BBS2 2006/08 過去ログ


悪夢 その16
ハジ 8/31(木) 21:59:47 No.20060831215947 削除
妻は今どういった状況にあるのでしょうか。
少なくとも上着は身につけていません。暴漢たちに肌をみせているのでしょうか。それとも、もう下着すら剥ぎ取られているかもしれません。
私は暗い予感が現実になるのを覚悟しはじめていました。
台地の中央辺りに、廃棄されたブルドーザーのようなものが放置されています。蔓が巻いているので、かなり古いものです。その陰のところに、チラリと白いものがみえた気がします。
私は転げるように坂を下りていきました。顔に切り傷ができ、蜘蛛の糸が張りついてきます。そんなことには構ってはいられません。
道はまっすぐに繋がっておらず、かなりの遠回りを強いられました。かといって斜面を跳び下りるには高さがあり、できるのは目標を見失わないよう注意することだけです。
ようやく平地に降り、大きな建設機械に近寄ろうとして、あるものが目につきました。それはこのような場所に置くには、およそ不似合いなものです。
純白のブラジャー――
今日、妻がどんな種類のものをつけていたのか、私にはわかりません。
しかし、それが秋穂のものであることを私は確信しました。これ以上、彼女に似合うものはないからです。
刺繍入りのそれを私は拾い上げました。パットの部分に手を当てます。妻のぬくもりが残っていないか、確かめたかったのです。
残念ながら、それらしきものは感じられませんでした。

頭が重い。ひどく疲れていました。
私は自分でもわかるくらい、ふらついていました。その頃には自力で姿勢を維持することができなくなっていたのです。
しばらく目を閉じて、ジッとしていました。まるで立ち眩みの対処法ですが、そのときの私にはそれを笑う余裕はありません。
視界が揺れなくなったのを確認して、再び歩みはじめました。
今度は気ばかり焦って、なかなか前に進みません。意志を持った足が歩くのを拒否しているように感じるくらいです。
それでも両膝を励まして、なんとかブルドーザーのところまでたどり着きました。上から一直線にここへ来られず迂回したため、白い“なにか”が見えた場所の反対側に出ていました。ちょうど、裏手にそれはあるはずです。
その金属の塊を回り込もうとして、またみつけてしまいました。
足もとに風が吹けば、飛ぶような布きれが落ちています。小さく丸まったそれは、女性用の下着でした。
黄色がかったフリルつきのショーツ。私はそれを手にとりました。穴の空いている部分に指を入れて広げてみると、クロッチの部分が変色しています。
もう間違いありません。これで妻が無事なわけがありません。

なんという仕打ちでしょう。どこまで私を苦しめれば気が済むのでしょうか。
これをやっているのが息子なら、私は彼を許せそうにありません。

でも――

そのときの心境を私自身、上手く説明する自信はありません。

犯人たちへの怒り。
あてつけともいえる息子の行動に対する戸惑い。
汚されたであろう妻に対する恐怖。

後付けならば、どうとでも言えます。でも、そのとき本当にそう思っていたのか、確信はありません。

うっすらと憶えていること、それは――

それは、得も言われぬ怪しい期待感でした。
そこには妻の悲劇を嘆く夫の姿はなく、妻に降りかかった不幸を悦ぶ自分がいました。

心臓が早鐘のように鳴り響きます。
体の動きは鈍く、全身が鉛のように重く感じました。しかし、それに反するように意識は冴え冴えとし、新たな刺激を迎え入れる準備をしています。

ボロボロに錆びた機械を枕にするように、そこに秋穂がいました。



悪夢 その15
ハジ 8/29(火) 21:22:08 No.20060829212208 削除
木の枝に被せられた、秋穂の靴。
これは何を意味するのでしょうか。
妻がここを通ったのでしょうか。
辺りを見回してみましたが、私のように誰かが滑り落ちてきた形跡はないようです。
あのように高いところに妻の遺留品を残すのは、ひとつには目立つようにというのが考えられます。
それが誰によって、なされたかで状況は当然変わってきます。
妻が助けを求めているというのは、どうでしょうか。あるいは道に迷わないように目印にしたとか。
しかし、これはありえないような気がします。そんなことをすれば、追手にも発見されるおそれがあるからです。
妻でないならば、悪辣な追跡者たちということになります。
妻が脱いだものを彼らが拾ったか、若しくは秋穂から直接取り上げたものか。また、その後、妻がどうなったのか。現在のところ、すべてが謎です。
やはり有力なのは、誰かがメッセージとして残したという説でしょう。この場合、受け取るのは私です。
おそらく息子の浩志の仕業でしょう。単なる挑発なのか、何か目的があって、私をかく乱しようとしているのか。判断がつきません。
私は考えるのをやめて、あたり一帯を捜索しはじめました。草やぶが多く、目の高さほどあるため、作業はなかなか進みません。
いくつかめの草むらをかきわけたとき、外からはわからない獣道がみつかりました。
その入り口のところにブラウスが落ちています。淡いピンク色のそれは、前ボタンがほとんど残っておらず、袖口が大きく裂けていました。
妻は上着を羽織っていましてので、はっきりとは記憶にはないのですが、ゴミにしては新しすぎます。妻のものでしょう。
私などは出かける用事がすぐそこであったなら、ジャージが定番ですが、妻はそのあたりは物堅いのです。
今日も軽装ながら、きちんとアイロンをかけた紺のジャケットを着て出ました。
ジャケットもどこかに落ちているのかもしれません。
道をしばらく進むと、下に狭い台地のようなものがみえてきました。



悪夢 その14
ハジ 8/28(月) 22:42:56 No.20060828224256 削除
うちの子にかぎって――
なんて陳腐で浅はかな言葉でしょう。
私は不始末をしでかした生徒の親から何度となく、この言葉を聞いてきました。
いくら説明しても、彼らは話を聞こうとしません。まるで、こちらの見落としを責めるように、ただひたすらそれを繰り返すのです。私はその都度、甘い親たちに呆れ軽蔑に近い感情を持ったものです。

その言葉をまさか、自ら吐くことになろうとは……。

はじめから、浩志の秋穂への悪意を知っていたら、もう少し違うやりようがあったのかもしれません。
確かに二人は、というより家族は上手くいっていませんでした。けれども、これほど深い憎悪を感じることなどなかったのです。
それ以前に息子に対して、そんな疑念を持てる親などいるものでしょうか。
少なくとも、私と秋穂は気づかなかった。そして今、奈落へと突き落とされようとしているのです。

「とにかく秋穂を助けなければ」
浩志の登場に気を取られて、私は妻を見失っていました。同時に忌々しい少年たちの姿もありません。
私はようやく重い腰を持ち上げました。最愛の妻が暴漢どもに襲われようとしています。ぐずぐずしている暇はありません。
一歩を踏み出した脚に痛みが走りました。どうやら、先ほど息子に押されて転んだときにひねったらしい。
私は武器のつもりの棒切れを、杖代わりにして歩きはじめました。妻が消えた方角へと目を凝らします。浩志も既に後を追っているはずです。
かなり遅れをとりました。今から追いかけても、私の足では到底追いつけるとは思えません。
それでも助けを呼ぶことなど微塵も考えませんでした。今回のことには息子の浩志が関わっているのです。とても、そんな心境にはなれません。
私はゆっくりと山道へ入りました。一歩間違えれば、たちまち獣道や崖へと出てしまいます。
神社の裏は表口よりさらに山深く、なだらかな傾斜が裾まで伸びています。下り坂の大半は林に覆われており、わずかにのぞく地肌も闇が支配しているため、はっきりとは見渡せない状態です。
右手へ行けば頂上ですが、そこへ向かうとは思えません。真直ぐ進むことにして、しばらく行くと、下りがはじまりました。
私はあせっていました。今にも秋穂が彼らに捕まって、惨い目に合わされているのではないかと気が気ではありません。
高校生といえど、身体は立派な大人です。彼らの妻を見る目は欲情した雄以外の何者でもありませんでした。
平常なら、あんな子供に遅れをとる秋穂ではないでしょうが、この度のことは浩志のせいで、かなり取り乱していました。それだけが心配です。
なかなかの健脚振りをみせたとはいえ、女の脚で彼らから逃げ延びる可能性は低いでしょう。山の中に潜み、日が明けるのを待つのがベストです。
秋穂なら……いや、しかし――

私は楽観と悲観を交互に繰り返しながら、坂道をたどっていきました。
道が急勾配になり、そのうち走り出すように足を動かしていました。勢いを殺すことができなかった私は足を取られ、そのまま斜面を滑り落ちていきます。
かなり長い距離を転落したように感じました。滑るスピードこそなかったのですが、なかなか止まってくれなかったのです。
草や枯葉がクッションになって大きな怪我はせずに済みましたが、すぐには立ち上がることができませんでした。
痛みより疲労――
どのくらい、この森のようなところをさ迷ったのか。時間の感覚を失ってしまった私には懐に入れてあった携帯電話を探すのも億劫でした。
このままでは私が遭難してしまいそうです。
小さな山なので、死にはしないだろう。そんなことをぼんやり考えている私の目に奇妙なものが映りました。
それは木の枝の先端に引っかかった女物の靴でした。
私は慌てて、それを手に取りました。
間違いなく、今日秋穂が履いて出たパンプスでした。



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高田 8/27(日) 06:30:52 No.20060827063052 削除
ちょっと足の方に下がるね」
「いいけど、私が貴方のを舐められないじゃないの」
二人はシックスナインを楽しんでいたらしい。
「少し我慢してよ」ゴソゴソ音がしている男は何をする気だ?
「足の指を舐められた事ある?ここ意外と感じるんだぜ」
「何度か有ったけどそんなに良くなかったわ。くすぐったいだけ」
「そいつ下手なんだよ。でもストッキングの足って本当に興奮するよ。ましてや黒だぜ。あっ、ペディキュアも黒だ。色っぽーい」
「喜んでくれた?でもストッキングが好きなんて変わった趣味なんだから。もう」
グチュグチュと聞こえる音は、男が妻のつま先を口に含んだのか?以前、私もやってみた事が有るが、妻はくすぐったいと言って嫌がってしまった。男が『そいつ下手なんだよ』そいつとは俺の事だ。
この小僧、後で見ていろよ。しっかり形は取らせてもらうぞ。
「ああ、この足大好きだよ。如何?気持ち良くない?」
「貴方、上手いからくすぐったくはないけれど、感じると言う程のものでもないわね」
「もう少し待ちなって。気持ち良くなるから」
しばらくの時間、またつま先をしゃぶる音が聞こえて来る。
「あ〜〜ん」妻の口から甘いため息が漏れる。
「ほら、感じ出した。此処は結構感じるところなんだよ。男に奉仕させる様で優越感に浸れるのかな?」
「そんな事ないわ。でも変な感じがする・・・快感とは少し違うけど・・アン」
「感じてるって。認めてよ。本当にベッドの上では負けず嫌いだな。ならここも一緒に責めちゃおうかな」
「うっ、うっ、あ〜っ、何をするの!そんなのずる〜い。あん、あん、う〜ん」
「そろそろか」男がそんな事を言った様に思えた。
「あっ、あっ、何をしてるの?あっ、そんな事止めてよ。あっあっあっ」
妻の様子が変わった。
「何も変な事はしていないさ」
「やん、や〜ん、もう嫌っ。こっちに来て。来なさい!」
「まだ駄目。もっと火を点けてからね」
「うっ、うっ、あ〜〜ぅ、そこは駄目よ、駄目っ、駄目だったら〜。こっちにいらしゃい。命令よ!」
妻の口調がきつく成ったのは、この状況に主導権を奪われてしまう危機感を感じたのか?
誰でもSとMの要素を持っていると言われるが、妻のサド的要素は私も異常に感じる事がある。
セックスの時は、徹底的に主導権を握らないと気が済まない様だ。
それがどんな経験から来るものなのか何度か聞いた事があるが、ただ微笑むだけで答えなかった。
そんな妻が、この男にリードされる事を嫌って抵抗しているのだろう。
それにしても良く喋る。男が主導権を取ろうとし、妻が抵抗する。二人の駆け引きは滑稽でさえある。
「まだまだ。もっと感じるよ。その内に大声出すから」
「あ〜〜ん、馬鹿言わないで。あっあっ、私はそんなふう・う〜〜ん・には成らない・うっ」
「強がり言うなって。もう堪らないって顔をしてるよ」
「嘘よ・・あぁぁぁぁぁ・・でも悪くはないわ・・あぁぁぁぁ」
妻は低い呻き声を漏らしている。
「その代わりクリの皮を剥いちゃおうっと」
「嫌、嫌、そこそんなにしたら嫌っ。あっあっあっ駄目、駄目、駄目、嫌〜〜ん」
「へへへ、指もいれるよ」
「うっうっうっ、うっう〜〜〜ん、そんな事されたら・・・そんな事されたら・・・うっあ〜〜ん」
遂に妻が低く唸った。同時にベッドもギシッと軋む音が聞こえる。おそらく妻が大きく仰け反ったのだろう。
あいつにこんな声を出させるとは、こいつ何者なのだろう?私はあ然して聞き入ってしまう。
「如何?感じている?もう認めるでしょう?」
「そうね・・うっうっ・少しだけ。でも・・まだまだ・あっ・よ・・・・うっう〜〜ん」
「もう無理だって。女の人は一度火が点くともう止らないからね。ほら、ほら、此処もほら」
「あ〜〜ん悔しい〜。嫌、嫌っ・・もう止めなさいっ!あっあっあぁぁ・・・止めなさいたらっ!う〜〜ん・・
如何してこう成るのよ?あっ、そこ私の弱いところ!そこそんなにされたら・・あっあっ・・そこ駄目っ!
そこ弱いの。あっあっそこ駄目っ!」
今度は明かな反応を示し、同時にベッドが大きな音で軋んだ。完全に形勢逆転の様だ。
「もっと、もっと良く成るから」
「ああぁぁぁ・・悔しいわ・・あ〜ん・・悔しい・・こんな事って・・あっ、そこはっ・・こんな事ってあるの?
・・うっうっ・・そこ止めて!止めなさい!止めってたら!・・うっうっうゎーーっ」
「ここ急所だろう?あぁ、楽しい。強気な貴女を泣かせるのは本当に興奮するよ。」
「ま、まだよ。うっうっうっ・・」
「あれ?反撃ですか?触り方に何時もの冴えがないな。本当に往生際が悪い。それならこれは如何?」
「あっあっあっ・・おっ、おーーっ」
「ほら手が疎かに成ってる。僕にも良い思いさせてよ」
「ああぁぁぁぁ・・出来ないっ!」
ベッドの音がギシギシ煩い。それ程激しく妻がのた打ち回っているのだろうか?
「如何したの?もう駄目?逝っても良いよ」
「嫌よ。あぁーー、まだよっ。う〜〜ん・・まだ逝かないんだから・・・」
あいつ、もう時間の問題だな。そんな事を思える俺は、まだ冷静なのかな?
きっと冷たかったんだろうな。何時も冷静さを装って。だから妻にこんな仕打ちを受けているんだろうな。
「はははは、良く言うよ。そんなに逝きたくないなら、もう止めるよ」
「えっ?如何して止めるの?嫌よ、嫌よ、続けなさいよ」
「素直に逝ったら?」
「・・・偉そうな事言わないの。良いのよこのままでも・・」
「ふ〜ん」
「・・・嫌な人ねぇ。貴方は出さなくて良いの?」
「そろそろ限界だよ」
「じゃあ入れてよ」
「欲しい?」
「・・・・うん、欲しい。私も限界」
まだ続くのだが、此処迄で流石に私も気分が悪く成って来た。

リビングのソファーに腰を落として、煙草に火を点け様とすると、手が震えている。
さあ、これから如何しようか。色々考え様としてもまとまらない。
誰かに打ち明けたい衝動も駆られるが、こんな事を話せる相手も居ない。
「この度はお世話に成りました。情けない話だと思いますが、何かアドバイスを頂きたい。これからお邪魔しても
宜しいでしょうか」
相手は迷惑な話だと思うが、私は興信所に電話を掛けていた。あそこなら全てを知っているし、こんな事は
日常茶飯事だろう。何か良いアドバイスをくれるかもしれない。情けないが、今は其処しか頼りは思いつかない。
今は恥を掻こう。そして心に反撃の狼煙を上げろ。



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高田 8/27(日) 06:28:13 No.20060827062813 削除
妻と男を追い詰める証拠はもう揃っている。私がこれ以上この痴態を聞いている必要はないのだが、パソコンを閉じれずに聞いてしまっている。そう、理性と感情の狭間に迷い込んでしまった。
その間にも、二人の行為の音が聞こえて来る。
「ねぇ、膝の裏って感じるでしょう?あぁ、黒いストッキングの足か。素敵だなぁ」
妻の足に舌を這わせているのだろうか。
「ええ、気持ち良いわよ、とても。それより貴方はまだ我慢出来るの?そろそろ限界じゃない?」
「うん。一生懸命我慢しているよ。へへへ・・・若いから何度でも出来るけど、やっぱり最初が一番気持ち良いからもう少し頑張るさ」
「あら、言うじゃないの。頑張ってね」
男女の行為の音が続く。
「本当に頑張るわね。何時もならもう降参しているのに。如何したのかしら?」
「何時もの僕と違うって?いや、何か今日は頑張れるみたいだ。へへへ。貴女は感じない?」
「ふふふふっ、ちゃんと感じてるわ。でもさっさと出してしまいなさいな」
「まだ出さないけど、貴女にサービス出来る様、頑張ってみるかな」
「ふふふふふ」妻はあしらう様に笑うだけで、その声はくぐもっている。男の物を咥えているのか?
それにしても、よく喋る。この会話で相手を翻弄し、彼女も昂ぶって行くのが性癖の様なものなのだろう。
それでいてS・Mプレーは好まない。変わった性格をしてるぜ、全く。
「じゃあ、行くぜ」男の声と同時に、突然激しくベッドの軋む音が聞こえた。
「あっ、こら乱暴は嫌よ」
「任せなさいって。変な事はしないから」
「もぅ・・・我慢出来なかったんでしょう?ずるいんだから。まぁいいわ。何処まで出来るか試して上げる」
こんな時の妻は、本当にサデスティクな態度を取る。相変わらず何時も通りにペースを握っている。
「ねぇ、もう何回遣っただろう?覚えている?僕はその間じっくり研究してたよ。貴女の弱点をね。これから
試してみるから。きっと喜んでもらえると思うんだ」
「どうぞ、お好きな様に。ふふふふ・・泣かせるもんなら泣かせてみて。楽しみだわ。さぁやってみなさい」
妻の女王様の闘志に火を点けてしまったな。
「余裕だね。それじゃあ此処は如何かな?効くだろう?」
「うふふふふ・・・そうね、悪くはないわ。でもそんなの何度も経験ずみよ。そんなに驚かないわ」
「ああ、分かっているさ。でもね、此処も一緒にこうしたら如何?」
何処を如何しているのだろうか?それにしても、勝手な事をしやがって。しばし二人の沈黙が続く。
「・・・・はぁーはぁーうっ」妻が始めて反応を示した。
「ほ〜ら来た。感じるだろう?我慢しなくても良いから」
「・・・生意気な事言わないの。はぁー、その程度じゃまだまだまだよ。・・・うっ」
「だから我慢するなって」この男なりに、必死で抵抗しているのだろうな。男は女を征服する喜びを感じたい
ものだから。私が妻とセックスが疎遠に成ったのも、そこに原因がある。
「我慢なんてしていないわよ。・・・はぁーはぁーあぅ」確かに妻の息遣いが荒くなって来た。
「ほら感じてる。ここも責めちゃおっと」
「・・女ですもの、全く感じないなんて事はないわ。でも、その位で私が音を上げると思うの。甘いわね。貴方とは経験値が違うのよ・・・」
あいつらしい言いぐさだ。
「何時までそんな強がり言ってられるかな?これからが本場さ」
ベッドが軋んでいる。妻は何をされいるのだろうか?
「ちょっと待って。一方的にじゃ卑怯よ。私にも愛させて」
「堪えきれなく成って来たんだろう?本当に負けず嫌いなんだから」
「・・・そんな事ないわよ。まだ余裕。私は責められるの好きじゃないの」
「へへへへ、そんな事言わずにもう少しさせてよ。でもさ、本当の快感って知らないんじゃないの?」
「うっ、そうかしら。でも結構上手いじゃ・・あっ・ないの。いい感じよ・・私も・あん・・こうしてあげる」
妻も男に反撃する様だ。何をしているのか、ガサガサ音がする。流石に男が呻き声を上げている。
「気持ちいいー。最高だよ。こんな事普通出来ねぇよ。僕は本当に幸せだ」
この餓鬼、本当に苛立たせる奴だ。
「ふふふふ・・・もう駄目かしら?早く認めたら?」
「出したら飲んでくれる?」
「それは嫌よ。夫のだって飲んだ事ないのに」
「それじゃあ、まだ出さない。だけど今日は飲んでもらうよ」
「絶対に嫌よ。でもその気にさせられるなら話は別よ。ふふふ」
また妻の男を吸い尽くす様な卑猥な音が聞こえる。
何だか訳の分からない駆け引きを演じている様だが、こんな馬鹿らしい破廉恥な会話を聞いていても、私はパソコンを閉じる事が出来ない。





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悪夢 その13
ハジ 8/26(土) 21:21:41 No.20060826212141 削除
冷ややかに私をみつめる、その眼差しはまるで他人のようでした。
ここ数年の息子の変貌には戸惑うばかりです。
骨格の成長に伴って、背丈が随分伸びました。筋肉のつき方がまだ追いつかず、少し痩せ気味にも感じますが、母親似だった面立ちもしっかりと男らしいものになっていました。
本来ならば喜ぶべきところなのでしょうが、私は素直にそれを祝うことができません。
何故なら、変声期の影響で低く、かすれがちな声は絶えず不安定で苛立ちに揺れていましたし、頬がこけ厳めしさが増した顔つきは常に私たちへの敵愾心に満ちていました。そこには暗く淀んだなにかが秘められているのです。
ひさしぶりに顔をあわせた息子は、目の下に隈をつくっていました。最近のすさんだ生活が現れたものでしょう。
彼の突然の出現に私は覚悟していたとはいえ、やはりショックを受けました。そこに息子の無事を喜ぶ気持ちはありません。
「こんなところで何をしている」
私の第一声は怒声に近いものでした。たまっていたものが爆発したのです。
浩志はうるさそうに顔をしかめると、口を尖らせました。
「父さんこそ。絶対誰も連れてくるなと言ったのに……あの女」
「あの女ではない。母さんだ」
私は厳しくしかりつけましたが、浩志は一向に堪えていない様子です。それどころか、
「あの人は母さんなんかじゃない」
平然とそう言い返してきました。
私は思わず息子の頬を張り飛ばしていました。
浩志は信じられない面持ちで、私を見ています。私だって、そうです。なにしろ、息子に手をあげたのは、これがはじめてです。
私は気持ちを落ちつける為に、深く息を吐き出しました。
「おまえが仕組んで、母さんをあいつらに襲わせた。そうだな?」
「…………」
「何故だ?彼らに脅されでもしているのか?」
「脅されてなんかいない」
軽い調子で断言する息子に、私の一縷の望みは絶たれました。彼の口ぶりから誰かに強制されている様子はありません。
浩志は誰に脅されるわけでもなく、自らの意志で自分の母親が襲われるよう仕向けたのです。
「浩志、おまえは自分が何をやっているのか、本当にわかっているのか」
私は自分で言っているうちに、また怒りがこみ上げて来ました。
妻は……秋穂はよくやってくれています。
私には理解できません。息子にとって、彼女のどこが不満なのでしょう。
浩志が未だに先妻を慕いつづけているのは知っています。心情的には理解もできます。だからといって、秋穂に辛く当たるのは筋が違います。何度言っても、それがわからないのです。
「思い知らせるためさ、あの人にも……父さんにも……」
そう呻いたときの息子は苦しそうでした。つい今の状況を忘れて、その顔をのぞきこんでしまうほどです。
いつもの悪態をつくときとはあきらかに違った、その様子に私は気勢を削がれてしまいました。
固まってしまった私の胸を、浩志がお返しとばかりに突いてきました。不意をつかれた私はあっけなく転んでしまいます。
力なく尻餅をついた私の視線の先を、浩志は走り去りました。
私はその後ろ姿を呼び止めることもできず、ただ手を伸ばして影を追っていました。



立場36
Retaliation 8/26(土) 03:40:46 No.20060826034046 削除
佐々木達とBarで会ってから2週間が経っていました。

妻に対して口には出して言っていないものの態度で妻に気付かれているかもしれません。休みの日には妻と買い物に出掛けショッピングや食事をする。平日は仕事が終わると寄り道をする事なくまっすぐに自宅に帰り夕食を妻と一緒に食べ、その日一日あった事をお互いに話したり冗談を言い合い笑う。そしてベッドに入り妻とセックスをする。ちなみに理香とは旅行から帰ってきてからは一度も会っていません。理香からは「会いたい」と連絡は来るものの仕事を理由に何故か会うのを避けていました。

そんなある日、理香からのメールで「話がしたい、会って欲しい」とメールが届きました。仕事を終え理香との待ち合わせ場所に向かいました。理香との不倫関係の期限はまだ来ていないので問題はないのですが、何故か妻には「今日は同僚と飲んでくる」と嘘を付きました。

待ち合わせ場所に着くと既に理香は到着し待っていました。

私「ゴメン待った?」
理香「うぅん、私も今来たところ、久しぶりだね」

そう言葉を交わすと、すぐに近にある居酒屋に入りました。

私「で、話って?」

そう私が聞くと理香は少し俯き黙り込みました。もう一度声をかけようかと思った時に理香は顔を上げ話し始めました。理香の話しによると離婚に同意してた吉崎が突然、離婚を撤回したらしいのです。勿論理香の離婚の意思は固まっていてそれを拒否しているらしいのですが、吉崎は頑なに「やり直してくれ」と理香に迫っているようです。

私「突然だね。一体何があったの?」
理香「私にもわからない、でも旅行から帰ってきたらそういうふうになってたの」
私「君は離婚する気は変わらないの?」
理香「勿論そうよ。私は離婚する気持ちは変わってない」

この後の理香の話を聞いても吉崎が突然離婚を拒否しだしたのかはわかりませんでした。しかしこれはあくまで夫婦間の問題であって他人の、それも不倫相手の私が仲裁に入れる問題ではありません。結局私が理香に出来るアドバイスは、離婚の意思が固いことを吉崎に伝え続ける、としか出来ませんでした。店を出た私達は理香に促されるようにホテルに入りセックスをしてしまいました。久しぶりの理香とのセックスは妻とはまた違った心地よさでした。

ベッドの上で私に抱きつきながら理香は話し出しました。

理香「最近会ってくれなかったけど、本当は仕事なんかじゃないんでしょ?」
私「えっどうして?」
理香「何となくね。でも本当は仕事じゃないんでしょ?」
私「・・・」
理香「別に良いのよ。アナタは何も悪い事をしてないんだし、うぅん寧ろ正しい事よ」

まるで理香には全てお見通しのようです。

理香「やっぱり奥さんとやり直すのね」
私「・・・あぁ」
理香「もう奥さんには言ってあるの?」
私「いやまだ」
理香「ずるい人ね」
私「・・・ごめん」
理香「いいの、そのお陰で会えるんだし、ねぇあの事だけどまだ答えはいいよ。どうせなら最後に聞かせて・・・ねっ」

ホテルを出たのは21時過ぎでした。理香は別れ際に「コッチの問題は私が何とかするから○○さんは気にしないで」そう言って帰って行きました。



悪夢 その12
ハジ 8/25(金) 22:30:53 No.20060825223053 削除
「秋穂、逃げろ!!」

驚いたのは秋穂だけではありません。
少年たちもギョッとして、こちらを見ています。それはそうでしょう。彼らは私がここに潜んでいることなど知らないはずです。
妻は大きく目を見開いて、こちらを見ていました。その双眸に正気の火が灯るのに、さほど時間はかかりませんでした。
「あなたっ!」
一瞬はやく立ち直った妻が肩に置かれた少年の手を振り払いました。そのまま逃げ出そうとします。
誰かの手が服にかかり、布地が裂ける音がしました。
秋穂は引張られて、つんのめりそうになりましたが、なんとか持ちこたえました。そして、脇目も振らずに駆け出したのです。
少年たちは虚をつかれたため、それ以上動けません。妻の姿がアッという間に遠ざかります。
私がいる方向へ逃げてくれば出口なのですが、それはできませんでした。私との間には少年たちがおり、それを避けようとして、山の方へ向かったのです。
少年たちはすぐに判断がつかないようでした。このまま妻を追ってよいものか、迷いがあります。また、私のことを相当意識しているようです。
小童どもが睨みつけてきます。突然の闖入者のおかげで、秋穂を取り逃したのです。
私は妻の姿が視界から消えるまで、彼らから目を離しませんでした。少しでも時間を稼いで、彼女を遠くへ逃がしたかったのです。
しかし、彼らは何故か急に邪魔者である私への興味を失いました。
私を無視して、ヒソヒソと相談をはじめます。
彼らの中のリーダー格が他へ指示を出しはじめました。
「山の方へ追い込めば、逃げられねえ。おまえら二人は裏からまわれ。早いモン勝ちだ」
景気のいい作戦に他の三人がどっと沸きます。彼の言うとおりでした。女の足でとても逃げ切れるとは思えません。
「女教師狩り!女教師狩り!」
「人妻!人妻!」
悪童どもが奇声を上げて飛び跳ね出しました。彼らは一種の興奮状態に陥っています。放っておけば、妻がその毒牙にかかることは避けられないでしょう。
私は雄叫びを上げました。妻を守らねばなりません。
子供とはいえ、四対一です。おそらく半殺しにされるでしょう。
私は絶望的な気分で、先ほどの木片を探しました。武器になりそうなものが他に見当たらなかったのです。
拾おうと手を伸ばした私の鼻先で、それは飛んでいきました。後ろから、何者かが蹴ったのです。
他にも仲間がいたのか――
私は背後から殴られるのを覚悟して、目を閉じました。でも、待っていた衝撃はなかなかきません。
おそるおそる振り向いた私の正面に、先ほどの一団とは別の少年が立っていました。
青白いその顔は、息子・浩志のものでした。



悪夢 その11
ハジ 8/24(木) 21:04:10 No.20060824210410 削除
そもそも浩志はどこに行ったのでしょう。私も妻も息子を迎えに来たはずでした。
集まりの中に彼はいません。
確か友達が一緒だと言っていました。目の前の少年たちは、それにしては年上すぎるような気がします。

しかし――。彼らの中のひとりがはっきりと、息子の名を口走ったのです。

「待って。浩志……浩志を知っているの?」
秋穂がフラフラと少年たちに近づきました。その様子に先ほどまでの威厳はありません。
ひとりが怪訝な表情で振り返りました。
「浩志?浩志なら、俺たちと……」
別のひとりがその口を遮りました。
「知ってるぜ。浩志のいるところに行きたいのなら、連れて行ってやるよ」
少年は薄ら笑いを浮かべていました。狡猾にもこの機会につけこもうというのです。
「浩志に何かあったの?」
妻の必死の問いかけにも、少年はニヤニヤするだけで答えません。
秋穂はバッグから携帯電話を取り出すと、気ぜわしげにキーを叩きました。重苦しい沈黙がつづきます。
三十秒ほど待ちましたが、相手は出ないようです。それを二度ほど繰り返しました。
おそらく浩志と連絡がつかなくなっているのでしょう。
「どうするのさ、ついてくる?」
少年がからかうような、試すような口調で催促してきました。
妻は疲労困憊の様子を隠せません。すでに教師の仮面は剥がれ落ちていました。
逡巡した様子でしたが、結局うなずいていました。
「お願い」
少年たちは好色そうな目を取り戻していました。彼らは妻を囲み、奥のほうへ連れて行こうとします。
妻は少年のひとりに無造作に肩を抱かれています。普段の彼女がそんなことを許すわけがありません。おそらく、それに気づかないくらい憔悴しきっているのです。
一体何があったのか。
電話での妻と子の会話を私は知りません。単純に待ち合わせ場所の連絡だと思っていました。
ここへ来るまでに、二人のあいだで何が話し合われていたのでしょう。
少年たちは妻を暗がりの方へ誘導していきます。
私には妻が精神の変調をきたしたとしか思えません。でなければ、あんな子供の見え透いた誘いに軽々しく乗せられるはずがありません。あの聡い妻が。
私は妻を呼び止めようと、走り出しました。
ようやく呑み込めてきました。
おそらく随分前から連絡がつかなくなったのしょう。それなのに息子から言われた通りの待ち合わせ場所に来ても姿はない。途方に暮れていたところを不良たちにからまれる。妻は刻々とかわる状況に翻弄されていったのです。
私は数メートルもいかないうちに、立ち止まりました。
この期に及んで、さらに最悪の可能性を思いついたのです。
浩志が呼び出した場所にちょうど息子の知り合いが居合わせた。街中ではなく、こんな人気のないところで。タイミングが良すぎます。そんな偶然があるものでしょうか。
「罠だ」
恐怖のあまり声になりませんでした。しかし震える膝をつかんで、なんとか声を張り上げました。
「あきほ!!」
妻がビクッとして振り返りました。
私は喉が張り裂けるほど、叫びました。
「逃げろっ、逃げるんだ」



悪夢 その10
ハジ 8/24(木) 00:05:49 No.20060824000549 削除
「私はS中学の教師です。急いでいたので、見逃すつもりでしたが……」
秋穂の毅然たる宣告に学生たちが息を呑むのが、はっきりとわかりました。
少年たちのなかに「何か勝手が違うぞ」という不審感のようなものは既にあったのかもしれません。その上、妻が彼らのペースに全く乗ぜられることなく接したことで、不安は益々増大したのでしょう。皆落ち着きがなく、完全に浮き足立っていました。
妻も私も教師です。我々は生徒たちに論理を教えることによって、物事の本質や正解へと導くことを仕事としています。それは学問だけに限らず、社会のルールやモラルにも及びます。
そのことを理解させるために、私たちは躍起になって授業を組み立てます。よりわかりやすく、興味をもつように……いわば、我々は見せる技術を体得しなければなりません。
しかし、私たちは同時に『見られる』プロであることも求められます。こちらからの一方通行では相互理解は得られません。我々教師は生徒から送られてくる信号を敏感に注意深く読み取らなければなりませんが、同じように彼らもこちらの表情を窺っているのです。
それに対して自信無げな態度や不誠実な対応をすれば、すぐに見破られます。例え小手先のテクニックで相手を丸め込んだとしても、わずかでも疑いの芽を残せば、根本の解決にはならないのです。
その点、妻の対応は完璧でした。少年たちに詰め寄られても、動じず先ほどと変わらぬ声音で彼らに語りかけています。
以上のことができるのを前提に、最後に一番重要なこと残っています。それは生徒の目をこちらに向けさせることです。
案外これができない先生が最近は多いのです。別に彼らに関心のある話題で気を惹けというのではありません。これは間の取り方であったり、相手との呼吸の問題です。こちらから強いメッセージを送るとともに、自分から意見を言いたくなるような環境に持っていく。そのような雰囲気でなければなりません。
秋穂はそれらを基本通りに実践していました。
「やっちまえ」
誰か一人がそう叫べば、堰を切ったように少年たちが襲い掛かるのは目に見えていました。
ですが、妻はそれをさせません。個々の目を牽制するように見据え、自分の話を聞くよう仕向けました。また過度の刺激を与えて、彼らが暴走するのを防ぐため、声を押さえ慎重な言葉遣いを選んでいます。
彼女は私と同僚だった頃から較べると、教師として格段の成長を遂げていたのです。
「なんだよ、この先公。調子狂うぜ」
「聞いてた話とちがうじゃん」
「ウゼェ」
彼らは反撃しようとしますが、秋穂の堂々たる態度と正論につけ入る隙を見つけることができません。
視線を逸らすもの、俯くもの、にらみつけるもの。反応は様々でしたが、彼らに当初の勢いはありません。どうやら、騒ぎはこのまま収束しそうです。
私は妻のことを改めて見直していました。
平素はおとなしく、物静かな印象なのですが、この胆力は見事です。これも警官である、祖父君の教育の賜物でしょう。
少年らは何も全員が秋穂の言うことに納得したわけではありません。当然、不貞腐れた態度の者もいましたが、もはやそれは虚勢に過ぎません。彼らは白けた様子で散りはじめました。
「気をつけて帰りなさい」
妻も無理にそれを引き止めるようなことはしません。彼女にも自らの危うい状況は十分把握できているはずでした。
私はホッと胸をなでおろしました。
緊張から階段を登り切ったところで静観していましたが、いざとなれば妻の為に闘うつもりでした。
その証拠に右手には棒切れを持っていました。強く握り締めた指が今でも震えています。
幸いにも妻は私の助けを借りることなく危地を脱しました。彼女の成長は私にとっても喜ばしいことです。
隠れていたことをすっかり忘れて、私は誇らしげに社殿の方へ歩み寄ろうとしました。

そのときです。私の耳に「ヒロシ」という単語が飛び込んできました。
それは妻も同じだったようです。

声はその場を去りかけた少年のものでした。妻は哀れなほど過敏に反応してしまいました。



悪夢 その9
ハジ 8/21(月) 21:21:42 No.20060821212142 削除
最後の一段を駆け登った私の目に異様な光景がとびこんできました。
商店街を出てここへくるまで、人っ子ひとり逢わなかったというのに、そこには数人の影があったのです。
見知らぬ男たちが半円を描くように立っていました。しかも輪の中心にいるのは妻の秋穂です。
彼らははやくも剣呑な雰囲気を漂わせています。どうみても、道を尋ねる物腰ではありません。
古ぼけた電灯がひとつ、寂しげに社殿を照らしています。それは暗い未来を暗示するかのように、儚く心細いものでした。
相手は全部で四人。いずれもシャツの裾を出し、前をだらしなく開けていました。
高校生ぐらいでしょうか。ふだん中学生を見慣れている私にはそう思えます。顔はまだあどけないといってもよく、全員が揃って痩せていました。
ジッジッ、と空気が震えます。虫たちが明かりにたかり、感電する音です。そのせいではないでしょうが、しきりに電灯の光が明滅します。まるで私の心中を映し出しているようです。
こんな時間に、こんな場所で彼らは何をしていたのでしょう。いや、これから何をしようというのでしょう。
そういえば、先ほどお話した悪天狗は里に降りてきては若い娘を連れ去ったと聞きます。今、目の前で起きていることと、その古い伝説を何故か私は重ね合わせるように見ていました。

女性にしては長身の秋穂でも、彼らの間に入れば、すっぽりとみえなくなります。
少年といってもそれが自分より大柄な男たちであれば相当な圧迫感でしょう。しかし、彼女はそんなことに怯むような性格ではありません。私のようにオカルトめいた幻想に惑わされることもありません。
私がまごまごしているあいだに、妻は少年たちにストレートに切り出していました。
「私に何か?」
決して大きくはありませんが、はっきりと通る声です。
男どもは互いの顔を見合わせました。そして、すぐにからかう調子で口笛を鳴らしました。
「声も色っぽいね、美人のおねえさん」
誰かの声に、一同はどっと哄笑しました。
「でも気強そう」
「バカ、そこがいいんだろう。ねぇ本当に結婚してるの?人妻ってカンジじゃないよね」
全員から舐めるような視線を向けられ、妻は穢れるといわんばかりに左手の薬指を隠しました。
妻のそんな反応は少年たちを益々喜ばせます。
「なに、待ち合わせ?オトコ?」
「相手来てないじゃん。俺たちでよければ、つきあうよ。このままじゃカラダ持て余して眠れないでしょう」
妻は困惑した面持ちのまま囃したてられていました。
それはそうでしょう。息子を迎えに来たはずが、待っていたのは見ず知らずの他人。しかも自分を見る目がいかにも怪しい連中です。
秋穂はチラッと辺りに目をやりました。息子が近くにいないか気にしたのだと思います。
彼女からの返事がないのを良いことに、図に乗った彼らは目の前で本人の品評会をはじめました。
「脚長いねえ。背高いし、スタイルいいよね」
「でも、ただ痩せてるだけってわけじゃなさそうだぜ」
「そんなの試してみればすぐわかるよ」
少年らしからぬ下卑た笑声が次々に起こります。それは夫の私が聞いても十分不快なものでした。
会話の内容さえ無視すれば、彼らはそのへんにいる高校生と変わりはありません。しかし、その熱に浮かされたような表情は異常です。妻に対する暴言も冗談にしては行き過ぎで、害意を隠そうともしません。
少年らの口数が減ってきました。これは危険の兆候です。なにかの弾みで彼らはまちがいなく暴発するでしょう。
私はきりきりと胃を締めつけられるようでした。助け出すタイミングを計っていたはずが、事態が膠着したため返って動けなくなったのです。
「悪いけど」
妻はまともにとりあう気はなさそうです。
「私にはあなたたちぐらいの子供がいるの。こんなおばさんじゃなくて、他を当たりなさい」
「そんなこと言われたってさあ」
先ほどのひとりが薄笑いを浮かべて、妻ににじり寄りました。目には淫猥な光が充満しています。
「俺ら、もう我慢が……」
彼は自らの下半身を指差すと、それ以上先を続けることができず、笑い出しました。他の者も追従するように大口を開けます。
妻はその様子を無感動に眺めていました。しかし、それも長くはつづきません。
仕方なくという感じで、彼女は顎をひきました。そして腕を組み、足を肩幅ほどに開きます。そのたたずまいは既に母のものではなく、教育者のものになっていました。
先頭の少年の顔が引き攣りました。妻から怯えの色が読み取れないことにようやく気づいたのでしょう。
妻は全員の笑いがおさまるのを待つと、一人一人と目を合わせていきます。あきらかに彼らの中で空気が変わりました。瞳からは侮りの色が消え、正気の光が戻ってきました。
足もとで境内の砂利が鳴りました。誰かが後じさったのでしょう。
「あなたたち、どこの学校の生徒さん?私は……」
妻の静かな迫力に彼らは押されはじめていました。



悪夢 その8
ハジ 8/18(金) 23:06:18 No.20060818230618 削除
私がもう少し慎重だったなら……。
この後、妻に降りかかる災難は防げたかもしれません。いえ、少なくとも妻に対して警告を発することはできたのです。
このときの妻は……秋穂は冷静さを欠いていました。あまりに軽率だったと言わざるを得ません。
腹を痛めた子ではありませんが、妻は息子を溺愛していました。生母の分までもと気負ってもいたのでしょう。
それが煩わしかったのか、浩志はいつも苛立っていました。私は多分に思春期の影響であると考えますが、妻にそんなふうに割り切れというのは無理な話です。常に自分が継母であることを負い目に感じるような性格なのです。
妻の姿が夜の衣に完全に包み込まれたとき、私は急に胸騒ぎがしました。不吉な予感とでも申しましょうか。
何がどうとは説明できないのですが、漠然と不安がよぎったのです。
こんな時間です。近辺に全く人影は見当たりません。肌寒く感じるのは気のせいだけではないかもしれません。
石段の両脇は舗装されておらず、地肌が剥き出しになっています。この山全体を覆う影の正体が、そこから何本も突き出ている木のせいであることに今更ながら気がつきました。上空でひろがった枝葉が重なり合うさまは、まるで傘の骨子のように我々から星々を遠ざけるのです。
さらによく目を凝らすと、幹のあいだを縫うように草花が生えています。それらが黒い帳とあいまって、いっそう不気味さをかきたてるのでした。
そんな夜の表情から、私は古い伝承を思い出していました。専門ではありませんのであまり詳しくはありませんが、この地に天狗が住んでいたという言い伝えです。
その山伏姿の妖怪は山間を跳びまわり、さまざまな怪異を起こすと言われています。昼とは別の顔をみせるこの一帯をつい、その仕業ではないかと疑ってしまうのは私ばかりではない気がします。
秋穂は頂上にたどり着けたのでしょうか。闇の濃さに彼女を見失っても階段はなお続き、今以って頂点を見ることはかないません。
あいかわらず、女の一人歩きには似つかわしくない状況は変わっていません。息子に振りまわされる妻に対する不安を誤魔化しきれなくなった私は、階段を一段跳びで走りはじめていました。

頭上から言い争うような声が聞えてきます。
私は懸命にもつれる足を励ましながら、妻のもとを目指しました。

(少し投稿のペースをおとそうと思っています。次回は21日頃。今後は週2〜3回を予定しています)





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悪夢 その7
ハジ 8/17(木) 22:14:25 No.20060817221425 削除
一旦来た道を引き返した秋穂は商店街をはずれると、狭い路地裏に入っていきました。
暗がりの中です。私は妻を見失わないよう、必死に影を追いました。
辺りは古い軒並みが多く、物音ひとつ聞こえません。すでに付近は寝静まっているようでした。
道幅の小さな通路の先から、妻のものらしき規則正しい靴音が聞えてきます。その姿が時折、闇に溶けそうになるのを、私は落ち着かない気分でみていました。
秋穂は少し歩調を落として、傾けていた首を起こしました。少しおいて鳴った電子音が、通話が切れたことを知らせます。
携帯電話を手慣れた仕草でバッグに仕舞いこむと、これまで以上に歩くスピードを上げました。
待ち合わせ場所を変更したのだろう、ぐらいのことは想像がつきました。先へ行っても、カラオケのある店などなさそうだからです。
私の記憶が正しければ、この先には古い神社があるはずです。
幼い時分に何度か立ち寄ったことはありますが、それ以来ずっと訪れる機会はありませんでした。寂れた感じの、少々薄気味悪い場所だったのを覚えています。
しばらく進むと、予想通り暗闇の中に白い鳥居が浮かび上がってきました。その奥に石造りの階段がそびえ立っています。
石段の長さを見て、私は閉口しました。夜とはいえ、てっぺんが目視できません。
暗さと高さに躊躇した私を、尾行に気づかない秋穂は当然待ってくれません。柱の下で一度立ち止まる姿勢をみせましたが、怯むことなく階段を登りはじめました。
坂がきついからといって、ここで投げ出すわけにもいかず、仕方なく私もつきあうことにします。
階段はなかなか傾斜も急で、最近肥り気味の私には堪えます。案の定、すぐに息が切れてきました。
このていたらくでは、妻に置いていかれる。そんな心配もしましたが、一本道なのが幸いしました。彼女とはぐれることはなさそうです。
遥か頭上の秋穂とはずいぶん距離を開けられてしまいました。彼女の姿がどんどん小さくなっていきます。
私は自分の情けなさに嘆息しながら、妻を仰ぎ見ました。あの姿勢の良さはなんでしょう。
秋穂の祖父はたしか警察官だったはずです。おかげで幼い頃より、武道を通して礼儀については徹底的にたたき込まれたと聞いています。
それが現在の彼女の人格を形成していることはあきらかです。彼女の慎ましさや芯の強さはその現れでしょう。
自慢の妻です。掌中の珠でありながら、決して触れることのできない存在……。
そんな彼女に危機が訪れようとは、そのときの私は露ほど考えてはいませんでした。



悪夢 その6
ハジ 8/16(水) 21:57:54 No.20060816215754 削除
前方を妻が歩いています。足は最寄りの商店街に向いているようです。
女性にしては長身の秋穂は歩くのも早く、後をついていくのは結構たいへんです。

断っておきますが、私は他意があって妻を尾行しているわけではありません。
妻を送り出した後になって、息子がいっしょにいる友人というのが妙に気になりました。顔だけでも見ておこうと、後を追いかけたのです。
ただ妻に絶対ついてこないよう念を押されましたので、堂々とふるまうわけには参りません。そこのところは、親心に免じてご容赦いただきたい。

さて、秋穂は商店街の奥まった方にある繁華街へと進んでいきます。
猥雑な盛り場を颯爽と歩く姿は嫌でも目立ちます。すぐに若い男が声を掛けてきます。
バタバタと身繕いをしたにしては、妻はしっかりとスーツを着こなしていました。色はおとなしめで軽剽すぎず、かといって重々しすぎず、夜遊びにかまけている息子を迎えにいく母親の装いとしては文句のつけようがありません。ウエストラインのくびれからスカートにかかるヒップラインが美しく、女性らしい丸みを帯びたシルエットは我が妻ながら、ため息ものです。
肩甲骨のあたりまで伸びた髪をひっつめた姿もそうですが、妻のこういった格好を外で見るのは妙に新鮮でした。家庭での淑やかな印象とちがって、家を出ると行動的になるようです。
私のそういった所感など知る由もなく、妻は呼びこみともナンパともしれない男たちの誘いをやり過ごします。シュッと背を伸ばして通り過ぎる後姿は神々しささえ感じてしまいます。
そう言えば妻は学校でも、もてるようなのです。彼女より若く独身の教諭はいるはずですが、どうも事実のようです。
一見冷たく人を寄せつけない美貌の持ち主ですが、心を奪われるおませな学生は後を絶たないそうです。もっとも、半分くらいは女の子だという話ですが……。

妻が立ち止まりました。私は慌てて物陰にかくれます。
バッグを探った妻はなにげなく、周囲を見まわしました。手には携帯電話を持っています。
電話機に向かって、なにかしゃべっています。相手は浩志でしょう。
私は少しでも近くにと陰から足を踏み出しかけ、やめました。
なんと妻が携帯を耳に当てたまま、こちらに戻ってくるではありませんか。
まさか尾行がばれたのか。そんな見当ちがいの心配をする私の側を妻は足早に通り抜けます。
私は急いで後を追いました。



悪夢 その5
ハジ 8/16(水) 18:59:36 No.20060816185936 削除
「友達とカラオケボックスで遊んでいたら、お金が足りなくなって店を出られなくなった」
これが妻から聞いた、浩志の帰宅が遅れた理由です。
私は呆れましたが、放っておくわけにはいきません。割れた茶碗を片づける妻に声をかけました。
「どこのカラオケボックスだ?ちょっと、行ってくる」
「いえ、私が」
秋穂はそう言うと、急ぎ足で部屋を出て行きました。
話の途中で席をはずされて、私が焦れていると、妻は身支度を整えて戻ってきました。
「もう遅い。私が行くよ」
私は夜の一人歩きを心配したのですが、妻は譲りません。
「すぐ、そこですから。それにあなたに行かれると困るんです」
要は私には内緒で迎えに来て欲しいということらしい。普段は秋穂に反抗ばかりしているくせに調子のいいやつです。
妻も息子からの信頼を失いたくないのでしょう。これを機に関係改善を計りたいと考えているのかもしれません。
彼女に心配をかけて申し訳ないと思う反面、独り蚊帳の外のような気分の私は面白くありません。あれやこれやと、妻に注文をつけていました。
妻は逆らわず、うなずいているだけでした。そして夫の気が変わらぬうちにと、いそいそと出かけていったのです。
親父を避ける息子も息子ですが、そのわがまま息子を甘やかす妻も妻です。帰ってきたら、なんと言ってやろうか。私はてぐすねひいて二人を待つつもりでした。



悪夢 その4
ハジ 8/15(火) 21:56:01 No.20060815215601 削除
沈黙に耐え切れず、私が席を立とうとしたとき、
いきなりテーブルの上の携帯電話が鳴り出しました。妻のものです。
私は妻と目を合わせました。秋穂は自分が出たい素振りでしたが、私は目でそれを制しました。
「もしもし」
私の応答に相手は無言でした。しかし着信から浩志なのはあきらかです。
「もしもし」
私は繰り返しました。
すると、電話は舌打ちとともに切れてしまいました。
唖然とする私から、妻は電話を奪い取りました。すぐに着信音が鳴り響きます。
「もしもし、浩志くん?」
秋穂は努めて冷静な声で話しはじめました。
私は妻のそばに近づくと、聞き耳をたてました。息子らしい声がわずかに漏れ聞えてきます。
妻が目配せをしてきました。どうやら大丈夫のようです。
私はため息とともに、椅子に深く座り直ました。浩志が事故に巻き込まれているんじゃないかと、本気で心配していたのです。
安心すると、今度は息子の身勝手さに腹が立ちました。散々心配をかけておいて、私をないがしろにする、あの態度はなんなのでしょう。
私は妻に電話を替わるよう手を差し出しました。
妻は私の剣幕に一瞬驚いた様子で、くるりと背を向けました。そして、二言三言つけ加えると、そのまま電話を切ってしまいました。
私は声を荒げました。
「何故、勝手に切るんだ?」
私の怒りに妻はじっと耐えていました。返ってきた言葉は、ずいぶん歯切れの悪いものでした。
「あなたとは話したくない……そうです」
「俺は父親だぞ」
妻の言いように、私はおさまりません。激高してテーブルの上の茶碗を払い落としてしまいました。
妻は悲しそうに目を逸らすだけです。
「後で、言って聞かせますから」
私は複雑でした。血のつながっていない母親が息子をかばうのです。
本来なら実の父親である自分が彼女に謝罪するべきではないのか。そう思うと何も言えなくなりました。



悪夢 その3
ハジ 8/14(月) 18:26:51 No.20060814182651 削除
秋穂が心当たりに連絡を入れています。私はそれを横で眺めているだけです。
いっそのこと、
「放っておけ。そのうち、帰ってくるさ」
そう言い捨てることができたのなら、楽だったでしょう。しかし私は生来の気の弱さから、そこまで腹を据えることはできません。
ただ意味もなく座ったり立ったりを繰り返し、苛立ちを抑えるのが精々でした。

妻と私が同じ中学に勤めていたことは前に話したことと思いますが、現在の私は市内の別の中学で教鞭をとっています。
結婚後、すぐに内示があり異動の運びとなりました。
妻は退職せず、そのまま教職にとどまる意向だったので、私が動くことになったのでしょう。職場環境上、こういうことは間々あることです。
それなりに愛着はあったもので、他校に赴任後も前任校、つまり妻のいる学校のことは気にかけていました。
妻以外にも知己は多く、情報は良いことも悪いことも入ってきます。最近少しずつ学校の中が荒れてきたと、元同僚は嘆いていました。
息子が悪い連中と付き合っていなければいいが。
そう思うのは聖職者としてあるまじき行為なのでしょうが、それは偽ざる本音です。私だって、教師である前に人の親なのですから。

「浩志は携帯を持っているんだろう。つながらないのか。メールはどうだ?」
私は言ってしまってから後悔しました。妻ならとっくにそんなことは確認済みでしょう。
妻はゆっくりと首を横に振ってから、私の向かいに腰かけました。
妻の目に夫の姿は映っていないにちがいありません。彼女にとって、私は悩みを共有できる存在ではないようです。
手を尽くしたのか、妻はそのまま頭を抱えてしまいます。その仕草を私は不思議な想いでみつめました。
心労のせいか幾分顔が青ざめた感じなのですが、そのことが返って妻を妖艶にみせることに気づいたのです。
こんなときに何を不謹慎な。そう謗られても仕方ありませんが、これほど緊迫した表情を妻が見せるのもまた、はじめてのことでした。

私たちが無言で、向かい合っているうちに時間は十時を過ぎました。



悪夢 その2
ハジ 8/14(月) 00:56:31 No.20060814005631 削除
秋穂はなにか言いたげに私を見ていましたが、口を開くことはありません。
よくできた女なのです。どんなときも私を立てることを忘れません。
私はもう少し妻を問い質したい気分でしたが、やめました。妻に男の度量を試されているように感じたからです。
私たちはいつもこうなのです。お互いに節度を守って接するようにしているため、大きな喧嘩はしたことがありません。しかし、それは幸福なことでしょうか。
私たちの関係は例えるのなら情愛の通った男女というよりは、同じ志を持った同居人という言い方が正しいかと思います。夫婦間に愛情がないと言っているわけではありません。しかし、その形は歪です。あくまで息子の浩志を軸とした関係なのです。
秋穂は若く魅力的な女性です。もちろんベッドを共にし、そのしなやかな肢体を堪能することはできます。しかし私はともかく、彼女のほうから積極的に性に溺れる気配はありません。
やはり息子の目を考えるとそういう気分にはなれないのでしょう。また、どちらかというと私たち自身も互いを教育者としてみています。相手の立場を尊重するあまり壁のようなものをつくってしまい、必要以上に打ち解けることが難しいのかもしれません。
私にも何度か、その垣根を踏み越えようとしたことはあります。だが妻のやんわりとした拒絶にあって、すごすごと引き下がりました。私の思慕が一方的すぎるのは薄々気づいていました。
それでも強引に迫れば、あるいは妻はそれを受け入れたかもしれません。しかし、その瞳に失望の色が浮かぶことはわかっていました。それが私には耐えられません。
理解のある夫。結局そう呼ばれることで納得しようとしました。今の私にはそれが最後の拠り所でもあります。
こうして妻に対して私はいつからか、卑屈な想いを隠して暮らすようになったのです。

私はこんなときだというのに、手持ち無沙汰でした。何をしていいのかわからないのです。
恥ずかしながら中学二年になる息子とは、最近まともな会話を交わしていません。私が話しかけても煙たがるだけです。
妻が息子の通っている学校の教諭なので、目が届くだろうと任せきりにしていたこともあります。あからさまに私を避ける息子に、これまで無理をして関わろうとはしませんでした。妻を責める資格などないことは私自身が一番わかっていることです。
しかし、概して心の弱いものほど、追い詰められたときは攻撃的になる。その見本が私でした。



悪夢 その1
ハジ 8/12(土) 23:13:56 No.20060812231356 削除
息子の浩志が帰ってこない。
妻がそう言って落ち着かなくなったのは、午後九時頃でした。
「部活じゃないのか」
私の問いを憂いを帯びた妻の横顔は、はっきりと否定しました。
「最近は顔を出さなくなったそうです。顧問の先生からも……」
最後の方は普段の妻からは考えにくい、消え入りそうな声でした。

妻の秋穂は三十一歳。思慮深く、怜悧な女性です。
私と歳が離れているのは、彼女とは二度目の結婚だからです。中学二年生になる息子は先妻の子で、当然彼女とは血はつながっていません。
形としては職場結婚になるのでしょうか。秋穂も私も同じ中学校に勤めていました。
意外に思われるかもしれませんが、求婚をしてきたのは彼女のほうでした。妻は容姿も美しく、同僚や学生時代の友人からもずいぶん熱烈なアプローチを受けていたようです。
コブつきで、しかも風采の上がらない私とあんな美人が何故?当時の周囲の反応は概ねそんな感じでした。

「何故もっと早く相談してくれなかったんだ」
私は責める口調になっていました。浩志が部活をさぼっているのは初耳だったのです。
妻は伏せ目がちに黙っています。
自分の責任は放棄しておいて、その言い草はなんだと思われるかもしれません。でも私が怒るのには理由があるのです。
両親が教員の子供は難しいのです。親はつい、よその子(生徒)にばかり目がいってしまい、自分の子から目を離しがちです。
また聖職者というレッテルを貼られた教師は世間からなにかと注目を浴びますが、悪いことにその緊張は子供にも伝わってしまうのです。そのせいで極端に萎縮してしまったり、逆に反発から粗暴な行動を取ったりする、心のコントロールを失った子を何人もみてきました。
もちろん全ての家庭がそうだということではないのですが、私たちは十分気をつけてきたつもりです。亡くなった方の妻もやはり教員だったからです。

先妻が健在であった頃、その友人だった秋穂はよく家に遊びに来ていました。そのときの息子は秋穂に「お姉ちゃん、お姉ちゃん」となついていたのを憶えています。
しかし母親が死に、私たちの結婚を機に息子は変わっていきました。私には冷ややかな目を向けるようになりましたし、新しい母親に対する態度は反抗的です。
小学校五年という多感な時期に秋穂を妻に迎えたのは、誤りだったのかもしれません。
そのことは秋穂ともずいぶんと相談したのですが、彼女には聞き入れてもらえませんでした。死に際に先妻から、「浩志のことを頼む」と後を託すようなことを言われたそうです。それもあって、形はともかく息子のそばにいてあげたいと彼女は頑なでした。
秋穂は将来のある身でしたし、何より私たちは教師です。例え事情を知っていたとしても、若い女性が男の家に通うのは好ましくありません。
そんなわけで、私は秋穂と籍を入れることにしたのです。





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立場35
Retaliation 8/11(金) 03:32:43 No.20060811033243 削除
トイレから戻った私に佐々木はこう言いました。

佐々木「俺にこんな事を言う資格はないが、もう一度だけ洋子ちゃんを信じてみたらどうだ?勿論お前が離婚という選択をするのならそれは仕方が無い、でももう一度だけ、もう一度だけ信じてみないか?」

私「もう一度だけ・・・か」

佐々木「あぁ、もう一度だ」

私「でも、どうしてそこまでお前が心配してくれるんだ?」

佐々木「・・・実はさ、俺、洋子ちゃんの事が好きだったんだよ。なんつうか憧れっていうか、あっ勿論今までに手を出そうとした事もないし、あんな風に口説いたのもお前に頼まれたからだぞ。それに今は真紀がいる。でもお前には悪いけど『口説けたらいいな』と思ってたのも事実だ。でも実際口説いてみてわかったんだ。あぁ洋子ちゃんはお前の事がってな、最初にお前から洋子ちゃんが不倫してたって聞いた時はビックリしたよ。あの洋子ちゃんが?って、でもさ人間一度ぐらいは間違いがあると思うんだ。勿論そんな間違いを犯さない人間もいるし、犯す人間は愚かだ。だけど一度目なら信じてみる価値はあると思う。」

私が黙っていると佐々木の恋人の真紀さんが話し出しました。

真紀「私がこんな事を言える立場じゃないんですが、一言だけ言わせて下さい。奥さんは馬鹿だったんです。自分がした事が○○さんをどれだけ傷つける事かわかっていなかったんです。だから○○さんがショックを受ける姿を見て初めて気がついたんだと思います。自分のした事がどれだけ愚かな事で、どれだけ人を傷つける事かと今回の事でわかったはずです。だからこそもう二度とこんな愚かな事はしないと思うんです。だからもう一度だけ信じてあげてくれませんか?」

今の私はこの二人が嘘を言っているとは思えませんでした。また妻に同情してではなく、本音で「もう一度」と私に言ってるように聞こえます。勿論二人が本音を言ってるという確証はありません。しかしこの二人の目を見ていると嘘とは思えないのです。

私「スマン、先に謝らなければならない、実はここに来るまでお前の事を完全に信用していなかった。先日は『口説けるなら口説いてもいいぞ』なんて偉そうに言っていたが、いざ当日になると気になって仕方がなかった。最低だ。本当に悪かった」

そう私が言うと佐々木から意外な言葉が返ってきました。

佐々木「やっぱりな、そう思ってたよ。口ではあぁ言ってたが、お前は洋子ちゃんの事が気になってるって、別に謝らなくていいよ。もし俺が逆の立場でもそうだったと思うから。なっ真紀を呼んだのは正解だったろ?」

私「あぁ、こういう事にかけてはお前が何枚も上手だよ。もう一度洋子の・・・」

佐々木「あぁちょっと待った。それは今は言わなくていいよ。じっくり考えてから答えは出せばいい。まぁ今夜は飲めよ。勿論お前の奢りなっ」

そう言うと佐々木も真紀さんもこの話の事はしなくなり、結局3人で飲み明かしました。二人と別れ帰宅するまでに私は妻との今後の関係の答えを出していました。



 プライド
高田 8/10(木) 23:01:16 No.20060810230116 削除
妻と男を追い詰める証拠はもう揃っている。私がこれ以上この痴態を聞いている必要はないのだが、パソコンを閉じれずに聞いてしまっている。しかし、理性と感情の狭間に迷い込み、私は席を立てない。
その間にも、二人の行為の音が聞こえて来る。
「ねぇ、膝の裏って感じるでしょう?あぁ、黒いストッキングの足か。素敵だなぁ」
妻の足に舌を這わせているのだろう。
「ええ、気持ち良いわよ、とても。それより貴方はまだ我慢出来るの?そろそろ限界じゃない?」
「うん。一生懸命我慢しているよ。へへへ・・・若いから何度でも出るけど、やっぱり最初が一番気持ち良いから」
「あら、中々言うじゃないの。頑張ってね」
あの行為の卑猥な音が続く。
「本当に頑張るわね。何時もならもう降参しているのに。如何したのかしら?」
「何時もの僕と違うって?いや、今日が本当の僕かな、へへへ。貴女は感じない?」
「フフフフ、ちゃんと感じてるわ。でもさっさと出してしまいなさいな」
「それは出さないけど、本気を出すかな。きっとビックリすると思うぜ」
「フフフフフ」妻はあしらう様に笑うだけで、それに答えず男を口に咥えて離さない様だ。
妻との行為に、会話が多くなってしまうのは、私だけではない様だ。この会話で相手を翻弄し、彼女も昂ぶって
行くのが性癖なのだ。それでいてS・Mプレーは好まない。変わった性格をしてるよ、全く。
「じゃあ、行くぜ」男の声と同時に、突然激しくベッドの軋む音が聞こえた。
「アッ、こら乱暴は嫌よ」
「任せなさいって。変な事はしないから」
「もぅ・・・我慢出来なかったんでしょう?ずるいんだから。まぁいいわ。何処まで出来るか試して上げるわ」
こんな時の妻は、本当にサデスティクな態度を取る。相変わらず何時も通りにペースを握っている。
「ねぇ、もう何回寝ただろうか?覚えている?僕はその間じっくり研究してた。貴女の弱点をね。これから試してみるから。きっと凄く感じるよ」
「どうぞ、お好きな様に。フフフフ・・泣かせるもんなら泣かせてみて。楽しみだわ。さぁやってみなさい」
妻の女王様の闘志に火を点けてしまったな。
「余裕だね。それじゃあ此処は如何かな?効くだろう?」
「ウフフフ・・・そうね、悪くはないわ。でもそんなの何度も経験ずみよ。そんなに驚かないわ」
「ああ、分かっているさ。でもね、此処も一緒にこうしたら如何?」
何処を如何しているのだろうか?それにしても、勝手な事をしやがって。しばし二人の沈黙が続く。
「・・・・ハァーハァーウッ」妻が始めて反応を示した。
「ほ〜ら来た。感じるだろう?我慢しなくても良いから」
「・・・生意気な事言わないの。ハァー、その程度じゃまだまだまだよ。・・・ウッ」
「だから我慢するなって」この男成りに、必死で抵抗しているのだろうな。男は女を征服する喜びを感じたいものだから。私が妻とセックスが疎遠に成ったのも、そこに原因がある。
「我慢なんてしていないわよ。・・・ハァーハァーアン」確かに妻の息遣いが荒く成って来た。
「ほら感じてる。ここも責めちゃおっと」
「・・女ですもの、全く感じないなんて事はないわ。でも、その位で私が泣くと思うの。甘いわね。貴方とは経験値が違うのよ・・・」
あいつらしい言いぐさだ。
「何時までそんな強がり言ってられるかな?これからが本場さ」
ベッドが軋んでいる。妻は何をされいるのだろうか?
「ちょっと待って。一方的にじゃ卑怯よ。私にも愛させて」
「堪えきれなく成って来たんだろう?本当に負けず嫌いなんだから」
「・・・そんな事ないわよ。まだ余裕。私は責められるの好きじゃないの」
「へへへへ、そんな事言わずにもう少しさせてよ。でもさ、本当の快感って知らないんじゃないの?」
「ウッ、そうかしら。でも結構上手いじゃ・・アッ・ないの。いい感じよ・・私も・アン・・こうしてあげる」
妻も男に反撃する様だ。何をしているのか、ガサガサ音がする。流石に男が呻き声を上げている。
「気持ちいいー。最高だよ。こんな事普通出来ねぇよ。僕は本当に幸せだ」
この餓鬼、本当に苛立たせる奴だ。
「フフフフ・・・もう駄目かしら?早く認めたら?」
「出したら飲んでくれる?」
「それは嫌よ。夫のだって飲んだ事ないのに」
「それじゃあ、まだ出さない。だけど今日は飲んでもらうよ」
「絶対に嫌よ。でもその気にさせられるなら話は別よ。フフフ」
また妻の男を吸い尽くす様な卑猥な音が聞こえる。
何だか訳の分からない駆け引きを演じている様だが、こんな馬鹿らしい破廉恥な会話を聞いていても、私はパソコンを閉じる事が出来ない。



プライド
高田 8/8(火) 23:00:40 No.20060808230040 削除
(此処からのナンバーの無い部分に関しては、私のトラウマに成っている部分なだけで、趣味に合わない方はスルーする事を、お勧め致します。スルーされても、今後の話が分からなく成らない様に書き込みさせて頂きます)

画面がないのがせめてもの救いか。妻達が入ってから探偵も直ぐに部屋を取ったのだろう。行為はまだ始まっていない様だ。
「この頃呼び出しが多過ぎるわよ」妻の声が聞こえて来た。
「だって逢いたいんだもの。何度を言うなよ。何かあった訳じゃないんだろう?」
「別に何もないけど、夫がこのところうるさいのよ。気付いてはいないと思うんだけど。気に成るの。少し怖いわ」
「ばれたら、ばれたで良いじゃないか。僕が責任を持つよ」
何を格好付けて嫌がる。ボコボコにしてやろうか。
「嫌よ。あの人と別れるつもりはないもの。それに、その気もないくせに、よく言うわ」
別れるつもりがないのなら、初めからこんな事はするな。思わず拳に力が入る。
「シャワーを浴びて来るわ」
「そのままで良いよ。僕はそのままの貴女が好きなんだから」
男に抱きすくめられたのか、布が擦れ合う音が聞こえる。服もまだ脱いでいないらしい。
「駄目よ。今日一日仕事して汗臭いわ。私が気持ち悪いのよ」
「しょうがないな。その代わり、シャワーの後もちゃんとストッキングを穿いてくれるね」
「もう変態なんだから。フフフ、良いわよ。何時もの通りにして上げるわ」
あいつ、ストッキングを履き替えたのはそんな事の為だったのか。何と破廉恥なのか。アダルトビデオじゃあるまいに。男だけではではなく、そんな相手の趣味に合せる妻も充分に変態である。
それでも私が要求した事もない姿を男の前で晒す妻に、嫉妬心めいたものを感じずにいられない。
妻がバスルームに入った様でしばしの静寂が訪れた。ここ迄証拠が揃っていれば、もうこれ以上聞かなくても良いものだが、パソコンの前から離れる事が出来ないのである。
「貴方も入ってきたら。汗臭いのは嫌よ。ちゃんと穿いておくから。」
妻がシャワーを浴び終わった様だ。
「うん。期待してる。入って来るよ」
静かな中に、妻がストッキングを穿いている音がかすかに聞こえる。男の趣味に合せる妻。何を考えているのか。
不倫では普通出来ない事も平気で出来ると聞くが、本当の様だ。あいつ、こんな事をしている位だ、ばれなければ当分この関係を断ち切る事等出来まい。しかし、それも今日迄だ。覚悟して於け!
男は声からして若い。写真の印象よりも若いのかもしれない。この分じゃ妻のテクニックにぞっこんなのだろう。
あいつに掛かっては一溜りもないはずだ。あいつも、それに魅力を感じているのかもしれない。
男が程なく出て来た。これではカラスの行水だ。若い分、もう我慢出来ないのだろうな。
「如何?色っぽい?貴方の好きな黒いストッキングよ。ちゃんと穿いて上げたわ」
「何時見ても色っぽいね。凄く似合ってる。黒いストッキングにガーターベルト、そんな格好の女の人を抱けるなんて、僕は本当に幸せ者だ。それだけで興奮しちゃう」
「こんな格好、結構恥ずかしいのよ。」
「じゃあ、嫌なのかい。」
「そんな事ないけど。貴方が喜んでくれるなら・・・でも絶対に他の人には言えないわ。夫にばれたら離婚ものよ。そんな事に成ったら如何しようかしら。」
一応は俺に気を使っているのか。だけどもう遅いな。知ってしまったんだよ。馬鹿野郎!
「だから、責任を持つよ。だけどさ、僕の気持ちを知ってて、こんな時にそんな話は止めて欲しいな」
「そうね。・・・分かった。御免なさい。気を付けるわ。ちょっと無神経だったかしら。許してね。でも、貴方の前だけなら、どんな格好でもして上げる。興奮させて上げるから」
謝る相手が違うだろう。それにどんな格好でもするとは何事なのか。
出来るものなら飛び込んで行き、二人を殴りつけたい衝動に駆られるが、残念ながら如何しようもない。
「嬉しいな。それと旦那とは、セックスしていないだろうね。しないって約束したんだから」
「ええ、していないわ。と言うか、あの人もう私の事女として見ていないかもね。少し寂しいけど・・・でも誘われても断るでしょうけどね。貴方との約束はちゃんと守るから心配しないの」
「うん、信じるよ。それにしても、こんなに綺麗な人を女と思っていないなんて。もったいないな本当に」
「口が上手いんだから。ウフフフ」満更でもない様である。幾つに成っても誉められるのは嬉しいものか。
当り前の事だな。そう言えば、あいつに何年も甘い言葉すら掛けていなっかた。
会話が止み、キスをしているだろう音が聞こえる。如何やら1ラウンド目の開始のようである。
ホテルに男と女が入ったのだから、こう成るのを理解していても、当然ながら何とも言えない気持ちである。
しかし、これは録音されたもの。如何する事も出来ない現実にイライラがピークに達しそうだ。
取り敢えずは、妻がこの若造を、あのテクニックで料理するところを聞いているしかない。焦りばかりが募る。

「タップリ苛めてあげるわ。覚悟しなさい。今日は私のテク全開で天国に連れて行って上げるわ」
あいつが命令誇張で挑発し始めた。何時もこうやって主導権を握る。その後の男は体裁が取れなく成る程翻弄されてしまう。私も風俗に言った事がないとは言わない。それはプロのテクニックを認めるが、私的には
妻の方に迫力を感じる。精神的に安心出来る夫婦間でのセックスだからなのだが、それ以上に、妻の性技もプロに負けないものがあるのだと思う。妻は女の喜びに何故か淡白で、全くと言っていい程それを求めない。それよりも、相手を甚振る事に精神的な昂ぶりを感じ、それがこの上ない快感に思う様なのである。
今迄は、成るべくどんな風にテクニックを仕込まれたのか、如何してそんな一方的なセックスが好きなのか、余計な事は聞かない様にしていたが、今度は突っ込んで聞いてみよう。
「お願いします。期待してますよ。ただでさえ凄いのに、全て出されたら僕ちゃん如何なってしまうんでしょう?」
男がふざけた調子で答えた。
何処を如何しているのかは分からないが、何かを舐めている様な卑猥な音が聞こえる。妻の攻撃が始まったのだろう。
「あーぁ、たまらないね。何時もながら凄いテクニックだ。もう少しで出しで出しそうだ。本当に風俗にいた事ないの?」
「バーカ。ある訳ないでしょ。普通の主婦よ。フフフ・・・いいのよ、出したって。こんなのは如何?感じる?」
「凄くイイけど、まだまだ出さないよ。もったいないもの」
何を偉そうに。お前みたいな若造があいつに太刀打ち出来る訳がない。
「本当かしら?我慢出来るかしら?フフフフ」余裕タップリに妻が笑う。流石に年上の貫禄がある。
今度はグチュグチュ何処かを舐めリ合う様な音が聞こえて来た。生意気にも一丁前に男も妻に反撃をしているのか?
そんな事を考えている場合じゃないよな。こんな時にも冷静な部分があるのは、余計なプライドが支えていてくれるからなのだろうか?私は他の人は如何なのだろうか?と要らん事を思ったりもしている。
そのうちに男の呻き声が聞こえ出したが、まだ発射はしない。本当に生意気な奴だ。私ならもう一回目の白旗を揚げている頃である。
「如何?まだ出さない気?本当にしぶといんだから。それならテク全開で行くわよ。耐えられるかしら?」
妻の得意技で攻め立てる様だ。これに掛かると恥ずかしい話、私は直ぐに堪らず発射してしまう。
男性自身を吸い尽くす様に絶妙な音がする。
「あぁ・・堪らなくいいよ。僕もお返しして上げるね」生意気な奴だ。
「フフフフ・・・負けないわよ。もう貴方のはちきれそうよ。そろそろ限界じゃなくて?ホホホホ」
そう言って、妻の口が吸い立てる音に迫力が増す。画面は写らないが、あいつの表情迄見える気がする。
「結構来るね。でももう少し大丈夫。でも、このストッキングの感触が堪らないな」
「好きなだけ触りなさい。貴方の好きなストッキング足、興奮するでしょう?」
「もう興奮しまくり。僕もそろそろサービスするよ」
聞き耳を立てると、妻の立てる音とは違う音が聞こえる。
「貴女のここは凄く綺麗だ。グチュ・・グチュ・・グチュ」
「恥ずかしい事言わないの。ほら、もう我慢出来ないでしょう?タマタマもこうして上げるわ」
「上手いね。主婦の技とは思えない。それじゃクリの皮を剥いちゃおう」
クリの皮を剥くって?何をしやがる。殺してやろうか。
妻に執拗に愛撫をしているのが、まるで見えるかの様に聞こえる。
「上手いわよ。感じちゃうわ。でも私はその位じゃ参らないのよ。分かっているでしょう」
妻の本領発揮だな。若造、下手な抵抗はするな。そんな事を思う自分が我に返る。冷静を保とうとしても二人の奏でる卑猥な音に飲み込まれて行ってしまいそうに成っている。
「そうだよね。。へへへ、今日も遣られちゃうのかな。」
「そうよ、貴方は私に任せて於けばいい気持ちに成れるの。無駄な抵抗は止める事ね。」
相手を支配するセックスに昂ぶりを感じるサドな妻には、こんな若者が彼女の欲求を満たすのに丁度都合が良いのかもしれない。このところ、ろくに相手もしない私に欲求不満を感じていたのだろう。
だからと言って、こんな事を許せる程、達観出来る年には成っていないのである。それにしてもこの二人、経験に差があり過ぎる様だ。
「アァ、出そうだよ。」
「出しなさいな。何頑張っているのよ。私に太刀打ち仕様なんて考えない方が身のためよ」
完全に妻のペースで行為が進められている。男なんてこんなものか。
幾ら見栄を張っても、凄い女には適わないのかもな。しかし、他の男と身体を合せる妻に、妙な色気と魅力を感じてしまう。妙な気分だ。
マンネリとは人間にとって、危険なものなのかもしれない。私さえ妻を一人の女と扱っていたなら、こんな事には成らなかったのかも・・・
「あのさ、これ迄貴女のしたい様にされていたけど、僕のしたい事もして良いかな?」
「したい事って何よ?変態行為意外なら好きにしても良いのよ。痛いのは嫌だからね。まさか、私に太刀打ちする気?」
ベッドの上では、完全に女王様だな。
「思っているさ。僕も一応男だからね。女の人に遣られっぱなしじゃ様に成らないもの。だから今日は僕も本気を出すよ。覚悟して於いて」
「あら、大した自信ね。お好きな様に。受けて立って上げるわよ、坊や。フフフフ・・・・・期待してるわ。」
自信たっぷりに挑発している。妻のサド的な自尊心がそう言わせるのだろう。若造に勝ち目はないと思う。
「まあ、頑張ってみるさ。」この若造も一応男か。
「フフフフ・・・頑張ってね、坊や」また女王様が挑発している。



立場34
Retaliation 8/2(水) 03:42:52 No.20060802034252 削除
仕事は残業もなく定時に終わりました。携帯を見ると新着メールが届いています。送信者は「佐々木」そこには「○×にある△□って名前のBarに来てくれ」そう書かれています。「わかった」とだけ書き込み返信をします。会社からそのBarまではタクシーで20分程で到着しました。そこにあったのはお洒落なBarでした。佐々木の事です。いつも女性を口説く時に使っているのでしょう。

店内に入り辺りを見回すと佐々木はカウンターに座っていました。私に気付くと「こっちだ」と手を上げました。

私「待たせたな」
佐々木「いや、俺も今来たところだよ。ビールでいいか?」
私「あぁ頼む」

軽く酒を飲み雑談を交わした後にいよいよ本題に入りました。

私「で、どうだったんだ?気にせず言ってくれ。嘘だけは付かないでくれよ」

流石にこの時はドキドキとしながら佐々木の口が開くのを待ちました。残ってる酒を一気に飲み干し佐々木は口を開きました。

佐々木「結果は・・・何もなかったよ」
私「・・・」
佐々木「信じてないのか?本当に洋子ちゃんとは何もなかったよ。つうか何も出来なかったってのが本音かな」
私「本当に?何もなかったのか?」
佐々木「あぁ口説けなかったよ。お前、俺が手を抜いたと思ってるのか?俺は本気で口説いたよ。でも無理だった」
私「そうか・・・」
佐々木「あっ!やっぱり信じてないだろ?」
私「いや、そんな事は・・・」
佐々木「いやいや、顔を見ればわかるよ。じゃちょっと待って」

そう言うと佐々木はちょうど私達が座っている、カウンターの後ろのテーブルに座っていた女性に声をかけました。その声をかけられた女性はこちらに近づき、私に会釈し佐々木の隣に座りました。その様子を見て訳が判らない顔をしている私に佐々木は苦笑しながら説明しだしました。

佐々木「あっコイツは真紀、こんな紹介の仕方もあれだけど、今さ俺達付き合ってるんだ」
真紀「初めまして、真紀です」
私「あぁどうも、○○です」

ますます訳が判らない私の戸惑いの表情を見て佐々木が説明しだしました。

佐々木「ほら、俺もさこんな事を頼まれたの初めてでさ、まぁこの頼みはお前からの事だし、断るつもりはなかったんだけど、洋子ちゃんを口説けなかったとしてもお前が素直に俺の言った事を信じてくれるかなって思ったんだよ。そこでもう一人、それも女性の方が良いんじゃないかって思ってコイツを呼んだんだ。あぁ気にするなよ。付き合ってるって言っても、そんな将来を誓い合ったみたいな堅い関係じゃないから」

真紀「そうなの?私は結構考えたりしてるんだけどなぁ」

佐々木「いや、そんな。今はちょっと・・・」

私「スイマセン、アナタまで巻き込んでしまって、知っていればこんな事は・・・」

真紀「いえいえ、そんなに気にしないで下さい。私も少し面白そうって思っちゃったから、そうそう今○○さんが座ってる席に奥さんが座ってたんですよ。でこの人は今の席、そして私はさっきまでいたあそこのテーブルに、だからこの人が奥さんを口説いてる声は全部聞こえてたんですよ。私が言うのも変な感じですけど、この人かなり本気で口説いてましたよ。私も途中で少し嫉妬しちゃいそうになりましたから」

佐々木「なっ?ちゃんと真剣に口説いただろ?でもそれでも洋子ちゃんは堕ちなかったよ。最初にさお前が浮気してるかもって言ったんだよ。そしたら洋子ちゃんさ『なんだその事か』って苦笑したんだよ。で俺に『もしかして話したいことってその事だったの?』って聞いてきたんだ。俺がそうだよって言うと、洋子ちゃんさ『その事ならいいの、私が悪いから』って言うんだよ。しかもどうして?って聞いても『いいの、私が悪いから』しか言わないんだよ。まさかそんな答えが返ってくるとは思わなかったから、ちょっと拍子抜けしたけど頑張ってあの手この手でやってみたんだぜ?でも全部軽く流されたよ。ありゃどんな男が相手でも落ちないな。お前に相当惚れてるよ」

真紀「女の私から見ても奥さんは○○さんの事を本当に愛していると思いますよ」

そこまで話を聞くと私はトイレに行きました。



よき妻 26
BJ 8/2(水) 01:13:04 No.20060802011304 削除
「俺は昨夜の瑞希を見ていて、すごく哀しかった」
「・・・・・・・・」
「自分で最初に裏切っておいて何を言うかと思うかもしれないが、そうだったんだ。赤嶺の言うとおり、俺は瑞希のことを自分の思い通りになる女だと傲慢に思っていたのかもしれない。いや、そう思っていなければ、今度のことなんて初めから計画しないだろう。それでいて赤嶺に奪われる瑞希を見て、とても辛かった。口惜しくてしょうがなかった」
「・・・・・・・・」
「でも・・・赤嶺に抱かれて、ありのままの姿を剥きだしにしている瑞希を見て、俺は切なく思うと同時に、凄く興奮したんだ。それまで俺の知らなかった瑞希は、こんなにも蟲惑的だったのかと思った。さっき瑞希は自分という女が分からない、と言ったが、俺だって自分のことなんて分からない。瑞希を心の底から愛しているのに、他人に抱かせようとする自分。そして実際にその場面を目の当たりにしてたまらなく苦しいのに、興奮してしまう自分。俺はそんな矛盾に満ちた存在なんだ。こんな言い方は卑怯かもしれないが、個人差はあれど、人間なんて皆そういったものかもしれないとも思うよ。でもたいていの人間は、内面に抱え込んだ矛盾をあからさまにしてしまうと自分や周囲の人間を壊してしまうかもしれないと分かっているから、強いきっかけでもないかぎり、自分自身で定めた境界線から決して出ようとはしないだけだ」
「その境界線から出てしまった人間はどうなるんでしょうか」
妻はぽつりと呟くように言いました。

「私たちは・・・これからどうなるんでしょうか」

それは妻にとっても、私にとっても胸をえぐられるような問いかけでした。
「・・・分からない」
最後まで卑怯な私はそんな言葉を返すことしか出来ませんでしたが、そのかわりに震えている妻の肩を強く抱き寄せました。ありったけの想いをこめて。
妻の嗚咽を胸で聞きながら、私は窓越しに移り変わっていく外の景色を見つめます。

季節は夏。
私たちを乗せた電車は美しい緑の山々の間を縫うように、ゆっくりと走っていきました。



よき妻 25
BJ 8/1(火) 23:19:15 No.20060801231915 削除
「翌朝になって赤嶺さんが『パートナー交換』を提案したとき、私は彼の意図を察しました。そのときの私はもう決心を固めていて、赤嶺さんの提案に賛成しました。あなたの見ていないところで、彼に抱かれる決心です」
「・・・・・・」
「私が赤嶺さんの提案に賛成したことにあなたは驚いているのを見て、私はいい気味だと思いました。私だってあなたに逆らえるのだと思い知らすことが出来たと思ったのです。けれど、いざ赤嶺さんと街へ出て、ホテルへと入ろうとしたとき、私の足は停まってしまったんです」
妻は私の瞳をまっすぐ見つめました。
「結局、私たちは似たもの夫婦なのかもしれませんね。互いに相手を裏切ろうとしても、いざそのときになると怖くなってしまう臆病者。それが私たちなのかもしれません」
「・・・そうだな」
私は目を伏せて、妻の言葉に同意しました。
「赤嶺さんはそんな私を見て無理強いしようとはしませんでしたが、私は意気地のない女と思われただろうと恥ずかしく思い、また彼に申し訳ないことをしたと思いました。私たちはしばらく高山市を観光した後、宿へ戻りました。しばらくしてあなたと明子さんが戻ってきました。ずいぶん遅かったので、私たちのようにどこかのホテルに行ってきたのかと思い、あなたへの嫉妬や哀しみ、怒りでいっぱいになりました」
あのとき私は妻と赤嶺を見て、ふたりの昼間の情事を妄想したものですが、妻も同じように考えていたのでした。
「夜になって、明子さんが急に裸になり、あなたへ抱きつくのを見て、これが作戦なのだと分かってはいても、私の苛立ちは募りました。あなたが憎くて憎くてたまらなかった。―――だから私は赤嶺さんの誘いにのって、明子さんと同じように服を脱ぎました。でも・・」
妻はそこで少し言葉を切り、ためらう素振りを見せました。なんと言葉を続けたらいいのか、迷っているようでした。
「・・・あなたの目の前で服を脱いで、赤嶺さんや明子さんに裸を晒そうとしたとき、たしかに私の心には復讐の心がありました。でもいざ脱いだそのときは、なんというか・・もうそれどころではなかったんです。恥ずかしくて、気が変になりそうで、・・・でもいやな気持ちじゃなかったんです。うまく口では言えませんが・・・」
「・・・・・・・」
「そうこうしているうちに、あなたと明子さんは私の目の前で、、、、、、、でもそれを見ている私はさっきまでの嫉妬一辺倒の気持ちではありませんでした。しばらくして赤嶺さんに身体を触られたとき、私は・・・・すごく感じました」
「・・・・・・・」
「私は自分という女が分かりません。恥ずかしい思いをすることが何よりもいやだったはずなのに、そのとき私は昂ぶってしまっていたんです。あなたの目の前で違う男性に身体を触られている・・・そのことがすごく・・・・。私の前で明子さんと戯れているあなたを淫らだと思いましたが、同じように、それ以上に自分のことを淫らだと思いました。恥ずかしいことが何より嫌い、他人に恥ずかしいところを見せるくらいなら死んだほうがましという普段の私がどこかへ消えてしまって・・・そしてそのことが凄く快感だったんです。いつも鬱陶しく思っていた自分の殻から抜け出られたように思ったのでしょうか。あなたの目の前で赤嶺さんにいいように弄ばれて感じてしまう淫らな自分が、崩れていく自分がなぜか愛しかったんです」
そう語る妻は今まで見たこともない凄艶な顔で、私は思わず息を呑みました。
「次第に崩れていくなかで、私はもうこのまま赤嶺さんに抱かれてもいいと思いました。『目の前を見てごらん。彼だって明子としているじゃないか』そんな赤嶺さんの誘いに私はいつしかうなずいていました。赤嶺さんは私に言い訳を用意してくれただけなんです。誰よりも求めていたのは、淫らだったのは私なんです」
「・・・・・・・」
「でもそのうちにあなたと目が合ってしまい・・・・私は束の間、普段の自分を思い出しました。ここで一歩踏み出せば、もう後戻りは出来ないのだと私はようやく我に返って、赤嶺さんを拒もうとしました・・・。けれど、すぐに自分を抑えられなりました。もうどうなってもいい、この渇きがおさまるのならば、気持ちよくなれるならば、後のことはどうなってもいい・・・そんなふうに思ってしまいました。流されてしまいました。これではあなたを責める資格なんてありませんね。私は本当に淫らな女です」
妻はそっと目を伏せました。
「私はあなたの目の前で、赤嶺さんと交わりました。最初はやっぱり死にたいほど恥ずかしかった。でもすぐに気持ちよくなって・・・。あなたに見られながら、いえ、見られていることに私はどうしようもなく昂ぶりはじめました。恥知らずな自分をあなたの目に晒している、そのことが異常なまでの興奮を誘いました」
「・・・・・・・・」
「その後はあなたも知ってのとおりです。あなた、赤嶺さん、そして明子さんにまで愛されて、私は数えきれないくらい達しました。あなたに見せつけるように淫奔な姿勢をとったり、破廉恥な言葉を言いながら昂ぶって、昂ぶって、このまま死んでもいいと思ったくらいでした」
「・・・・・・・・」
「朝起きて、赤嶺さんに浴場へ連れて行かれたときも、私の中には淫らな火がまだ消えずに残っていて、赤嶺さんにせがんでその場で抱いてもらいました。本当にどうしようもない女です。いくら謝っても足りないでしょうけど、せめて言わせてください。ごめんなさい、本当に申し訳ないことをしました」
妻はそこまで言って、言葉を切りました。
しばしの沈黙の中に、電車の路面を走る音だけが聞こえます。
次に語りだしたのは私でした。



よき妻 24
BJ 8/1(火) 23:17:16 No.20060801231716 削除
目が覚めたらもう昼近くでした。
「あなた、起きないと。もうすぐチェックアウトの時間ですよ」
瞳を開けると、妻がいました。いつものように端整に服を着こなし、顔にもやつれや疲れのようなものは見えません。
私はその顔をじっと見つめていましたが、口から出てきたのは次のような間抜けな言葉でした。
「・・・朝飯はどうした?」
「キャンセルしました。赤嶺さんたちは仕事の用事があるらしく、朝も早いうちにお立ちになりましたし、あなたはお疲れのようだったから」
どことなく強張った口調でしたが、妻は私がじっとその顔を見つめていても、いつものように瞳を逸らすことはありませんでした。
それにしても赤嶺たちはどうして去ったのでしょうか。仕事の用事があるなんて聞いていません。普通の男女なら朝になって私たち夫婦と顔を合わすのが気恥ずかしかったという説明も成り立ちそうですが、あいにく赤嶺と明子は普通の男女ではありません。
とりあえず私は起き上がりました。
昨夜は衣服やら何やらで、あれほど散らかっていた部屋が今はもうきちんと片付いています。てきぱきと布団を畳み、帰り支度を整えている妻を見つめながら、私はぼんやりとした面持ちで歯を磨きました。

宿を出ると外は晴れ渡っていました。夏の休暇も明日で終わりです。
私たちは小さな駅前の喫茶店で朝食をとると、高山行きの電車に乗り込みました。電車はとても空いていて、客は私たちのほかにニ、三人しかいません。
目の覚めるような飛騨の緑深い山々を窓越しに眺めながら、私は頬杖をついていました。こうして陽光の下で広がる山々を見ていると、昨夜までの宿屋での出来事がまるで夢のように感じられますが、それが夢でないことは私と妻の間に流れているぎこちない空気が証明していました。
「あの、、、、、」
小さな声で妻が言いました。
「ごめんなさい、、、その、、、昨日は」
「・・・謝る必要があるのは俺だよ」
私は言いました。
「瑞希が謝ることは何もない。今度のことは全部、俺のせいなんだ。俺が・・・最初から仕組んだことなんだ」
私は何もかも告白してしまいたい気持ちでいっぱいでした。それがたとえどのような結果になっても。いや、結果などすでに出てしまっているのかもしれない。そのときの私はそう思っていたのですが―――、
「・・・知っています」
妻の返答は驚くべきものでした。
「・・・どうして?」
「二日目の夜に・・・あなたと明子さんが浴場へ行った後、赤嶺さんにすべて聞きました。
あなたが・・・私を赤嶺さんに抱かせるために、お二人をこの旅行へ引っ張り込んだことも、すべて」
「・・・赤嶺はどうしてそれを?」
「分かりません。あのひとは・・・最初からそのおつもりで来たのですから当然でしょうけど、あなたたちがお風呂場へ行った後、私を誘ってきました。けれど、私がどうしてもそれに応じないのを見て、その話をなさったんです」
「・・・・・・」
「私はその話を聞いて腹が立ちました。私が今度の旅行をどれだけ楽しみにしていたか、あなたには分かりますか? それなのに・・・」
妻の淡々とした口調にかえって凄みを感じ、私は何も言えませんでした。
「私はあなたを憎みました。一言の相談もなしにそんなことを赤嶺さんに約束したあなたのエゴを憎みました。あれだけ私のことを愛していると仰ったのに、まるで物みたいに私を赤嶺さんに抱かせようとしたあなたを」
「・・・・・・」
「私のそんな想いを見て取ったのでしょうか、赤嶺さんは『彼が憎いですか。怨みに思いますか』と尋ねてきました。私がうなずくと、あのひとは『それなら彼を裏切ってみたらどうです。彼の思惑を知りつつ、それにのせられかと思うと、あなたはしゃくかもしれませんが、なに、私の見るところ、彼はそう強い男ではありません。彼はあなたのことをすべて自分の思い通りになる女だと思っています。あなたを私に抱かせてみたいと思いつつ、心の底ではあなたが裏切ることなどないと思っているんです。あなたが私に抱かれるなら、彼はきっと深く傷つくことになるでしょう』・・・そう言ったんです」
「・・・・・・」
「あなたが私のことを『すべて自分の思い通りになる女だと思っている』という赤嶺さんの言葉を聞いて、そのときの私は本当に腹が立ちましたし、今度の一件を見ていると、たしかにそうとしか思えませんでした。復讐のために私は本当に赤嶺さんにこのまま身を任せようかと思いましたが、そのときは決心がつきませんでした。赤嶺さんは『結論は今でなくてもいいです。私の言ったことを考えておいてください』と言って、去っていきました。私はそのまま気が抜けたように横たわっていました。
やがてあなたが戻ってきました。私は目を瞑っていましたが、あなたがお風呂場で明子さんを抱いたこと、そして私が赤嶺さんに抱かれたのではないかと勘繰っていることは、なんとなく分かりました。私はその夜、眠っているあなたをずっと見つめながら、一睡も出来ませんでした」
あのとき、私が感じた暗闇の視線は妻のものだったのです。





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よき妻 23
BJ 8/1(火) 23:15:07 No.20060801231507 削除
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いつの間にか私は眠り込んでいたようです。ううーんと唸りながら目を開けた私に、近くで煙草を吸っていた赤嶺がふっと笑いかけました。
「だいぶお疲れだな。もうロートルなんだからほどほどにしとけよ」
そう言う赤嶺も無精ひげは伸び、目の下には隈が出来ています。私は裸のままでしたが、彼も隣で寝ている明子もすでに浴衣を身に着けていました。
「お前は寝ていないのか?」
「いや、少し寝たよ。さすがの俺も今回はくたびれた」
屈託のない笑顔を浮かべる赤嶺に、私は曖昧な笑みを返しました。
ふたりの視線の先には、畳の上にしどけなく裸の寝姿を晒す妻がいます。
その表情は先ほどまであれほど乱れ狂っていた女とは思えないほど安らかで、あどけなくさえ見えました。

煙草を吸い終わった赤嶺が不意に立ち上がって、寝ている妻の傍らに行きました。
気配に気づいた妻が薄目を開けましたが、その瞳はいまだ夢の中にいるかのようでした。
「お目覚めかい。身体の調子はどう?」
「・・・身体中・・ばらばら・・・」
とろんとした口調で、妻が答えました。
「昨夜は凄かったな」
「いや・・・・」
「風呂へ行こう。疲れがとれるよ」
赤嶺はそう言って、妻の身体を抱き上げました。
「裸はいや・・・着るものを」
「分かったよ」
赤嶺は落ちていた浴衣をいいかげんに妻にかぶせました。
「じゃあ、行って来る」
赤嶺はちらりと私を見てそう言うと、妻を抱えたまま室外へ消えました。
私は何も言わずにそれを見送りました。

しばらくして、明子が「うーん」と呻きながら、薄目を開けました。部屋に私しか残っていないのを見てとって、
「赤嶺と奥さんは?」
「風呂へ行ったよ」
「まったく・・・朝から元気ねえ」
それだけ言って、また眠ってしまいました。
しばらくして私は立ち上がりました。

浴場へ入るガラスの扉から、かすかに明け方の光が差しこんでいました。
私は音を立てないように、その扉の傍に行きます。
ガラス扉越しに妻と赤嶺の姿が見えます。他の客の姿は見えません。
赤嶺は妻を抱え上げ、立位で繋がっていました。
あれほどくたびれていたというのに、妻は赤嶺の首へしどけなく抱きついたまま、ふかぶかと怒張を咥えこんだ腰を激しく揺さぶらせています。瞳を瞑ったその表情は、心の底から愉悦を味わっているようでした。
がっちりと逞しい赤嶺の肉体と妻の女らしい細やかな肢体は見事な対比を描いていて、古代ギリシャの神々を描いたヨーロッパの絵画を思わせました。

しばらくそんな二人をぼんやり見つめていましたが、やがて私は静かにその場を離れました。

部屋へ戻って布団を敷き、ひとり眠っていると、妻と赤嶺の戻ってきた気配がしました。
しばらくして隣に妻が滑り込んできました。私は瞳を瞑って寝たふりを続けます。
目が覚めたら、私たちはどうなるのだろう。そんなことを考えながら、私はいつしか眠ってしまいました。



プライド7
高田 8/1(火) 18:36:08 No.20060801183608 削除

「ごめん。また出かけなきゃいけなくなったの」
「今度は何の用事だ。飽きもせずそんなに続くものだな」
「職場の女の子が結婚する事に成って皆でお祝いしてあげる事に成ったのよ。家の事はちゃんとしておくからお願いします。今度から出来るだけ出ない様にするから気持ち良くいかせてね」
「しょうがねぇな。少しは控えるようにしろよ。今日なのか?」
「ええ、昨日言えばよかったんだけど、この頃貴方に不自由かける事が多いでしょう。何か言いずらくて」
「明日は土曜日か。休みだからと言ってあんまり羽目を外すなよ。なるべく早く帰って来る様にしろな」」
「勿論そうするは。ありがとう」
そうか。今日出かけるのか。何がありがとうだ。もしも浮気なんかしていたら只じゃ於かないぞ。
私は早速興信所に連絡を入れた。
仕事をしていても妻の事が気に掛かってしょうがない。この前尾行をした時にはそれ程でもなっかたのに、今回はやけに気に成る。妻へ対する疑惑がより気持ちの中で深まっているからだろう。
早々に仕事を切り上げて帰り、探偵からの連絡を待った。 証拠として写真は予め含まれていたが、オプションで録音も頼んで於いたから、連絡は遅い時間に成るのかもしれないがどうも落着かない。
本当に浮気をしていたら如何しようか。私の危惧であれば良いのだが、そうだとすると興信所に払う金がもったいない等と馬鹿な事を思ったりもした。まだ心の片隅で妻を信じているからそんな考えも浮かぶのだろう。妻よ、早く帰って来い。時計を見るともう11時をとうに回っていた。
そんな時携帯に探偵からの着信が入り、
「残念な結果です。奥様は男とホテルに入り先程出ました。男の素性も調べましょうか?」
「頼みます。幾ら程追加にに成りますか?」
想像していた以上の衝撃の大きさが私を襲ったが、何処かに冷静な部分も有ったのかそんな事を聞いていた。
「そんなには高くないです。1万に必要経費で良いですよ。サービスして於きます。詳しい事は明日連絡します。それから、奥様には今日は知らない顔をしていた方が良いと思います。明日までには全て揃えて於きますから。余計な事ですが経験上からの忠告です」
「分かりました」妻の顔を見たら平常心を保つ事は出来ないと思うが、忠告に従う事にするか。
私はこんな経験がない。良く知っている者の言い分の方がきっと正しいのだろう。
しばらくして妻が帰って来たが、私は気持ちを抑える為に寝た振りを決め込んだ。殆ど眠れなかった。

朝に成り会社に行く素振りを見せたが、その積もりは初めからなかった。欠勤の連絡を入れ興信所にと向かったが、早す過ぎて事務所はまだ開いていない。しょうがない、喫茶店で時間を潰す事にしよう。
朝の珈琲は欠かせない方だが、何の味も感じない。こうしていると複雑な感情に支配されてしまう。
何て事をしてくれたんだ。何の不満が有ると言うのか。そんな事を考えていると不安な気持ちに成ってしまう。不満がないはずがない。私は妻の事を女として見てやっていたのだろうか。余りにも大柄ではなかったか。そう受け取られたいるとしたら、あいつは男の事を私よりも愛してしまっているのだろうか。
釣った魚に餌をやらな過ぎたのか。後悔先に立たずか。我に返ると興信所のドアの前に立っていた。
ノブを回すと鍵はもう掛かっていない。
「ああ、早いですね。当然ですか。お気持ちは分かるのですが11時頃に全てが揃います。録音したメモリーカードは有るのですがもう少し待って頂けないでしょうか」
「そうですか。時間を潰してまた来ます」
少しばかりガッカリしたが、考えてみれば男の勤め先も調べるにはその位はかかるのだろう。
悶々とした気持ちで如何にか時間を潰し再度興信所に行くと、紙袋を渡され、探偵が何か言ったが耳に入って来なかった。早々に金を払い自宅へ急いだ。

紙袋の中から数枚の写真とメモリーカード、それと男の名前、勤め先が書かれた用紙が出て来た。
男の顔には、見覚えがない。ただ、可也若い様である。勤め先は、妻と同じ所かとも思っていたが、違う様だ。ただ、会社の名前からして同業のなのだろう。会社同士の付き合いがあり、知り合うきっかけに成ったのかもしれない。はやる気持ちを抑えパソコンにメモリーカードを入れると、流石にプロの仕事である。その音はす横からでも聞こえて来る様に鮮明なものであった。しかし、これは強烈なパンチだ。



プライド6
高田 8/1(火) 04:26:03 No.20060801042603 削除
妻が寝息を立てている。深い眠りの様だ。疲れているのか。それは何をして来てなのか。
私はそっと起き出し居間へ降りたが変わったものはなかった。
携帯電話は何処にあるのだろう。ハンドバックの中には無かった。そんな事も今迄は興味もなかったから後は思いつかなかった。
脱衣所を見てみたがここも変化がない。
そばに有る洗濯物の中にも何も無い。ただ、妻がさっき迄身に着けていただろうものもない。
下着位は穿き変えるだろう。洗濯機の中を見てみると布団カバーが突っ込まれており、なにげなく引っくり返してみた。
黒い下着とガーターベルト、黒いストッキングが隠す様に紛れていた。普段家で何もしない私がまさかこんな所をホジクリ返すとは思わなかったのだろう。
ストッキングはやはりパンストではなく、ガータータイプのものだったか。こんなものを穿いて何をして来たのか。これらを身に付けて会う相手はおそらく男だろう。このまま知らない顔をしている訳にはいかない。しかし、素人の尾行では今日の二の舞に成ってしまう。金は掛かるが興信所に頼むしかないのか。
妻を寝取られたピエロ役を演じているだけでは情けない。それにしても単なる危惧であってくれれば良いのだが。寝室にそっと戻り妻の顔を改めて覗き込んだ。そう言えばあっちの方も随分と御無沙汰しているな。
余談に成るが、妻の性技は物凄いものがある。普段の顔からは想像もつかなが、私も結構経験豊かな方だと自負しているつもりでも妻のテクニックに掛かってはひとたまりもなく、妻をいかせる前に2度は発射させられてしまい、そのままダウンと言う事もしょっちゅうある。妻はベットの中ではサディスッチクに変身する。
と言ってもSM 嗜好がある訳ではなく自分の技で男をいたぶる様にプレイするのが好みだ。若い時に何人かの可也年上の男と付き合い、そのテクニックを仕込まれたが、その内に男の方がヒーヒー言っていたそうだ。これは結婚前に妻から直接聞いた話で、その時は私も適当に遊んでいたので余り気に成らなかったものである。むしろ、そんな所に引かれ付き合いをしていた女の中から彼女を選んだのだった。
結婚後は寝物語にその話をさせながら何とか妻に一泡吹かせよう様と試みたがリードされるのは私の方であり、終った後にニヤリと笑われた。妻は相手の男とそんな事をしているのだろうか。

朝に成って目を覚ますと既に妻は起きて朝食の支度をしている様だった。居間に降りた私は声をかけたが、一寸だけ妻に不安感を持たせてやろうと企み、
「まとまった金がいる。如何にか成るか?」
「幾ら位かしら?」妻は背を向けたまま聞いてきた。
「30万位だ。」
「えっ、そんなに何に使うの?」流石に今度は私の方へ顔を向けた。
「ああ、大切な事に使う。今後の二人の為だ」
妻が怪訝そうに私に聞いてきたが、まさか興信所の費用に成るとは思ってはいまい。
「二人の為って・・・。」
「良いから何とかしてくれ。お前にもその内に分かるかもしれないから心配するな。女に使う訳じゃない」
その言葉に私から目をそむけたが、効果があったのか。
「そんな事は思っていないけど・・」
その言葉にも力がない。
今迄私は用途のはっきりさせない金を、当然の事だが妻に要求したりはしなかった。
妻も渋々ではあるが、明日迄待ってくれればと言う事で取り敢えずは納得した。
後は何処の興信所に頼むかだがネットででも探してみよう。まあ、何とか成るさ。
次の日、妻から金を受け取り探偵のところに足を向けた。料金は本当に高かったが、初めての経験で比較の仕様もなく頼むしかない。それでも、日にちのの指定をすると少しは安く成る様なのでそれでお願いする
事にしたが、後は妻の外出する日を待つしかない。その日は想いのほか早く来た。


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