子は答える。



卒業後 59
BJ 2/9(土) 19:25:13 No.20080209192513 削除

「この間のことだけれど、私、偶然に大阪の街で奥さんを見かけたのよ。あの夏、奥飛騨の宿を出て以来、初めてね」

 ずっと聞き役にまわっていた明子の話が始った。いわく「死者に鞭打つような話」が。

「ずいぶん久しぶりだったし、一度しか会ってないわけだけど、私は奥さんのことをよく覚えていた。すぐに分かったわ。そのときにはもちろん、あなたや奥さんの現在の事情なんてものはまったく知らなかったけど―――、でも私は奥さんを見て驚いたの。だって会社の人間と一緒だったんだもの」
「何だって?」

 明子の会社といえば―――S企画だ。

「それも三人。“撮影”のときにカメラマンを務める佐々木という男、それから“男優”の金倉。そして赤嶺よ」
「ちょっと待ってくれ」
 明子の「話」の先が見えて、私はパニックに陥らずにはいられなかった。
 彼女は深閑とした目で私を見据える。
「あなたの想像は残念ながら当たっているわよ」
「―――――――」

 冗談、だろう。

「冗談、ね。赤嶺にとってはそうかもしれない。あのひとにとってはこの世のすべてが冗談なんだもの。あれだけの能力と人身掌握術に長けていながら、S企画でビデオ撮影なんかやってるのも冗談。そして、奥さんを“女優”にするのも冗談。けれど、こればかりは最高にたちのわるい冗談ね」
 明子は眉をしかめた。


 ―――他人が俺の職業についてなんと言うかどう思うかは知ったこっちゃないが、ああいう瞬間の剥きだしの女の表情ってのは、俺にとって尽きない興味の対象―――大袈裟なことを言えば俺の芸術の対象さ。あの表情をカメラに収めることが、ね。後でどれだけの人間がその俺の芸術をせんずりの種に使うか―――そんなことは知ったこっちゃないが。

 ―――ふふふ、たしかに奥さんは最高の素材だと思うよ。あれほど演技の出来ないひとも珍しいからな。普段はどれだけ繕っていてもね。


「私があなたと初めて会った夜のことを覚えてる? あの晩の帰り道、赤嶺は珍しく熱心に奥さんのことを話していたわ。『普通の主婦にしとくのはもったいない』って。『最高の素質があるのに』って。―――もう三年近く前の話になるわね」


 私の想いを読み取ったように、淡々と言う明子の声が恐ろしかった。


「私の後輩が以前言っていたわ。赤嶺が怖い、と。普通のひとならブレーキをかけずにいられないところで、平気でアクセルをかけそうだ、と。どうしてそんなことが出来るのか、私には分かるわ。赤嶺には失うものがないのよ。地位も名誉も赤嶺は持たないし、そもそも興味がない。人生自体が死ぬまでの暇つぶしみたいなもの」
「狂ってる・・・・」
「そうかもね。でも、なあんにも持っていないなのは、赤嶺だけじゃない。あなたの奥さんも同じよ。家族もない、頼れるひともいない、あなたとは別れる決意をした。お金もなく、行き場もない。まるで―――ビートルズの“ノーウェアー・マン”ね」

 ふっと明子は遠い目をした。

「でも、ただひとつ違うのは、奥さんにはまだ産まれていない赤ちゃんがいるってこと。子供だけが奥さんに残された最後のものなのよ。だからどんなに行き場がなくても、生きなくてはならないし、生きようとする。それで赤嶺が持ち出した契約を交わしたのよ。つまり―――私と同じ立場になるって契約。いえ、もっとわるいかもしれないわね」

 凍りついた私の瞳を覗き込むように、明子は見た。

「当面の住居や衣食、それから出産にかかる費用を、赤嶺は個人ですべて負担する。その代わり、奥さんはS企画専属の“女優”になる。契約期間は無期限。しいていえば全国の視聴者と赤嶺が『もういい』と思うまで、ということになるのかしら」
「馬鹿な・・・・」私は呻いた。「そんな無法な契約があってたまるか」


 一方で、私はこの間の赤嶺との電話を思い出していた。
 あのとき、あの男は―――


 ――― 一時期はかなり精神的に錯乱していたけれど、最近は落ち着いてきたようでね。今は腹の子供を無事に産むことだけを考えている。奥さんが望むのなら、俺は出来るかぎり、その援助をしてやるつもりさ。

 ―――今は奥さんとの個人契約さ。奥さんの望みを叶えてやるかわりに、俺は俺の望みを奥さんに叶えてもらう。奥さんも―――それは承知でいる。


 しれっとした声音で、そんなことを言っていた。
 そして―――


 ―――今は、仕事のほうが忙しいんだ。ちょうど有望な新人女優が入ったところでね。久々に仕事への意欲で燃えているところさ。


 そんなことも、
 言っていた。


「憤りはごもっとも。私だってふざけるなと思ったわ。でも赤嶺は本気よ。残念なことに奥さんも納得してる。といっても、今の奥さんが普通の精神状態にあるのか、という点についてはおおいに疑問があるけれど。もっと残念なことがあるわ。契約の一部はすでに履行されたの」



 ケイヤクノイチブハスデニリコウサレタ。




「それは―――」


 それはどういうことだ?


 膝に抱えていた手提げから、明子が一枚のケースを取り出した。


「赤嶺の部屋から持ち出したものよ。奥さんが映ってる」

 それは銀色に鈍くかがやくDVDだった。


「―――どうする?」


 明子の問いに私はしばらく答えられなかった。
 呼吸が圧迫されている。苦しい。遼一の話を聞いたときにも苦しくてたまらなかったが、今やそれは死を感じさせるほどに逼迫していた。


「あなたに見る気がなければ、これは私が持って帰るわ」
「見るよ」私はやっと答えた。「俺はどうしても見なくちゃならない」
「そう」
「・・・もうひとつだけ聞きたい。君はどうして今日、ここへ来たんだ?」
 明子は立ち上がった。
「それはこのDVDをあなたが観終わった後で話すわ。―――そろそろ行きましょうか。あなたの部屋へ」





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卒業後 58
BJ 2/9(土) 06:06:27 No.20080209060627 削除

「これで俺の話は―――俺が知っている話はすべて終りだ」

 私はドライマティーニの杯をくっと喉に流し込んだ。
 遠野明子は火の点いたマルボロを右手の指に挟んだまま、左手で頬杖をついている。

「奥さんは、その甥っ子、遼一君の目撃した出来事の後でいなくなったのね」
「おそらくね」
「遼一君はどうしてるの? 今も東京のあなたの部屋にいるの?」
「いや、家に帰したよ、もちろん。母親が心配してるし、受験のこともあるから」
「もう受験どころではないんじゃない? あなたと奥さんの事情は話したのかしら。それから赤嶺のことも」
「いや―――無理だった」

 何をどう話せばよかったのだろう。
 久々に再会した遼一はひどく暗い瞳をしていた。以前の彼からは信じられないほどに。それまでまったくかけ離れたところにあった世界の薄暗さを知り、生々しい性の情景を垣間見た。しかもそれは遼一にとって親しい伯母―――つまり、私の妻が見知らぬ男の手によって徹底的な凌辱を加えられる場面で、あまつさえ、彼自身が男に誘われてその凌辱にひとつの役割を持ってしまったのだ。
 そのことに対する自責と、結果、妻がいなくなったことに対する負い目が、遼一を苦しめていた。無論、私には遼一を責める資格などない。むしろ、こちらがいくら謝罪しても足りないのではないかと思うくらいの枷を、彼と彼の将来に嵌めてしまった。母親の京子に対してもそうだ。

「いつか事情を話すから、それまではすべて忘れて今までどおりの生活を送ってほしい―――そう言って聞かせるしかなかったよ。瑞希のことは心配するな、とも」
「私は所詮他人だから何を言っても無責任になるけど、その場でいっそすべての事情を打ち明けるべきではなかったかしら」
「分からない。俺もそのときは普通の精神状態じゃなかったし」

 妻に関するそんな話を聞かされて、どうして平静を保てるだろう。

「まあね。でも、彼に言った言葉はそれでも間違ってるわ」
「え?」
「あなたが今一番心配すべきなのは、奥さんのことよ」
 謎めいた瞳で明子は私を見、それから「大変なことをしてしまいました―――」と棒読みの口調で言った。
「その『大変なこと』とは、何にもまして遼一君とのことを指しているのね。取り返しのつかないことになってしまった―――あなたに対しても、遼一君に対しても、それから京子さんに対しても―――そう考えたからこそ、奥さんは出ていなくなったんでしょう」
「・・・俺はどうしても君に聞きたいことがあるんだ」
「なあに?」
「瑞希は今も本当に、赤嶺のもとにいるのか?」
 明子は私の目を見ながら、「いるわよ」と短く答えた。
「俺には・・・分からない。赤嶺のやったことは異常だよ。限度を越えている。俺は今まであいつのことを心から憎んだことはなかった。滅茶苦茶な奴だって知ってはいたけど、あいつが普通の人間にはない特別な何かを持っているって信じていたし、畏れてもいた。それでも―――こんなことまでするとは思わなかった」
 明子は黙って聞いている。
「それ以上に分からないのが、瑞希のことだよ。なぜあんなことまでされて、瑞希はあいつと一緒に出て行ったんだろう。なぜ今も一緒にいるんだろう。普通なら憎んでも憎みきれないところじゃないか。それが君の話では、今も一緒に――― 一緒に暮らしているんだろう? どうしても分からないし、信じられない。・・・やっぱり、瑞希は心の底ではあいつのことを」
「あなたはどうしてもそんなふうに考えてしまうのね」
 むしろ哀しそうに、明子は微笑んだ。
「遼一君とのことがあった後で、奥さんが赤嶺と出て行ったわけは私にもはっきりとは分からない。そのときは激しいショックを受けすぎて心神喪失状態になっていたのだろうし、手紙にもあったように二度とあなたと―――あなたたちと顔を合わせることは出来ないとも思っていたんでしょう。そして、彼女は今でもそう思っている」
「夫じゃないか!」
 思わず私は叫んでいた。
「俺は夫じゃないか。夫婦じゃないか。―――他人には言えないことでも、まずは俺に話して一緒に解決していくのが、夫婦というものだろう!」
「私には分からないわ。結婚していないもの」
 しなやかに明子は言って、それから猫の目で私を見た。
「でもね、奥さんが心神喪失に近い状態にあったのは、遼一君とのことがあった以前からだと思うの。子供のことで、あなたに信じてもらえなかったときから。いえ、そのことがきっかけで、あなたが自分のことなどまるで信じていないんだって彼女が悟ったときから。―――これって、死者に鞭打つような言葉かしら」
「いや・・・・正しいよ。少なくとも遼一の話で、瑞希の身篭った子は俺の子だって分かったから」
 その、私の子を孕んだ妻は、今、どうしているのか。
「そして、奥さんが今も赤嶺のところにいるわけ。これははっきりと分かるわ」よどみない口調で明子は言う。「彼女は赤嶺と契約を交わしたの」
「契約?」
「これも―――死者に鞭打つような話になるわよ」
 怜悧な瞳を私に向けながら、明子は新たなマルボロを指に挟んで、ぷらぷらとさせた。



悪夢 その97
ハジ 2/8(金) 21:31:11 No.20080208213111 削除
「第五の人物?」
「そう。四人の少年たち以外の―――」

妙な雲行きになってきました。妻にとっては地獄だった、あの場所にさらにもうひとり―――。
 突拍子もない羽生の推論―――もちろん、彼の話が真実だとは限らない―――しかし、そのことにヤツは揺るぎない確信を持っているようなのです。

「彼ら以外にも他に仲間がいたというのか」
「さて―――」

 羽生は答えをはぐらかすように背を見せました。

「秋穂先生に質問があります。よろしいでしょうか」

 羽生の視線の先に妻の姿はあるはずでした。しかし、広く大きな背中に細身の妻はすっぽりと覆われてしまっています。
 彼女を見失ってしまうかもしれない。そんな恐慌に駆られて、私は慌てて横へと回りこみました。

 まるで催眠術師のような声色で、羽生がささやきかけます。

「映像を検証している際、弓削校長の方から一度放映の中止を呼びかけられましたが、あなたはそれを拒否した―――それはあなた御自身の意思ですか」

 脳に直接語りかけるような響きでした。しかも直後に数秒の沈黙―――余韻さえ効果的に使おうというのか、羽生は絶妙の間で話を継ぎました。

「それとも、誰かの意思が介在しているのですか」

 男の盛り上がった肩の向こうで、秋穂は困惑気味に首をかしげました。
 私にも彼の言おうとしていることはつかめません。意図ははっきりしすぎるほど、わかっているのですが。

「わかりやすく言いましょう。あなたは誰かの命令で、我々と一緒ににビデオを鑑賞した―――ちがいますか?」

 表面上、動揺などみせませんが、秋穂はやはり警戒しているようでした。慎重に言葉を選びます。

「質問の意味がわかりません」
「質問通りの意味です」

 羽生は被せるように、そう言いました。彼女の声がわずかに上擦ったことにさらに感触を得たようです。

「大事なことです。是非お答えください」

羽生の喉が獰猛に波打ちました。さながら、妻を丸呑みしようというように。
 秋穂は仕方なくといった様子で、答えました。

「私自身の意思です」
「なるほど。では次に―――最近、ご主人以外の男性と関係をもたれたことは?」
「――――――」
「お答えください」
「―――ありません」

 妻の鋭利な眉が不快げにゆがみます。

「なるほど」

 きっぱりと否定した秋穂に対して、そのことをそれ以上吟味する様子もなく、羽生はただゆっくりとうなづきました。

「やはり―――」
「さっきから、いったいなんだというんだ」

 焦れた私は詰め寄りますが、それをいなすように羽生は身をかわします。突進した勢いそのままに振り向こうとした私でしたが、バランスをくずし、よろけてしまいます。
 そこへスッと差し出された―――まるで、空気のような優しさで私は支えられていました。

「秋穂」

 妻は私を見ずに、前方へ視線を投げかけてしました。その先で、ほくそえむ羽生。しかし、彼女はあの男さえも目に入っていないのかもしれない。そのときの私は漠然とですが、そのように思ったのです。

「では、私が奥さんのことを健気だと評したことについて説明しましょう」

 その男は夢魔のごとく、私の意識に入り込んできました。



千代に八千代に
信定 2/8(金) 10:52:27 No.20080208105227 削除
第六十二章

 カッと見開いた目に失われていた光が宿った。
指が動き、頭が動き、腕が動いた。
体を覆っていたコンクリートの残骸が、ガラガラと音を立て崩れ落ちる。
そこを抜け出たとき、初めて全身に凄まじい激痛が走った。
膝から崩れ落ちた。
左足に激痛が走ったが、右足には何の痛みもなかった。
だが、グシュグシュといやな音がした。
左腕が指の先まで動かない。果たして骨が折れているだけなのか?
右腕をわずか動かすだけで、キリキリと痛みの神経が悲鳴をあげる。
呼吸をするたびに痛むので、あばら骨が何本か折れていることは分かった。
内蔵にも鈍痛が走る。
ここも相当な損傷を受けているに違いない。
背中が痛い。背骨も折れているのか?
後頭部にジクジクとした痛みがあるが、触れるのが恐ろしい。
腕が上がらないことに感謝し、安堵した。
そう思ったとき、脳神経までどうにかなってしまったのかと感じた。
胸が血に染まっているのを見て血を吐いたことを知った。
内臓の奇妙な痛みで、呼吸をするのが困難だ。
たちまち息苦しくなってきた。
それでも庄次郎は体をひきずり前進した。

 この建物に、もしくは近くに、大型の爆弾が落ちてきたのだろう。
そう思ったとき、異臭を感じた。
この建物の、元は壁であったと思われる大きな空間から外が見えた。
炭のような黒い固まりが無数転がっている。
右に左に目を向けると、同じようにその物体はある。
そして異臭の正体を知った庄次郎は呻き声を上げた。
どういうことだ。何が起こったのだ。

 もう一つ呻き声があがった。
前方を見ると、瓦礫の中に社長が見えた。
床が割れ、その中に体が挟まっていた。
満身創痍の庄次郎は体をひきずりながらそこへ向かった。
コンクリートの割れ目から胸の半分を出し、両手を伸ばしていた。
這い出ようと床を引っ掻いたため、爪は割れて血が滲んでいた。
「苦しい」
鼻から血を垂らし口端に泡をため、呻いていた。
庄次郎は苦痛に顔を歪め、社長の方へと這って行く。
だが移動できる距離はわずかだ。
社長がこちら方に首を回した。
顔から血を流し、髪の毛を白くした庄次郎を見て社長は目を見開いた。
「助けて」
社長は媚びたような笑みを浮かべ庄次郎の方に手を伸ばす。
「大丈夫、ですか」
言葉を発すると、のどに溜まっている血がゴロゴロと音を立てる。
咳き込んだとき口から血がはじけ飛んだ。

「さっき、おっしゃた、ことは、全て本当のこと、ですか」
庄次郎は苦痛に顔を歪め、たどたどしく言った。
この状況においても聞かないではいられなかった。
「そうだ、全部、本当。は、早く出してくれ。苦しいのだ」
この手を早く掴んでくれと、血まみれの両手を突きだし指をブルブルと震わせている。
体がコンクリートで押しつぶされているせいで、社長の顔は真っ赤に膨れあがっている。
非常にまずい状況であることは理解できた。
庄次郎は何とかして近くまで這って行く。
動く方の腕を震わせながら伸ばした。

 その時、庄次郎の脳裏に閃光が走った。
社長が庄次郎に対し、始めて憎しみを込めた顔を向けたときに感じたものだ。
その時と同じように背筋がゾクリとした。
それは哀しみと憎悪が入り交じった、髪を掻きむしりたい衝動にかられる感情だった。
先ほどは雲散霧消したが、今度は違った。
全身に戦慄が走った。
赤鬼!
社長の苦しげな顔の中に、何事か?といった表情が入り交じった。
内なる咆哮が声に出たからだ。

「あなた、だったのか! あなたが、あの時の、あの時の、カンカン帽の、赤鬼だったのか!」
口から血を飛沫させながら庄次郎は叫んでいた。
肺が唸りをあげていた。
体中の血がなくなってもよいと思った。
「母を、俺の母を、殺したのはあなただったのかぁ!」
「な、何が、だ」
社長は狼狽える。

「母を殺せと、命令したあなたに、その時、あなたに、しがみついた子供を覚えているか!」
社長は宙に目を泳がせていた。
すぐにその目の焦点が合わさった。
「思い出したか! あれは、あれは、俺だ!」
「何ぃ!」
社長は絶句した。
ますます顔が赤く腫れ上がる。

「あ、あの、あの小僧が、あの時の小僧がっ」
庄次郎を見上げるその眼は怯えていた。
命の補償が著しく低下したことを察知したからだ。

「母の夫に、拷問を指示したのも、あなたですね」
少しずつだが、庄次郎の興奮は収まっていた。
「あれは、ミンファの、居所さえ、教えさえすれば、あんなには。されど、ワシは現場にはいなかった」
「その方が、母の居場所を知らなかったことは、お聞きになったでしょう」
「し、しかし、ワシは」
「指示したのはあなただろう」
社長は荒々しく息を吐いていた。
そして社長の顔が変わった。
ふてぶてしさがにじみ出た。
「そうか、そうだったのか。あなたが融資していたあの鉱山の暴動を、押さえ込むため、
若かった頃、血気盛んなあなたは、先頭に立っていたのか。母の、母の居場所も分かっていて」
社長の表情が全てを物語っていた。
庄次郎の目から涙が溢れた。

「ワシを、こ、殺すのかっ」
唇を振るわせながらも必死で口元に笑みを浮かべていた。
「貴様も、殺人者になるかっ、ワシと一緒に。親子共々よ」
顔を真っ赤にして、声を上げずに笑う社長に庄次郎はあとずさる。
「そ、そうだ、このまま、ワシに、て、手を貸さなければ、死ぬのは確実。ふはは、殺してみるか父親をっ」
「だ、黙れ」
庄次郎はうろたえた。

 その時、地面が揺れ、社長の体が首まで沈んだ。
グワッという蛙を踏んづけたような声と共に、骨の潰れる音が聞こえた。
開いた口から血に染まった舌を見せ、断末魔の表情を見せていた。
赤く充血した動かない目が庄次郎を見ている。
庄次郎の獣のような咆哮を聞いている者など、誰一人いなかった。



卒業後 57
BJ 2/7(木) 23:55:01 No.20080207235501 削除

 遼一の手が、なまあたたかいその箇所に触れたそのとき―――


 空気を切り裂くような、もの凄い悲鳴があがった。


 顔を上げると、伯母が遼一を見ていた。
 ぽろぽろ、ぽろぽろ、とその瞳から涙がとめどなくあふれていた。
 怯えとともに、遼一はその手を引いた。


「お願い、、、、お願い、、、、もう許して、、、、、これ以上は許して、、、、、これ以上罪を背負わせないで」


 なめらかな頸を振りながら、うわごとのように伯母は哀訴の声を振り絞る。
 その声は遼一ではなく、男へ向けられたものだった。

 
「何でもします、、、、、何でも言うことを聞きますから、、、、、、この子にだけはこんなことさせないで」


 お願い、お願いです―――、伯母はそう何度も繰り返した。


「ここまで美味しそうな餌を見せつけられて、普通の男なら我慢がきくはずもないよ。彼だってもう男なんだ。いつまでも子供扱いするものじゃない。それに―――」

 
 頼りないほど細い身体を抱え上げたまま、男の両手の指が伸びて、目一杯広げられた美麗な紅の器官をまさぐった。十の指がそれぞれ別の生き物のように、女の器官をうねうねと這い回る。
 押し殺そうにも押し殺せない忍び泣きが伯母の喉から漏れ、やがて、「あっ、あっ、あっ」という鋭い高音に変わった。なよやかな雪白の腰が、もっとも敏感な部分に加えられる男の指の刺激に耐えかね、惑乱の動きでくねり舞う。


「情のない君の心と裏腹に、身体のほうはこんなに濃やかに情を求めているよ」


 紅潮した伯母の頬は子供のそれのようにつるりとしていて、汗で張りついた黒髪のほつれがただ妖しい。きつく寄せられた眉間に深い皺が刻まれていて、それは伯母の喉から発せられる啼き声と同様に、伯母が今この瞬間に感じている深すぎる業を物語っている。


 苦悶と快美。その間に揺蕩う伯母の裸身は、しかし凄艶すぎた。


 再び手が伸びる。遼一の手が。男の指でくつろげられた伯母の鮮やかな剥き身にそれが触れ、秘奥からあふれる湧出を感じた瞬間、遼一は激しい痺れとともに眩眩と眩暈を覚えた。

 薄目を開けた伯母の瞳が、怯えとともに遼一を見た。

 男の指がさらに女園を開きたて、ぽっかりとあいた秘孔を遼一に見せつける。
 流露をいっぱいに溜めて艶光るその部分に、彷徨いこむような動きで遼一の指が入っていく。



「だ、、、、、、め、、、、、、、」



 遼一の指が、伯母の膣内に埋没した。


 紅葉色に彩づいたその媚肉は、湯壷のように熱くたぎっていて。
 とても人の発する熱とは思えないほどで。

 その熱と、微細な肉の蠢きの感触が、遼一の脳髄に白光をはしらせた。

 不意に―――

 ぶるぶるっ、と、遼一の指を咥えさせられたその器官が激しく収縮した。

 痙攣は波状のように、なよやかな腰から伯母の総身へ広がっていく。

 苦しげに歪められた朱い唇が―――




             断末魔の声を、
                            あげた。




 女性の達する様子など見たことのない遼一にもはっきり分かるほど、そのときの伯母の相は様変わりし、視線は完全に宙に浮いていた。

 そんな我を失った姿で、伯母は彼方へと飛び去った。

 その刹那、充血した秘孔から激しくほとばしるものがあった。それは埋められたままの指と、それから遼一の顔の辺りにまで、したたかにはねかかる。
 伯母からほとばしった潤みを浴びながら、呆然と座り込んだ遼一の股間も、それと意識しないうちにすでに弾けていた―――。



 ―――――――――――――*―――――――――――――


 ようやく―――伯母の肢体が宙から降ろされた。


 自らの放ったしたたりの上に裸の臀部がぺたりとつく。正常な意識はまだ回復しない様子で、表情なく見開かれた瞳はただ虚空を見ていた。そのまま「正常な意識」などというものは戻ってこないのではないかと危うく思われるくらい、そのときの伯母からは何かが決定的に失われているように見えた。
 その失われたものは小さな誇りであったり、尊厳であったり、たしかな生きがいであったりするような、これまで築き上げてきた何か―――ともかくも伯母の表情は、完全に喪失ったひとのそれだった。そして、そんな伯母を見つめていたそのときの遼一も、同様に大切なものを喪失っていた。

「ずいぶんと激しく気をやったみたいだね」

 虚脱しきった伯母の傍らに、ただひとり変わらない男は影のように寄り添って、耳元で囁いた。

「これまでで最高だったんじゃないのか? 彼の指はそんなに美味しかったのかね? 禁忌を犯す快楽はまた格別なものだっただろう? そんな行為で君は感じてしまえる女なのだよ」

 これで自分がどういう女なのか分かっただろう―――

 男の囁きが聞こえているのかいないのか、伯母の瞳はまだ虚空を見ている。
 その頬を男の平手が叩いた。

「分かったのかね―――と尋ねているんだよ」

 表情を失った顔で、伯母は男を見やる。
 ぼんやりと「はい」と答えた。

「君は平凡な主婦で収まっていられるような女ではない。それにしてはこの躯は淫らすぎる。そうだね?」
「はい」
「気の毒に。君がつれない態度をとるから、彼は自分の下着のなかで惨めに果てなくてはならなかった。可哀相だと思うだろう?」
「はい」
「それならば謝るんだ」
 
 優美にさえ見える笑みを口元に浮かべながら、男は伯母の顔を惚けた遼一のほうへねじむけ、耳打ちした。
 伯母が―――いや、かつて伯母であった女が、遼一に視線を向ける。


「申し訳―――ございませんでした」


 まるで抑揚のない、かすれた声。

「それからお礼を言わなくてはね。あれほど気持ちよくいけたのは彼のおかげなんだから」

 ひたひた、と女の頬を掌で軽く打ちながら、男は言う。

「ありがとうございました」
「気持ちよくいかせていただいて本当にありがとうございました、だよ」
「気持ちよくいかせていただいて本当にありがとうございました」

 男の台詞を口うつしで、女はただ復唱した。最後は言われるままに、遼一へ向かい、高い鼻梁の先が床につくまで頭を下げた。
 土下座する女の、あまりに細い頸に、無骨な首輪が馴染んでいた。


 呆然と―――そんな地獄の光景のすべてを、遼一は見ていた。


 その遼一の手を男が掴み、女の鼻先へ向ける。

「君が悦びのあまりひっかけたもので、ほら、こんなに汚れている。お詫びと感謝の意味で君が綺麗にしてあげるんだ」

 ぼんやりと、女が顔を上げた。
 その視線の先は男にも、遼一にも向いていなかった。
 女は―――さらに頸を上向け、細い舌をわずかに伸ばして、遼一の指に付着した透明なものに舌を触れさせた。
 さらさらとした舌の感触が、指を舐めあげていく。
 声が聞こえた。聞き覚えのある声が。



 ごめんなさい。
 ごめんなさい。
 ごめんなさい―――。



 その声が眼前の女から発せられたものだったかどうか、定かではない。
 床に這ったまま、女はただ舌を使っていた。


「手の後は―――彼の顔だよ。君の舌ですべて綺麗にしてあげるんだ」


 最後に、これはたしかな男の声が耳元で響き―――


 そして、遼一は今度こそ気を失った。


 暗黒から目覚めた後、その部屋には他に誰もいなかった。



卒業後 56
BJ 2/6(水) 02:23:05 No.20080206022305 削除

 少年から青年に移り変わってゆくその輝かしい一時期に、「性」はおぼろな薄闇の彼方に在る。
 そこからその深淵をちらちらと覗かせて、彼をおののかせ、またどうしようもなく惹きつけもするのだ。
 それは憧れであり、恐怖だ。
 遼一にとって、伯母はいつだってそんな存在だったのかもしれない。

 愛情は哀しみと相性がいいらしい。
 伯母のやさしげな微笑にひそむ哀しみは、いつも遼一の胸を切なくかきむしった。

 ただ―――愛しかった。

 でも―――だからこそなのか―――そんな伯母に対して「性」を感じる瞬間は、遼一をおののかせもした。
 ずっと罪の意識を感じていた。

 それなのに、今日、この瞬間に至るまでに目にしてしまった光景はあまりにも生々しすぎて。
 初めて目にした伯母の肢体はあまりにもうつくしくて。
 その肢体が見せるみだらな反応は圧倒的に―――
 蟲惑だった。


 そして今―――
 見知らぬ男の手によって、薄闇は完全に取り払われた。


 遼一の眼前、わずか先に伯母がいる。
 伯母の身体は開かされている。
 男の太い腕が伯母を両方の膝から抱え上げ、雪色の素脚はきりきりと割り裂かれている。
 幼児に小水をさせるときのポーズそのままに、
 遼一の正面で、伯母の身体は開ききっている。
 その奥区までも。
 なめらかな下腹のさらに下、淡い恥毛が密生したその部分にはいった綺麗な縦筋が、広げられた太腿に引っ張られるよう、切れ込みの奥に秘匿された部分を覗かせている。

 柘榴のように紅く、艶々としたその果肉。
 伯母の性器。
 伯母の性。

 ごつごつとした指先が、両側から伯母の女性器に伸びて、形の良い果皮をさらに剥きあげる。
 外気に触れた瞬間、前を晒されたその箇所がきゅっと収縮したのが、分かった。
 血の色の濃淡が艶やかに光っていた。


 あうっ、、、ううっ、、、、、、


 彼方で呻き声が聞こえる。
 遠雷のような耳鳴りに混じって、それはよく聞こえない。
 今度は男の囁き声がした。


 どうだね? 実に綺麗だろう。綺麗で―――卑猥だ。


 遼一はうなずく。
 これほど鮮やかなものは見たことがない。
 これほど狂おしいものは見たことがない。
 それは手の届く位置にある―――。


 これが君の伯母さんの大切な隠しどころさ。清らかで淫らな―――


 男の手指が剥き上げた紅蓮の、艶々とした粘膜をすーっとなぞる。
 割れ目の縁取りの頂点に屹立した瑪瑙の珠。
 そこに男の指が届いた。


 そして、ここが伯母さんのいのちだ。


 繊細な女の器官と対照的な、男そのものの手指が、伯母のいのちに触れ、指の腹で珠をころがす。
 宙に浮いた尻が敏感に蠢く。
 伯母のいのちが蠢く。
 情欲をそそる色づきがさらに濃くなり、女園の開口部がまるでいきものが呼吸するかのようにかすかに口を開く。
 不意に、そこから透明な流露があふれた。
 潤みは会陰から後ろのすぼまりまでしたたり落ちる。
 男の手指も濡れ光っていた。


 君に見られながら、伯母さんも凄く感じているよ。


 くつくつと笑い声がする。



 ああ―――


 触れたい。
 触れたい。
 触れたい。
 目の前にある蟲惑に触れてみたい―――



 遠慮することはないよ。


 いざないの声が甘やかに響く。


 彼女もそれを望んでいる。求めているんだよ、君を。君が自分のなかに押し入ってくる瞬間をね―――


 ぬら光るその部分を見せつけるように、男の指が伯母の聖域をまた侵し―――

 そして―――
 遼一は、そろそろと渇望の場所へ手を伸ばしていた。



千代に八千代に
信定 2/5(火) 14:31:45 No.20080205143145 削除
第六十一章

 構内の全ての窓ガラスが光った。
それは目が眩むような光だった。
社長は葉巻を持たない手で、額にひさしを作った。
イカヅチにしては眩しすぎるな、と思った。
ぬけるような青空にイカヅチとはどういうことだ、とも思った。
それはのんきに思ったのではなく、幾ばくかの生命の危険を感じてそう思った。
数秒遅れて地響きが起こった。
あの大震災を経験している二人が、この地響きは尋常ではないと思った。
庄次郎と社長の目が合った。
社長は困ったような顔をしていた。
庄次郎は目を見開いた。
そして何かを叫ぼうとしたが無理だった。

 何かにぶつかって、偶然にも残っている壁に激突した。
体にぶつかってきたのが、鉄製のドアであると分かったのはかなりあとだった。
瞬刻と言う時を越える時があることを庄次郎は知った。
それは何というのだろう?
後ろ向きのまま吹き飛ばされ背中から壁に激突し肋骨が折れ内蔵が破裂したのでは、と思われるまでの時間でそれを思った。
そう思いながらも、口から血が吹き飛んでいることに気づくことはなかった。
上を見ようと思ったが首が動かないので、目だけ見上げると数階建てであったはずのこの建物の上階が全て消えていた。
視界に入った上空には先ほどまで見えていた青空はなく、高速で動く白と灰色と黒の入り交じった大量の雲しか見えなかった。
何故だか、しばらくしてそれも見えなくなり闇となった。
自分の目が閉じていることに気付いていなかった。
コンクリートの壁が砕け、庄次郎の体がそこにぐしゃりとはまっている。

 遠のく意識の中で死を感じていたが恐れてはいなかった。
というのは、目の前にぼんやりと人の姿が見えたからだ。
”よっちゃんか”
庄次郎は顔をほころばせた。だが血塗れの唇はピクリとも動いてはいない。
”あれ、まだ子供のまんまじゃねーか。相変わらずちいせえな。でも心配するな、誰よりも背がでかくなるからよ”
たちまちよっちゃんの背がグンと伸びた。
その隣に見覚えのある女がいた。
”ああ、柴崎・・・・・・お前小さい頃は丸かったけど、すっかりいい女になったよなぁ。
本当のことを言うと俺、お前に惚れてたんだ。よっちゃんがお前に惚れてるの知ってたからよ。
ちょっと格好つけてみたわけよ。歌津子、お前今どうしているんだ?”
弱々しい咳と共に新たな血が口から溢れた。
右足の感覚がないのは分かったが、腕が奇妙な方向に折れ曲がっていることに気付いていない。

 別の人影が見えた。
”相変わらずいい顔しているなぁ、トメさん。
ああ、姐さんもいたんですか。ご主人と仲良くやっていますか? またお会いしたいですね。
この前の酒は本当に楽しかった。
忙しくてなかなか会えなかったけどさ、また飲もうよ、ね、トメさん、姐さん”
留造と姐さんは笑いながら頷いている。
庄次郎は幸せな気分だった。
目はずっと閉じているが、ふたたびよっちゃんの姿が見えた。

”ちゃんばらごっこ楽しかったなぁ。勉強もしねーで遊んでばっかいたっけ。
よっちゃん、俺、結婚したんだよ。千代っていう、すげー別嬪なんだ。
頭が良くって行動力があって、料理も上手くて、優しくって、ほんと、俺には勿体ねえよ。
そうそう、千代がさ、藤林長門の子孫なんだぞ。それも直系の末裔だぞ、すっげーだろう。
ほら、ガキの頃俺いっつも言ってたじゃねえか。皆にバカにされたけどよ。
信長の大軍に一人で立ち向かった藤林長門守が大好きだってよ。俺、嬉しくってさ”
閉じた目のまつげが濡れていた。

”あ、そうだ! 女が素手でマスタング墜落させたっていう新聞見たかよ、よっちゃん。
あれ千代なんだぜ。ふふふ、その顔、全然信じてねーなぁ”

 初めて社長の屋敷へ行ったときのことを思い出した。
自動車の中から一寸先も見えない闇夜の中で、咲き乱れている紫陽花に千代が感動していたことを思い出した。
ババ様の屋敷で目を覚ましたとき、最初に見た美しい千代の顔。
千代に助けられ、目を覚ました部屋の見事な欄間の彫り物。
どこをどう歩いてもキィキィ鳴ってしまう廊下。
そこを音も立てずに歩いていた千代。
風のように走る千代。
もう一つ思い当たることがあった。
ババ様達との別れの日、人力車を用意したのは千代のためではなく、庄次郎のためだったのだ。
”ああ、千代、君は・・・・・・”
閉じている目尻から涙が滴った。

 庄次郎はもう虫の息だった。
薄れる意識の中、薄汚れた着物を着た、女の後ろ姿が見える。
顔が見えなくても、それが誰かはすぐに分かった。
”かあちゃん!”
庄次郎の目が見開いた。
だが、左右の黒目は見事なまでに中央に寄っていた。

”かあちゃん、待ってよ、どこ行くの?”
庄次郎の母は立ち止まった。
母に触れたくて手を伸ばした。が腕は動いていない。
母の立っている周りには、見たこともない美しい花が咲き乱れている。
自分の足下にも。

”ああ、かあちゃん、かあちゃん”
夢中で名を呼んだ。
”庄次郎・・・・・・”
母のか細い声が聞こえた。
母の声を聞くのは何十年ぶりだろう。
庄次郎は心浮き立つ気分だった。

”こっちへ来てはだめ”
今度はしっかりと母の声が聞こえた。
母の足もとがぼやけている。まるで宙に浮いているようだ。
”どうして? 俺もかあちゃんと行くよ”
心は子供の頃に戻っていた。
どこへ行くのかも分からずそう言った。
”私はもうこの世にはいないのよ”
”違うよ、目の前にいるじゃないか”
十歳の頃の庄次郎が言った。
”今の私はね、あなたの心が作りだしたもの”
”違う”
庄次郎は駄々をこねた。
”もう分かっているのでしょう? 私はあなたの心の中にしかいなことを”
泣き顔を作ろうとしたが、顔の筋肉が動かなかった。

 心の中の母はゆっくりと振り向いた。
元の顔の判別ができないほど腫れ上がった母の顔に息を呑んだ。
無惨な母の姿を見て、子供に戻った庄次郎は泣きじゃくっている。
閉じた目から涙が零れた。
”庄次郎”
母の声にふたたび目を開いた。やはり焦点は合っていない。
”私はとても幸せだった”
”ほんと?”
庄次郎は哀しくて嬉しくてポロポロと涙を流していた。
”ええ、本当よ。年に一回だけど、夫にも会えた。
なにより私のそばにはずっと庄次郎がいたわ。そしておばあちゃんとおじいちゃんがいた。
私が眠るまでそばにいてくれて、ずっと手を握っていてくれて、とても嬉しかった”
ポロポロとこぼれる涙が口の中に入る。それが血と混じり顎に滴る。
”小さな庄次郎を残していなくなっちゃってごめんね。大変な世の中にひとりぼっちにしてごめんね”

 動かない首を振っていた。
目は閉じていたが、母の顔は見えていた。
”辛いことがたくさんあったけど、あなたは素晴らしい女性と巡り逢った”
”でも、それは・・・・・・”
”いいえ、違うわ。あなたが真っ直ぐに生きてきたから”
社長から聞いたことを庄次郎には語らせないよう、母は言った。

”私の人生よりも、あなたの人生よりも、千代さんは過酷な人生を送ってきた。
あなたも私も想像できないくらいの人生を。そしてそれは今でも続いている”
庄次郎はしっかりと頷いた。ただピクリとも動いていないだけだ。

”でもね、あなたと歩んだ人生の中に千代さんの本当の幸せがあったのよ。
あなたたちをずっと見守ってきたから私は知っているの。
千代さんはね、あなたのことを心から愛しているのよ。始めからずうっと”
顔の筋肉が始めて動き笑い顔となった。

”千代さんはあなたの帰りを待っているわ”

母の顔が美しい顔に戻っていた。
母の顔と千代の顔が重なった。



卒業後 55
BJ 2/5(火) 04:48:40 No.20080205044840 削除

 時が凍りついたよう―――そんなふうに感じる瞬間は確かにある。
 まさにそのとき、遼一が感じた感覚がそれだった。

 凍りついていたのは時だけではない。
 伯母の目がそうだった。
 まるで恐ろしいものでも見たように、伯母のやさしい瞳は怯えきっていた。恋焦がれたひとにそんな目で見つめられるときが来るなどとは、少し前までの遼一にはまるで想像も出来なかったことだった。
 こんな瞬間でさえ、その事実に、遼一の胸は張り裂けんばかりの痛みを覚えた。

「どうやら顔見知りのようだね。すると、君が遼一君なのかな―――」
 冷厳な表情を崩すことなく、男は依然として悠然とした足取りで近づいてきた。
 初めて真正面から見る男の顔はギリシャの彫像のようで、濃い眉の下に爛々とかがやく目がひかっている。遼一は今までこれほど恐ろしい男を―――大人を見たことがなかった。
 足が震えて動かない。
 近づいてきた男に腕を攫われた。
「質問に答えてほしいね。君は遼一君か? 彼女のお気に入りだったという甥っ子の」と、今度は伯母を見て、男は言葉をつづけた。「―――あんな息子がほしい、と君がいつぞや言っていたのは、この子のことなのかな」
 ショックのあまりフリーズしていた伯母が、ひっと小さく啼いて、床に押しつけるように顔を背けた。
 男が目を細めて、遼一を見下ろした。
「どうやってここに入った? いつからここにいたんだね? 覗き見はよくないな。ごらん、伯母さんがあんなにショックを受けているじゃないか―――」
 言葉とは裏腹に、男の口調に詰問の響きはなく、ただ事態を面白がっているような、ふざけた調子だった。
「あなたこそ・・・・・誰なんだ・・・・・?」
 ようやく、喉から声が出た。おや、というように、男の眉の一方が吊り上がった。
「彼女の友人―――いや、愛人と言うべきかな。少なくとも、君よりは深い関係で彼女と付き合っていることはたしかだ。君が見たとおりね」
「もう・・・・やめてください」
 床に伏せたままの、伯母が哀願するように声を絞り出した。
「放してあげて・・・・その子に・・・・もう見せないで」
「手遅れだね」
 あっさりと男は言って、遼一の手を離した。その瞬間に遼一は腰が抜けて、どさりとずた袋が落ちるように、その場にしりもちをついた。

 男は伯母の傍らに膝をつき、肩からまわした左手で細顎を上向かせた。潤みきった瞳が遼一に向けられた。牝牛のように哀しげな瞳だった。

「彼にはもうすっかり見られてしまったようだよ。君のすべてを、ね」
「ああ・・・・・っ」

 悲鳴とともに、かちかちと伯母の歯が鳴る。

「やめろっ!」そう叫んだ遼一の声も、悲鳴にちがいなかった。「伯母さんを放せ!」
「ふふん、今までは木偶のように覗き見をしていたくせに、急に正義漢ぶるのかね。やはり血筋かな。あの男のように偽善者ぶりたがるのは」
 ざらりとした声で男は嘯き、あざけりをたっぷり含んだ目で遼一を見つめた。激しい羞恥と罪悪感で、遼一の頬がかっと火照った。
「まあ、そうは言っても、そんなに恥ずかしがることもない。こんな刺激的な光景を見ては、君の年頃なら仕方ないだろう。まして、彼女は君にとって身近な女性だ。普段の伯母さんはどんなだったかね? 君のお母さんと同じ歳だと聞いているよ。まあ、このひとのことだから、普段はさぞやさしい伯母だったのだろうが―――」

 しなやかな頸を抱え込んだ男の腕が、伯母の肢体を抱き寄せる。上半身を抱え上げられた伯母の裸身が晒され、隠すところのない乳房が揺れた。

「ひ・・・・っ」
「伯母さんの身体を生で見るのは初めてかね。そもそも女性の素裸を見るのが初めてだったのかな。見てのとおり、君の伯母さんは服の下には、こんなに魅力的な身体を隠していたんだよ」言いながら、男はふくよかな乳房をすくいあげるように持ち上げて見せた。「―――綺麗な胸だろう。男の手でたっぷりと揉みぬかれた胸だ」


 可憐なほど紅く色づいた乳首を男の指が撫でる。
 遼一の瞳の奥が真っ赤になる。


 息が、息が、苦しい。


「見ないで・・・・・」

 その顔をぐいぐいと男の胸に押しつけ、表情を隠しながら、頑是なく弱々しい声を伯母が出す。遼一は必死で目を逸らそうとした。だが―――逸らせなかった。身体中の神経がそれを拒んでいた。

「罪なことを言う。君も十代の男のことをよく知らないね。彼らにとって女の裸は世界中の何よりも刺激的なものなのだよ。まして、こんなにいやらしい身体が目の前にあって、それを見ないなんてことはお釈迦様でも無理な相談さ―――」

 乳首を掴み、引き伸ばすようにひっぱって見せながら、男は伯母の耳元に囁きかける。
 そんなことはない、と叫びたかった。伯母に軽蔑されたくなかった。伯母を救いたかった。立ち上がり、男を突き飛ばして、伯母を助けなければ―――そう思うのに、そんな思考はまるで他人事のようで―――
 理性を蝕む熱が、身体中を浸食して―――
 意思の力を奪い、犯していく。
 犯していく。


 男がわらいかけた。


「―――勃起しているね」


 見ているだけで痛そうだ―――
 男は言って、また、伯母の顎を強引にねじ向けさせて、「それ」を―――遼一を見せた。


「う・・・・・ぁっ」


 その悲鳴は遼一のあげたものだったのか、それとも伯母があげたものだったのか。
 分からなかった。
 何もかもが灼熱だった。

「彼は君を見て興奮しているのだよ。ごらん、ほら、あんなに苦しそうだ」

「君自身の躯ももうすっかり出来上がっていることだし」


「やさしい伯母さんとしては―――これは責任をもって彼の苦しみを取り除いてあげるのがつとめじゃないのかな」





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羞恥85
風水 2/2(土) 10:41:08 No.20080202104108 削除


「裕美子 凄い濡れ方だよ」
「あーん だってぇ・・・ずっと入れて欲しかったんだもん」

「山下さん 裕美子のオナニー見ながら 自分で逝っちゃってたなぁ 見ただろ」
「うん 凄く黒いちんちんだった・・・若い人のちんちん あんな大きいの見たこと無かったわ」
 私の一物を扱きながら 思い出しているようです。

「下着降ろされた時から・・・濡れてるの分かったんで 恥ずかしくって・・・
 でも みんなの視線を意識したらね・・・なんか・・・感じてきちゃった」

「ねぇあなたぁ もう入れていいでしょ」
 妻はそう言って私の上に跨り 一物に手を添え秘唇に導きました。

 クリトリスを私の恥骨に押しつけ 前後に激しく腰を振る妻
「あぁぁぁ 気持ちいいよぅ・・・奥に当たっちゃう」

 下から乳首を摘み刺激を与えるます。
「あーん あなたぁ そ、そんな事したら・・・逝っちゃうよぅ」

「今頃 山下さんも奥さん相手に頑張ってるかもな 裕美子のおまんこ思い出しながら」
「あーん 言わないで・・・ぁぁ 逝きそうよぅ あなたぁ 逝くわぁぁぁぁぁ」
 あっという間に絶頂を迎えた妻

「裕美子 あっという間に逝っちゃったね 口でやってよ」
「いいわよ ・・・私のも舐めてね」

 愛液に光る私の陰茎をくわえる妻 私も濡れた秘唇に舌を這わせました。
 妻の舌の動きを堪能し 昼間の光景を思い出すと すぐに絶頂感が襲ってきました。
「裕美子 逝きそうだ・・・逝くぞぉぉぉぉ」 
 たっぷりと今日2回目の放出です。

 私の精を飲み干した妻 まだ満足はしていない様子で私の一物を触っています。
「裕美子 まだ逝き足らないんだろ・・・指で逝かせてあげるよ」

 右手の中指と薬指を妻の秘穴に挿入し 膣の上側を擦るように激しく指を動かすと
「ぁぁぁぁ いいぃぃぃ・・・・ぁぁぁ 何か変・・・・」
 両足がピクピクと痙攣しています。

「ぁぁぁぁ だ、だめぇ・・・何か出ちゃいそう・・・ぁぁ 逝くぅぅぅ」
 私の指の動きと共に 膣からピュッ、ピュッ と透明な液体が飛び出しました。
「ぁぁぁ 逝くぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」
 妻が初めて汐を吹いた瞬間です シーツに跡を残し それは50センチ程飛び散りました。

                         羞恥2部完


 矢野裕美子は入力を完了し ベッドでのんびりタバコ吸う夫に
「あなた 2部やっと終わったわよ・・・あ〜疲れた」

「お疲れサン 2部は短かったね」
「これでも 写真とビデオ見て 頑張って思い出しながら書いたのよ」

「で、3部はいつから始めるんだい?」
「そうねぇ まだ途中だから・・・バレンタインデーくらいにはスタートしたいわね」

「左半次さんとか ともきちさん達 楽しみにしてる様子だし なるべく早くな」
「もう あなたの周りの人ってみんなエッチなんだからぁ・・・
 ねぇ あなたぁ いいでしょ」

 今宵も妻は私の下半身に手を伸ばしてきました。



羞恥84
風水 2/1(金) 15:18:32 No.20080201151832 削除


 全身で大きく呼吸を繰り返す妻 その身体にバスタオルを掛けました。
「裕美子 綺麗だったよ」
「ぁぁぁ あなたぁ・・・わ、私ったら・・・は、恥ずかしい」
「いいんだ 少し休むといい」
「うん ごめんね」

 小刻みに震える妻が 一段と愛おしく思え 自然に唇を合わせました。

 妻のデビューステージは私の想像を遙かに超える興奮を与えてくれました。

 妻が休憩してるその間に セットしたビデオカメラを回収しカバンに詰め込みます。
 そこに映っている妻を見て 私はこれから何度となく精を放出する事でしょう。

 左半次会長、山下さん加藤君は 私達に気を遣って茶の間に引き上げました。


 10分程休憩した妻
「あなたぁ 私着替えるわ・・・もう 帰ろうね」
「おぅ それじゃ俺 左半次さんに挨拶してくるよ」
 妻はバスタオルで前を隠しながら ベッドから降りテッシュで股間を拭っています。

 着替えをした妻は恥ずかしいのでしょう 誰とも会わずに玄関に向かい 
 私は3人にお礼を言い 車に乗り込みました。

「裕美子 今日は凄く綺麗だったよ 俺めっちゃ興奮した」
「私もあんな事になるなんて・・・ 自分でびっくりしちゃった・・・
 あーん 山下さんと 顔合わせられないよぅ」

 妻は今日の出来事が私の仕組んだものとは気づいていないようです。

「正直に言うけど・・・俺な 裕美子が逝った時 ズボンの中で逝っちゃったんだ・・・
 こんな経験 初めてだ 今でもトランクスが冷たいよ」
「・・・ねぇ 今晩 いっぱい愛してね」
「わかってる 俺 今すぐにでも裕美子が抱きたいよ」
「とりあえず スーパーで買い物して帰りましょ」
「了解だ」

 買い物をして帰宅し 健太と3人での夕食を終え ゆっくり風呂に入りました。

 ベッドで妻を待っていると 風呂上がりの妻はバスタオル1枚を巻いただけで寝室に入ってきました。
 抱き寄せ秘唇に指を這わすと 風呂上がりだというのに そこはすでに愛液が溢れていました。



卒業後 54
BJ 2/1(金) 03:15:25 No.20080201031525 削除

「それは―――出来ません」


 苦しげに息を切らしながら、しかし芯のとおった声が室内に響いた。


 男の手を逃れ、伯母は立ち上がっていた。
 振り返って男を見つめる瞳は涙で曇ってはいたが、先程までの狂気の色はそこになく、ただただ透明な哀しみで澄んでいた。

「私には捨てることなんて出来ない。この子も、あのひとも―――」

 絶対に―――


 言葉が喉の奥からあふれ出すように、伯母は叫んだ。


 そう言いながらも、伯母の形の良い富士額からはあぶら汗が垂れ落ち、後ろ手に縛られた身体の足元はふらついている。
 男はそんな伯母を静かに眺めていた。その表情に変化はなく、むしろ先程よりもいっそうしんとした静けさに包まれて、男は伯母を見ていた。
 
「あいつは君が求めているものを決して与えてはくれないよ」
「それでもいいの。私はあのひとを愛している。だから、私から手を放すような真似は決してしないの。もう―――二度と」
「君は幻影を追いかけているだけさ」
「ちがう!」
「あいつといた五年間、君は幸福だったのか?」
「いいときも、わるいときもあった。でも―――大切な時間だった。あのひとと出会って、一緒に過ごして、私は自分が本当に生きているんだってはじめて感じられたの。怒ったり、哀しんだり、泣いたり、笑ったり・・・・私、今までずっと、そんなことも出来ない女だった。あのひとが私にくれたものはこの子だけじゃないの。今も私の中にあるものは、あの人と出会ってから私のなかに生まれたものなの。それまでの私はずっと―――ずっと空っぽだった。だから失っちゃいけない。失えない―――」

 最後の言葉を言う前に、伯母の肢体はぐらりと床に崩れ落ちる。

 そのまま、立ち上がることも出来ないまま、伯母は膝を動かし、拘束された上半身を床に擦りながら、芋虫のように惨めな動作で這いだした。

 そんなふうに這い逃れようとする伯母のほうへ、男は足を踏み出した。その足取りは悠然としている。

 伯母の動きが止まった。
 床に這いつぶれたような体勢から起き上がることも出来ない伯母の、ただその胸の辺りだけが激しく喘いでいる。


「最後の我慢ももう限界のようだね。そろそろなんとかしないと、本当に気がおかしくなってしまうよ」


 男は崩れた伯母の背後に立ちながら、冷ややかに言葉を投げた。

 ぐぐっ、と―――
 伯母の背肌に緊張がはしり、身体を起こそうとしたのが分かった。

 孵化を迎えた海亀の子供が殻から這い出ようとするような、懸命な動きで、伯母は前を向こうとする―――。

「ところで―――」


「君は―――誰なんだ?」




「え?」




 空間と入り混じり、その一部と化していた遼一の視界。

 その視界に、まさにその瞬間、飛び込んできたものは。
 やっとの想いで顔を上げた伯母の目が、愕然とした表情を浮かべて、自分を見つめている姿だった。

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